サブリースで区分マンションを貸すときの注意点|管理規約・管理費・購入時の勧誘

区分マンションの1室をサブリースに出すときは、建物全体を持つ場合とは違う確認が要ります。この記事では、管理規約、管理費と修繕積立金、購入時の勧誘など、区分マンションならではの注意点を法律と国の資料で整理します。
結論
- 区分マンションのサブリースでも、サブリース会社との借上げの契約は、転貸を目的とすれば賃貸住宅管理業法の「特定賃貸借契約」に当たり、契約前の重要事項説明などの決まりが及びます。
- 区分マンションならではの注意点は、管理規約に従う必要があること、管理費と修繕積立金はオーナーが管理組合に払うこと、共用部分の修繕はサブリース会社の手が届かないことの3つです。
- 物件の購入とセットでサブリースを勧められたときは、売買契約より先に、借上げの契約の中身とリスクを確かめます。
「ワンルームマンションを買えば、サブリースで家賃が毎月入る」。そう勧められて、区分マンションの1室を持っている方は少なくありません。
ただ、区分マンションは、建物の一部だけを持つ形です。廊下や外壁は他の持ち主と共有し、使い方は管理規約で決まっています。アパート1棟のサブリースと同じ感覚で考えると、思わぬ食い違いが起きます。
この記事では、区分マンションのサブリースに絞って、確かめる点を順に説明します。サブリースそのものの仕組みは「サブリースの仕組み」で整理しています。
区分マンションのサブリースとは
1室だけを借上げてもらう形
区分マンションのサブリースとは、分譲マンションの1室(専有部分)をサブリース会社に貸し、その会社が入居者に又貸しする形です。オーナーは入居者ではなく、サブリース会社から家賃を受け取ります。
賃貸住宅管理業法2条4項は、転貸する事業を営む目的で結ぶ賃貸住宅の賃貸借を「特定賃貸借契約」と定めています。この定義に戸数の条件はありません。区分マンションの1室でも、転貸のための借上げなら、この法律の決まりがかかわります。
言葉の言い換え
- 専有部分:自分だけが使える部屋の部分。各戸の室内
- 共用部分:廊下、階段、外壁、エレベーターなど、持ち主全員で使う部分
- 管理組合:マンションの持ち主全員でつくる、建物を管理する団体
- 管理規約:マンションの使い方や費用の決まり。持ち主と住む人が従う
- 特定賃貸借契約:サブリース会社が転貸のために借りる契約。マスターリースとも呼ぶ
1棟のサブリースと何が違うのか
アパート1棟なら、建物のすべてをオーナーが決められます。区分マンションでは、決められる範囲が専有部分に限られます。違いを表にまとめます。
| 比べる点 | アパート1棟のサブリース | 区分マンションのサブリース |
|---|---|---|
| 使い方の決まり | オーナーと会社の契約で決める | 契約に加えて管理規約に従う |
| 共用部分の修繕 | 契約で会社に任せる範囲を決められる | 管理組合が決め、修繕積立金で行う |
| 毎月の固定費 | 固定資産税、保険料など | 左に加えて管理費・修繕積立金 |
| 入居者の届出 | 建物の決まりによる | 標準管理規約は管理組合への届出を求めている |
| 空室の影響 | 部屋数で分散する | 1室なので空室か満室かの二択 |
1室だからこそサブリースを選ぶ人もいる
1室しかない物件は、空室になると家賃の入りがゼロになります。サブリースは、その振れ幅をならす方法として選ばれます。
ただし、サブリースの家賃は、ずっと同じとは限りません。借地借家法32条により、経済事情の変動などで家賃が不相当になったとき、サブリース会社は減額を求めることができます。詳しくは「サブリースの賃料減額」で説明しています。
注意点1:管理規約に従う必要がある
用途の決まりを確かめる
国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)12条は、専有部分を「専ら住宅として使用する」と定めています。標準管理規約は、マンションの規約を作ったり変えたりするときのひな型として、国が示しているものです。
サブリースで入居者に住宅として貸すこと自体は、この用途の範囲です。気をつけたいのは、サブリース会社が住宅以外の使い方をする場合です。たとえば、短期の宿泊に使う、事務所として貸すといった使い方は、規約に反するおそれがあります。
借上げの契約に「転借人の資格その他の転貸の条件」が書かれているかを見ます。重要事項説明でも説明する項目です(施行規則45条10号)。用途が規約と合っているかを、ここで確かめます。
貸すときの届出と誓約書
標準管理規約19条は、専有部分を第三者に貸すとき、次のことを区分所有者に求めています。
- 貸す相手に、規約と使用細則を守らせる
- 貸す契約に、規約と使用細則を守る旨の条項を入れる
- 契約の相手方から、規約を守る旨の誓約書を管理組合に出させる
- 借りた人から、借りた旨の届出を管理組合に出させる
サブリースでは、部屋に住むのは入居者で、オーナーが直接契約するのはサブリース会社です。誓約書と届出をだれが、どの時点で出すのかを、契約の前にサブリース会社と決めておきます。入居者が替わるたびに届出が要る規約もあるので、自分のマンションの規約で確かめます。
入居者も規約に縛られる
区分所有法46条2項により、部屋を占有する人は、建物の使い方について、持ち主と同じ義務を負います。入居者がごみ出しやペットの決まりを破れば、管理組合からオーナーに連絡が来ることがあります。
その連絡を受けたとき、だれが入居者に対応するのか。これもサブリース会社との契約で決めておく点です。
注意点2:管理費と修繕積立金はオーナーが払う
家賃から引かれる固定費を見落とさない
標準管理規約25条は、管理費と修繕積立金を、区分所有者が管理組合に納めると定めています。サブリースにしても、この支払いはオーナーに残るのが基本です。
サブリース会社から受け取る家賃だけを見ていると、手残りを多く見積もりがちです。月々の収支は、次のように考えます。
- 受け取る家賃(サブリース会社から)
- 引かれるもの:管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料、ローンの返済
- 将来の変動:家賃の改定、修繕積立金の見直し
修繕積立金は上がることがある
修繕積立金の額は、管理組合の総会などで見直されます。オーナーの一存では決まりません。サブリースの家賃が下がり、修繕積立金が上がると、手残りは両側から細ります。
契約の前に、管理組合の長期修繕計画で、積立金の見直しの予定を確かめておくと安心です。
注意点3:修繕の分担は専有部分の中だけ
サブリース会社の手が届く範囲
区分マンションでは、外壁や配管の共用部分の修繕は、管理組合が修繕積立金で行います。サブリース会社が直せるのは、専有部分の中の設備や内装に限られます。
施行規則45条5号は、維持保全の費用の分担を重要事項説明の項目にしています。区分マンションでは、次のように分けて確かめます。
| 部分 | 主に決める人 | 確かめる書類 |
|---|---|---|
| 外壁、廊下、共用の配管 | 管理組合 | 管理規約、長期修繕計画 |
| 室内の給湯器、エアコン | オーナーと会社の契約 | 重要事項説明書、契約書 |
| 壁紙、床などの内装 | オーナーと会社の契約 | 重要事項説明書、契約書 |
室内の工事は管理組合の承認が要ることも
標準管理規約17条は、共用部分や他の部屋に影響するおそれのある専有部分の工事について、理事長の承認を受けると定めています。床材の張り替えや水回りの工事が当たることがあります。
サブリース会社が工事をするとき、この申請をだれが出すのかも決めておきます。修繕の分担の考え方は「サブリースの修繕負担」で詳しく説明しています。
注意点4:購入とセットの勧誘に気をつける
売買の契約より先に借上げの中身を見る
国土交通省のサブリースのガイドラインは、不動産業者がワンルームマンションの購入を勧める際に、サブリースの契約の条件を説明する場合も、勧誘の規制の対象になると示しています。
さらに、売買の契約を結んだ後で借上げの契約のリスクに気づいても、すでに多額の借入れが生じていると注意しています。そのため、購入の勧誘の時点で、借上げの契約のリスクを知らせることを求めています。
勧誘で確かめる3つの点
- 「家賃がずっと変わらない」と聞こえる説明になっていないか
- 家賃の見直しの時期と、減額の可能性が書面で示されているか
- 解約の条件と、解約されたときに入居者がどうなるか
賃貸住宅管理業法28条は誇大な広告を、29条は重要な事実を故意に告げない勧誘を禁じています。具体例は「サブリースの誇大広告」で紹介しています。
契約前に確かめるチェックリスト
重要事項説明で見る点
賃貸住宅管理業法30条により、サブリース会社は契約の前に、書面を交付して重要事項を説明します。説明する項目は施行規則45条で14項目と決まっています。区分マンションでは、とくに次を見ます。
- 家賃の額と、その変更に関する事項(3号)
- 維持保全の実施方法と費用の分担(4号・5号)
- 契約期間と、普通借家か定期借家か(9号)
- 転貸の条件。用途が管理規約と合うか(10号)
- 契約が終わったとき、オーナーが入居者の貸主の立場を引き継ぐか(13号)
説明の全体像は「サブリースの重要事項説明」で整理しています。
マンション側で見る点
- 管理規約の用途の条文と、貸すときの届出の決まり
- 管理費と修繕積立金の額、見直しの予定
- 管理組合の総会の議事録(修繕や規約改正の動き)
よくある失敗
よくあるのは、家賃の額だけを比べて契約し、管理費などを差し引くと手残りが少なかったという失敗です。もう1つは、規約の届出を出しておらず、管理組合から指摘を受ける例です。どちらも、契約前に書類をそろえれば防げます。
売却や解約を考えるとき
サブリース付きのまま売る
区分マンションをサブリース付きのまま売ると、借上げの契約は買主に引き継がれるのが基本です。買主から見ると、家賃の見直しや解約の条件が値段に影響します。売却の注意は「サブリース付き物件の売却」と「マンション売却の注意点」で説明しています。
解約は思い通りにならないことも
普通借家の形のサブリースでは、オーナーからの解約や更新の拒絶に、借地借家法28条の正当事由が要ります。解約の考え方は「サブリースの解約」をご覧ください。
よくある質問
- 区分マンション1室でもサブリースはできますか?
- できます。転貸のための借上げなら、戸数にかかわらず特定賃貸借契約に当たり、契約前の重要事項説明などが必要です。
- サブリースにすれば管理費は会社が払いますか?
- 標準管理規約では、管理費と修繕積立金は区分所有者が管理組合に納めます。会社が負担する約束があるかは、契約書で確かめてください。
- 管理組合への届出はだれが出しますか?
- 規約によります。標準管理規約19条の誓約書と届出を、オーナーとサブリース会社のどちらが手配するか、契約前に決めておきます。
- 共用部分の修繕をサブリース会社に頼めますか?
- 共用部分の修繕は管理組合が決めて行います。サブリース会社が直せるのは、専有部分の中に限られます。
- サブリースの家賃は下がることがありますか?
- あります。借地借家法32条により、事情の変動で家賃が不相当になれば、サブリース会社は減額を求められます。
区分マンションの活用をまとめて相談する
サブリースを続けるか、管理委託に切り替えるか、売るか。区分マンションは、管理規約と固定費の兼ね合いで答えが変わります。一括相談なら、物件の条件を伝えて、複数の会社の考えを比べられます。会社を探すときは会社一覧や売却に強い会社もご覧ください。借上げの基本は「マスターリースとは」でも整理しています。
まとめ
- 区分マンション1室の借上げも、転貸目的なら特定賃貸借契約に当たる
- 管理規約の用途と、貸すときの届出・誓約書を確かめる
- 管理費と修繕積立金はオーナーが払うのが基本。手残りで比べる
- 共用部分の修繕は管理組合。会社が直せるのは専有部分の中だけ
- 購入とセットの勧誘は、売買の契約より先に借上げの中身を見る




