空き家の売却の流れ|古家付きか更地か、売る前の準備から引き渡しまで8ステップ

住み替えや転勤で空けた家も、親から受け継いだ家も、空き家を売る流れは大きく変わりません。準備から引き渡しまでの順番と、古家付きで売るか更地にするかの考え方を整理します。
結論
- 空き家の売却の流れは、名義と書類の確認、家の中の片付けと状態の把握、売り方(古家付きか更地か)の決定、査定、媒介契約、売り出し、売買契約、引き渡しの順です。
- 空き家ならではの分かれ道は、古い家を残したまま売るか、壊して更地で売るかです。壊すと元に戻せないため、査定の前に決めず、査定で両方を比べてから決めます。
- 相続した空き家なら、条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。2024年1月1日以後の売却では、売った年の翌年2月15日までに取り壊しなどがされれば、家を残したまま売っても使えます。
「住んでいない家を売りたいけれど、何から手を付ければいいのか分からない」。空き家の持ち主から、よく聞く悩みです。
空き家の売却は、住みながら売る家とは違う手間があります。家財が残っている、傷みが分からない、遠くて通えない、名義が親のまま。こうした事情が、売り出しまでの準備を長くします。
この記事では、相続した家に限らず、空き家を売るときの流れを8つのステップに分けて説明します。古家付きで売るか、更地にして売るかの考え方もまとめます。
空き家の売却とは
空き家の売却の意味
空き家の売却とは、人が住んでいない家と土地を、不動産会社の仲介や買取で第三者に売り渡すことです。家を残して「古家付き土地」として売る方法と、家を壊して「更地」として売る方法があります。
住んでいる家の売却と違うところ
住んでいる家なら、内覧のときに持ち主が説明できます。空き家は、持ち主も家の今の状態をよく知らないことがあります。
そのため、空き家の売却では「売る前に家の状態を確かめる」ことが特に大切です。雨漏りや設備の故障を知らずに売ると、引き渡しの後で問題になることがあります。
相続した空き家とそれ以外
相続した家は、名義を自分に移す相続登記が先に必要です。相続以外の空き家、たとえば住み替えで空けた家や転勤で空けた家は、名義はすでに自分です。この違いで、準備にかかる時間が変わります。
空き家の売却の流れ8ステップ
全体の流れ
- 名義と書類を確かめる(登記事項証明書・権利証・固定資産税の通知など)
- 家の中を片付け、家の状態を確かめる
- 古家付きで売るか、更地にして売るかの方針を立てる
- 複数の会社に査定を頼み、価格の根拠を聞く
- 売却を任せる会社と媒介契約を結ぶ
- 売り出し、内覧に対応する
- 買主と売買契約を結び、手付金を受け取る
- 残りの代金を受け取り、家と鍵を引き渡す
全体の流れは不動産売却の流れでも詳しく説明しています。ここからは、空き家ならではの注意点を中心に見ていきます。
ステップ1 名義と書類を確かめる
まず、登記上の持ち主がだれかを確かめます。親の名義のままなら、売る前に相続登記が必要です。
法務省によると、相続登記は2024年4月1日から義務になりました。相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をする必要があります。詳しくは相続登記の義務化をご覧ください。
共有名義の場合は、売るのに共有者全員の同意が要ります。話がまとまらないときは共有名義の不動産の解消も参考にしてください。そろえる書類は不動産売却の必要書類にまとめています。
ステップ2 片付けと家の状態の把握
家財が残ったままでも売り出すことはできます。ただ、内覧のときの印象や、買主が片付けを負担するかどうかで条件が変わることがあります。
家の状態は、雨漏り・床のきしみ・水回りの故障・シロアリの跡などを確かめます。分かったことは、売るときに買主へ正直に伝えます。宅地建物取引業法では、媒介契約の書面に、建物の状態を専門家が調べる「建物状況調査」のあっせんに関する事項を書くことになっています。調査を使うかどうかは、会社に相談できます。
ステップ3 方針を立てる
古家付きで売るか、更地にするかは、次の章でくわしく説明します。ここで大切なのは、壊すかどうかは査定の後に決めることです。
古家付きか更地か
比べる点の一覧
| 比べる点 | 古家付きで売る | 更地にして売る |
|---|---|---|
| 売る前の出費 | 解体の費用がかからない | 解体の費用がかかる |
| 買主の層 | 家を直して住みたい人、建て替える人 | 新しく家を建てたい人 |
| 家の傷み | 買主に正直に伝える必要がある | 建物の不具合の心配がなくなる |
| 固定資産税 | 住宅用地の特例が続くことがある | 翌年から特例が外れることがある |
| やり直し | できる | 壊したら元に戻せない |
固定資産税の住宅用地の特例
総務省の案内では、住宅が建っている土地は固定資産税が軽くなります。200㎡以下の部分は課税標準が6分の1、200㎡を超える部分(家の床面積の10倍まで)は3分の1です。
固定資産税は、毎年1月1日の時点の状態で決まります。年の途中で家を壊すと、翌年の1月1日に家がなければ、特例が外れることがあります。売れるまで時間がかかりそうなときは、この点も考えておきます。
なお、空き家が「管理不全空家」などに指定されて勧告を受けると、家があっても特例が外れます。くわしくは管理不全空家と固定資産税をご覧ください。
判断の分かれ道
- 家がまだ住める状態なら、古家付きで売り出し、反応を見る
- 傷みがひどく、内覧で敬遠されそうなら、更地での査定も取って比べる
- 自治体に解体の補助金があるかを、壊す前に確かめる
- 相続した家なら、3,000万円の特別控除の条件と合わせて考える
解体の流れと補助金は空き家の解体と補助金で紹介しています。
ポイント
- 壊すかどうかは、古家付きと更地の両方の査定を見てから決める
- 年の途中で壊すと、翌年の固定資産税が上がることがある
- 解体の補助金は、壊す前の申請が必要なことが多いので先に自治体に聞く
- 家の不具合は隠さず、売るときに買主へ伝える
査定・媒介契約・売り出しの進め方
査定は複数の会社に頼む
空き家は、地域や家の状態で値段の付き方が大きく変わります。1社だけでなく、複数の会社に査定を頼み、価格の根拠を聞きます。机上査定と訪問査定の違いは不動産査定の種類で説明しています。
遠くに住んでいて立ち会えない場合は、鍵の預け方や、査定の結果の受け取り方を会社と決めておきます。
媒介契約の種類
| 契約の種類 | ほかの会社にも頼めるか | 契約の期間 | 報告の回数 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 頼める | 法律の上限はない | 法律の決まりはない |
| 専任媒介 | 頼めない | 3か月まで | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 頼めない(自分で見つけた相手とも直接は契約できない) | 3か月まで | 1週間に1回以上 |
宅地建物取引業法では、専任媒介契約の期間は3か月を超えることができず、更新も依頼者の申し出によります。選び方は一般媒介と専任媒介を、会社の選び方は売却の会社の選び方をご覧ください。
早く現金にしたいなら買取も
仲介で買主を探す代わりに、不動産会社に直接買い取ってもらう方法もあります。家財が残っていても、傷んでいても相談できることがあります。流れと注意点は不動産買取の流れにまとめています。
売買契約と引き渡しの注意点
契約不適合責任
民法では、引き渡した家が契約の内容に合わないとき、買主は直しや代金の減額などを求められます。種類や品質が合わない場合、買主は不具合を知った時から1年以内に売主へ伝える必要があります。
空き家は、売主も知らない不具合があるかもしれません。分かっている傷みは契約書に書き、責任の範囲を契約で決めておきます。
契約不適合責任の範囲は、売主が個人か会社かなどで扱いが変わることがあります。契約書の文言は、媒介の会社とよく確かめてください。
場面の例
Aさんは、転勤で空けた家を3年ほど空き家にしていました。家財は少なく、傷みも軽かったため、古家付きで売り出しました。内覧では、気になる点を書いた一覧を用意し、買主に渡しました。
Bさんは、親から相続した築年数の古い家を売ることにしました。古家付きと更地の両方で査定を取ったところ、地域では土地を探す人が多いと分かりました。自治体の補助金を確かめてから解体し、更地で売り出しました。
よくある失敗
- 査定の前に家を壊し、古家付きで欲しかった買主を逃した
- 年の途中で壊し、翌年の固定資産税が上がった
- 名義が親のままで、売り出してから相続登記を始めて遅れた
- 雨漏りを伝えず、引き渡しの後に買主ともめた
遠くに住んでいる場合の段取り
空き家の持ち主が遠くに住んでいることは珍しくありません。現地に何度も行けないときは、次の点を会社と先に決めておくと進めやすくなります。
- 鍵をだれに預け、内覧のたびにだれが立ち会うか
- 家の状態や内覧の様子を、写真や書面でどう報告してもらうか
- 契約と引き渡しの日に、現地に行くか、別の方法で進めるか
- 売れるまでの間の見回りや草木の手入れをだれがするか
売り出し前のチェックリスト
- 登記上の名義が自分になっている(なっていなければ相続登記を進めている)
- 家財の片付けをどこまでするか決めた
- 雨漏りや設備の故障など、分かっている傷みを書き出した
- 古家付きと更地の両方で値段の目安を聞いた
- 解体の補助金や税の特例の条件を確かめた
売った後の税金と特例
譲渡所得と確定申告
空き家を売って利益が出たら、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。基本の考え方は不動産売却の税金をご覧ください。
相続した空き家の3,000万円特別控除
国税庁の案内では、相続した家とその土地を売ったとき、条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。主な条件は次のとおりです。
- 1981年5月31日以前に建てられた家であること(マンションなど区分所有の建物は対象外)
- 亡くなる直前に、亡くなった人以外に住んでいた人がいないこと
- 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った値段が1億円以下であること
- 2027年12月31日までに売ること
2024年1月1日以後の売却では、相続人が3人以上なら控除は1人2,000万円までです。また、売った年の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しがされれば、改修や取り壊しの前の家のまま売っても使えます。確定申告が必要で、市区町村の確認書も添えます。くわしくは空き家の3,000万円特別控除をご覧ください。
よくある質問
- 空き家の売却の流れで最初にすることは何ですか?
- 登記上の名義と書類を確かめることです。親の名義のままなら、先に相続登記をします。
- 空き家は更地にした方が売れますか?
- 地域や家の状態によります。古家付きと更地の両方の査定を取り、比べてから決めるのが安全です。
- 家財が残ったままでも売れますか?
- 売り出すことはできます。ただ、片付けをだれが負担するかで条件が変わるため、会社と相談して決めます。
- 遠方に住んでいても空き家を売れますか?
- 売れます。鍵の預け方や、内覧・契約の進め方を、売却を任せる会社と事前に決めておきます。
- 相続していない空き家にも3,000万円の特別控除は使えますか?
- この特例は、相続した家とその土地が対象です。住み替えで空けた自分の家は、別の特例を確かめます。
空き家の売却の相談先
地域の売却の会社を探すなら、売買の会社や会社一覧をご覧ください。売るか貸すかで迷う場合は実家は売るか貸すかが参考になります。売却・活用・解体の相談をまとめて進めたい方は、一括相談をご利用ください。
まとめ
- 空き家の売却は、名義の確認、片付けと状態の把握、方針、査定、媒介契約、売り出し、売買契約、引き渡しの順に進みます
- 古家付きか更地かは、両方の査定を見てから決めます。壊すと元に戻せません
- 年の途中で壊すと、翌年の固定資産税の住宅用地の特例が外れることがあります
- 分かっている傷みは買主に伝え、契約書に書いておきます
- 相続した空き家なら、条件を満たすと最大3,000万円の特別控除が使えます




