再建築不可の空き家とは?接道義務の基本と、活用・売却の5つの選択肢

相続した空き家が「再建築不可」だと言われ、どうすればよいか迷う方は少なくありません。建て替えができない理由になる接道義務の基本と、確かめ方、活用・売却の選択肢を順に整理します。
結論
- 再建築不可の空き家とは、今の建物を壊すと、同じ敷地に新しい建物を建てられない空き家のことです。多くは、敷地が建築基準法の道路に2メートル以上接していない「接道義務」を満たさないことが理由です。
- 建築基準法の道路は、原則として幅4メートル以上です。幅4メートル未満でも、特定行政庁が指定した道(2項道路)は道路とみなされ、中心線から2メートル下がった線が道路の境界とみなされます。
- 再建築不可でも、今の建物を直して使う、隣の土地を買う・借りる、許可や認定の道を探る、そのまま売る、隣の人に売る、といった選択肢があります。
「実家を売ろうとしたら、再建築不可だと言われた」。「建て替えられない家は、もう使い道がないのか」。相続した空き家について、こうした相談はめずらしくありません。
再建築不可と聞くと、価値がないように感じるかもしれません。けれども、理由を確かめると、取れる道が見えてくることがあります。
この記事では、再建築不可になる理由の多くを占める接道義務の基本と、自分の空き家がどうなのかを確かめる手順、そのうえでの活用・売却の選択肢を整理します。
再建築不可の空き家とは
再建築不可の意味
再建築不可とは、今ある建物を取り壊したあと、その敷地に新しく建物を建てる許可が得られない状態のことです。法律の用語ではなく、不動産の取引で使われる言い方です。
今の建物に住んだり、使ったりすることまで、すぐに禁止されるわけではありません。問題になるのは、建て替えや、大きく作り直すときです。
接道義務とは
接道義務(せつどうぎむ)とは、建物の敷地が、建築基準法の道路に2メートル以上接していなければならないという決まりです(建築基準法43条1項)。
火事や急病のときに、消防車や救急車が近づけ、人が安全に逃げられるようにするための決まりです。この決まりは、都市計画区域と準都市計画区域の中で適用されます(建築基準法41条の2)。
建築基準法の「道路」とは
見た目が道でも、建築基準法の道路にあたるとは限りません。建築基準法42条1項では、道路法による道路などのうち、原則として幅4メートル以上のものを道路と定めています。特定行政庁が指定した区域では、6メートル以上です。
幅4メートル未満の道でも、建築基準法の規定が適用されたときにすでに建物が立ち並んでいて、特定行政庁が指定したものは、道路とみなされます(42条2項)。いわゆる「2項道路」です。
2項道路とセットバック
2項道路では、道の中心線から水平距離2メートルの線が、道路の境界線とみなされます。建て替えのときは、その線まで敷地を下げる必要があります。これをセットバックと呼びます。
セットバックした部分には、建物や塀を建てられません。敷地が少し狭くなりますが、建て替え自体はできる場合が多くなります。
再建築不可になりやすい空き家の形
よくある4つの形
- 道に接している部分が2メートルに足りない、細い通路の奥の敷地(旗竿地の一部)
- 前の道が、建築基準法の道路にあたらない私道や通路
- まわりをほかの家に囲まれ、道に接していない敷地
- 前の道が、道路として指定されていない幅の狭い道
旗竿地(はたざおち)とは、道から細い通路が伸び、その奥に家が建つ形の土地です。通路の幅が2メートル以上あれば、接道義務を満たすことがあります。
| 前の道・敷地の状態 | 建て替え | 主な決まり |
|---|---|---|
| 幅4メートル以上の道路に2メートル以上接する | できる | 建築基準法42条1項・43条1項 |
| 2項道路に2メートル以上接する | セットバックすればできることが多い | 建築基準法42条2項 |
| 道路にあたらない道にだけ接する | 原則できない。認定・許可の道がある | 建築基準法43条2項 |
| 道路に接する部分が2メートル未満 | 原則できない | 建築基準法43条1項 |
自分の空き家を確かめる手順
- 登記簿や公図、測量図で、敷地の形と、道に接する部分の長さを確かめる
- 市区町村の建築指導の窓口で、前の道が建築基準法の道路にあたるかを確かめる
- 2項道路なら、セットバックの位置を確かめる
- 道路にあたらない場合は、認定や許可の対象になりうるかを相談する
- 結果を書き留め、売却や活用の相談のときに見せられるようにする
前の道の種類は、市区町村の窓口や、自治体によっては地図の閲覧サービスで調べられます。自分だけで判断せず、窓口で確かめることが大切です。
「再建築不可」と聞いても、確かめてみると2項道路でセットバックすれば建て替えられた、という場合もあります。まず道の種類を確かめましょう。
建て替えの道を探る:認定と許可
43条2項の認定と許可
建築基準法43条2項では、接道義務を満たさない敷地でも、建物を建てられる2つの道を定めています。
一つ目は、幅4メートル以上の道(国土交通省令の基準に合うもの)に2メートル以上接し、利用者が少ない一定の建物で、特定行政庁が安全上などの支障がないと認めるものです(43条2項1号の認定)。
二つ目は、敷地のまわりに広い空地があるなど国土交通省令の基準に合う建物で、特定行政庁が支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可するものです(43条2項2号の許可)。
認定・許可は自治体ごとの基準
どんな場合に認定や許可が出るかは、特定行政庁ごとに基準があります。同じような敷地でも、地域によって結果が違うことがあります。
相談には、敷地の図面や前の道の写真があると話が進みやすくなります。建築士に頼んで、窓口との相談を進めてもらう方法もあります。
ポイント
- 再建築不可の多くは、接道義務(道路に2メートル以上接する)を満たさないことが理由です
- 道路は原則として幅4メートル以上。2項道路はセットバックで建て替えられることが多いです
- 道路にあたらない道に接する敷地は、43条2項の認定・許可の道を探れます
- 道の種類は、市区町村の建築指導の窓口で確かめます
再建築不可の空き家の5つの選択肢
1 今の建物を直して使う
建て替えはできなくても、今の建物を修理して使うことはできます。住む、貸す、倉庫やアトリエにするなどの使い方があります。
ただし、工事の内容や規模によっては、建築確認という手続きが必要になり、接道義務が問題になることがあります。どこまでの工事ができるかは、工事の前に建築士や窓口に確かめましょう。
2 隣の土地を買う・借りる
隣の土地の一部を買ったり借りたりして、道に接する部分を2メートル以上にできれば、建て替えられるようになることがあります。隣の方にとっても、話し合う価値がある場合があります。
3 認定・許可の道を探る
前の章のとおり、43条2項の認定や許可が得られれば、建て替えの道が開けます。まず窓口で、対象になりうるかを相談しましょう。
4 そのまま売る
再建築不可の空き家は、一般の買い手には住宅ローンの面などで買いにくいことがあります。こうした物件を扱う会社に直接買い取ってもらう方法もあります。買取の進め方は買取の流れと注意点で説明しています。
5 隣の人に売る
隣の方にとっては、敷地を広げられる機会になります。隣の土地と合わせることで、接道義務を満たせる場合もあります。買い手が限られる物件ほど、まず隣の方に声をかける価値があります。
場面の例
Cさんは、相続した実家が細い通路の奥にあり、再建築不可だと仲介会社から聞きました。市役所の窓口で確かめると、通路の幅が2メートルに少し足りないことが分かりました。
Cさんは、通路に面した隣の方に事情を話しました。隣の方も駐車場を広げたいと考えていたため、話し合いの結果、実家の土地を隣の方に売ることになりました。
よくある失敗
一つ目は、「再建築不可」と聞いて、道の種類を確かめずにあきらめることです。2項道路なら、セットバックで建て替えられる場合があります。
二つ目は、古い建物を先に壊してしまうことです。建物を壊すと、建て替えられない土地だけが残り、使い道が狭まることがあります。
三つ目は、一社の話だけで決めることです。再建築不可の物件の扱いは、会社によって得意・不得意があります。
売るか、使い続けるかの分かれ道
使い続けるのが向く場合
建物の傷みが少なく、自分や家族が使う予定があるなら、直して使い続ける道があります。貸す場合は、建物の安全と、雨漏りや設備の状態を先に確かめておきましょう。
売るのが向く場合
遠方に住んでいて管理が続けにくい、建物の傷みが進んでいる、という場合は、早めに売却を考えるほうが負担を抑えられます。空き家の期間が長くなると、草木や建物の傷みが進み、近隣への配慮も必要になるからです。
決める前に整理しておくこと
- 前の道が、建築基準法の道路にあたるかどうか
- 道に接している部分の長さと、敷地の形
- 建物の傷みの具合と、直すとしたらどこか
- 隣の土地の持ち主と、話し合える関係があるか
- 家族のなかで、使う予定のある人がいるか
むずかしい言葉の言い換え
- 特定行政庁:建築の確認や許可を行う役所。建築主事を置く市区町村や、都道府県のこと
- 建築審査会:特定行政庁が許可を出すときに、同意するかを審査する会
- 公図:法務局にある、土地の形や位置関係を示した図面
- 旗竿地:道から細い通路が伸び、その奥に敷地がある形の土地
窓口で聞くときは、「前の道は建築基準法の何条の道路にあたりますか」と尋ねると、答えが分かりやすくなります。聞いた内容は、日付と担当の部署とあわせて書き留めておきましょう。
よくある質問
- 再建築不可の空き家に、そのまま住み続けてもいいですか?
- 今ある建物を使うことは、すぐに禁止されるわけではありません。建て替えや大きな工事のときに、接道義務が問題になります。
- 2項道路とは何ですか?
- 幅4メートル未満でも、建物が立ち並んでいて特定行政庁が指定した道は、建築基準法の道路とみなされます(42条2項)。中心線から2メートルの線が道路の境界とみなされます。
- 再建築不可かどうかは、どこで分かりますか?
- 市区町村の建築指導の窓口で、前の道が建築基準法の道路にあたるかを確かめます。登記簿や測量図で、道に接する部分の長さも確かめましょう。
- 再建築不可の空き家は売れますか?
- 売ることはできます。買取を行う会社や、隣の方に売る方法があります。価格は物件ごとに違うため、複数の会社に聞いて比べましょう。
- 再建築不可の空き家は、解体したほうがいいですか?
- 急いで壊すのはおすすめしません。建物を壊すと建て替えられない土地だけが残り、使い道が狭まることがあるため、活用や売却の方向を決めてから考えましょう。
再建築不可の空き家の相談先
売却を考える方は、売買の会社一覧から会社を比べられます。売却の全体の進め方は不動産売却の流れ、会社の選び方は売却の会社の選び方にまとめています。売るか貸すか迷う方は実家は売るか貸すか、活用を考える方は空き家の活用方法の比較、解体を考える方は空き家の解体と補助金も参考になります。複数の会社にまとめて聞きたい方は、一括相談をご利用いただけます。
まとめ
- 再建築不可の空き家とは、今の建物を壊すと新しい建物を建てられない空き家のことです
- 多くは、建築基準法の道路に2メートル以上接していない接道義務の問題が理由です
- 道路は原則として幅4メートル以上。2項道路はセットバックで建て替えられることが多いです
- 道路にあたらない道に接する敷地は、43条2項の認定・許可の道を探れます
- 直して使う、隣地を買う・借りる、許可を探る、売る、隣に売る、の5つの選択肢があります
- 建物を先に壊さず、まず市区町村の窓口で道の種類を確かめましょう




