空室のリフォームは何から直す?優先順位5段階と、やり過ぎない判断のしかた

空室を埋めるためのリフォームは、安全と不具合、清潔さ、第一印象、設備、間取りの順に考えると無駄が減ります。優先順位の決め方、原状回復との違い、税と建築確認の注意点を整理します。
結論
- 空室のリフォームは、①安全と不具合 ②清潔さとにおい ③第一印象 ④設備の追加 ⑤間取りの変更、の順に優先して考えます。
- 先に、空室の理由が部屋の状態にあるかを確かめると、お金をかける場所を絞れます。
- 税では、20万円未満の工事や、おおむね3年以内の周期で行う工事などは、その年の修繕費にできます。価値を高める部分は減価償却します。
- 2階建ての木造住宅などで、柱や壁などの過半を直す大きなリフォームは、建築確認の手続きが必要になりました。
前の入居者が出ていったあと、部屋がなかなか埋まらない。管理会社から「リフォームしましょう」と見積もりが届いたけれど、どこまでやればよいか分からない。そんな迷いを持つオーナーは多いはずです。
リフォームは、やれば必ず決まるものではありません。理由に合わない工事をすると、費用だけがかかり、空室は続きます。
この記事では、空室を埋めるためのリフォームの優先順位と、やり過ぎないための判断のしかたを、順に整理します。
空室のリフォームとは
ここでいう空室のリフォームとは、空いている部屋に入居者が決まるよう、部屋の不具合や古さを直したり、設備を足したりする工事です。退去のあとに元の状態に戻す原状回復とは、目的が違います。
原状回復は、入居者が使って傷んだ部分を元に戻すことです。空室のリフォームは、部屋の魅力を上げて、選ばれるようにすることです。
原状回復との違い
| くらべる点 | 原状回復 | 空室のリフォーム |
|---|---|---|
| 目的 | 貸す前の状態に戻す | 選ばれる部屋にする |
| きっかけ | 退去 | 空室が続く、古さが目立つ |
| 費用の負担 | 内容により貸主と借主で分ける | 貸主が決めて負担する |
| 判断の根拠 | 契約と国のガイドライン | 空室の理由と、費用の回収の見込み |
退去のときの負担の考え方は「原状回復ガイドライン」で説明しています。
先に確かめる:空室の理由は部屋にあるか
部屋探しの人は、ネットで見る、問い合わせる、内見する、申し込む、の順に進みます。リフォームが効きやすいのは、主に「内見しても決まらない」場合です。
- ネットで見られていない:家賃や条件で絞り込まれて外れている可能性がある
- 見られても問い合わせがない:写真が古い印象を与えていることがある
- 内見しても決まらない:部屋の状態、におい、設備の古さが理由になりやすい
管理会社に、内見のあとで断られた理由を聞きましょう。理由が分かると、直す場所がはっきりします。
空室リフォームの優先順位5段階
1. 安全と不具合
雨漏り、水漏れ、給湯器の不調、鍵や窓の不具合などです。住む人の安全と、暮らしに直接関わるため、最初に直します。内見で見つかると、ほかがよくても選ばれにくくなります。
2. 清潔さとにおい
水回りの汚れ、排水口のにおい、カビ、たばこのにおいなどです。写真では伝わらない分、内見の印象を大きく下げます。清掃や部品の交換で済むことも多く、費用のわりに効きやすい場所です。
3. 第一印象
壁紙、照明、床、建具の色などです。玄関を開けたときの明るさと清潔感が変わります。明るい色の壁紙や、明るい照明に替えるだけでも、部屋が広く見えることがあります。
4. 設備の追加
モニター付きのインターホン、温水洗浄便座、インターネット設備などです。周りの似た部屋にある設備が、自分の部屋にないときに効きやすくなります。
5. 間取りの変更
部屋をつなげる、和室を洋室にする、といった大きな工事です。費用が大きく、回収にも時間がかかります。ほかの手を比べたうえで、最後に検討します。
ポイント
- 安全と不具合は、空室かどうかに関わらず最初に直す
- 清潔さとにおいは、費用のわりに内見の印象を変えやすい
- 設備は、周りの似た部屋にあって自分の部屋にないものから
- 間取りの変更は、費用の回収まで見通してから決める
やり過ぎないための判断のしかた
費用を回収できるかを先に考える
リフォームの費用は、上がる家賃や、空室が縮む月数で回収します。管理会社や工事会社に、その工事でどう変わる見込みかの根拠を聞きましょう。
周りの部屋の水準に合わせる
周りの似た部屋より大きく上の仕上げにしても、家賃を上げられるとは限りません。周りの水準にそろえ、そのうえで1つ選ばれる理由を足す、という考え方が無駄を減らします。
近いうちに売るなら控えめに
数年のうちに売る予定があるなら、大きな工事は控え、売却と比べてから決めます。売ったときの考え方は「不動産売却の流れ」もご覧ください。
リフォームの費用と税の扱い
国税庁の案内では、修理や改良の費用は、通常の維持管理や修理のためなら修繕費として、その年の必要経費になります。ただし、建物の使える期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分は資本的支出とされ、減価償却で何年かに分けて経費にします。
どちらに当たるかは、修繕や改良という名目ではなく、中身で判断します。
| 区分 | 主な例・目安 | 経費にするしかた |
|---|---|---|
| 修繕費にできる | おおむね3年以内の周期で行う修理、1つの工事が20万円未満 | その年の必要経費 |
| 修繕費にできる | どちらか明らかでない金額が60万円未満、または前年末の取得価額のおおむね10%以下 | その年の必要経費 |
| 資本的支出 | 物理的に付け加えた部分、用途を変えるための模様替え | 減価償却で分けて経費 |
工事の中身によって扱いが変わります。見積もりの段階で、工事の内訳を分けてもらい、税理士や税務署に確かめましょう。減価償却の基本は「不動産所得の確定申告」でも触れています。
大きなリフォームと建築確認
国土交通省によると、建築基準法の改正で、2025年4月から、2階建ての木造住宅などの大規模なリフォームに建築確認の手続きが必要になりました。大規模なリフォームとは、壁、柱、床、はり、屋根、階段のいずれかについて、過半を直す工事などを指します。
キッチンや浴室などの水回りのリフォームのように、これに当たらない工事は手続きが要りません。間取りの変更や、屋根・外壁を広く直す工事を考えるときは、工事会社に建築確認の要否を確かめましょう。
空室リフォームの進め方
- 管理会社に、内見の数と、断られた理由を聞く
- 安全と不具合の点検をして、直す必要がある所を先に決める
- 清潔さとにおい、第一印象の順に、費用の小さいものから見積もりを取る
- 工事の内訳を、修繕と、価値を高める部分に分けてもらう
- 工事のあと、写真を撮り直して募集を出し直す
- 一定の期間で反応を見て、次の手に進むかを決める
場面で考える:築年数のたったワンルーム
Dさんのワンルームは、内見は入るのに申し込みがありません。理由を聞くと、壁紙の汚れと、古い照明で部屋が暗く見えることが挙がりました。
Dさんは間取りの変更の見積もりを取る前に、壁紙と照明の交換、水回りの清掃から手を付けました。写真を撮り直して募集し直し、反応を見てから次を考えることにしました。
設備を足すときの分かれ道
設備は、足せば選ばれるものではありません。次の条件で、足すかどうかを分けて考えます。
- 周りの似た部屋の多くにある設備が、自分の部屋にないなら、足すと比べられたときに負けにくくなる
- 周りの部屋にもあまりない設備なら、選ばれる理由になることもあるが、費用の回収は慎重に見る
- 入居者が自分で用意しやすいものより、建物に付ける設備の方が差になりやすい
- 単身向けか家族向けかで、求められる設備は変わる。入居してほしい人を先に決める
写真の撮り直しで効果を引き出す
リフォームをしても、募集の写真が古いままでは伝わりません。工事のあとは、明るい時間に、窓を開けて部屋を広く見せる角度で撮り直します。
直した場所は、説明文にも書き添えます。「水回りを交換済み」「壁紙を張り替え済み」など、内見の前に伝わる言葉にしておくと、問い合わせにつながりやすくなります。
退去から募集までの段取り
空室の期間を短くするには、退去の前から段取りを考えておくことが大切です。
- 退去の連絡が来たら、管理会社と立ち会いの日を決める
- 立ち会いで、原状回復の範囲と、リフォームを考える場所を分けて確かめる
- 原状回復とリフォームの見積もりを、同じ時期に取る
- 工事の期間を確かめ、終わる時期に合わせて募集の準備をする
原状回復とリフォームを別々に頼むと、工事の日程が重なり、空室の期間が延びることがあります。まとめて段取りを組むと、無駄が減ります。
言葉の言い換え
- 原状回復:退去のときに、借りたときの状態に戻すこと
- 修繕費:通常の維持管理や修理のための費用。その年の経費になる
- 資本的支出:建物の使える期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分の支出
- 大規模の修繕・模様替:壁、柱、床、はり、屋根、階段のいずれかの過半を直す工事など
- 建築確認:工事の前に、計画が建築の決まりに合っているかを確かめてもらう手続き
場面で考える:入居者が長く住んでいた部屋
Eさんの部屋は、前の入居者が長く住んでいたため、全体に古さが目立ちます。原状回復だけでは、周りの部屋とくらべて見劣りしそうです。
Eさんは、立ち会いのときに原状回復の範囲を確かめ、そのうえで水回りと床をリフォームの候補にしました。工事の内訳を分けて見積もってもらい、税の扱いも税理士に確かめることにしました。
空室リフォームでよくある失敗
- 断られた理由を聞かずに、大きな工事から始める
- 周りの水準より大きく上の仕上げにして、費用を回収できない
- 工事のあと、写真を撮り直さずに古い写真のまま募集する
- 工事の内訳を分けず、税の扱いがあとで分からなくなる
- 建築確認が要る工事かどうかを確かめずに進める
見積もりの前のチェックリスト
- 内見のあとで断られた理由を聞いたか
- 安全と不具合の点検を済ませたか
- 周りの似た部屋の設備と仕上げを確かめたか
- 工事ごとの費用と、期待できる変化の根拠を聞いたか
- 工事の内訳を、修繕と価値を高める部分に分けてもらったか
よくある質問
- 空室のリフォームは何から直せばいい?
- 安全と不具合、清潔さとにおい、第一印象、設備、間取りの順が基本です。内見で断られた理由に合う所から直します。
- 壁紙の張り替えは効果がある?
- 汚れや古さが断られた理由なら、効きやすい工事の一つです。理由がほかにあるなら、先にそちらを確かめましょう。
- リフォームの費用は経費になる?
- 通常の維持管理や修理なら、その年の修繕費になります。価値を高める部分は、減価償却で分けて経費にします。
- 20万円未満の工事は修繕費にできる?
- 国税庁の案内では、1つの修理や改良の金額が20万円未満なら、修繕費として申告できます。
- 間取りを変えるリフォームに手続きはいる?
- 2階建ての木造住宅などで柱や壁などの過半を直す工事は、建築確認が必要です。工事会社に要否を確かめましょう。
あわせて考えたいこと
家賃を下げる前に見直したいことは「空室対策」、条件を広げる工夫は「ペット可賃貸のメリット・デメリット」で整理しています。部屋ごとに貸す形に変える場合は「シェアハウス改修の建物・消防」もご覧ください。
工事の相談先や、貸し方を変える相談先は会社一覧から探せます。いくつかの方法をまとめて比べたい方は、一括相談の窓口もご確認ください。
まとめ
- 空室のリフォームは、安全と不具合、清潔さ、第一印象、設備、間取りの順に考える
- 先に、断られた理由が部屋の状態にあるかを確かめる
- 費用は、上がる家賃や空室が縮む月数で回収できるかを見て決める
- 修繕費はその年の経費、価値を高める部分は減価償却で分けて経費にする
- 2階建ての木造住宅などの大規模なリフォームは、建築確認が必要




