空き家の解体に補助金は使える?自治体ごとの違いと固定資産税への影響

空き家の解体には、市区町村の補助金を使える場合があります。この記事では、補助の仕組みが自治体ごとにどう違うか、申請の一般的な流れ、解体後の固定資産税の住宅用地特例への影響を説明します。
結論
- 空き家の解体の補助金は、市区町村が独自に設けている制度で、対象・条件・申請の時期は自治体ごとに違います。
- 補助を受けるには、市区町村の要綱で条件を確かめ、決められた手順で申請することが必要です。
- 解体して家がなくなると、土地は固定資産税の住宅用地特例の対象から外れ、税額が上がることがあります。解体の前に試算しておきましょう。
傷んだ実家を、このまま置いておいてよいのか。解体すれば安心だけれど、費用も税金も気になる。空き家を持つ方の多くが、ここで手が止まります。
解体には、市区町村の補助金を使える場合があります。一方で、解体すると土地の固定資産税が上がることもあります。この記事では、補助の仕組みと、税金への影響を順番に整理します。
空き家の解体に使える補助金の仕組み
解体の補助金とは
空き家の解体の補助金とは、市区町村が要綱を定め、空き家の除却(取り壊し)の費用の一部を補助する制度です。制度の名前や中身は、市区町村ごとに違います。
「除却」は、建物を取り壊して取り除くことを指す言葉です。自治体のページでは「除却補助」「解体撤去の補助」など、いろいろな名前で載っています。探すときは、いくつかの言葉で調べてみましょう。
国の事業と市区町村の制度
国土交通省は「空き家対策総合支援事業」などで、市区町村が行う空き家の除却の取り組みを支援しています。国土交通省の資料(令和5年)では、対象として次のような除却を挙げています。
- 特定空家等の除却
- 不良住宅の除却
- 跡地を地域の活性化のために計画的に使う予定がある空き家の除却
所有者が受け取る補助は、市区町村の制度を通じて出るのが基本です。そのため、まず空き家のある市区町村の制度を確かめることが出発点になります。
ポイント
- 補助金の窓口は、空き家のある市区町村
- 対象の建物、所有者の条件、補助の上限は自治体ごとに違う
- 制度がない自治体や、年度の予算に限りがある自治体もある
自治体ごとに違う点
補助の条件は、市区町村の要綱で決まります。比べるときは、次の点を確かめます。
| 確かめる点 | 要綱で確かめたいこと |
|---|---|
| 対象の建物 | 建物の傷み具合の判定があるか、特定空家等に限るか |
| 所有者の条件 | 税の滞納の有無や、共有者の同意が問われるか |
| 工事の条件 | 頼める業者の条件や、取り壊す範囲の決まりがあるか |
| 申請の時期 | 工事の契約・着工の前に申請が要るか |
| 補助の額 | 費用の割合や上限の決め方 |
| 受付の期間 | 年度ごとの受付期間や予算の枠 |
申請の前に工事の契約や着工をすると、補助を受けられない要綱があります。業者と契約する前に、必ず市区町村に相談してください。
補助金の申請の一般的な流れ
手順や書類は自治体によって違います。ここでは一般的な例を示します。
- 市区町村のホームページや窓口で、制度の有無と要綱を確かめる
- 事前の相談をし、建物の状態の確認などを受ける
- 解体業者から見積もりを取る
- 申請書に見積書や登記の書類などを添えて申請する
- 交付の決定の通知を受けてから、業者と契約して工事を始める
- 工事が終わったら、写真や領収書を添えて完了を報告する
- 確定の通知を受け、補助金が支払われる
解体のときに必要なほかの手続き
補助とは別に、解体には法律で決まった手続きがあります。
| 手続き | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建設リサイクル法の届出 | 床面積の合計80平方メートル以上の建物の解体は、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事に届け出る | 建設リサイクル法10条、同法施行令2条 |
| 建物の滅失の登記 | 建物がなくなった日から1か月以内に申請する | 不動産登記法57条 |
都道府県が条例で、届け出の対象を広げている地域もあります(建設リサイクル法9条4項)。届け出を誰がどう進めるかは、見積もりのときに業者と確かめておきましょう。
解体の前にしておきたいこと
- 家財を片付け、残す物と処分する物を家族で決める
- 土地の境界や、隣の家との境の塀などを確かめる
- 電気・ガス・水道の止め方を業者と相談する
- 近所に工事の時期を伝える
見積もりで確かめたいこと
- 見積もりに、建物の取り壊し・廃材の処分・整地のどこまでが入っているか
- 庭木・ブロック塀・物置など、建物以外の物の扱い
- 家財が残っている場合、その処分が見積もりに入っているか
- 建設リサイクル法の届出や、滅失の登記の書類を誰が用意するか
- 補助金の申請に要る書類(見積書の書式や工事の写真など)に対応できるか
見積もりは、できれば複数の業者から取って比べます。金額だけでなく、何が含まれているかをそろえて比べることが大切です。分からない項目は、契約の前に業者に聞いて書面で答えてもらいましょう。
解体後の固定資産税と住宅用地特例
住宅用地特例とは
住宅用地特例とは、人が住む家の敷地の固定資産税と都市計画税を軽くする制度です(地方税法349条の3の2、702条の3)。家を解体すると敷地は「住宅用地」でなくなり、特例が使えなくなります。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200平方メートル以下の部分) | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
| 住宅用地でない土地(更地など) | 特例なし | 特例なし |
1月1日に家があるかどうか
固定資産税と都市計画税は、その年の1月1日の状態で決まります(地方税法359条、702条の6)。解体の時期によって、特例が外れる年度が変わります。
たとえば年の途中で解体すると、次の1月1日には家がない状態で、翌年度の税額が決まります。時期を決める前に、市区町村の税務の窓口で確かめましょう。
解体しなくても特例が外れる場合
国土交通省の資料によると、使う見込みがなく取り壊す予定の家などは、特例の対象の「住宅」に当たらないとされています(総務省の通知)。
また、市区町村長から勧告を受けた特定空家等や管理不全空家等の敷地も、特例の対象から外れます。傷んだまま放っておけば、解体しなくても税の負担が増えることがあります。詳しくは管理不全空家と固定資産税をご覧ください。
解体するか残すかの判断
解体が向いている場合
- 建物の傷みが大きく、倒壊などの心配がある
- 土地として売る方が買い手が見つかりやすい
- 管理を続けるのが難しい
残して活かすことを考えたい場合
- 建物がまだ使え、貸す・住むなどの使い道がある
- 解体後の税の負担が重くなる
- 建て替えに制限がある土地かもしれない
相続した空き家を売る場合は、3,000万円の特別控除が使えることがあります。国土交通省の資料によると、令和5年度の税制改正で、買主が譲渡の年の翌年2月15日までに除却などを行う場合も対象になりました。詳しくは空き家の3,000万円特別控除をご覧ください。
例:古い実家を解体して土地で売る場合
たとえば、傷んだ実家を解体して土地で売りたいとします。まず市区町村に補助の制度と条件を聞きます。あわせて税務の窓口で、解体後の税額の目安を確かめます。売却の見通しは不動産会社に聞き、解体の時期と売り出しの時期をそろえると、税の負担の期間を短くできます。
例:遠方に住み、実家に通えないCさんの場合
たとえば、Cさんは遠方に住んでいて、地方の実家には年に数回しか行けません。建物は傷みが進み、台風のたびに近所の目が気になっています。
この場合、まず電話で市区町村に補助の制度と、事前の相談の方法を聞きます。家財の片付けと解体を、まとめて頼める業者がいるかも確かめます。現地に行く回数を減らせるよう、立ち会いが要る日をあらかじめ決めておくと進めやすくなります。
解体と補助金でよくある失敗と避け方
申請の前に業者と契約してしまった
急いで工事を決め、あとから補助金を知る例です。要綱によっては、着工の後の申請は対象になりません。解体を考え始めたら、業者に連絡する前に市区町村の窓口に相談しましょう。
共有者の同意を取らずに進めた
相続で兄弟が共有している家を、一人の判断で解体しようとする例です。建物を取り壊すには、共有者の考えをそろえておく必要があります。補助の申請で共有者の同意を求める要綱もあるので、早めに話し合いましょう。
税金の変化を考えずに解体の時期を決めた
1月1日の状態で税額が決まることを知らずに、年末に解体してしまう例です。翌年度から土地の税額が上がり、売却までの負担が重くなることがあります。時期は税務の窓口と不動産会社の話を聞いてから決めましょう。
解体したあとの土地の管理
更地も手入れが要る
家がなくなっても、土地の管理は所有者の役目です。草が伸びたり、物が捨てられたりすると、近所の迷惑になります。遠方に住む場合は、見回りや草刈りを誰に頼むかを決めておきましょう。
境界の目印が工事で動いたり、見えなくなったりすることもあります。工事の前と後で境界の様子を写真に残しておくと、売るときや隣の家と話すときに役立ちます。
売るか使うかを早めに決める
更地のまま持ち続けると、住宅用地特例が使えない分、税の負担が続きます。売る、駐車場などに使う、建て替えるなど、次の使い道を解体の前から考えておくと安心です。土地の使い道は、不動産会社に相談すると見通しを立てやすくなります。
よくある質問
- 空き家の解体補助金はどの自治体でも使えますか?
- 使えるとは限りません。制度がない自治体や、対象の建物を限っている自治体があります。空き家のある市区町村に確かめましょう。
- 解体工事を始めてから補助金を申請できますか?
- 要綱によっては、工事の契約や着工の前の申請が条件です。業者と契約する前に市区町村に相談してください。
- 空き家を解体すると固定資産税は上がりますか?
- 家がなくなると住宅用地特例が使えなくなるため、土地の税額が上がることがあります。小規模住宅用地の固定資産税の課税標準は、特例で価格の6分の1になっています。
- 解体したら登記は必要ですか?
- 建物がなくなった日から1か月以内に、建物の滅失の登記を申請する必要があります(不動産登記法57条)。
- 補助金の額はいくらですか?
- 市区町村の要綱で決まり、自治体ごとに違います。最新の額と条件は、市区町村のホームページや窓口で確かめてください。
- 解体の前に家財を片付ける必要がありますか?
- 家財が残っていると、処分の費用が別にかかることがあります。補助の対象に家財の処分が入るかは要綱によるので、見積もりの前に確かめましょう。
解体と売却を相談できる会社
解体するか、残して活かすかは、売却や賃貸の見通しと合わせて考えると判断しやすくなります。土地で売るなら売買の会社の一覧、建物を活かすならシェアハウスの会社の一覧や民泊の会社の一覧も参考になります。
迷っている方は実家は売るか貸すかや売却の税金もあわせてご覧ください。まとめて相談したい方は一括相談の説明へどうぞ。
まとめ
- 解体の補助金は市区町村の制度で、対象・条件・申請の時期は自治体ごとに違う
- 業者と契約する前に、市区町村に相談して要綱を確かめる
- 80平方メートル以上の解体の届出や、1か月以内の滅失の登記も忘れずに
- 解体すると住宅用地特例が外れ、土地の税額が上がることがある
- 勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等も、特例の対象から外れる




