サブリースの修繕負担はだれ?契約で確かめる7つの点と分担表の見方

サブリースの修繕費をだれが負担するかは、契約の「費用の分担」の定めで決まります。この記事では、法律の決まりと、契約書で確かめる7つの点、分担表の読み方とよくある失敗を整理します。
結論
- サブリースの修繕費をだれが負担するかは、サブリース会社との契約(マスターリース契約)の「維持保全の費用の分担」の定めで決まります。
- 賃貸住宅管理業法では、サブリース会社に、契約の前に費用の分担を書面で説明し、契約のときにも書面で渡すことを義務づけています。
- 「修繕費負担なし」と言われても、大規模修繕や経年劣化の修繕はオーナー負担という契約もあります。設備ごとの分担表で確かめましょう。
「サブリースだから、修繕はすべて会社がやってくれる」。そう思って契約したのに、10年たって外壁や屋根の工事代を請求された。サブリースの相談で、とても多い話です。
サブリースでは、家賃の話に目が向きがちです。けれど、長い目で見ると、収支を大きく左右するのは修繕の費用です。だれが、どこまで、いくらまで払うのかが分からないと、手取りの見込みが立てられません。
この記事では、まず修繕の負担について法律がどう定めているかを説明します。そのうえで、契約書で確かめる7つの点と、分担表の読み方、よくある失敗を順に整理します。
サブリースの修繕負担とは
サブリースの修繕負担とは、借り上げた建物を直したり、設備を取り替えたりする費用を、オーナーとサブリース会社のどちらが払うかという取り決めです。法律では「維持保全に要する費用の分担」と呼びます。
維持保全とは、建物の点検や清掃をして、必要な修繕まで一貫して行うことです。国土交通省のガイドラインは、共用部分や電気・水道の設備、エレベーターなどを点検し、その結果を踏まえて修繕することだと説明しています。
民法の原則は「貸主が直す」
民法では、貸主は、借り手が使うために必要な修繕をする義務を負うと定めています。サブリースでは、オーナーが貸主、サブリース会社が借り手です。
ただし、借り手の責任で修繕が必要になったときは別です。また、実際のサブリース契約では、修繕の分担を契約で細かく決めるのが普通です。だからこそ、契約書の中身がいちばん大切になります。
法律が求める「費用の分担」の説明と書面
契約の前に書面で説明する
賃貸住宅管理業法では、サブリース会社は、契約を結ぶまでに、契約の内容を書面で渡して説明しなければなりません。説明する事項は施行規則で14項目が決められていて、その中に次の3つがあります。
- サブリース会社が行う維持保全の実施方法
- 維持保全に要する費用の分担に関する事項
- オーナーへの維持保全の実施状況の報告に関する事項
契約のときにも書面で渡す
契約を結んだときも、サブリース会社は遅滞なく書面を渡す義務があります。この書面にも、維持保全の実施方法、費用の分担、実施状況の報告が記載事項として入っています。
ガイドラインが求める書き方
国土交通省のガイドラインは、費用の分担について、維持保全の内容や設備ごとに、オーナーとサブリース会社のどちらが負担するかを書いて説明するよう求めています。経年劣化や通常損耗の修繕費など、どの費用がオーナー負担になるかを具体的に書くこととしています。
また、修繕のときにサブリース会社が指定する業者が工事をする条件がある場合は、必ずその旨を書いて説明することとしています。
ポイント
- 修繕の負担は、契約の「費用の分担」の定めで決まる
- 費用の分担は、契約前の重要事項説明の対象
- 契約時の書面にも、分担と実施状況の報告が載る
- 設備ごとに、だれが払うかを書くのが国のガイドラインの考え方
契約書で確かめる7つの点
修繕でもめないために、契約書と重要事項説明書で、次の7つを確かめましょう。
- 設備ごとの負担者:給湯器、エアコン、屋根、外壁など、設備や部位ごとにだれが払うか
- 経年劣化と通常損耗の扱い:年数がたって傷んだ部分の修繕を、だれが払うか
- 大規模修繕の扱い:外壁や屋根の工事、配管の取り替えなど、大きな工事の負担
- 施工する業者:サブリース会社が指定する業者が工事をする条件があるか
- 実施状況の報告:点検や修繕の内容を、どの頻度で報告してもらえるか
- 修繕に応じない場合の扱い:オーナーが修繕に応じないと、契約の更新や家賃にどう影響するか
- 原状回復の扱い:入居者が出たあとの部屋を元に戻す費用を、だれが払うか
国土交通省のガイドラインは、一定期間ごとの修繕に応じないと契約を更新しない条項があるのに、それを勧誘のときに告げないことを、不当な勧誘の例に挙げています。
分担表の読み方の例
契約書には、設備ごとの分担が表で載っていることがあります。読むときは、次のような形で整理すると分かりやすくなります。
| 部位・設備 | 日常の点検 | 小さな修繕 | 取り替え・大規模修繕 |
|---|---|---|---|
| 屋根・外壁 | サブリース会社 | 契約で確かめる | オーナー負担とする契約もあるので確かめる |
| 給湯器・エアコン | サブリース会社 | 契約で確かめる | 取り替えの負担者を確かめる |
| 共用部の照明・清掃 | サブリース会社 | 契約で確かめる | 契約で確かめる |
| 室内の内装(原状回復) | ― | 入居者・会社・オーナーの分担を確かめる | ― |
この表は読み方の例です。実際の分担は契約ごとに違います。必ず自分の契約書と重要事項説明書で確かめてください。
「修繕費負担なし」の広告に注意
ガイドラインが挙げる誇大広告の例
賃貸住宅管理業法は、サブリースの広告で、維持保全の実施方法などについて、事実と大きく違う表示や、実際より著しく有利だと誤解させる表示を禁じています。
国土交通省のガイドラインは、費用の分担について、次のような表示を誇大広告の例に挙げています。
- 実際には大規模修繕など一部をオーナーが負担するのに、「修繕費負担なし」と表示する
- 実際には毎月オーナーから費用を集めて原状回復に当てているのに、「原状回復費負担なし」と表示する
- 一定の上限を超えるとオーナー負担になるのに、「維持保全費用ゼロ」と表示する
勧誘のときの説明にも決まりがある
法律は、勧誘のときに、判断に影響する重要な事実を故意に告げなかったり、事実と違うことを告げたりすることも禁じています。ガイドラインは、大規模修繕の費用がオーナー負担なのに「維持修繕費用は全て事業者負担」と伝えることを、その例に挙げています。
修繕をめぐる法律の決まり
借り手が自分で直せる場合
民法では、借り手が貸主に修繕が必要だと伝えたのに、貸主が相当の期間内に直さないときや、急ぎの事情があるときは、借り手が自分で修繕できると定めています。
借り手が払った費用の扱い
民法では、貸主が負担すべき必要な費用を借り手が払ったときは、借り手はすぐに貸主へその返還を求められます。サブリース会社が立て替えた修繕費を請求してくるのは、この考え方に基づく場合があります。
使えない部分があると家賃が下がる
民法では、借りている物の一部が使えなくなり、それが借り手の責任でないときは、使えない部分の割合に応じて賃料が減額されると定めています。修繕が遅れると、サブリース会社からオーナーへの家賃にも影響することがあります。
管理委託との違いと、修繕費の見込み方
管理委託とサブリースで変わること
管理会社に管理だけを任せる「管理委託」では、オーナーが入居者に直接貸す貸主です。サブリースでは、オーナーが貸す相手はサブリース会社になり、入居者との間にはサブリース会社が入ります。
| 項目 | 管理委託 | サブリース |
|---|---|---|
| オーナーが貸す相手 | 入居者 | サブリース会社 |
| 修繕の窓口 | 管理会社がオーナーに相談 | サブリース会社が提案・実施 |
| 費用の分担の決め方 | 管理受託契約で決める | マスターリース契約で決める |
どちらの形でも、修繕費をだれが払うかは契約で決まります。窓口がだれかと、費用を払うのはだれかを、分けて確かめましょう。
手取りは「家賃−修繕費」で考える
サブリースの家賃が高く見えても、オーナー負担の修繕費が多ければ、手取りは減ります。契約を比べるときは、家賃だけでなく、オーナー負担になる修繕の範囲もそろえて比べることが大切です。
よくある失敗と判断の分かれ道
よくある失敗
- 「修繕は会社がやる」と聞いて、だれが払うかを確かめていない
- 重要事項説明書の分担の欄を読まずに署名した
- 指定業者の工事しか認められず、見積もりを比べられない
- 修繕の報告を受け取っていても、内容を確かめていない
- 修繕に応じなかったことが、更新しない理由になると知らなかった
たとえば、築15年のアパートの場合
たとえば、サブリース中のアパートを持つGさん。サブリース会社から、外壁の塗り直しを指定業者で行うよう提案がありました。Gさんが契約書を見直すと、外壁は「オーナー負担」で、施工は「会社が指定する業者」とありました。
Gさんは、見積もりの内訳と、工事をしない場合に契約がどうなるかを、書面で質問することにしました。分担と条件を書面で確かめてから判断するのが、もめないための近道です。
判断の分かれ道
- 契約前:分担表がない、あいまいなら、設備ごとの分担を書いてもらってから決める
- 契約中:修繕の提案が来たら、契約書の分担と施工業者の条件をまず確かめる
- 負担が重い:家賃と修繕費を合わせた手取りで、続けるかどうかを考える。解約の考え方は「サブリースの解約」で説明しています
契約前のチェックリスト
- 重要事項説明書の「費用の分担」の欄を読んだ
- 設備ごとに、だれが払うかが書いてある
- 大規模修繕と経年劣化の扱いが書いてある
- 指定業者の条件があるかを確かめた
- 実施状況の報告の内容と頻度を確かめた
- 修繕に応じない場合の扱いを確かめた
言葉の言い換え
- マスターリース契約:オーナーとサブリース会社の間の、建物を借り上げる契約
- 維持保全:点検や清掃をして、必要な修繕まで一貫して行うこと
- 重要事項説明:契約の前に、契約の大事な点を書面で説明すること
- 経年劣化:年数がたつことで、自然に傷んだり古くなったりすること
- 通常損耗:普通に暮らしていて生じる、すり減りや汚れ
よくある質問
- サブリースの修繕費は、オーナーが払うのですか?
- 契約の定めによります。設備ごとに、オーナーとサブリース会社のどちらが払うかを契約で決めるので、重要事項説明書と契約書で確かめてください。
- 「修繕費負担なし」と言われましたが、信じてよいですか?
- 契約書で範囲を確かめてください。大規模修繕など一部がオーナー負担なのに「負担なし」と表示することは、国のガイドラインで誇大広告の例とされています。
- 修繕の業者を自分で選べますか?
- 契約によります。会社が指定する業者が工事をする条件がある場合は、その旨を説明することがガイドラインで求められています。
- 修繕の提案を断ると、どうなりますか?
- 契約に、修繕に応じないと更新しない条項がある場合があります。断る前に、契約書の更新と解除の定めを確かめましょう。
- 原状回復の費用もオーナー負担ですか?
- 契約によります。入居者・サブリース会社・オーナーの分担を確かめてください。考え方は「原状回復のガイドライン」の記事が参考になります。
関係する記事と相談先
サブリース全体の注意点は「サブリースの注意点」、家賃保証との違いは「家賃保証とサブリースの違い」で説明しています。退去のときの費用は「原状回復のガイドライン」、管理業法の全体像は「賃貸住宅管理業法」をご覧ください。契約の見直しを相談できる会社は会社一覧から探せるほか、まとめて相談することもできます。
まとめ
- サブリースの修繕負担は、契約の「費用の分担」の定めで決まる
- 費用の分担は、契約前の書面での説明と、契約時の書面の対象
- 設備ごと、経年劣化、大規模修繕、指定業者の条件を確かめる
- 「修繕費負担なし」の表示は、範囲を契約書で確かめる
- 修繕の提案が来たら、分担と更新の条件を書面で確かめてから決める




