シェアハウスの用途変更とは?200㎡の基準・確認申請・消防設備の確認点

一戸建てをシェアハウスにするとき、建築基準法では寄宿舎への用途変更になります。確認申請が要る広さの基準、建物と消防で確かめたいこと、工事の前に相談する順番をまとめました。
結論
- シェアハウスの用途変更とは、一戸建て住宅などを、建築基準法上の「寄宿舎」として使えるようにすることです。
- 寄宿舎に使う部分の床面積が200㎡を超えると確認申請が必要で、200㎡以下なら確認申請は要りません。
- 確認申請が要らなくても、建築基準法と消防法の基準は守る必要があります。
- 自治体の条例で基準が上乗せされることがあるため、工事の前に建築指導の窓口と消防署へ相談します。
空き家の一戸建てをシェアハウスにしたいと考えたとき、まず気になるのは「どんな工事が要るのか」「役所の手続きは何か」ではないでしょうか。
内装をきれいにするだけでは足りません。建物の使い方が「家族の住まい」から「他人どうしの共同生活」に変わるため、求められる安全の基準も変わります。
この記事では、建築基準法・消防法の条文と国土交通省の資料をもとに、シェアハウスの用途変更で確かめたいことを順番に整理します。
シェアハウスの用途変更とは
シェアハウスの用途変更とは、住宅として建てた建物を、寄宿舎として使えるように法律上の用途を変えることです。国土交通省のシェアハウスガイドブックでは、空き家などをシェアハウスとして使う場合、寄宿舎への用途変更が必要とされています。
なぜ「寄宿舎」になるのか
建築基準法は、学校、病院、共同住宅、寄宿舎などを「特殊建築物」として、一般の住宅より厳しい基準を定めています。他人どうしが寝泊まりする建物は、火事のときの避難などで配慮が要るためです。シェアハウスは、この寄宿舎として扱われます。
用途変更で出てくる言葉
- 確認申請:工事の計画が建築基準法に合っているか、工事の前に確かめてもらう手続き
- 特定行政庁:建築の確認や許可などを行う自治体
- 採光:部屋に日の光を取り入れること。寄宿舎の居室には、そのための窓などが要る
- 界壁:部屋と部屋の間を区切る壁
- 防火対象物:消防法で、火災を防ぐ決まりの対象になる建物
確認申請が要るかは「200㎡」で決まる
建築基準法では、特殊建築物のうち、その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡を超えるものが建築確認の対象です。そして、建物の用途を変えてこの特殊建築物にする場合にも、確認の規定が準用されます。
この基準は、令和元年6月25日に全面施行された法改正で、100㎡から200㎡に引き上げられました。国土交通省の通知でも、200㎡以下の特殊建築物への用途変更は確認申請が不要になると説明されています。
| 寄宿舎に使う部分の床面積 | 確認申請 | 建築基準法・消防法の基準 |
|---|---|---|
| 200㎡を超える | 必要 | 守る必要がある |
| 200㎡以下 | 不要 | 守る必要がある |
確認申請が要らないことは、基準を守らなくてよいという意味ではありません。工事の内容は、200㎡以下でも寄宿舎の基準に合わせて考えます。
3階建ての場合は定期報告にも注意
3階建て以上の建物などでは、建築基準法の「定期報告」の対象になる場合があります。定期報告とは、建物の状態を定期的に調べて特定行政庁(建築の許可などを行う自治体)に報告する仕組みです。対象になるかどうかは、建物の用途・規模と自治体の指定によって決まります。転用を考えた段階で、窓口で確かめましょう。
建物で確かめたいこと
ガイドブックでは、寄宿舎への用途変更で必要になる建築基準法関係の工事の例として、非常用照明装置の設置を挙げています。あわせて、居住人数に合った数のトイレ・浴室・洗面設備・洗濯室を設け、1人あたりの居室の広さを適切にすることも必要とされています。
建築基準法では、寄宿舎の居室には採光のための窓などを設けることも決められています。部屋を増やすと、窓のない部屋や光が足りない部屋が出やすいため注意が要ります。
ガイドブックの戸建て事例では、次のような工事が行われています。
- 耐震補強
- 台所、洗面所、トイレ、浴室などの水回りの入れ替え
- 階段の踏面(足をのせる部分)を寄宿舎の基準に合わせて改善
- 部屋を5部屋から7部屋にし、新しい間仕切り壁に遮音材を入れる
- 不足した採光を補うため、腰高窓を掃き出し窓に変更
- 部屋の間の壁(界壁)に石こうボードを二重に張る
見落としやすい点
部屋数を増やす計画では、次の点が見落とされがちです。
- 窓のない部屋をつくると、採光の基準を満たせないことがある
- 寄宿舎の寝室を地階に設ける場合は、壁と床の防湿などの措置が建築基準法で求められる
- 入居人数が増えるほど、トイレや浴室、洗面設備の数も増やす必要がある
- 1人あたりの居室を狭くしすぎると、ガイドブックがいう「適切な広さ」から外れる
部屋数は収入に直結しますが、基準を満たせない計画は後から直すと費用がかさみます。部屋割りは、建築士と運営会社の両方に見てもらってから決めましょう。
たとえば、2階建ての空き家を転用するCさんの場合
たとえば、2階建ての空き家を5部屋のシェアハウスにしたいCさんがいるとします。寄宿舎に使う部分は200㎡より小さいため、確認申請は要りません。
それでもCさんは、建築士に建物を見てもらいました。すると、北側の部屋に採光の窓が足りないこと、トイレを増やす必要があることが分かりました。工事の前に分かったため、部屋割りを変えて対応できました。
消防で確かめたいこと
消防法施行令では、寄宿舎は「別表第一(5)項ロ」という区分の防火対象物にあたります。シェアハウスが寄宿舎として扱われる場合、この区分の基準で設備を考えます。
| 設備 | 寄宿舎で必要になる主な条件(消防法施行令) |
|---|---|
| 消火器など | 延べ面積150㎡以上 |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積500㎡以上 |
このほか、地階や窓のない階、3階以上の階などには、階ごとの条件で別の決まりがあります。ガイドブックの事例では、誘導灯、煙探知機、消火器を設けています。どの設備が要るかは建物の広さや構造で変わるため、計画の段階で管轄の消防署に相談します。
ガイドブックは、認知症高齢者グループホームや障害者グループホームなどに当たる場合には、スプリンクラーの設置が必要になる場合があることにも触れています。
ポイント
- シェアハウスは建築基準法でも消防法でも寄宿舎として扱われる
- 確認申請は、寄宿舎部分が200㎡を超えると必要
- 200㎡以下でも、非常用照明、採光、水回りの数などの基準は守る
- 消火器は延べ150㎡以上、自動火災報知設備は延べ500㎡以上が目安の条件
用途変更を進めるときの分かれ道
- 寄宿舎に使う部分が200㎡を超えるなら、確認申請を前提に建築士へ依頼する
- 200㎡以下なら、確認申請は要らないが、基準に合っているかを建築士に確かめてもらう
- 3階建てや地階があるなら、避難・防火の決まりと定期報告の対象かを先に確かめる
- 建物の一部だけをシェアハウスにするなら、寄宿舎に使う部分の床面積で考える
自治体の条例で違う点
国の法律に加えて、自治体が条例で寄宿舎に独自の基準を上乗せしていることがあります。例えば、避難のための通路や空地、敷地が道路に接する長さなどです。同じ広さの一戸建てでも、どの市区町村にあるかで必要な工事が変わることがあります。
工事の見積もりを取る前に、建築士と一緒に自治体の建築指導の窓口と消防署へ相談するのが確実です。
ガイドブックも、寄宿舎への用途変更では、建築士、自治体、管轄の消防署、シェアハウスの運営会社、金融機関などの専門家と相談しながら進めることが望ましいとしています。工事の内容が決まらないと費用も資金の手当ても決まらないため、相談の順番が大切です。
シェアハウスの用途変更の進め方
- 建築士に建物を見てもらい、寄宿舎として使えるか、床面積が200㎡を超えるかを確かめる
- 自治体の建築指導の窓口と消防署に相談し、条例を含めて必要な工事と手続きを確認する
- 運営会社と、部屋数、水回りの数、共用部分の広さを詰める
- 200㎡を超える場合は確認申請をし、確認を受けてから工事を始める
- 工事が終わったら、工事完了の届出や防火対象物使用開始届などをすませる
- 設備が動くことを確かめてから、入居者の募集を始める
確認申請をして用途変更をした場合、工事が終わったら建築主事などに届け出ることが建築基準法で決められています。消防への届出の名前や期限は自治体の条例で決まるため、消防署で確かめましょう。
用途変更でよくある失敗と避け方
「200㎡以下だから何もしなくてよい」と考える
確認申請が要らないのは、手続きの話です。採光や非常用照明、消防設備などの基準は残るため、内装の工事と一緒に確かめましょう。
見積もりを先に取ってしまう
必要な工事が決まらないうちの見積もりは、後で増えやすくなります。自治体と消防署への相談をすませてから、見積もりを取る順番にします。
消防への届出を忘れる
入居者を募集する前に、消防への届出がすんでいるかを確かめます。届出の名前や期限は自治体で違うため、早めに消防署で聞いておきます。
相談の前にそろえる資料のチェックリスト
- 建物の図面(なければ、部屋の数と広さのメモ)
- 建てたときの確認済証や検査済証(手元にあれば)
- 増築や改修をした記録
- 寄宿舎に使う予定の部分の床面積
- 部屋割りの案と、入居人数の想定
- トイレ・浴室・洗面所・台所の数と場所
運営が始まってからの点検
確認申請が要らなかった建物でも、寄宿舎としての基準を守り続ける必要があります。非常用照明や消火器、火災報知の設備は、入居者が入れ替わる時期などに合わせて、きちんと動くかを確かめましょう。消防用設備の点検と報告の決まりもあるため、内容は消防署で確認しておくと安心です。
よくある質問
- 200㎡以下なら、用途変更の手続きは何も要りませんか?
- 確認申請は要りませんが、寄宿舎としての建築基準法と消防法の基準は守る必要があります。消防への届出などは別に必要です。
- 用途変更の確認申請は誰に頼みますか?
- 図面の作成や基準の確認が要るため、建築士に相談するのが確実です。シェアハウスの運営会社が建築士と連携している場合もあります。
- シェアハウスに消火器は必要ですか?
- 寄宿舎の区分では、延べ面積150㎡以上で消火器などが必要です。150㎡未満でも、地階や3階以上の階などは条件によって必要になります。
- 用途変更の工事費はいくらかかりますか?
- 建物の状態と必要な工事によって大きく違います。建築士に建物を見てもらってから、見積もりを取りましょう。
- 3階建ての一戸建てでもシェアハウスにできますか?
- できる場合はありますが、避難や防火の基準、定期報告の対象かどうかなど確かめる点が増えます。早めに自治体と消防署へ相談しましょう。
- 確認申請が要らない場合、基準に合っているかは誰が確かめますか?
- 工事の前に役所が確かめる手続きがないため、オーナー側で確かめる必要があります。建築士に頼んで、寄宿舎の基準に合っているかを見てもらうのが確実です。
転用の全体像は「シェアハウスへの転用とは?」、任せる会社の比べ方は「シェアハウス運営会社の選び方」をご覧ください。シェアハウスを扱う会社はシェアハウスの不動産会社一覧で探せます。
まとめ
- シェアハウスの用途変更は、住宅を寄宿舎として使えるようにすること
- 寄宿舎部分が200㎡を超えると確認申請が必要。200㎡以下でも基準は守る
- 非常用照明、採光、階段、界壁、水回りの数を確かめる
- 消防では、消火器は延べ150㎡以上、自動火災報知設備は延べ500㎡以上が条件
- 条例の上乗せがあるため、工事の前に自治体と消防署へ相談する




