空き家の片付けと遺品整理の進め方|残す物の決め方と業者選びの確認点

相続した空き家の片付けと遺品整理を、どんな順番で進めればよいかを整理します。残す物の分け方、家電や家財の出し方、業者に頼むときに確かめたい許可や見積もりの点までまとめます。
結論
- 空き家の片付けと遺品整理は、「残す物を決める」「売る・譲る物を分ける」「捨てる物を正しく出す」の順で進めます。
- 家庭から出る不用品を回収できるのは、市区町村の委託を受けた業者か、一般廃棄物処理業の許可を持つ業者です(廃棄物処理法第7条)。
- テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機などは、家電リサイクル法に沿って引き渡します。
- 相続放棄を考えている間は、家財を処分すると相続したとみなされることがあるため、片付けは待ちましょう。
実家を相続したけれど、家の中は親が暮らしていたときのまま。押し入れにも物置にも、何十年分の物が詰まっている。そう聞くと、気が重くなるのは当然です。
しかも、遠くに住んでいれば、片付けに通える日は限られます。「業者に全部頼みたい」と思っても、どこに頼めば安心なのかが分かりません。
この記事では、空き家の片付けと遺品整理を進める順番を、場面ごとに整理します。業者に頼むときに確かめたい許可や見積もりの点も、公的な注意喚起をもとにまとめます。
空き家の片付けと遺品整理とは
言葉の違い
遺品整理とは、亡くなった方が残した物を、残す・譲る・売る・捨てるに分けて整理することです。空き家の片付けは、それに加えて、家を売る・貸す・管理するために家の中を空ける作業まで含みます。
片付けを始める前に確かめること
- 相続するか放棄するかを決めたか(放棄を考えているなら片付けを待つ)
- ほかの相続人と、片付けを進めることに合意しているか
- 家を売る・貸す・残すの方針が、おおまかに決まっているか
民法第921条では、相続人が相続財産を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。放棄の期限は相続を知った時から3か月以内です(民法第915条)。迷っている間は、戸締まりなど家を保つための行動にとどめましょう。
片付けの進め方:5つの手順
手順の全体
- 大切な物と書類を探し出す
- 残す物を相続人で決める
- 売る物・譲る物を分ける
- 捨てる物を、種類ごとに正しく出す
- 家の中を空にし、掃除と点検をする
手順1:大切な物と書類を探す
最初にするのは、捨ててはいけない物を見つけることです。遺言書、権利証、預金通帳、保険証券、年金の書類、固定資産税の通知書などは、相続の手続きに必要になります。写真や手紙など、家族にとってかけがえのない物も先に分けておきます。
手順2:残す物を相続人で決める
形見として残したい物は、相続人ごとに違います。ひとりで決めて処分すると、後で「あれは残したかった」というもめごとになりがちです。写真を撮って共有し、残す物の一覧を作ってから次へ進みましょう。
手順3:売る物・譲る物を分ける
家具や骨とう品、着物などは、買い取ってもらえる場合があります。国民生活センターは、遺品を買い取る事業者には古物商の許可が必要とし、「古物商許可証」や「行商従業者証」を確かめるよう呼びかけています。
迷う物の分け方
| 迷う物 | 考え方 |
|---|---|
| 写真・手紙・日記 | すぐに捨てず、箱にまとめて相続人で見る |
| 仏壇・位牌 | 家族で引き取り先を話し合ってから決める |
| 着物・美術品・骨とう品 | 価値が分からなければ、捨てる前に見てもらう |
| 衣類・食器・日用品 | 形見として残す物を選び、残りは処分する |
| 鍵・印鑑・カード類 | 手続きが終わるまで、まとめて保管する |
決められない物は、「保留」の箱を作って一度置いておくと、作業が止まりません。保留の箱は、期限を決めて見直しましょう。
部屋ごとに進める
家全体を一度に片付けようとすると、どこまで進んだかが分からなくなります。玄関に近い部屋から1部屋ずつ進め、終わった部屋は写真を撮って区切りにしましょう。台所の食品や冷蔵庫の中身は、傷む前に最初に片付けます。
相続人同士でもめないコツ
片付けのもめごとは、「勝手に捨てられた」「自分ばかり作業している」という不満から起きがちです。作業の前に、だれがいつ何をするか、費用をだれがどう負担するかを決めておきましょう。
- 処分する前に、写真を撮って全員に共有する
- 形見を選ぶ順番や、選ぶ期限を決める
- 業者の見積書は、相続人全員に見せる
- 買い取りで得たお金の扱いも、先に話し合う
作業に行く日の持ち物
軍手、マスク、ごみ袋、段ボール、油性ペン、懐中電灯があると作業が進みます。長く閉め切った家は、ほこりやカビがたまっていることがあります。窓を開けて換気しながら作業しましょう。
捨てる物の出し方
種類ごとの出し方
| 物の種類 | 出し方 |
|---|---|
| 日常のごみ・小さな不用品 | 市区町村の分別ルールでごみに出す |
| 家具などの大きな物 | 市区町村の粗大ごみの申込みで出す |
| テレビ・エアコン・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機 | 家電リサイクル法に沿って小売店などへ引き渡す |
| 量が多く自分で運べない物 | 市区町村の委託業者か一般廃棄物処理業の許可業者に頼む |
家電4品目は別の扱い
環境省によると、テレビ・エアコン・冷蔵庫と冷凍庫・洗濯機と衣類乾燥機は、家電リサイクル法に基づいて家電小売店などが引き取り、メーカーがリサイクルします。引き渡すときは、リサイクル料金と収集運搬料金がかかります。粗大ごみには出せないため、別に手配しましょう。
自分で出すか、頼むか
量が少なく、近くに住んでいれば、市区町村のルールで少しずつ出せます。遠方で通えない、量が多くて期限までに空けたい、という場合は業者に頼むことになります。
ポイント
- 書類と思い出の品は、最初に探して分ける
- 残す物は相続人全員で決め、一覧にしておく
- 家電4品目は家電リサイクル法の手順で出す
- 業者に頼むなら、許可と見積もりを先に確かめる
業者に頼むときの確認点
一般廃棄物の許可を確かめる
環境省は、家庭の廃棄物を回収できるのは一般廃棄物処理業の許可を持つ業者で、市区町村の許可や委託がないまま家庭ごみを集めることは認められていない、と案内しています。産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では、家庭の廃棄物は回収できません。
廃棄物処理法第7条でも、一般廃棄物の収集や運搬を業として行うには、その区域を管轄する市町村長の許可が必要とされています。許可業者は、市区町村のホームページや窓口で確かめられます。
無許可の回収業者に注意
環境省は、無許可の回収業者が集めた廃家電や粗大ごみが不法投棄された事例や、高額な料金を請求された事例があるとして、利用しないよう呼びかけています。「無料で回収」「何でも引き取る」といった宣伝だけで決めないことが大切です。
見積もりと契約で確かめること
国民生活センターには、見積書をもらわずに頼んだら作業後に高い料金を言われた、残す約束の書類まで処分された、といった相談が寄せられています。同センターは、複数の業者から見積もりを取り、作業日・作業内容・料金・支払方法・解約料を確かめるよう助言しています。
- 見積書を書面でもらい、追加料金がかかる場合を確かめる
- 作業の範囲(どの部屋の、どの物まで)をはっきりさせる
- 残す物は、作業の前に別の部屋へ移すか、目印を付ける
- 作業の日はできるだけ立ち会う
- 一般廃棄物を運ぶのはだれか、許可や委託を確かめる
業者に伝えておくこと
見積もりを頼むときは、家の広さ、物の量、家電4品目の数、作業できる日、駐車場の有無を伝えると、見積もりの差が比べやすくなります。仏壇や写真など、扱いに気を配ってほしい物があれば、最初に伝えておきましょう。
困ったときの相談先
契約や料金で困ったときは、消費生活センターに相談できます。国民生活センターは、消費者ホットライン「188」への早めの相談を呼びかけています。
場面の例と判断の分かれ道
場面の例
Cさんは、遠方の実家を売ることにしました。まず週末に通い、書類と写真を探し出しました。残したい物をきょうだいと写真で共有し、形見を分けた後、家具の一部を買い取りに出しました。
残りは量が多かったため、市役所のホームページで一般廃棄物処理業の許可業者を探し、2社から見積もりを取りました。家電4品目は別に手配し、作業の日は立ち会いました。
判断の分かれ道
- 近くに住み、時間がある:市区町村のルールで少しずつ出す
- 遠方で、通える日が少ない:残す物だけ先に決め、まとめて業者に頼む
- 家を貸す予定がある:家具を残すか、空にするかを先に決める
- 家を売る予定がある:売る会社に、片付けの範囲を相談してから進める
よくある失敗
- 書類を確かめずに処分し、権利証や通帳が見つからなくなる
- 相続人に相談せずに捨て、形見のことでもめる
- 宣伝の安さだけで業者を選び、追加料金を求められる
- 家電4品目を粗大ごみに出そうとして、出せないと分かる
片付けた後にすること
家の状態を確かめる
物がなくなると、雨漏りのしみや床の傷みなど、見えなかった所が見えてきます。片付けが終わったら、各部屋と外まわりを写真に残し、直す所を一覧にしましょう。
空き家の管理を続ける
片付けた後も、家に人が住まなければ傷みは進みます。換気や通水、見回りの頻度を決めておきましょう。方法は「空き家の管理方法」で説明しています。
貸すか売るかで、空ける範囲が変わる
家を貸す場合は、エアコンや照明などの設備を残すかどうかで、借りる人への説明が変わります。売る場合も、家具を残したまま引き渡せるかは、買う人との話し合いしだいです。片付けを始める前に、相談する会社に「どこまで空ければよいか」を聞いておくと、二度手間を防げます。
片付けの後のチェックリスト
- 書類や貴重品の取り忘れはないか
- 残す物を、相続人のだれが引き取ったかを記録したか
- 業者の領収書や作業の報告を保管したか
- 各部屋と外まわりの写真を撮ったか
- 水道・電気・ガスを、止めるか残すか決めたか
よくある質問
- 空き家の片付けは、相続の手続きの前にしてもいいですか?
- 相続放棄を考えているなら、家財の処分は待ちましょう。処分すると、相続したとみなされることがあります。
- 遺品整理の業者に許可は必要ですか?
- 家庭の不用品を廃棄物として運ぶには、市区町村の委託か一般廃棄物処理業の許可が必要です。買い取りには古物商の許可が必要です。
- 家電は粗大ごみに出せますか?
- テレビ・エアコン・冷蔵庫と冷凍庫・洗濯機と衣類乾燥機は、家電リサイクル法に沿って小売店などに引き渡します。
- 遺品整理の費用はいくらですか?
- 物の量や家の広さ、作業の内容によって違います。複数の業者から書面で見積もりを取り、追加料金の条件を比べましょう。
- 業者とのトラブルはどこに相談できますか?
- 消費生活センターに相談できます。消費者ホットライン「188」につながります。
- 遠方に住んでいて立ち会えないときはどうすればいいですか?
- 残す物を先に別の部屋へ移し、作業の範囲を書面で決めておきます。作業の前後の写真を送ってもらうよう頼むと安心です。
次に読みたい記事と相談先
片付けの後の使い道は「空き家の活用方法」、解体を考える場合は「空き家の解体と補助金」、売る場合は「相続した実家の売却の流れ」をご覧ください。地域の会社は会社一覧から、売却なら売買の会社から探せます。まとめて聞きたい方は一括相談が便利です。
まとめ
- 片付けは、書類と思い出の品を探すことから始めます
- 残す物は相続人で決め、一覧にしてから処分に進みます
- 相続放棄を考えている間は、家財を処分しないようにします
- 家電4品目は、家電リサイクル法に沿って引き渡します
- 業者に頼むなら、一般廃棄物の許可や委託と、書面の見積もりを確かめます
- 困ったときは、消費者ホットライン「188」に相談できます




