管理不全空家とは?固定資産税の住宅用地特例が外れる流れと防ぐ方法

2023年12月の法改正で、放置された空き家は固定資産税の軽減を受けられなくなる場合があります。管理不全空家の意味、特例が外れるまでの流れ、防ぐ方法を整理します。
結論
- 管理不全空家とは、きちんと管理されず、放っておくと特定空家になるおそれがある空き家です。
- 市区町村の指導に従わずに勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地特例が受けられなくなります。
- 特例では、200㎡以下の部分は課税のもとになる額が6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に減らされています。
- いちばんの対策は、見回りを続けるか、貸す・売るなどで空き家のままにしないことです。
「空き家を持っていると、固定資産税が上がるらしい」。そんな話を聞いて、不安になった方もいるでしょう。
これは、2023年12月13日に施行された改正空家法のことです。改正で「管理不全空家」という区分ができ、勧告を受けると税の軽減が外れるようになりました。
ただし、空き家を持っているだけで、すぐに税金が上がるわけではありません。どんな流れで特例が外れるのか、どうすれば防げるのかを順に見ていきます。
管理不全空家とは
管理不全空家の意味
管理不全空家とは、適切に管理されておらず、そのままにすると特定空家になるおそれがある空き家です。国土交通省は「特定空家予備軍」と説明しています。
特定空家との違い
特定空家は、倒壊の危険が高いなど、周りに大きな悪影響を与えている空き家です。管理不全空家は、その一歩手前の段階にあたります。
改正前は、特定空家だけが特例を外す対象でした。改正で、その手前の管理不全空家も、勧告を受ければ対象になりました。
| 区分 | 状態のめやす | 市区町村の対応 | 住宅用地特例 |
|---|---|---|---|
| 管理されている空き家 | 見回りや手入れがされている | とくになし | 受けられる |
| 管理不全空家 | 放置すると特定空家になるおそれ | 指導、改善しなければ勧告 | 勧告を受けると外れる |
| 特定空家 | 倒壊の危険が高いなど周りへの悪影響が大きい | 助言・指導、勧告、命令など | 勧告を受けると外れる |
固定資産税の住宅用地特例とは
特例のしくみ
住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなる「住宅用地特例」を受けています。課税のもとになる額(課税標準)を減らすしくみです。
| 土地の部分 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|
| 200㎡以下の部分(小規模住宅用地) | 6分の1に減額 |
| 200㎡を超える部分(一般住宅用地) | 3分の1に減額 |
固定資産税の標準の税率は1.4%です。勧告を受けると、この軽減が受けられなくなります。その分、土地にかかる固定資産税が重くなります。
実際にいくら上がるかは、土地の評価や市区町村の扱いによって違います。お持ちの土地の場合は、市区町村の税務の窓口でご確認ください。
自分の土地で確かめる方法
毎年届く固定資産税の納税通知書には、土地ごとの課税の明細がついています。住宅用地として扱われているかは、この明細や市区町村の窓口で確かめられます。
相続した土地は、名義が変わったあとの通知書で確かめておきましょう。空き家にしてからも、毎年の通知書を見比べると変化に気づけます。
特例が外れるまでの流れ
いきなり特例が外れることはありません。国土交通省の資料では、次の順番です。
- 市区町村が、管理されていない空き家を見つける
- 持ち主に「指導」をする(直してくださいというお願い)
- 指導のあとも状態がよくならず、特定空家になるおそれが大きいと「勧告」をする
- 勧告を受けた空き家の土地は、住宅用地特例の対象から外れる
勧告は、必ず指導のあとに行われます。つまり、指導を受けた段階で直せば、特例が外れるのを防げます。
言葉の言い換え
- 指導:市区町村からの「直してください」というお願い
- 勧告:改善を正式に求めるもの。管理不全空家では、ここで住宅用地特例が外れる
- 命令:特定空家に対して行われる、より強い措置
管理不全空家の段階では、命令までは行われません。とはいえ、放置して特定空家になれば、より強い措置の対象になりえます。
直したら戻るのか
勧告が取り消されれば、要件を満たす土地は再び特例の対象になります。ただし、勧告を受けたまま状態が悪くなり特定空家になると、勧告は続き、特例も外れたままです。
持ち主が変わった場合
相続などで持ち主が変わると、市区町村は新しい持ち主に、あらためて指導や勧告を行います。相続したばかりの家でも、状態が悪ければ対象になりえます。
ポイント
- 管理不全空家は、放置すると特定空家になるおそれがある空き家
- 指導 → 勧告 の順で進み、勧告を受けると住宅用地特例が外れる
- 指導の段階で直せば、特例が外れるのを防げる
- 勧告が取り消されれば、要件を満たす土地は特例に戻る
管理不全空家になりやすい状態
判断は市区町村ごとに行われます。一般に、次のような状態は気をつけたいところです。
- 窓ガラスが割れたまま、雨もりしている
- 草木が伸び放題で、隣の家や道路にはみ出している
- 外壁や屋根の一部がはがれかけている
- ごみが放置され、においや虫が出ている
具体的な基準は、お住まいの市区町村の案内をご確認ください。本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。
近所からの苦情は早めのサイン
「草が伸びて道にはみ出している」「瓦が落ちそう」。こうした声が市区町村に届くと、空き家の状態を確かめに来ることがあります。
遠くに住んでいると、家の様子に気づきにくいものです。近所の方から連絡を受けられるようにしておくと、早めに手を打てます。
自分の空き家ならどうなるか
たとえば、築40年ほどの一戸建てを相続したAさんは、遠方に住んでいて、家にはほとんど行けていません。庭木が隣の敷地にはみ出し、雨どいも外れかけています。このまま放っておくと、指導の対象になるおそれがあります。
一方、同じような家を相続したBさんは、季節ごとに通って換気と草刈りを続けています。古い家でも、手入れが続いていれば管理不全空家と判断されにくくなります。違いを生むのは、建物の古さよりも「手が入っているかどうか」です。
管理不全空家を防ぐ方法
いちばん確かなのは、空き家のままにしないことです。方法ごとの向き不向きを比べます。
| 方法 | よいところ | 気をつけたいところ |
|---|---|---|
| 自分で見回る | 費用がかかりにくい | 遠方だと続けにくい |
| 管理を任せる | 遠くても状態を保てる | 毎月の費用がかかる |
| 貸す | 人が住むので傷みにくく、家賃も入る | 貸す前に修繕が要ることがある |
| 売る | 管理や税の負担がなくなる | 一度売ると戻らない |
見回りで確かめたいこと
- 窓を開けて換気し、雨もりやカビがないか見る
- 水道を流し、排水のにおいや詰まりを確かめる
- 庭の草木を切り、隣や道路へのはみ出しを直す
- 郵便物やちらしを片づけ、空き家と分かりにくくする
人が住んでいる家は傷みにくく、家賃で固定資産税をまかなえる場合もあります。使う予定がないなら、早めに貸す・売るを考えるのも一つの手です。
どの方法を選ぶかの分かれ道
- 近くに住んでいて通える:自分で見回り、気になる所はその都度直す
- 遠方で通えないが、いずれ使う予定がある:管理を任せ、状態を保つ
- 使う予定はないが、借り手がつきそうな場所:直して貸す
- 使う予定がなく、傷みも大きい:売るか、取り壊すかを比べる
管理を任せる前に確かめたいこと
- 1回の見回りで何をしてもらえるか(換気、通水、草刈り、写真での報告など)
- 雨もりなど、異常が見つかったときにどう連絡が来るか
- 修繕が必要になったとき、だれが手配するか
- 費用に含まれる作業と、別料金になる作業の区別
管理不全空家でよくある失敗と避け方
「たまに見に行けば大丈夫」と思い込む
見に行く間隔が空くと、その間に草木が伸びたり、雨もりが広がったりします。行けないときに見てもらえる人や会社を、先に決めておきましょう。
解体すれば片づくと考える
建物を取り壊せば空き家ではなくなります。ただし、住宅が建っていない土地は、住宅用地特例の対象外です。解体の前に、税の扱いを市区町村で確かめましょう。
相続人どうしで押し付け合う
だれが管理するかが決まらないと、手入れが止まります。相続登記で持ち主をはっきりさせ、管理の役割と費用の分け方を話し合っておくことが大切です。
相続した空き家の持ち主がまずやること
相続で空き家を受け継いだばかりの方は、次の順に確かめると安心です。
- 相続登記を済ませ、持ち主をはっきりさせる
- 固定資産税の納税通知書で、土地に住宅用地特例が使われているかを見る
- 家に行き、窓・屋根・外壁・庭の状態を確かめる
- 近所の方に、連絡先を伝えておく
- 自分で見回れない場合は、管理を任せるか、貸す・売るを考える
市区町村から通知が届いたら
指導の通知が届いたら、放っておかないことが大切です。何を直せばよいかを窓口で確かめましょう。直す時期の見通しを伝えておくと、話が進めやすくなります。
直すまでに時間がかかる場合は、その理由と予定を伝えることが大切です。黙ったままにしておくと、状態がよくならないと受け取られかねません。
自分で直すのが難しいときは、修繕や管理の会社に相談する方法もあります。売る・貸すと決めれば、その会社と一緒に手を打つこともできます。
遠方に住む持ち主ができる工夫
- 近所の方や自治会に、連絡先を伝えておく
- 鍵を預けられる親せきや会社を決めておく
- 見回りのたびに写真を撮り、前回と見比べる
- 郵便物の転送の手続きをして、ポストにたまらないようにする
- 台風や大雪のあとは、とくに早めに様子を確かめる
写真を残しておくと、市区町村に「手入れをしている」と説明するときにも役立ちます。直した箇所の記録も、日付が分かる形でまとめておきましょう。
指導の段階で手を打てば、勧告まで進まずに済みます。「通知が来たら終わり」ではなく、「通知は直すための合図」と受け止めることが大切です。
よくある質問
- 空き家を持っているだけで固定資産税は上がる?
- 上がりません。管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、住宅用地特例が外れます。
- 管理不全空家かどうかは、だれが決める?
- 市区町村が判断します。基準は市区町村の案内で確かめられます。
- 指導を受けたら、すぐ特例が外れる?
- 外れません。指導のあとも状態がよくならない場合に勧告があり、勧告で特例が外れます。
- 特例が外れたあと、元に戻せる?
- 勧告が取り消されれば、要件を満たす土地は再び対象になります。直したら市区町村に相談しましょう。
- 遠くに住んでいて管理できない場合は?
- 管理を任せる方法のほか、貸す・売るなどで空き家のままにしない方法があります。
- 空き家を解体すれば、固定資産税の心配はなくなる?
- なくなりません。住宅が建っていない土地は住宅用地特例の対象外です。解体の前に、市区町村で税の扱いを確かめましょう。
空き家をどうするか考えるときに
活用の方法は「空き家の活用方法を比べる」で、売る場合の税の特例は「空き家の3,000万円特別控除」で詳しく紹介しています。地域の会社は会社一覧から探せます。管理・賃貸・売却をまとめて比べたいときは、一括相談もご利用いただけます。
まとめ
- 管理不全空家は、放置すると特定空家になるおそれがある空き家(2023年12月13日施行の改正で新設)
- 指導に従わず勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れる
- 特例は、200㎡以下の部分が6分の1、200㎡を超える部分が3分の1の軽減
- 勧告が取り消されれば、要件を満たす土地は特例に戻る
- 見回りを続けるか、貸す・売るで空き家のままにしないことが一番の対策




