定期借家型のサブリースとは?普通借家との違いと、賃料・終了・途中解約の決まり

サブリースの借上げの契約には、普通借家と定期借家の2つの形があります。この記事では、定期借家型のサブリースの意味と、家賃の減額・契約の終了・途中解約がどう変わるかを、借地借家法と国のガイドラインで整理します。
結論
- 定期借家型のサブリースとは、オーナーとサブリース会社の借上げの契約を、更新のない定期建物賃貸借(借地借家法38条)で結ぶ形です。
- 家賃を減額しない特約を定めれば、借地借家法32条の減額請求は適用されず、期間が満了すれば契約を終えられます。
- その代わり、オーナーからの途中解約は原則としてできません。書面での契約と、事前の説明書面の交付が欠かせません。
「サブリースは家賃を下げられるし、やめたくてもやめられない」。そんな話を聞いて、借上げに踏み切れない方もいるでしょう。
その不安の多くは、借上げの契約が普通借家の形で結ばれていることから生まれます。同じサブリースでも、定期借家の形にすると、家賃と契約の終わり方の決まりが変わります。
この記事では、定期借家型のサブリースに絞って、その意味と、普通借家型との違い、契約前に確かめる点を説明します。定期借家そのものの基本は「定期借家と普通借家の違い」で整理しています。
定期借家型のサブリースとは
借上げの契約を「更新のない契約」で結ぶ
サブリースには、2つの契約があります。オーナーとサブリース会社の「借上げの契約」と、サブリース会社と入居者の「又貸しの契約」です。定期借家型のサブリースとは、このうち借上げの契約を、定期建物賃貸借で結ぶ形をいいます。
定期建物賃貸借とは、期間が満了すれば更新されずに終わる建物の賃貸借です。借地借家法38条1項は、書面で契約することを条件に、更新がない旨を定められるとしています。
言葉の言い換え
- 定期借家:更新のない建物の賃貸借。期間が来れば終わる
- 普通借家:更新があるのが前提の建物の賃貸借。終えるには正当な理由が要る
- 借賃増減請求:家賃が不相当になったとき、増額や減額を求められる権利(借地借家法32条)
- 正当事由:貸主が更新を断ったり解約したりするのに必要な、正当な理由(借地借家法28条)
普通借家型との違いを比べる
国土交通省のサブリースのガイドラインは、普通借家型と定期借家型のそれぞれについて、オーナーに説明すべき点を示しています。主な違いを表にまとめます。
| 比べる点 | 普通借家型 | 定期借家型 |
|---|---|---|
| 家賃の減額請求 | 借地借家法32条により、会社は減額を求められる | 減額しない特約があれば32条は適用されない |
| 契約の終わり方 | オーナーからの更新拒絶に正当事由が要る | 期間の満了で終えられる |
| オーナーからの途中解約 | 契約と法律の定めによる | 原則としてできない |
| 契約の方式 | 書面の交付が要る(賃貸住宅管理業法31条) | 左に加えて、借地借家法38条の書面と事前説明 |
家賃の減額請求が適用されない理由
借地借家法38条9項は、定期建物賃貸借で家賃の改定に関する特約がある場合、32条を適用しないと定めています。国土交通省の「解釈・運用の考え方」も、定期借家型で家賃を減額できない特約を定めれば、サブリース会社は減額を求められないことを説明するよう求めています。
普通借家型では、たとえ「一定期間は減額しない」と契約に書いても、32条に基づく減額請求はできるとされています。ここが、2つの形のいちばん大きな違いです。普通借家型の減額の扱いは「サブリースの賃料減額」で説明しています。
特約は「家賃の改定に係る特約」であることが前提です。減額しない旨が契約書に書かれているか、増額の扱いはどうなっているかを、条文の文言で確かめます。
期間が来れば終えられる
普通借家型では、オーナーが更新を断るには正当事由が要ります(借地借家法28条)。定期借家型では、更新がないため、期間の満了で契約を終えられます。
将来、自分で使いたい、売りたい、建て替えたいという予定がある方には、終わりが見える形は計画を立てやすい面があります。
定期借家型のデメリット
オーナーからの途中解約は原則できない
国土交通省の資料は、定期借家型ではオーナーからの途中解約は原則としてできないことを説明するよう求めています。期間中に事情が変わっても、契約は期間の満了まで続くのが基本です。
一方で、サブリース会社の側から途中で解約できる条項が入っていることもあります。自分は抜けられず、相手は抜けられる。そんな片側だけの契約になっていないかを確かめます。
家賃は上がりにくい
家賃を改定しない特約は、減額だけでなく、増額の扱いにもかかわります。周りの家賃が上がっても、特約の内容によっては家賃を上げられません。
減額されない安心と、上がらない不自由は表裏です。どちらを重く見るかは、物件の場所や借入れの返済計画で変わります。
期間が来れば借上げも終わる
期間が満了すれば、サブリース会社の借上げも終わります。そのとき入居者がいれば、オーナーがその入居者とどう向き合うかを決める必要があります。再契約するのか、管理委託に切り替えるのかを、満了の前から考えておきます。
再契約は、前の契約の続きではなく、新しい契約です。家賃や期間の条件は、その時点の話し合いで決め直します。前と同じ条件で続けられるとは限らない点を、あらかじめ頭に入れておきます。
定期借家型にするための手続き
借地借家法38条は、定期建物賃貸借の成立に、決まった手続きを求めています。手続きを欠くと、更新がない旨の定めが無効になります。
- 契約の前に、更新がなく期間の満了で終わる旨を書いた書面を、借りる側(サブリース会社)に交付して説明する(38条3項)。相手の承諾があれば電磁的方法でもよい(38条4項)
- 賃貸住宅管理業法30条の重要事項説明で、契約の類型が定期借家であることの説明を受ける(施行規則45条9号)
- 公正証書などの書面か、電磁的記録で契約を結ぶ(38条1項・2項)
- 期間が1年以上なら、期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終わる旨を通知する(38条6項)
38条3項の説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効になります(38条5項)。この場合は普通借家として扱われるおそれがあるため、書面の控えを残します。
通知を忘れたとき
38条6項の通知を通知期間内に出さないと、契約の終了をサブリース会社に主張できません。ただし、期間の経過後に通知すれば、通知の日から6か月が過ぎた後は終了を主張できます。満了日と通知の期限は、契約時に手帳や管理表に書いておきます。
入居者への影響
又貸しの契約は別に考える
借上げの契約が定期借家でも、入居者との又貸しの契約が同じ形とは限りません。入居者との契約が普通借家だと、借上げが終わった後の扱いが問題になります。
借地借家法34条は、転貸がされている建物の賃貸借が期間の満了で終わるとき、貸主が入居者(転借人)に通知しなければ、その終了を入居者に主張できないと定めています。通知をすると、入居者との転貸借は通知の日から6か月で終わります。
地位の承継の定めを確かめる
施行規則45条13号は、借上げの契約が終わったときのサブリース会社の権利義務の承継を、重要事項説明の項目にしています。オーナーが入居者の貸主の立場を引き継ぐ定めがあるかを確かめます。
国土交通省の資料は、立場を引き継いだ場合、正当な事由なく入居者の更新を拒めないこと、敷金を返す義務も引き継ぐことを、オーナーが認識できるようにするよう求めています。入居者の扱いを含めた転貸の基本は「転貸の承諾」でも説明しています。
定期借家型が向く場面・向かない場面
判断の分かれ道
定期借家型が合うかどうかは、物件の先の予定と、家賃に何を求めるかで分かれます。次の表で、自分の状況に近いものを探してみてください。
| オーナーの状況 | 定期借家型の向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 数年後に自宅として使う予定がある | 向きやすい | 期間の満了で終えられる |
| 借入れの返済額が毎月決まっている | 向きやすい | 減額しない特約で収入の見通しが立つ |
| 周りの家賃が上がりそうな場所にある | 慎重に考える | 特約の内容によっては家賃を上げられない |
| 途中で売る可能性がある | 慎重に考える | 途中解約が原則できず、契約は買主に引き継がれる |
場面の例
たとえば、親から相続した区分マンションを、子どもが大学を出たら住まわせたいと考えている方がいるとします。この場合、子どもの卒業に合わせて期間を決めた定期借家型にすれば、満了の時期に部屋を空ける段取りが立てやすくなります。
一方、駅の再開発が進む地域で物件を持つ方は、家賃を改定しない特約が足かせになることもあります。減額されない安心を取るか、増額の余地を残すかは、特約の書き方で調整できる場合があります。サブリース会社と条文を詰めることが大切です。
契約前のチェックリスト
- 契約書に「更新がない」旨と、期間が明記されているか
- 38条3項の説明書面を、契約書とは別に受け取ったか
- 家賃を改定しない特約の文言と、減額・増額の扱い
- サブリース会社の側からの途中解約の条項と、その予告期間
- 期間満了の通知の期限(満了の1年前から6か月前)
- 満了時の入居者の扱いと、敷金の引き継ぎ
よくある失敗
よくあるのは、契約書の表題に「定期」とあるだけで、事前の説明書面を受け取っていない例です。もう1つは、満了の通知を忘れ、終了を主張できる時期が遅れる例です。再契約するときも、あらためて重要事項説明が行われます。更新時の考え方は「サブリースの契約更新」をご覧ください。
よくある質問
- 定期借家型のサブリースなら家賃は下がりませんか?
- 家賃を減額しない特約を定めれば、借地借家法32条の減額請求は適用されません。特約がなければ、定期借家でも減額請求の対象になり得ます。
- 定期借家型ならいつでも契約をやめられますか?
- やめられません。期間の満了で終えられる一方、オーナーからの途中解約は原則としてできません。
- 普通借家型から定期借家型に切り替えられますか?
- 相手との合意で新しい契約を結ぶ形になります。38条の書面と事前説明、重要事項説明をあらためて行う必要があります。
- 期間満了の通知はいつ出しますか?
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに出します。遅れても、通知から6か月が過ぎれば終了を主張できます。
- 契約が終わると入居者は出ていきますか?
- すぐには出ていきません。入居者への通知から6か月で転貸借が終わるほか、オーナーが貸主の立場を引き継ぐ定めがあれば、契約はそのまま続きます。
- 定期借家型かどうかは、どこを見れば分かりますか?
- 重要事項説明書の契約期間の欄で、普通借家か定期借家かが示されます。あわせて、38条3項の説明書面を受け取っているかを確かめてください。
サブリースの形をまとめて相談する
普通借家型と定期借家型のどちらが合うかは、物件をいつまで持つか、借入れをどう返すかで変わります。一括相談なら、条件を伝えて複数の会社の提案を比べられます。会社は会社一覧からも探せます。重要事項説明の全体は「サブリースの重要事項説明」、やめ方は「サブリースの解約」で整理しています。
まとめ
- 定期借家型は、借上げの契約を更新のない定期建物賃貸借で結ぶ形
- 減額しない特約があれば、借地借家法32条の減額請求は適用されない
- 期間の満了で終えられるが、オーナーからの途中解約は原則できない
- 事前の説明書面と書面での契約を欠くと、更新がない旨の定めは無効
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに通知する
- 満了時の入居者の扱いと敷金の引き継ぎを、契約前に確かめる




