シェアハウスへの転用とは?向く物件・家賃の仕組み・始める前の5つの確認

一戸建てや古いアパートをシェアハウスに転用すると、部屋ごとに貸せるため収入の形が変わります。向く物件の条件、家賃の仕組み、転用前に確かめたい5つのことを順番に解説します。
結論
- シェアハウスへの転用とは、一戸建てなどを、部屋ごとに複数の人へ貸す住まいに変えることです。
- 部屋ごとに貸すため、1世帯に貸すより合計の家賃が増えたり、空室の影響が分かれたりすることがあります。
- 建築基準法では「寄宿舎」への用途変更として扱われ、建物と消防の基準に合わせる改修が要ります。
- 収入と手間は、自分で運営するか、運営会社に任せるかで大きく変わります。
部屋数の多い一戸建てを相続したものの、家族向けに貸そうとすると借り手が見つからない。家賃を下げるしかないのか、と悩むオーナーは少なくありません。
広い家は、1世帯に貸すと家賃は1つ分です。一方で、部屋ごとに貸すシェアハウスなら、複数の入居者から家賃を受け取れます。ただし、建物の決まりや運営の手間など、普通の賃貸とは違う点もあります。
この記事では、シェアハウスへの転用で何が変わるのか、どんな物件が向くのか、始める前に何を確かめるかを、国土交通省のガイドブックと法律をもとに整理します。
シェアハウスへの転用とは
シェアハウスは、他人どうしが1つの建物に住み、台所や浴室、トイレなどを共用する賃貸住宅です。国土交通省のシェアハウスガイドブックでは、共用部分の使い方や清掃・ごみ出しなどの生活ルールが設けられていることが多い点を特徴として挙げています。
転用とは、今ある建物の使い方を変えて、シェアハウスとして貸せるようにすることです。空き家の一戸建てのほか、空いたアパートや社員寮などが対象になります。
1世帯に貸す場合との違い
| 比べる点 | 1世帯に貸す(一般の賃貸) | シェアハウスに転用 |
|---|---|---|
| 契約の相手 | 1世帯と1つの契約 | 入居者1人ずつと契約 |
| 家賃 | 1つ分 | 部屋の数だけ受け取れる |
| 空室の影響 | 空くと家賃がゼロになる | 1部屋空いても残りの家賃は入る |
| 共用部分 | なし | 台所・浴室などを共用 |
| 運営の手間 | 比較的少ない | 清掃・ルールづくり・入居者対応が要る |
| 建築基準法の扱い | 住宅 | 寄宿舎 |
シェアハウスに転用すると家賃が変わる仕組み
合計の家賃で考える
5部屋ある家を1世帯に貸すと、家賃は1つ分です。シェアハウスなら5人に貸せるため、1人あたりの家賃が抑えめでも、合計では1世帯に貸すより多くなることがあります。
運営会社の実例では、築50年を超える物件をシェアハウスにして、家賃が1.4倍になったものがあります。これは個別の物件条件によるもので、同じ結果を約束するものではありません。
空室の影響が分かれる
ガイドブックの事例では、一棟貸しだと入居の有無で賃料収入がゼロか100%になるため、より収入が安定するシェアハウスへの転用を提案したと紹介されています。1部屋が空いても、ほかの部屋の家賃は入り続けます。
費用も増えることを忘れない
シェアハウスでは、共用部分の消耗品や水道光熱費を「共益費」としてまとめて受け取るのが一般的だと、ガイドブックは説明しています。その分、光熱費や消耗品の支払いはオーナー側か運営会社側で持つことになります。改修費や運営会社への委託費もかかります。
家賃の水準や収支は、地域や建物、運営の方式によって違います。ガイドブックも、事業計画は運営会社の助言を受けて慎重に作ることが大切だとしています。
シェアハウスへの転用に向く物件
次のような物件は、転用を検討する価値があります。
- 部屋数が4部屋以上ある一戸建て
- 駅から歩ける距離にあり、単身者の需要がある地域
- 一般の賃貸では、家賃を下げないと借り手がつかない
- 台所や浴室など、共用できる広さがある
反対に、次のような場合は慎重に考えます。
- 大きな耐震補強や水回りの増設が必要で、改修費が重い
- 自治体の条例で、敷地や通路について上乗せの基準がある
- 単身の入居者の需要が見込みにくい地域
転用するか迷ったときの分かれ道
迷ったときは、次の条件で考えると整理しやすくなります。
- 家族向けでも借り手が見つかる地域なら、まずは一般の賃貸で募集してみる
- 家族向けの需要が弱く、単身者の需要がある地域なら、シェアハウスへの転用と比べる
- 改修費が重く、回収の見通しが立たないなら、売却やほかの活用も並べて考える
- 運営の手間をかけられないなら、委託かサブリースを前提に収支を見る
たとえば、親の家を相続したAさんの場合
たとえば、駅に近い一戸建てを相続したAさんがいるとします。部屋数は多いものの、家族向けに募集すると、家賃を下げても問い合わせが少ない状況でした。
Aさんは、近くに大学や事業所があり、単身者が多い地域だと気づきました。そこで、運営会社に需要を見てもらい、建築士に寄宿舎として必要な工事を確かめてもらってから、転用するかを決めることにしました。
このように「誰に貸すか」を先に決めると、必要な工事と収支の見通しが立てやすくなります。
転用前に確かめたい5つのこと
1. 建物が寄宿舎の基準を満たせるか
ガイドブックでは、空き家などをシェアハウスとして使う場合、寄宿舎への用途変更が必要だとしています。寄宿舎に使う部分の床面積が200㎡を超えると、建築基準法の確認申請が必要です。200㎡以下なら確認申請は要りませんが、基準を守る必要はあります。
2. 消防の設備と手続き
寄宿舎は、消防法でも一般の住宅とは別の扱いになります。広さや階数によって、消火器や火災報知の設備が必要です。工事が終わったら、防火対象物使用開始届などの手続きもあります。
3. 入居者の需要
ガイドブックが紹介する調査では、入居者は20〜30歳代の社会人や学生が中心とされています。駅からの距離や周りの働き口など、単身者が住みたい場所かを確かめます。
4. 運営をどこまで任せるか
運営の方式は、自分で行う「自主方式」、一部を任せる「委託方式」、運営会社が借り上げる「サブリース方式」の3つです。任せるほど手間は減り、受け取る収入は少なくなるのが基本です。
5. お金の計画
改修費、運営会社への委託費、共益費でまかなう光熱費、固定資産税などを並べ、何年で改修費を回収できるかを考えます。
用意する設備も考えておく
ガイドブックは、共用部分にあらかじめ用意する設備として、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどを例に挙げています。個室の設備としては、エアコン、照明、ベッドなどの寝具、クローゼット、カーテン、机と椅子などが挙げられています。家具や家電をそろえる費用も、改修費とあわせて計画に入れておきましょう。
ポイント
- シェアハウスへの転用は、建築基準法では寄宿舎への用途変更になる
- 寄宿舎部分が200㎡を超えると確認申請が要る。200㎡以下でも基準は守る
- 部屋ごとに貸すため、空室の影響が分かれる
- 運営方式で手間と収入のバランスが変わる
国のガイドブックに載っている戸建て転用の例
国土交通省のガイドブックには、一戸建てをシェアハウスに転用した事例が載っています。千葉県にある昭和58年築・木造2階建て、延床面積約130㎡の住宅を、女性専用の6戸のシェアハウスにした例です。
この事例では、家賃が34,000〜42,000円、共益費が12,000円とされています。改修では、耐震補強、水回りの入れ替え、寄宿舎の基準に合わせた階段の改善、採光のための窓の改修などが行われました。消防法への対応として、誘導灯、煙探知機、消火器も設けています。
延床面積が200㎡以下の建物でも、寄宿舎の基準に合わせる工事が行われていることが分かります。
住宅確保要配慮者向けに貸すという選択肢
シェアハウスへの転用では、入居者の想定によって使える支援が変わります。ガイドブックによると、国は、低所得の方、高齢者、障害者など住まいの確保に配慮が要る方(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない賃貸住宅として登録された住宅に、一定の要件のもとで改修費などを支援する制度を設けています。
この制度では、例えば一戸建てをシェアハウスに用途変更するための改修工事を、設計費も含めて補助の対象にできるとされています。要配慮者専用の住宅として登録した場合は、所得の低い入居者への家賃の補助などの支援制度もあります。
補助の有無や金額、受付の時期は自治体によって違います。使えるかどうかは、工事の契約の前に自治体の住宅の窓口で確かめましょう。
シェアハウス転用でよくある失敗と避け方
部屋数を先に決めてしまう
部屋を増やせば家賃の合計は増えます。しかし、採光の窓や水回りの数が足りないと、寄宿舎の基準を満たせません。部屋割りは、建築士と運営会社の両方に見てもらってから決めましょう。
共益費で光熱費をまかなえない
共益費を低く決めすぎると、光熱費や消耗品の支払いがオーナーの持ち出しになります。何を共益費に含めるかを決め、季節による光熱費の増減も見込んでおきます。
運営方式を後から決める
自主方式か、委託やサブリースかで、改修の内容や募集の方法が変わります。工事の前に運営方式を決めておくと、やり直しを防げます。
相談の前に確かめるチェックリスト
- 建物の延床面積と、寄宿舎に使う部分の床面積
- 部屋数、窓の位置、トイレ・浴室・洗面所の数
- 建てた年と、耐震補強が要るかどうか
- 駅からの距離と、周りの単身者の需要
- 自分で運営するか、任せるか
- 改修費と家具・家電の費用を、どう用意するか
シェアハウス転用の進め方
ガイドブックが示す運営の流れをもとに、転用の順番をまとめます。
- 運営方式(自主・委託・サブリース)を決め、運営会社に相談する
- 入居者の想定と家賃、改修の計画、資金の手当てを考える
- 建築士や自治体、消防署と、寄宿舎として必要な工事を確認する
- 改修工事をし、家具や家電をそろえ、完了の検査や届出をすませる
- 契約書と生活ルールを用意し、入居者を募集する
- 入居中は集金、清掃、入居者対応を行い、退去時は立ち会いと精算をする
用途変更や消防設備の要否は、物件と自治体によって違います。工事の前に、建築士や運営会社に確かめてください。
よくある質問
- シェアハウスへの転用に確認申請は必要ですか?
- 寄宿舎に使う部分の床面積が200㎡を超える場合は必要です。200㎡以下なら確認申請は要りませんが、建築基準法と消防法の基準は守る必要があります。
- 古い一戸建てでも転用できますか?
- 建物の状態によります。国のガイドブックの事例でも耐震補強をしているため、まず建築士に建物を見てもらいましょう。
- 転用に使える補助はありますか?
- 住宅確保要配慮者(高齢者や低所得の方など)専用の住宅として登録すると、改修費や家賃の補助などの支援制度があります。要件や受付は自治体によって違うため、窓口で確かめてください。
- 自分で運営することはできますか?
- できます。自主方式は費用を抑えられる一方、入居者の募集やトラブル対応をオーナーが担います。
- 転用すると家賃はどれくらいになりますか?
- 地域や部屋の広さ、設備によって違います。運営会社に、近くの似た物件の募集状況をもとに見立ててもらうのが確実です。
- 転用せずに一般の賃貸で貸し続けるのと、どちらがよいですか?
- 家族向けの借り手が見つかるなら、一般の賃貸の方が手間は少なくなります。借り手が見つからず家賃を下げ続けるしかない場合に、転用を比べてみる価値があります。
建物の決まりは「シェアハウスの用途変更とは?」、任せる会社の比べ方は「シェアハウス運営会社の選び方」で詳しく解説しています。シェアハウスを扱う会社はシェアハウスの不動産会社一覧で探せます。民泊などほかの活かし方と比べたい方は「空き家を民泊に」もご覧ください。
まとめ
- シェアハウスへの転用は、一戸建てなどを部屋ごとに貸す住まいに変えること
- 部屋ごとに家賃が入るため、合計の家賃や空室の影響が変わる
- 建築基準法では寄宿舎への用途変更。200㎡を超えると確認申請が要る
- 消防設備、需要、運営方式、お金の計画を転用前に確かめる
- 運営会社と建築士に早めに相談し、順番どおりに進める




