相続した実家の売却の流れと税金。相続登記から確定申告、取得費加算の特例まで

相続した実家を売るには、相続登記から確定申告まで、いくつかの手順があります。売るまでの流れと、税金の計算、取得費加算などの特例を国税庁の案内をもとに整理します。
結論
- 相続した実家の売却は、相続人の確認、遺産分割、相続登記、査定と売却の依頼、売買契約、引き渡し、確定申告の順に進みます。
- 売るには、亡くなった方から相続人へ名義を変える相続登記が必要です。
- 税金は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得にかかります。取得費は亡くなった方が買ったときの代金をもとに計算します。
- 相続税を納めた人は取得費加算の特例、親が一人で住んでいた古い家なら空き家の3,000万円特別控除が使えることがあります。
親の家を相続したものの、住む予定はない。売ることを考えても、何から手をつければよいか分からない方は多いはずです。
相続した家の売却には、普通の売却にはない手順があります。名義の変更や、相続人どうしの話し合いです。税金の計算にも、相続ならではの決まりがあります。
この記事では、売るまでの流れを順番に整理します。そのうえで、税金の計算と使える特例を、国税庁の案内をもとに説明します。
相続した実家の売却の流れ
全体の流れ
相続した実家を売るまでの、おおまかな順番です。
- 遺言があるか確かめ、戸籍を集めて相続人を確かめる
- 相続人で話し合い、だれが実家を受け継ぐかを決める(遺産分割)
- 相続登記で、実家の名義を相続人に変える
- 不動産会社に査定を頼み、売り出す価格を考える
- 不動産会社と媒介契約を結び、買主を探す
- 買主と売買契約を結び、代金を受け取って引き渡す
- 売った年の翌年に、確定申告をする
相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合、だれが受け継ぐかで売り方が変わります。1人が受け継いで売る方法のほか、売ったお金を分ける方法もあります。どの形にするかは、遺産分割の話し合いで決めます。
遺産分割の形によって、税金のかかり方が変わることがあります。話し合いの段階で、税理士に相談しておくと安心です。
1人が受け継ぐか、売って分けるか
1人が家を受け継ぐ方法を現物分割(げんぶつぶんかつ)、売ったお金を分ける方法を換価分割(かんかぶんかつ)と呼びます。
- 受け継ぐ人が決まっていて、その人が売り手になってよい:1人が受け継いでから売る
- きょうだいで公平に分けたい:売ったお金を分ける形で話し合う
- 共有のまま売る:売るときに全員の合意と手続きが必要になる
たとえば、兄弟3人で実家を相続したAさんの場合です。だれも住む予定がなく、お金で分けたいと考えました。この場合は、売ったお金を分ける内容で遺産分割協議書をつくり、登記と売却を進めることになります。窓口になる人を1人決めておくと、不動産会社とのやりとりが進めやすくなります。
売る前に必要な相続登記
相続登記とは
相続登記とは、亡くなった方の名義の家や土地を、相続した人の名義に変える手続きです。名義が亡くなった方のままでは、買主に名義を移せません。
相続登記は2024年4月1日から義務にもなりました。相続で取得したと知った日から3年以内に申請が必要です。
相続人申告登記では売れない
話し合いがまとまらないときの「相続人申告登記」は、ひとまず義務を果たすための申出です。法務省の案内では、売るときには別に相続登記が必要とされています。
登録免許税
相続による名義変更の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4です。司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかります。
相続した実家を売ったときの税金
譲渡所得の計算
売って利益が出ると、譲渡所得に所得税と住民税がかかります。譲渡所得は次のように計算します。
- 譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)
譲渡費用とは、仲介手数料など、売るために直接かかった費用です。
取得費は親が買ったときの代金がもと
国税庁によると、相続した家や土地の取得費は、亡くなった方が買ったときの代金や手数料などをもとに計算します。相続のときの値段ではありません。
業務に使っていない家や土地なら、相続人が払った登記費用や不動産取得税も、取得費に含められます。
取得費が分からないとき
昔に買った家で、買ったときの代金が分からないこともあります。その場合は、売った金額の5%を取得費にできます。
ただし、5%で計算すると取得費がとても小さくなり、税金が重くなりがちです。古い契約書や領収書が残っていないか、まず探してみましょう。
持っていた期間も引き継ぐ
取得した時期も、亡くなった方の時期がそのまま引き継がれます。持っていた期間で税率が変わるため、親が買った時期を確かめておきましょう。
ポイント
- 売るには、相続人申告登記ではなく相続登記が必要
- 取得費は、亡くなった方が買ったときの代金をもとに計算する
- 取得費が分からないときは、売った金額の5%にできる
- 取得した時期は、亡くなった方の時期を引き継ぐ
使える特例:取得費加算と3,000万円特別控除
取得費加算の特例とは
取得費加算の特例とは、相続税を納めた人が相続した財産を売ったとき、相続税の一部を取得費に足せる特例です。取得費が増える分、譲渡所得が減ります。国税庁の案内では、主な条件は次のとおりです。
- 相続や遺贈で財産を取得した人であること
- その人に相続税がかかっていること
- 相続が始まった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ること
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。使うには、書類を添えて確定申告をする必要があります。
空き家の3,000万円特別控除とは
親が一人で住んでいた、1981年5月31日以前に建てられた家などを売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例です。売値1億円以下、2027年12月31日までの売却などの条件があります。
2つの特例の比較
| 項目 | 取得費加算の特例 | 空き家の3,000万円特別控除 |
|---|---|---|
| 使える人 | 相続税がかかった人 | 条件に合う家を相続した人 |
| 効き方 | 相続税の一部を取得費に足す | 譲渡所得から最高3,000万円を引く |
| 売る期限 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(2027年12月31日まで) |
| 確定申告 | 必要 | 必要 |
空き家の特例を使う家や土地は、取得費加算の特例を受けていないことが条件です。どちらが有利かは、税理士に試算してもらうと確かです。
本記事は2026年10月時点の国税庁の案内にもとづいています。細かな要件は、税務署または税理士にご確認ください。
相続した実家の売却でつまずきやすい点
家の中の片づけ
家具や思い出の品が残ったままだと、内見の印象がよくありません。何を残し、何を手放すかを、相続人で早めに決めておきましょう。
査定を1社だけで決める
査定の価格は、会社によって違うことがあります。1社だけの価格で決めると、高すぎて売れ残ったり、安く売りすぎたりしかねません。机上査定と訪問査定の違いは「査定の種類」で紹介しています。
売り出しの価格
相続した家は、思い入れから高めの価格をつけたくなることがあります。売れないまま時間がたつと、固定資産税や管理の負担が続きます。複数の会社の査定を見比べ、根拠を聞いて決めましょう。
土地の境目があいまい
古い家では、隣の土地との境目がはっきりしないことがあります。買主から確認を求められることもあるので、境目の目印が残っているかを確かめておくと安心です。
目印が見つからないときは、土地家屋調査士に相談する方法があります。売り出してから慌てないよう、査定のときに会社へ伝えておきましょう。
相続人の一部と連絡がつかない
遺産分割には、相続人全員の合意が必要です。連絡がつかない相続人がいると、売却まで時間がかかります。司法書士や弁護士に早めに相談しましょう。
買ったときの書類を捨ててしまう
片づけのときに、古い契約書や領収書を処分してしまうことがあります。取得費が分からないと、売った金額の5%で計算することになり、税金が重くなりがちです。書類の入った箱は、中身を確かめてから処分しましょう。
確定申告を忘れる
特例を使うにも、確定申告が必要です。売った年の翌年に申告することを、家族で共有しておきましょう。複数の相続人で売った場合は、それぞれが申告します。
媒介契約を結ぶ前のチェックリスト
媒介契約とは、不動産会社に買主探しを頼む契約です。一般媒介や専任媒介など、いくつかの種類があります(違いは「一般媒介と専任媒介」で紹介しています)。契約の前に、次の点を確かめておきましょう。
- 相続登記が済んでいるか、済む見通しが立っているか
- 相続人全員が、売ることと売り出す価格に合意しているか
- 複数の会社の査定を見比べ、価格の根拠を聞いたか
- 家の中の片づけを、だれがいつまでに行うか決めたか
- 使えそうな特例と、その売る期限を確かめたか
- 売ったお金の分け方を、書面で決めたか
引き渡しまでの細かな準備
売買契約を結んだあとも、引き渡しまでに済ませることがあります。電気・ガス・水道の解約や、残った荷物の処分です。
固定資産税の負担を、売主と買主でどう分けるかも、売買契約で決めておくことが多い点です。郵便物の転送や、家の鍵をすべてそろえることも忘れずに確かめましょう。
売る前に用意しておきたいもの
- 亡くなった方が家や土地を買ったときの契約書や領収書
- 固定資産税の納税通知書(毎年届く書類)
- 登記事項証明書
- 相続税を申告した場合は、その申告書の控え
- 建てた年が分かる書類(空き家の特例を考える場合)
よくある質問
- 相続した実家は、登記をしないまま売れる?
- 売れません。買主に名義を移すには、先に相続登記が必要です。
- 実家を売ったら、必ず税金がかかる?
- 売った金額から取得費と譲渡費用を引いて、利益が出た場合にかかります。利益がなければかかりません。
- 親が買った値段が分からないときは?
- 売った金額の5%を取得費にできます。ただし、実際の代金が分かる書類があれば、そちらで計算するほうが有利なことがあります。
- 相続税を払った場合に使える特例は?
- 取得費加算の特例があります。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることが条件です。
- 取得費加算と3,000万円特別控除は両方使える?
- 同じ家や土地では両方は使えません。どちらか有利なほうを選びます。
- 遠方に住んでいても実家は売れる?
- 売れます。不動産会社や司法書士とのやりとりを、郵送などで進められる場合もあります。現地の立ち会いが必要な場面は、早めに確かめておきましょう。
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まとめ
- 相続した実家の売却は、相続人の確認→遺産分割→相続登記→査定→媒介契約→売買契約→確定申告の順に進む
- 売るには相続登記が必要。相続人申告登記だけでは売れない
- 取得費は亡くなった方が買ったときの代金がもと。分からなければ売った金額の5%にできる
- 相続税を納めた人は、期限内に売れば取得費加算の特例が使える
- 空き家の3,000万円特別控除とはどちらか一方。税理士に試算してもらう




