空き家を遠方から管理するには?離れて住む持ち主の工夫と委託先の選び方

実家が遠くて通えない持ち主が、空き家の管理を続けるための工夫と、管理を人に任せるときの確かめ方を整理します。地元の窓口や近所との連絡の取り方、委託の契約で見ておく点もまとめます。
結論
- 遠方の空き家の管理は、「自分で通う」だけに頼らず、見回りを任せる先・近所の連絡役・記録の残し方の3つを決めて仕組みにすることが基本です。
- 空家等対策の推進に関する特別措置法の第5条は、空き家の所有者や管理者に、周りの生活環境に悪い影響を与えないよう適切な管理に努めることを求めています。遠くに住んでいても、この役目は変わりません。
- 人に任せる場合は、何を・どのくらいの頻度で・どう報告してもらうかを契約書で決め、市町村の空き家の窓口にも相談先を聞いておきます。
「実家は新幹線で数時間。年に1回帰れるかどうか」。「台風のニュースを見るたびに、屋根が飛んでいないか気になる」。親の家を引き継いだものの、遠くに住んでいる方からよく聞く悩みです。
空き家の管理方法そのものは、近くに住んでいても遠くに住んでいても大きく変わりません。違うのは、気になったときにすぐ見に行けないことです。だからこそ、行けない前提で回る仕組みを先に作っておく必要があります。
この記事では、遠方に住む持ち主が空き家の管理を続けるための工夫と、管理を人に任せるときの確かめ方を整理します。点検の項目や頻度の決め方は空き家の管理方法で詳しく書いているので、ここでは「離れていること」に絞って説明します。
遠方の空き家の管理で困ること
行けないことで起きる3つの問題
遠方の空き家では、次の3つが重なりやすくなります。
- 傷みや異変に気づくのが遅れる(雨漏り、窓の割れ、動物の住みつき)
- 近所の方が困っていても、連絡が持ち主まで届かない
- 台風や大雪のあと、すぐに様子を確かめられない
どれも「見に行けない」ことから生まれる問題です。逆に言えば、だれかが代わりに見て、持ち主に伝わる道筋があれば、多くは小さいうちに手を打てます。
放っておいたときの行き先
空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家法)では、管理が行き届かず、そのままでは危険な状態になるおそれがある空き家を「管理不全空家等」、危険や衛生上の問題が大きいものを「特定空家等」と呼びます。市町村長は、所有者に指導や勧告をすることができます(第13条・第22条)。
勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地の特例から外れることが地方税法第349条の3の2に書かれています。くわしくは管理不全空家と固定資産税をご覧ください。遠くに住んでいることは、管理しなくてよい理由にはなりません。
遠方から空き家を管理する方法は3つ
3つの方法の比べ方
遠方の持ち主が選べる方法は、大きく分けて次の3つです。1つに決める必要はなく、組み合わせることもできます。
| 方法 | 向いている人 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自分で定期的に通う | 年に数回は帰省する予定がある人 | 天候が荒れたあとにすぐ行けない |
| 親族や知人に頼む | 近くに頼める親族がいる人 | 頼む範囲とお礼の扱いを先に決める |
| 管理の会社などに委託する | 通うのが難しい人、急な対応も任せたい人 | 契約で作業内容と報告の方法を決める |
管理を任せるとは
管理を任せるとは、見回りや換気、郵便物の確認などの作業を、持ち主に代わって他の人に行ってもらうことです。民法では、事務を頼まれた人(受任者)は、頼まれた内容に従い、善良な管理者の注意をもって処理する義務を負うと定めています(第644条)。また、頼んだ人が求めればいつでも状況を報告する義務があります(第645条)。
組み合わせの例
例えば、月1回の見回りは会社に任せ、近所の親戚には「何かあったら電話をもらう」役だけをお願いする。お盆と年末の帰省の時期には、自分で室内を片付ける。このように役割を分けると、だれか一人に負担が偏りません。
遠方の持ち主ができる管理の工夫
行く前にできる準備
- 家の鍵の数と、だれが持っているかを一覧にする
- 電気・水道・ガスの契約を、使い続けるか止めるかを決める
- 郵便物を持ち主の住所に届くよう手続きをする
- 近所の方と、自治会の連絡先を控えておく
- 家の外観と室内の写真を撮って、今の状態を残しておく
最初に家の状態を写真で残しておくと、あとで傷みが進んだかどうかを比べられます。委託先から届く報告写真と見比べる元にもなります。
近所との連絡の取り方
遠くの持ち主にとって、近所の方は一番早く異変に気づく人です。帰省のときにあいさつをし、持ち主の電話番号を伝えておくと、草木が伸びたときや窓が割れたときに連絡が来やすくなります。
草木が隣の敷地にはみ出すと、隣の方の困りごとになります。民法第233条の改正で、隣の土地の所有者が枝を切り取れる場面が定められました。くわしくは空き家の草木と近隣トラブルで説明しています。
記録を一か所にまとめる
- 見回りの日付と、だれが行ったか
- 気づいたこと(雨漏りの跡、カビ、動物のふんなど)
- 直した内容と費用
- 近所から受けた連絡
紙でも表計算でもかまいません。家族で共有できる形にしておくと、相続人が複数いる場合にも話が進めやすくなります。
ポイント
- 行けない前提で、見回り・連絡役・記録の3つを決める
- 近所の方には持ち主の連絡先を伝えておく
- 最初に写真で今の状態を残し、報告と見比べる
- 委託と自分の帰省を組み合わせて負担を分ける
管理を委託するときの確かめ方
契約前に確かめたいこと
管理の委託は、会社によって作業の中身も費用も違います。料金の相場は家の大きさや場所、頼む作業で変わるため、いくつかの会社から内容を聞いて比べるのが確実です。
| 確かめる点 | 聞き方の例 |
|---|---|
| 見回りの頻度 | 月に何回来てもらえますか |
| 室内まで入るか | 外から見るだけですか、室内の換気や通水もしますか |
| 報告の方法 | 写真付きの報告は、いつ、どの形で届きますか |
| 災害のあと | 台風や地震のあと、臨時で見てもらえますか |
| 鍵の預かり | 鍵はどう保管しますか、紛失のときはどうなりますか |
| 修繕が必要なとき | 見つけた傷みは、勝手に直さず先に連絡をもらえますか |
契約書で見ておく点
「見回り」とだけ書かれた契約では、外から見るだけなのか、室内に入るのかが分かりません。作業の一覧と報告の形を、契約書や別紙に書いてもらいましょう。
修繕や草刈りを追加で頼むときの費用の決め方も、先に確かめておきます。連絡なしに工事が進むと、あとで費用の行き違いが起きやすくなります。
市町村の窓口と支援法人
空家法の改正で、市町村長が「空家等管理活用支援法人」を指定できる仕組みができました(第23条)。支援法人の業務には、所有者への情報提供や相談のほか、委託を受けて空き家の状態を定期的に確かめることも含まれています(第24条)。
指定しているかどうかは市町村ごとに違います。家がある市町村の空き家の担当窓口に、支援法人や相談先があるかを聞いてみてください。
場面の例で考える
例:実家まで片道5時間、帰省は年2回
母が施設に入り、実家が空いた方の例です。帰省はお盆と年末の年2回だけ。春先に近所の方から「雨どいが外れている」と電話があり、初めて傷みに気づきました。
この方は、月1回の見回りと写真付きの報告を会社に頼むことにしました。近所の方には引き続き連絡役をお願いし、帰省のときに菓子折りを持ってあいさつに行くようにしました。
例:兄弟で相続し、だれも近くにいない
兄弟2人がそれぞれ別の都市に住み、実家を共有で相続した例です。管理の費用をどちらが出すかが決まらず、見回りが止まってしまいました。
このような場合は、まず管理の費用の分け方と、委託先との窓口になる人を決めることが先です。相続の手続きがまだなら、相続した空き家で最初にやることも確かめておくと安心です。
自分で通うか、任せるかの分かれ道
自分で通う形が合う人
- 年に数回は帰省する予定があり、そのついでに家に寄れる
- 近くに頼める親族がいて、急なときに様子を見てもらえる
- 家が比較的新しく、雨漏りや設備の傷みが少ない
任せる形が合う人
- 帰省が年1回以下で、次にいつ行けるか分からない
- 家が古く、台風や大雪のあとに見ておきたい箇所が多い
- 相続人が複数いて、だれが通うかを決めにくい
迷ったときは、まず1年間の帰省の予定を書き出してみます。行ける回数が少ない月に見回りを頼む、という部分的な任せ方から始めることもできます。
言葉の言い換え
- 通水:水道の蛇口を開けて水を流し、排水口のにおいや詰まりを防ぐこと
- 管理不全空家等:このままでは危ない状態になるおそれがある空き家
- 受任者:仕事を頼まれた人。管理の委託では、委託先の会社などのこと
台風や地震のあとの動き方
- 家がある地域の被害の情報を、市町村の発表などで確かめる
- 委託先や近所の方に、外から見て分かる被害がないか聞く
- 写真を送ってもらい、屋根・窓・塀の様子を確かめる
- 修理が必要なら、見積もりを取ってから頼む
あらかじめ「災害のあとはだれに連絡するか」を決めておくと、離れていても慌てずに動けます。
遠方の管理でよくある失敗
鍵の所在が分からなくなる
合鍵を親族、委託先、近所の方に渡したまま、だれが持っているか分からなくなることがあります。鍵の一覧を作り、渡した相手と日付を書いておきます。
郵便物がたまって空き家だと分かる
郵便受けにチラシがあふれていると、人が住んでいないことが外から分かります。防犯の面でも、郵便物の扱いは早めに決めておきましょう。防犯の考え方は空き家の防犯対策にまとめています。
管理を続けるかどうかを決めないまま
管理を任せると、毎月の費用がかかり続けます。何年も使う予定がない家なら、貸す・売るなどの出口も並べて考える時期です。比べ方は空き家の活用方法の比較で整理しています。
遠方の管理のチェックリスト
- 鍵の数と持っている人を一覧にした
- 電気・水道・ガスを使うか止めるかを決めた
- 近所の方に連絡先を伝えた
- 見回りの頻度と報告の方法を決めた
- 台風や地震のあとの確認方法を決めた
- 管理を続ける期間と、その後の方針を家族で話した
よくある質問
- 遠方に住んでいても、空き家の管理の責任はありますか?
- あります。空家法第5条は、所有者や管理者に、周りに悪い影響を与えないよう適切な管理に努めることを求めています。住んでいる場所による違いはありません。
- 管理の委託はいくらかかりますか?
- 料金は会社や頼む作業、家の大きさで違います。見回りの頻度や室内作業の有無をそろえて、いくつかの会社に聞いて比べてください。
- 親族に管理を頼むときに気をつけることは?
- 頼む範囲、交通費やお礼の扱い、異変があったときの連絡方法を先に話しておきます。口約束だけにせず、メモにして共有すると行き違いが減ります。
- どこに相談すればよいか分かりません。
- まず家がある市町村の空き家の担当窓口に聞くのが近道です。支援法人を指定している市町村では、管理や活用の相談先を案内してもらえることがあります。
- 管理を続けるか、手放すか迷っています。
- 使う予定、毎年の費用、家の傷み具合を並べて考えます。貸す・売るといった選択肢も同時に聞いておくと、比べやすくなります。
管理と活用の相談先
遠方の空き家は、管理を続けながら、貸す・売るといった次の手も考えておくと負担が軽くなります。空き家の売却の流れや実家は売るか貸すかもあわせてご覧ください。地域の会社は会社一覧から探せます。管理と活用の相談をまとめてしたい方は、一括相談の使い方をご覧ください。
まとめ
- 遠方の空き家は、行けない前提で管理の仕組みを作る
- 空家法第5条により、遠くに住んでいても適切な管理に努める役目がある
- 見回りの委託、近所の連絡役、記録の3つを決める
- 委託の契約では、作業の一覧・報告の方法・修繕の連絡を確かめる
- 市町村の窓口で、支援法人や相談先があるかを聞く
- 管理を続ける期間を決め、貸す・売るなどの出口も並べて考える




