数次相続とは?登記を1件で申請できる場合と、遺産分割で気を付けること

相続の手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、相続が重なることを数次相続といいます。登記をまとめて申請できる場合とできない場合、話し合いに加わる人、期限と免税の扱いを順に説明します。
結論
- 数次相続とは、相続の手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が重なって起きることです。
- 途中の相続で不動産を引き継いだ人が1人なら、登記を1件の申請でまとめて行えます。途中の相続で複数人が権利を得ている場合は、1件ではできません。
- 途中で亡くなった相続人の分は、その人の相続人が引き継いで遺産分割の話し合いに加わります。
- 相続で土地を取得した人が登記前に亡くなった場合、その人の名義にする登記は2027年3月31日まで登録免許税がかかりません(租税特別措置法第84条の2の3)。
「祖父の名義のままだった土地を調べたら、父もすでに亡くなっていた」。相続の相談では、こうした場面が少なくありません。
名義が古いままの不動産では、相続が2回、3回と重なっていることがあります。だれが話し合いに加わるのか、登記は何回必要なのか。分からないことが一気に増えます。
この記事では、数次相続の仕組みと、登記を申請するときの考え方を順に説明します。家系図のような関係図を描きながら読むと、自分の場合に当てはめやすくなります。
数次相続とは
数次相続の定義
数次相続とは、ある人(第1の相続)の遺産分割や相続登記が済まないうちに、その相続人が亡くなり、第2の相続が始まることです。相続が何回重なっても、まとめて数次相続と呼びます。
よくある例
祖父が亡くなり、祖母と父が相続人になりました。遺産分割も登記もしないまま、数年後に父が亡くなりました。この場合、祖父の相続(第1)と父の相続(第2)が重なっています。父が持っていた祖父の遺産への権利は、父の相続人に引き継がれます。
再転相続との違い
民法第916条では、相続人が相続の承認も放棄もしないうちに亡くなったとき、その人の相続人の3か月の期間は、自分のために相続の開始を知った時から数えるとされています。これを再転相続と呼ぶことがあります。数次相続は、承認や放棄を終えた後に、手続きが残ったまま次の相続が起きる場面を指して使われることが多い言葉です。
数次相続で困りやすいこと
話し合う人が増える
法務局は、何世代も相続登記をしていない場合は、相続人が増え、多くの書類が必要になると案内しています。途中で亡くなった人の配偶者や子どもまで、話し合いに加わることになるためです。
集める戸籍が増える
登記では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要です。数次相続では、第1の相続の被相続人と、第2の相続の被相続人の両方について集めます。相続人の中に連絡を取ったことのない親族がいることもあります。
登記は名義人から順に
法務局によると、登記は登記名義人について行う必要があります。たとえば亡くなった方の両親が登記名義人のままなら、まずその両親からの相続登記を行います。名義人がだれかを、登記事項証明書で最初に確かめましょう。
名義が古いまま放っておくと
相続が重なるほど、話し合いに加わる人はねずみ算のように増えていきます。いとこ同士や、会ったことのない親族と連絡を取らなければならないこともあります。
さらに、名義が亡くなった方のままでは、売る・貸す・建て替えるといった決めごとが進めにくくなります。家が傷んでも、だれが直すのかが決まらないまま時間が過ぎがちです。気づいた世代で整理しておくことが、次の世代の負担を減らします。
最初に集めたい書類
- 不動産の登記事項証明書(法務局で取れる)
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書
- 名義人と、途中で亡くなった相続人それぞれの戸籍
- いまの相続人全員の戸籍と住民票の写し
関係図の描き方
- 登記事項証明書で、いまの名義人(第1の被相続人)を確かめる
- 名義人の配偶者と子どもを書き、亡くなった人には死亡の日を書き添える
- 亡くなった相続人ごとに、その配偶者と子どもを書き足す
- いま生きている相続人に印を付け、連絡先が分かるかを書き込む
法務局に出す相続関係説明図も、同じ考え方で作ります。法務局の記載例では、相続関係説明図を出すと、登記の調査が終わった後に戸籍などの原本を返してもらえるとされています。
むずかしい言葉の言い換え
- 第1の相続:最初に亡くなった名義人の相続
- 第2の相続:その相続人が亡くなって起きた次の相続
- 登記名義人:登記簿に持ち主として載っている人
- 共同相続人:同じ相続で、一緒に相続人になる人たち
ポイント
- 登記事項証明書で、いまの名義人を確かめる
- 名義人から現在までの相続を、順に関係図にする
- 相続ごとに、亡くなった方の戸籍をすべて集める
- 途中の相続で不動産を得た人が1人か、複数かを確かめる
数次相続の登記:1件でできる場合とできない場合
1件で申請できる場合
法務局の数次相続の記載例は、第1の相続の登記が済まないうちに相続人が亡くなり、第2の相続が始まった場合のものです。登記の原因の欄には、第1の相続の日と相続人の氏名、続けて第2の相続の日を書きます。
たとえば「平成2年3月21日法務春夫相続」「令和7年6月20日相続」のように2行で書き、1件の申請で最終の相続人の名義にします。途中の人を一度名義人にする登記を、省くことができるわけです。
1件ではできない場合
法務局の記載例では、最終の相続以外の相続で、共同相続人の数名が権利を取得している場合には、1件の申請では登記できないとされています。この場合は、相続ごとに順に登記を申請します。
途中の相続で、遺産分割によって1人が不動産を引き継いだ形にできれば、1件で申請できることがあります。分け方の決め方で登記の回数が変わるため、話し合いの前に法務局や司法書士に確かめると安心です。
比べてみる
| 場面 | 登記の申請 |
|---|---|
| 途中の相続で不動産を得たのが1人 | 1件で最終の相続人の名義にできる |
| 途中の相続で複数人が権利を得ている | 相続ごとに順に申請する |
| 最終の相続で複数人が引き継ぐ | 最終の相続人の持分を書いて申請できる |
遺産分割の話し合いに加わる人
亡くなった相続人の立場を引き継ぐ
第1の相続の遺産分割が済まないうちに相続人が亡くなると、その人の権利は、その人の相続人に引き継がれます。第1の相続の遺産分割は、残っている相続人と、亡くなった相続人の相続人が全員で話し合います。
協議書の作り方の考え方
遺産分割協議書には、どの相続について話し合ったのかが分かるように書きます。第1の相続と第2の相続を1つの書面にまとめるか、相続ごとに分けるかは、状況によって変わります。書き方に迷ったら、法務局の登記手続案内や司法書士に相談しましょう。
場面の例
Dさんの祖父は、20年前に亡くなりました。土地は祖父の名義のままで、祖母と父と叔母が相続人でした。その後、祖母と父も亡くなりました。
Dさんは、登記事項証明書で名義人を確かめ、祖父・祖母・父の戸籍を集めて関係図を描きました。叔母とDさんたち兄弟で話し合い、Dさんが土地を引き継ぐことに決めました。途中の相続の扱いで登記の件数が変わるため、申請の前に法務局の登記手続案内で確かめることにしました。
話し合いがまとまらないとき
相続人が増えると、連絡が取れない人や、分け方に反対する人が出てきます。全員の合意がないと遺産分割はできないため、まとまらないときは家庭裁判所の調停などを使う道もあります。期限が気になる場合は、話し合いと並行して相続人申告登記を済ませておくと安心です。
よくある失敗
- 名義人を確かめずに、親の相続だけを考えて手続きを始める
- 途中で亡くなった相続人の配偶者や子どもを、話し合いに入れ忘れる
- 戸籍が一部しかそろっておらず、法務局から追加を求められる
- 途中の相続で共有のまま話がつき、登記の件数が増える
判断の分かれ道
- 相続人が少なく、連絡が取れる:関係図を作り、まとめて話し合う
- 相続人が多く、知らない親族がいる:司法書士などに戸籍の調査から頼むことを考える
- 使う予定のない土地:登記の後に、売る・手放す方法を比べる
期限と登録免許税
相続登記の期限
法務省によると、相続登記は不動産の取得を知った日から3年以内に申請する義務があります。2024年4月1日より前の相続で登記していない不動産は、2027年3月31日までが期限です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続人申告登記を使う
話し合いが長引きそうなときは、相続人申告登記という申出で、ひとまず義務を果たせます。法務省は、申し出た相続人だけが義務を果たしたとみなされると説明しています。詳しくは「相続登記の義務化」をご覧ください。
途中の登記の免税
租税特別措置法第84条の2の3では、相続で土地を取得した人が、その登記を受ける前に亡くなったとき、その人を登記名義人とするための登記は、2027年3月31日までの間、登録免許税がかからないとされています。数次相続で、相続ごとに順に登記する場合に関係します。
登録免許税の計算
法務局の記載例では、相続による所有権の移転の登録免許税は、課税価格の1,000分の4です。課税価格は固定資産課税台帳の価格をもとにし、1,000円未満は切り捨てます。税額の100円未満も切り捨てます。
申請前のチェックリスト
- 登記事項証明書で、いまの名義人を確かめたか
- 相続ごとに、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をそろえたか
- 途中の相続で、不動産を得た人が1人か複数かを確かめたか
- 遺産分割の話し合いに、加わるべき人が全員そろっているか
- 免税を使う場合、申請書の書き方を法務局で確かめたか
よくある質問
- 数次相続とは何ですか?
- 相続の手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が重なって起きることです。
- 数次相続の登記は1回でできますか?
- 途中の相続で不動産を得た人が1人なら、1件の申請でできます。途中で複数人が権利を得ている場合は、相続ごとに申請します。
- 数次相続の遺産分割にはだれが加わりますか?
- 残っている相続人と、途中で亡くなった相続人の相続人が全員で話し合います。
- 数次相続でも相続登記の期限はありますか?
- あります。取得を知った日から3年以内で、2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日までです。
- 数次相続の登記は自分でできますか?
- 法務局は数次相続の様式と記載例を公開しています。何世代も登記していないときは、管轄の法務局への相談や司法書士への依頼も案内しています。
- 数次相続の登記の申請書には何を書きますか?
- 登記の原因の欄に、第1の相続の日と相続人の氏名、続けて第2の相続の日を書きます。法務局の記載例に沿って作ると確実です。
次に読みたい記事と相談先
相続人が多く共有になった場合は「共有名義の解消」、使い道のない土地は「相続土地国庫帰属制度」、売る場合は「相続した実家の売却の流れ」が参考になります。地域の会社は会社一覧から探せます。複数の会社にまとめて聞きたい方は一括相談をご利用ください。
まとめ
- 数次相続とは、相続の手続きが終わらないうちに次の相続が重なることです
- 登記は名義人から順に考え、まず登記事項証明書で名義人を確かめます
- 途中の相続で不動産を得た人が1人なら、登記は1件で申請できます
- 途中で亡くなった相続人の分は、その人の相続人が話し合いに加わります
- 相続登記は3年以内、2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日までです
- 途中の人を名義人とする土地の登記は、2027年3月31日まで免税です




