賃貸の消防設備点検とは?共同住宅の点検の頻度・報告・費用の考え方

アパートやマンションなどの賃貸住宅では、消防用設備等を定期に点検し、消防署に報告する義務があります。この記事では、点検の頻度と報告の期間、だれが点検できるか、入居者への知らせ方と費用の考え方を整理します。
結論
- 賃貸の消防設備点検とは、消火器や自動火災報知設備などの消防用設備等を定期に点検し、結果を消防署に報告することです。消防法17条の3の3で、建物の関係者に義務づけられています。
- 点検は、機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごとです(消防庁告示第9号)。共同住宅の報告は、3年に1回です(消防法施行規則31条の6)。
- 延べ面積が1,000平方メートル以上で消防長などが指定した共同住宅などは、消防設備士などの資格者に点検させます。それ以外は、関係者が自分で点検することもできます。
- 報告をしなかったり、うその報告をしたりすると、30万円以下の罰金または拘留の対象になります(消防法44条)。
「アパートの消防設備点検のお知らせが来たが、何のための点検なのか分からない」。「小さな建物でも、毎回業者に頼まないといけないのか」。賃貸のオーナーから、こうした声がよく寄せられます。
消防設備の点検は、入居者の命を守るための仕組みです。一方で、頻度や報告の決まりが分かりにくく、管理会社に任せきりになりがちです。
この記事では、賃貸住宅の消防設備点検の決まりを、点検の頻度、報告、点検する人、入居者への知らせ方の順に説明します。民泊として使う場合の設備は民泊の消防設備、シェアハウスへの改修はシェアハウス改修の建物・消防をご覧ください。
賃貸の消防設備点検とは
法律の決まり
消防法17条では、政令で決める建物の関係者は、消防用設備等を技術上の基準に従って設置し、維持しなければならないとしています。消防用設備等とは、消火器、自動火災報知設備、誘導灯など、火事のときに使う設備のことです。
そのうえで消防法17条の3の3では、関係者は消防用設備等を定期に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならないと定めています。
共同住宅はどこに入るか
消防法施行令の別表第一では、建物を用途ごとに分けています。アパートやマンションなどの共同住宅は、「(五)項ロ」の寄宿舎、下宿又は共同住宅に入ります。
この区分によって、報告の期間や、資格者に点検させるかどうかが変わります。
だれが「関係者」か
消防法でいう関係者は、建物の所有者、管理者、占有者のことです。賃貸住宅では、オーナーが点検と報告の責任を負う立場になります。管理会社に任せている場合も、まずは自分の建物の状況を知っておくことが大切です。
点検の頻度と報告の期間
点検の種類
消防庁告示第9号(平成16年)では、点検を2種類に分けています。
- 機器点検:設備の配置や傷み、外から見て分かる機能、簡単な操作で分かる機能を確かめる点検
- 総合点検:設備の全部か一部を動かして、全体の機能を確かめる点検
頻度と期間の表
| 項目 | 期間 | 決まり |
|---|---|---|
| 機器点検 | 6か月ごと | 消防庁告示第9号 |
| 総合点検(自動火災報知設備など) | 1年ごと | 消防庁告示第9号 |
| 消防署への報告(共同住宅など) | 3年に1回 | 消防法施行規則31条の6第3項 |
| 消防署への報告(飲食店や宿泊施設など) | 1年に1回 | 消防法施行規則31条の6第3項 |
消火器や誘導灯などは機器点検が6か月ごと、自動火災報知設備などは機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごとです。点検の結果は、維持台帳という書類の束に記録しておきます。
1階に飲食店や店舗が入っている建物は、共同住宅とは別の区分(複合用途)になり、報告が1年に1回になることがあります。建物の用途は、消防署に確かめましょう。
だれが点検できるか
資格者に点検させる建物
消防法施行令36条2項では、資格者(消防設備士または点検資格者)に点検させる建物を決めています。共同住宅では、延べ面積が1,000平方メートル以上で、消防長または消防署長が火災予防上必要と認めて指定した建物が対象です。
それ以外の建物
それ以外の建物は、消防法17条の3の3の決まりにより、関係者が自分で点検できます。消防庁は「消防用設備等点検アプリ」を公開しており、資格が無い人でも、点検と報告書の作成ができると案内しています。
アプリで点検できるのは、消火器、誘導標識、非常警報器具、特定小規模施設用自動火災報知設備で、それぞれ条件があります。条件に合わない設備は、業者に頼みます。
判断の分かれ道
- 延べ面積が1,000平方メートル以上で、消防署から指定を受けている:資格者に頼む
- 小さなアパートで、設備が消火器などに限られる:自分で点検する道もある
- 自動火災報知設備などがあり、動かす点検が要る:業者に頼むのが現実的
ポイント
- 共同住宅の消防設備は、機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごと
- 消防署への報告は、共同住宅なら3年に1回
- 大きな建物で指定を受けたものは、資格者が点検する
- 小さな建物は、消防庁のアプリで自分で点検する道もある
点検の手順と入居者への知らせ方
手順
- 建物の延べ面積と、ついている消防用設備等を確かめる
- 自分で点検するか、業者や管理会社に頼むかを決める
- 点検の日が決まったら、早めに入居者に日時を知らせる
- 点検の当日、部屋の中の感知器などを確かめる
- 不具合があれば、修理や交換の見積もりを取る
- 点検の結果を維持台帳に記録する
- 報告の時期になったら、消防署に報告書を出す
部屋の中の点検
自動火災報知設備の感知器は、部屋の中にもついていることがあります。その場合、入居者の部屋に入って確かめる必要があります。
民法606条2項では、賃貸人が建物を守るために必要な行為をしようとするとき、賃借人は拒めないとされています。とはいえ、日時は入居者の都合を聞いて決めるのが基本です。
知らせ方の工夫
- 掲示板とポストへの案内を両方使う
- 不在のときの対応(立ち会い不要か、別日か)を書いておく
- 当日の作業時間の目安を書く
費用と管理会社への任せ方
費用の考え方
点検の費用は、建物の大きさや設備の数、業者によって違います。公的な相場は無いので、複数の業者から見積もりを取ります。
不具合が見つかったときの交換費用は、点検の費用とは別にかかります。消火器や感知器には寿命があるので、交換の時期を一覧にしておくと、急な出費を防げます。
管理会社に任せるとき
管理会社に任せる場合は、管理委託契約に、点検の手配、入居者への案内、報告書の提出のどこまでが入っているかを確かめます。管理の全体は賃貸管理と自主管理の違い、管理会社の選び方は管理会社の選び方をご覧ください。
場面で考える消防設備点検
場面1:木造2階建ての小さなアパート
設備は各階の消火器だけという例です。消防庁のアプリで自分で点検し、3年ごとに報告書を出す方法を選べます。消火器の製造年も、あわせて確かめます。
場面2:自動火災報知設備のあるマンション
感知器が各部屋にある例です。業者に頼み、入居者に日時を知らせて部屋に入れてもらいます。不在の部屋は別日に回します。
よくある失敗
- 点検はしているが、消防署への報告を出していない
- 入居者への案内が遅れ、部屋に入れない住戸が多く残る
- 不具合の指摘を放置し、次の点検でも同じ指摘を受ける
- 維持台帳を作っておらず、過去の記録が見つからない
点検で見つかりやすい不具合と日ごろの備え
よく指摘される点
- 消火器の置き場所に物が置かれ、すぐに取り出せない
- 消火器の製造年が古く、本体が傷んでいる
- 誘導灯の明かりが切れている
- 感知器の上に物が置かれたり、覆われたりしている
日ごろの備え
点検の日を待たずに、共用部を見回るときに消火器や誘導灯を目で確かめておくと、指摘が減ります。入居者には、感知器を覆わないよう入居時に伝えておきます。
消防署からの命令
消防法17条の4では、消防長または消防署長は、消防用設備等が基準どおりに設置・維持されていないと認めるとき、必要な措置をとるよう命じられるとしています。指摘を受けたら、放っておかずに直しましょう。
報告書の出し方
消防庁のアプリでは、点検の結果を法令の様式に反映したPDFを作れます。そのPDFは、電子メール、郵送、直接持参などで消防署に出すと案内されています。出し方は、建物のある地域の消防署に確かめておきます。
アプリで点検できる消火器の条件
消防庁のリーフレットでは、アプリで点検できる消火器は、内部と機能の点検が要らないものに限るとしています。加圧式は製造年から3年以内、蓄圧式は製造年から5年以内のものです。それより古い消火器は、業者に頼むか交換を考えます。
消防設備点検で迷いやすい点
消防設備点検と防火対象物点検は別
消防用設備等の点検は、設備が動くかを確かめるものです。これとは別に、建物の防火の管理の状況を確かめる防火対象物点検という制度があり、決まった用途や規模の建物が対象になります。どちらが自分の建物に関わるかは、消防署に確かめましょう。
用途が変わったとき
部屋の一部を民泊やシェアハウスにするなど、使い方を変えると、建物の区分が変わることがあります。区分が変わると、付けるべき設備や報告の期間も変わります。使い方を変える前に、消防署に相談しておくと安心です。
記録の残し方
- 点検の日、点検した人、結果を一冊にまとめる
- 消防署に出した報告書の控えを残す
- 修理や交換をした設備と日付を書いておく
点検の前に確かめるチェックリスト
- 建物の延べ面積が分かっている
- ついている消防用設備等の種類と数が分かっている
- 前の点検の日と、前の報告の日が分かっている
- 入居者への案内の文面を用意した
- 部屋に入るときの立ち会いの方法を決めた
チェックリストを管理会社や業者と共有しておくと、毎回の点検が同じ手順で進みます。
言葉の言い換え
- 消防用設備等:消火器や感知器など、火事のときに使う設備
- 関係者:建物の所有者、管理者、占有者のこと(消防法2条)
- 維持台帳:点検や工事の記録を一冊にまとめた書類
- 延べ面積:建物の各階の床面積を足した広さ
よくある質問
- 賃貸アパートの消防設備点検は義務ですか?
- 義務です。消防法17条の3の3で、定期に点検し、消防署に報告するよう決まっています。
- 点検の頻度はどのくらいですか?
- 機器点検が6か月ごと、総合点検が1年ごとです。共同住宅の報告は3年に1回です。
- 消防設備点検は自分でできますか?
- 資格者に点検させる建物に当たらなければ、自分で点検できます。消防庁のアプリも使えます。
- 入居者は部屋の点検を断れますか?
- 民法606条2項で、建物を守るための行為は拒めないとされています。ただし日時は入居者と相談して決めます。
- 報告しないとどうなりますか?
- 報告をしない、またはうその報告をすると、消防法44条で30万円以下の罰金または拘留の対象になります。
消防設備点検の相談先
点検を含めて管理を任せたいときは、会社一覧から管理会社を探せます。管理会社を替えたいときは管理会社の変更、設備の故障の負担は設備故障の修繕負担、火事への備えは入居者の火災保険をご覧ください。複数の会社に聞きたいときは一括相談の使い方が使えます。
まとめ
- 賃貸住宅の消防設備は、消防法17条の3の3で点検と報告が義務
- 機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと
- 共同住宅の消防署への報告は3年に1回
- 大きな建物で指定を受けたものは資格者が点検し、それ以外は自分でもできる
- 入居者への案内と、維持台帳への記録を忘れない




