空き家を相続したら最初にやること|期限のある手続きと家の確認を順番に整理

親の家を相続して空き家になったとき、何から手を付ければよいかを順番に整理します。期限のある手続きと、家そのものの確認を分けて、最初の3か月・10か月・3年でやることをまとめます。
結論
- 空き家を相続したら、最初にやることは「期限のある手続きの確認」と「家の状態の確認」の2つです。
- 期限が最も早いのは、相続放棄や限定承認を選ぶかどうかで、相続を知った時から3か月以内です(民法第915条)。
- 次に、亡くなった方の準確定申告が4か月以内、相続税の申告が必要なら10か月以内です。
- 不動産の相続登記は、取得を知った日から3年以内に申請する義務があります。
親が亡くなり、住む人のいなくなった実家が残った。葬儀が終わって少し落ち着いたころ、「この家、どうしよう」と気づく方は多いはずです。
ところが、何から手を付ければいいのかが分かりません。役所の手続き、銀行、税金、登記。やることが多すぎて、家のことは後回しになりがちです。
この記事では、空き家を相続した直後にやることを、期限の近い順に並べ直します。あわせて、家そのものについて最初の数週間で確かめておきたいことも整理します。
空き家の相続で最初にやることの全体像
「最初にやること」とは
ここでいう最初にやることとは、後から取り返しがつかなくなる期限を守り、家の傷みや事故を防ぐための行動です。売るか貸すかを決めることは、その後で構いません。
期限で見る手続きの一覧
| いつまで | 手続き | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 死亡を知った日から7日以内 | 死亡届 | 戸籍法第86条・市区町村 |
| 相続を知った時から3か月以内 | 相続放棄・限定承認を選ぶか決める | 民法第915条・家庭裁判所 |
| 相続を知った日の翌日から4か月以内 | 準確定申告 | 国税庁・税務署 |
| 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税の申告と納付(必要な場合) | 国税庁・税務署 |
| 取得を知った日から3年以内 | 相続登記 | 不動産登記法・法務局 |
死亡届は、葬儀の手配と一緒に済ませていることが多いでしょう。空き家に関係して特に意識したいのは、3か月・10か月・3年の3つの期限です。
ポイント
- 3か月:相続するか、放棄するかを決める
- 4か月:亡くなった方の所得の申告(準確定申告)
- 10か月:相続税の申告と納付(基礎控除を超える場合)
- 3年:相続登記の申請
むずかしい言葉の言い換え
- 被相続人:亡くなった方
- 単純承認:借金も含めて、そのまま相続すること
- 相続放棄:最初から相続人でなかったことにする手続き
- 準確定申告:亡くなった方の、その年の所得の申告
- 相続登記:不動産の名義を、相続人に変える手続き
3か月以内:相続するか放棄するかを決める
なぜ最初に考えるのか
民法第915条では、相続人は自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを決めることになっています。何もしないまま3か月が過ぎると、そのまま相続した(単純承認)とみなされます。
亡くなった方に借金があった場合や、古い空き家の維持が重い負担になる場合は、放棄も選択肢です。裁判所によると、放棄の申述は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に行い、費用は申述人1人につき収入印紙800円分です。
家の物を処分する前に注意
民法第921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。放棄を考えている間は、家財の売却や大がかりな処分を控えましょう。
ただし、同じ条文で「保存行為」は除かれています。雨漏りの応急処置や戸締まりなど、家の状態を保つための行動はためらう必要はありません。
財産の全体をつかむ
放棄するかどうかは、財産と借金の全体を見ないと決められません。家と土地のほか、預貯金、借入れ、固定資産税の納税通知書などを集めます。民法第915条第2項でも、承認や放棄の前に相続財産を調査できるとされています。
書類を探す場所
空き家の中には、手続きに必要な書類が残っていることが多くあります。仏壇の引き出し、たんすの上の段、金庫、書斎の机などを、家族で手分けして探しましょう。
- 権利証(登記識別情報)や、不動産を買ったときの契約書
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書
- 預金通帳、借入れの契約書、クレジットカードの明細
- 火災保険や生命保険の証券
- 遺言書(見つけても、封がしてあれば開けない)
封のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いがなければ開けられません(民法第1004条第3項)。見つけたら、そのまま保管しておきましょう。
相続人が複数いるときの分担
手続きを1人で抱えると、期限に追われて家のことが後回しになります。「役所と税金の手続き」「家の見回りと片付けの準備」「財産の調査」のように分担し、進み具合を共有しましょう。だれが鍵を持つかも、早めに決めておきます。
家そのものについて最初に確かめること
最初の数週間でやりたい5つ
- 戸締まりを確かめ、鍵の本数と持っている人を把握する
- 水道・電気・ガスの契約を確かめ、止めるか残すかを決める
- 冷蔵庫の中身や生ごみなど、傷みやすい物を片付ける
- 郵便物が届き続けるため、転送や回収の方法を決める
- 屋根・外壁・塀・庭木の状態を写真に残す
電気や水道は止めるべきか
見回りのときに照明や水を使うなら、すぐに止めないほうが便利です。一方で、使わない設備は事故のもとになります。ガスは使う予定がなければ止める、水道は通水の点検に使うなら残す、というように、設備ごとに決めましょう。
火災保険を確かめる
亡くなった方の名義の火災保険が、そのまま残っていることがあります。住む人がいなくなると、契約の条件が変わる場合があります。保険会社に連絡し、空き家になったことを伝えて扱いを確かめましょう。詳しくは「空き家の火災保険」をご覧ください。
ご近所へのあいさつ
隣の家に、空き家になったことと連絡先を伝えておくと安心です。庭木のはみ出しや不審な人の出入りに、いち早く気づいてもらえます。
遠方に住んでいるとき
実家が遠いと、手続きのたびに通うのは大変です。最初に一度、数日まとめて滞在できる日を作り、戸締まり・書類探し・写真の記録を一気に済ませると、その後が楽になります。
帰る前には、次に来る日を決めておきましょう。通える回数が少ない場合は、見回りを家族や管理の会社に頼むことも考えます。郵便物は転送の手続きをしておくと、税金や役所からの通知を見落とさずに済みます。
4か月・10か月以内:税金の手続き
準確定申告
国税庁によると、亡くなった方に申告が必要な所得があった場合、相続人は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をします。相続人が2人以上いるときは、連署して提出します。亡くなった方が家賃収入を得ていた場合などは、特に確かめましょう。
相続税の申告
相続税の申告と納付は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。国税庁の計算では、遺産に係る基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。財産の合計がこれを超えるかどうかで、申告が必要かが分かれます。
土地の評価に使える特例
亡くなった方が住んでいた土地には、相続税の評価を下げる特例があります。条件や手続きは「小規模宅地等の特例」で説明しています。特例は申告して初めて使えるものがあるため、早めに確かめましょう。
3年以内:相続登記で持ち主をはっきりさせる
相続登記の義務
法務省によると、2024年4月1日から相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年4月1日より前の相続で登記していない不動産は、2027年3月31日までが期限です。
遺産分割と登記の順番
だれが家を引き継ぐかを話し合いで決めた場合は、その遺産分割の日から3年以内に、結果に合わせた登記をします。話し合いが長引きそうなら、相続人申告登記という申出で、ひとまず義務を果たす方法もあります。制度の詳細は「相続登記の義務化」をご覧ください。
登記が遅れると困ること
名義が亡くなった方のままでは、売ることも、貸す契約を結ぶことも進めにくくなります。さらに次の相続が起きると、話し合う人が増えていきます。期限が3年あるからといって、後回しにしないことが大切です。
判断の分かれ道とよくある失敗
方針の分かれ道
- 借金が多い、または家の負担が大きすぎる:3か月以内に放棄を検討する
- 相続人が1人、または分け方に合意している:登記を先に済ませ、使い道を考える
- 分け方で意見が分かれる:話し合いと並行して、家の管理だけは続ける
- 使う予定がない:売る・貸す・活かすを比べる
場面の例
Bさんは、母が住んでいた家を兄と2人で相続しました。最初の1か月で戸締まりと写真の記録を済ませ、ガスだけを止めました。財産を調べて借金がないことを確かめ、放棄はしないと決めました。
その後、兄が家を引き継ぐことで合意し、遺産分割協議書を作って登記を申請しました。家の使い道は、登記が終わってから2人で話し合うことにしています。
よくある失敗
- 放棄を考えているのに、家財を売ってしまう
- 固定資産税の通知書を開けずに、家の評価額が分からない
- 火災保険の名義や条件を確かめないまま空き家にしておく
- 相続登記を「いつかやる」と先送りし、次の相続が起きる
最初の1か月のチェックリスト
- 鍵の本数と持っている人を把握したか
- 水道・電気・ガスを、止めるか残すか決めたか
- 傷みやすい物やごみを片付けたか
- 家の外まわりを写真に残したか
- 固定資産税の納税通知書や権利証を見つけたか
- 3か月の期限がいつまでか、カレンダーに書いたか
よくある質問
- 空き家を相続したら、最初に何をすればいいですか?
- 3か月以内に相続するか放棄するかを決めるため、財産と借金の全体を調べます。並行して、戸締まりと家の状態の記録を済ませます。
- 相続した空き家の相続登記はいつまでにしますか?
- 取得を知った日から3年以内です。2024年4月1日より前の相続で登記していない場合は、2027年3月31日までです。
- 相続放棄を考えているとき、家の片付けはしてもいいですか?
- 財産を処分すると、相続したとみなされることがあります。戸締まりや応急の修理など、状態を保つ行動にとどめましょう。
- 空き家の相続で相続税はかかりますか?
- 財産の合計が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えると、申告が必要になります。
- 空き家の電気や水道はすぐ止めるべきですか?
- 見回りで使うなら残しておくと便利です。使わない設備は、事故を防ぐために止めることを考えましょう。
- 空き家を相続したら、すぐに売るか決めないといけませんか?
- すぐに決める必要はありません。期限のある手続きと家の確認を先に済ませ、相続登記の後に落ち着いて比べれば間に合います。
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まとめ
- 空き家を相続したら、期限のある手続きと家の状態の確認を最初に行います
- 相続するか放棄するかは、相続を知った時から3か月以内に決めます
- 放棄を考えている間は、家財の処分を控えます
- 準確定申告は4か月以内、相続税の申告は10か月以内です
- 相続登記は取得を知った日から3年以内に申請します
- 売るか貸すかは、手続きと家の確認が済んでから考えれば間に合います




