和室を洋室にリフォームするべき?賃貸オーナーの判断の分かれ道と工事の範囲

賃貸の和室を洋室にリフォームするか迷うオーナー向けの記事です。変えたほうがよい部屋と残してよい部屋の見分け方、床・収納・壁の工事の範囲、マンションで管理組合の承認が要る理由を順に説明します。
結論
- 和室を洋室にするリフォームは、内見で和室が断られる理由になっていて、工事費を家賃や空室期間の短縮で取り戻せるときに検討します。
- 工事は「床だけ」「床と収納」「床・収納・壁・天井まで」の3段階で考え、空室の理由に合う範囲にとどめます。
- 分譲マンションの部屋では、国土交通省のマンション標準管理規約で、床のフローリング工事は管理組合の理事長の承認が要る工事の例に挙げられています。工事の前に、その物件の管理規約を確かめます。
畳の部屋がある賃貸は、内見で「洋室だったらよかった」と言われることがあります。和室を洋室にすれば決まるのでは、と考えるオーナーは多いと思います。
ただ、和室を洋室にする工事は、畳をフローリングに替えるだけでは終わらないことがあります。押し入れや壁、天井まで手を入れると、費用は大きく変わります。
この記事では、和室を洋室にするかどうかの判断に絞って説明します。リフォーム全体の優先順位は「空室のリフォームの優先順位」で整理しています。
和室を洋室にするリフォームとは
意味を一言で
和室を洋室にするリフォームとは、畳の床をフローリングなどに替え、押し入れや壁・天井を洋室の仕上げにそろえる工事のことです。部屋の広さや間取りは変えずに、仕上げを替えるのが基本です。
和室と洋室で違う部分
| 部分 | 和室の例 | 洋室にするときの例 |
|---|---|---|
| 床 | 畳 | フローリング、クッションフロア |
| 収納 | 押し入れ(中段がある) | クローゼット(ハンガーパイプ) |
| 出入口 | ふすま、障子 | 開き戸、引き戸 |
| 壁 | 柱が見える壁、塗り壁 | 柱を隠した平らな壁、壁紙 |
| 天井 | 板張りの天井 | 壁紙やボードの天井 |
| 窓 | 障子 | カーテン、ブラインド |
言葉の言い換え
- 真壁(しんかべ):柱が見える和室らしい壁
- 大壁(おおかべ):柱を板で覆い、平らにした洋室らしい壁
- クッションフロア:塩化ビニールでできた、シート状の床材
- 管理規約:分譲マンションで、建物の使い方を決めたルール
- 専有部分:分譲マンションで、各部屋の持ち主が持つ部分
和室を洋室にするべきかの判断
先に空室の理由を確かめる
空室の理由が家賃や設備、写真の見せ方にあるなら、和室を洋室にしても決まりません。まず仲介会社に、内見で断られた理由を聞きます。「和室だから」という声が何度も出ているかが、最初の分かれ道です。
変えたほうがよい部屋・残してよい部屋
| 部屋の状態 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 単身者向けで、唯一の部屋が和室 | 変える候補 | ベッドを置きたい人に選ばれにくい |
| 畳が傷み、どのみち替える時期 | 変える候補 | 畳替えとの差額で考えられる |
| 家族向けで、洋室のほかに和室が1つ | 残す候補 | 寝室や子どもの部屋として使う人もいる |
| 古民家風など、和の雰囲気が売り | 残す候補 | 和室そのものが選ばれる理由になる |
| 近いうちに売る予定 | 見送る | 工事費を取り戻す前に手放す |
判断の分かれ道
- 断られた理由に、和室が何度も出ているか
- 周りの同じくらいの家賃の部屋は、洋室が多いか
- 工事費を、上がる家賃と短くなる空室期間で何年で取り戻せるか
- 畳を替える時期が近いか
工事費を取り戻せるかの考え方
取り戻せるかは、次の2つを足した額で、工事費を割って考えます。
- 洋室にして上がる家賃の1年分
- 空室が短くなる月数に、家賃を掛けた額
割った答えが長すぎるなら、工事の範囲を小さくするか、ほかの手を先に試します。家賃がどれだけ上がるかは物件や地域によって違うため、仲介会社の意見を参考にします。周りの部屋の家賃は「家賃相場の調べ方」で調べられます。
工事は3段階で考える
段階1:床だけを替える
畳を外し、フローリングやクッションフロアに替えます。部屋の印象が大きく変わる一方、押し入れや壁は和室のままです。費用をおさえたいときの選び方です。
段階2:床と収納を替える
押し入れをクローゼットに替え、ふすまを扉にします。服を掛けたい単身者には、収納の使いやすさも決め手になります。
段階3:床・収納・壁・天井まで替える
柱の見える壁を平らな壁にし、天井も洋室の仕上げにそろえます。見た目は完全な洋室になりますが、費用も工期も大きくなります。
ポイント
- 床だけ、床と収納、全部の3段階で範囲を決める
- 断られた理由が「畳」だけなら、床だけで足りることもある
- 範囲を広げるほど、費用を取り戻す年数が長くなる
段階を選ぶ目安
| 断られた理由 | 合う段階 |
|---|---|
| 畳が古い、ベッドが置きにくい | 段階1 |
| 服が掛けられない、収納が使いにくい | 段階2 |
| 部屋全体が古く見える | 段階3 |
分譲マンションの部屋で工事するとき
管理組合の承認が要る工事
国土交通省のマンション標準管理規約では、専有部分の修繕などのうち、共用部分やほかの部屋に影響を与えるおそれのある工事は、前もって理事長に申請し、承認を受けると定めています(第17条)。申請には、設計図・仕様書・工程表を付けます。
同じ規約のコメントでは、承認が要る工事の具体例として、床のフローリングが挙げられています。畳からフローリングに替えると、下の階に響く音が変わることがあるためです。
床の遮音の決まり
標準管理規約のコメントでは、フローリング工事は構造や仕様、材料によって影響が違うため、専門家の確認が要るとしています。物件によっては、使えるフローリングの遮音の性能を、管理組合が決めている場合もあります。
実際の決まりは、標準管理規約ではなく、その物件の管理規約と使用細則で決まります。工事の前に管理会社から規約を取り寄せ、承認の手続きと床材の条件を確かめます。
和室を洋室にする進め方
工事までの手順
- 仲介会社に、断られた理由と、決まりやすい部屋の仕上げを聞く
- 工事の段階(床だけ、床と収納、全部)を決める
- 分譲マンションなら、管理規約で承認の手続きと床材の条件を確かめる
- 工事会社に段階ごとの見積もりを頼み、取り戻せる年数を比べる
- 工事のあと、写真を撮り直して募集する
募集の写真の撮り直しは「賃貸の写真の撮り方」を参考にしてください。
場面の例:単身者向けの1K
Aさんの1Kは、唯一の部屋が6畳の和室でした。内見では「ベッドを置きたい」と何度も断られています。畳も傷んでいて、替える時期でした。
Aさんは、畳替えとの差額で考え、床だけをフローリングにすることにしました。押し入れは、中段を残したまま扉だけを替え、費用をおさえました。
場面の例:家族向けの3DK
Bさんの3DKは、洋室2つと和室1つの間取りです。断られた理由を聞くと、和室よりも水回りの古さが挙がっていました。
Bさんは和室を残し、畳の表替えと水回りの工事を先にしました。和室は、小さな子どもがいる家族の寝室として使えるため、募集の説明にもそう書きました。
場面の例:分譲マンションの1室
Cさんは、持っている分譲マンションの1室の和室をフローリングにしたいと考えました。管理規約を取り寄せると、床の工事には理事長の承認が要り、床材の遮音の条件も決められていました。
Cさんは、条件に合う床材で見積もりを取り、承認を受けてから着工しました。承認の手続きの期間を見込み、募集の開始日を決めました。
工事の前のチェックリスト
- 内見で断られた理由に、和室が入っているか
- 工事の段階を、断られた理由に合わせて選んだか
- 分譲マンションなら、管理規約の承認の手続きを確かめたか
- 床材が、規約で決められた条件に合っているか
- 工事費を何年で取り戻せるか計算したか
- 工事のあとの写真を撮り直す段取りがあるか
経費の扱い
工事の費用が、その年の修繕費になるか、資本的支出として分けて経費にするかは、工事の中身によって変わります。考え方は「修繕費と資本的支出」で説明しています。判断に迷うときは税理士に確かめます。
和室を残すときにできること
和室のまま印象を変える
和室を残すと決めた場合も、手を入れられることはあります。工事を小さくしながら、内見の印象を良くする方法です。
- 畳の表替えをして、色と香りを新しくする
- 破れたふすまや障子を張り替える
- 障子の代わりにカーテンレールを付け、カーテンを選べるようにする
- 照明を明るいものに替える
- 和室の使い方の例(寝室、子どもの遊び場、在宅勤務の部屋)を募集の説明に書く
和室が選ばれる人を考える
床に布団を敷いて寝たい人や、小さな子どもを床で遊ばせたい人には、畳がよいと感じる人もいます。和の雰囲気を活かした活用は「古民家の活用」も参考になります。
場面の例:和室を残して見せ方を変えた
Kさんの2DKは、洋室1つと和室1つです。和室を洋室にする見積もりを取る前に、畳の表替えと照明の交換だけを先にしました。
募集の写真には、和室に布団を敷いた様子ではなく、明るい部屋全体を撮った写真を使いました。Kさんは、それでも断られる理由が和室なら、次の段階として床の工事を考えることにしています。
よくある失敗と防ぎ方
床だけ替えて、ちぐはぐになる
床をフローリングにしても、ふすまや障子が残ると、和洋がまざった印象になります。床だけにする場合は、照明やカーテンで部屋の印象をそろえる工夫も考えます。
承認を受けずに床を張り替える
分譲マンションで承認を受けずに工事すると、管理組合や下の階の人ともめるおそれがあります。工事の前に必ず規約を確かめます。
退去のときの負担の分け方を決めていない
畳とフローリングでは、傷み方も、退去のときの負担の考え方も違います。国土交通省のガイドラインの考え方は「原状回復ガイドライン」で確かめ、契約の説明を見直します。
周りと比べずに全部を替える
全部を洋室にしても、同じ家賃でより新しい部屋が周りにあれば決まりにくいままです。募集条件全体は「募集条件の見直し」もあわせて見直します。
よくある質問
- 和室を洋室にすると入居は決まりやすくなりますか?
- 和室が断られる理由になっている部屋なら、決まりやすくなることがあります。理由が家賃や設備にあるなら、和室を変えても決まりません。
- 畳をフローリングにするだけでも洋室になりますか?
- 床だけでも印象は大きく変わります。押し入れやふすまが残るため、収納や扉も替えるかは、断られた理由に合わせて決めます。
- 分譲マンションの部屋でも自由に床を替えられますか?
- 標準管理規約では、床のフローリングは理事長の承認が要る工事の例です。その物件の管理規約で、手続きと床材の条件を確かめます。
- 和室は全部洋室にしたほうがよいですか?
- 家族向けの部屋や、和の雰囲気が売りの物件では、和室を残すほうが選ばれることもあります。周りの部屋と借りる人の層を見て決めます。
- 工事費は経費になりますか?
- 経費になります。その年の修繕費になるか、資本的支出として分けて経費にするかは、工事の中身によって変わります。
- 入居中の部屋でも和室を洋室にできますか?
- 家具を動かす必要があり、入居者の暮らしにも関わるため、退去のあとの空室のときに行うのが基本です。入居中に行う場合は、入居者と時期を相談します。
空室全体の手の打ち方は「空室対策」で、設備への投資は「賃貸の設備投資の判断」で扱っています。工事や募集を相談する会社は掲載している会社の一覧から探せます。貸し方の見直しをまとめて相談したい場合は、一括相談の案内をご覧ください。
まとめ
- 和室を洋室にするのは、和室が断られる理由になっているときに検討する
- 工事は床だけ、床と収納、全部の3段階で考える
- 分譲マンションでは、床の工事に管理組合の承認が要ることがある
- 家族向けの部屋や和の雰囲気が売りの物件は、和室を残す選び方もある
- 工事費を何年で取り戻せるかを、工事の前に計算する




