定期借家と普通借家の違いとは?オーナーが選ぶ基準と契約手続き5ステップ

定期借家と普通借家は、契約が更新されるかどうかが大きな違いです。この記事では、両者の違いを表で比べ、オーナーがどちらを選ぶかの基準と、定期借家を結ぶ手続きを順番に説明します。
結論
- 定期借家と普通借家のいちばんの違いは、契約の更新があるかどうかです。
- 普通借家は、貸主が更新を断るのに「正当な事由」が要り、原則として更新が続きます。
- 定期借家は、期間が来れば更新なく終わります。ただし書面での契約と、契約前の別の書面での説明が要ります。
- 将来使う予定がある物件は定期借家、長く安定して貸したい物件は普通借家が向いています。
家を貸そうと考えたとき、「一度貸したら戻ってこないのでは」と不安になる方は多いです。実家をいずれ使うかもしれない。数年後に売るかもしれない。そんな事情があると、契約の形が気になります。
借家の契約には、普通借家と定期借家の2種類があります。どちらを選ぶかで、貸したあとの自由度が大きく変わります。この記事では、法律の決まりにそって違いを整理し、選び方と手続きをまとめます。
定期借家と普通借家の違いを一言で
普通借家とは
普通借家とは、期間が来ても原則として更新される借家契約です。貸主から更新を断るには「正当な事由」が必要で、借主の住まいが守られる仕組みです。
定期借家とは
定期借家(定期建物賃貸借)とは、決めた期間が終わると、更新されずに確定的に終わる借家契約です。借地借家法38条に定められています。続けて貸したいときは、双方が合意して「再契約」を結びます。
ポイント
- 普通借家は「続くのが原則」、定期借家は「終わるのが原則」
- 定期借家は、書面の契約と、契約前の別の書面での説明がそろって初めて成り立つ
- 定期借家でも、双方が合意すれば再契約で住み続けてもらえる
違いを表で比べる
主な違いを表にまとめます。条文は借地借家法です。
| 項目 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | 原則として更新される | 更新されない(再契約は合意で可) |
| 貸主が更新を断る条件 | 正当な事由が必要(28条) | 期間満了で終了する |
| 契約の方法 | 定期借家のような書面の要件はない | 書面または電磁的記録が必要(38条1項・2項) |
| 契約前の説明 | 法律上の特別な決まりはない | 更新がないことを別の書面で説明(38条3項) |
| 1年未満の期間 | 期間の定めがない契約とみなされる(29条) | 1年未満でも決められる |
| 期間満了の前の通知 | 更新しないなら1年前から6か月前に通知(26条) | 期間1年以上なら1年前から6か月前に終了を通知(38条6項) |
| 家賃の見直し | 増額・減額の請求ができる(32条) | 家賃改定の特約があれば32条は使われない(38条9項) |
普通借家の「正当な事由」
普通借家で貸主が更新を断るには、正当な事由が要ります。判断では、貸主と借主それぞれが建物を必要とする事情、これまでの経過、建物の状態などが考えられます。立ち退き料のような申し出も、考え方の一つに入ります(28条)。
つまり、「自分で使いたい」だけでは認められない場合があるということです。ここが、オーナーが定期借家を検討する大きな理由です。
定期借家の「期間満了の通知」
定期借家で期間が1年以上のときは、満了の1年前から6か月前までに「期間満了で終わります」と借主に知らせます。これを忘れると、終了を借主に主張できません(38条6項)。
通知が遅れた場合は、通知した日から6か月がたてば終了を主張できます。期間1年未満の契約では、この通知はいりません(国土交通省の定期建物賃貸借Q&A)。
期間満了の通知を忘れると、予定の日に明け渡してもらえないことがあります。管理会社に任せる場合も、通知の担当と時期を契約書で決めておきましょう。
定期借家の中途解約と家賃の決まり
借主からの中途解約
居住用で床面積200平方メートル未満の定期借家では、借主に中途解約の道があります。転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情で住めなくなったとき、解約を申し入れられます。契約は申し入れから1か月で終わります(38条7項)。
この決まりより借主に不利な特約は無効です(38条8項)。「中途解約は一切できない」と書いても、この場面では効きません。
家賃の見直し
普通借家では、事情が変われば貸主も借主も家賃の増減を請求できます(32条)。定期借家で家賃改定の特約を決めた場合は、この32条は使われません(38条9項)。
期間中の家賃をあらかじめ決めておきたいときは、改定の特約を契約に入れることを検討します。
オーナーが選ぶ基準
定期借家が向いている場合
- 数年後に自分や家族が住む予定がある
- 売却や建て替えの時期がおおむね決まっている
- 転勤の間だけ自宅を貸したい
- 入居者の様子を見て、続けるかを決めたい
普通借家が向いている場合
- 長く住んでくれる入居者を求めている
- 物件を使う予定が当面ない
- 更新料や更新の手続きを前提に運用している
募集条件への影響は、地域や物件によって違います。定期借家にすると申し込みが減るのでは、と心配な場合は、地元の管理会社に募集の見通しを聞くと判断しやすくなります。
迷ったときの分かれ道
- 戻って使う時期がはっきりしているなら、定期借家で期間をその時期に合わせる
- 使うかどうか自体が未定なら、定期借家で期間を区切り、満了前に再契約を考える
- 当面使う予定がなく長く貸したいなら、普通借家で入居者の定着を優先する
期間の長さで迷うときは、「いつまでに物件が必要か」から逆算します。家族の予定や売却の見通しを先に書き出すと、決めやすくなります。
例:親の家をしばらく貸したいAさんの場合
たとえば、Aさんは親が住んでいた一戸建てを相続しました。将来は子どもが住むかもしれず、売る決心もついていません。
普通借家で貸すと、戻ってほしい時期に退去してもらえないおそれがあります。定期借家で期間を区切り、満了が近づいたら家族の予定を見て再契約を決める。こうすれば、貸しながら選択肢を残せます。
平成12年3月1日より前に結んだ居住用の普通借家は、当分の間、合意しても定期借家に切り替えられません(国土交通省の定期建物賃貸借Q&A)。古くからの入居者がいる物件では注意してください。
定期借家の契約手続き5ステップ
定期借家は、手順を一つ欠くと「更新のない契約」になりません。順番に進めます。
- 契約期間を決める。終わりの日を年月日で決めておく
- 契約書とは別の「事前説明の書面」を用意する。更新がないこと、期間満了で終わることを書く
- 契約を結ぶ前に、その書面を借主に渡して説明する。説明した記録を残しておく
- 書面(または電磁的記録)で契約を結ぶ。契約書に更新がない旨を書く
- 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了の通知を出す
事前説明は「別の書面」で
事前説明は、契約書とは別の書面で行います。説明をしなかったときは、更新がないという定めが無効になります(38条5項)。つまり、普通借家と同じ扱いになってしまいます。
国土交通省のQ&Aでは、宅地建物取引業者が行う重要事項説明だけでは、この事前説明にならないとしています。仲介の会社が貸主の代理として事前説明をすることはできます。
電子での契約もできる
定期借家の契約は、電磁的記録で結んでも書面で結んだものとみなされます(38条2項)。事前説明の書面も、借主の承諾を得れば電子で渡せます(38条4項)。
国土交通省は「定期賃貸住宅標準契約書」を公開しています。事前説明の書面の書式も入っているので、ひな形として参考になります。
普通借家から定期借家へ切り替えるとき
居住用の場合
国土交通省のQ&Aが「合意しても切り替えられない」としているのは、平成12年3月1日より前に結んだ居住用の契約です。それ以後の契約でも、借主にとっては不利になる変更です。弁護士など専門家に確かめたうえで、丁寧に説明し、納得してもらうことが欠かせません。
居住用以外の場合
店舗や事務所など居住用以外の建物は、国土交通省のQ&Aで、合意解除のうえ新たに定期借家を結べるとされています。
定期借家でよくある失敗と避け方
説明の書面を作らずに契約した
契約書に「更新しない」と書いただけで、別の書面での事前説明をしていない例です。この場合、更新がないという定めは無効になり、普通借家と同じ扱いになります。説明の書面と、説明した記録をセットで残しましょう。
終了の通知を出し忘れた
期間1年以上の契約で、満了の1年前から6か月前までの通知を忘れる例です。通知が遅れると、通知の日から6か月がたつまで終了を主張できません。満了日を決めたら、通知を出す時期も予定表に入れておきます。
中途解約を一切認めない特約を入れた
居住用で床面積200平方メートル未満なら、やむを得ない事情による借主の解約は認められます。借主に不利な特約は無効になるため、条文に沿った書き方にしておきましょう。
契約前に確かめるチェックリスト
- 物件をいつまでに使いたいか、家族で話し合ったか
- 契約期間の終わりの日を年月日で決めたか
- 契約書とは別の、事前説明の書面を用意したか
- 事前説明を誰が行い、どう記録を残すか決めたか
- 期間1年以上なら、終了の通知を誰がいつ出すか決めたか
- 家賃改定の特約を入れるかどうか決めたか
- 管理会社に任せる範囲を、管理の契約で決めたか
よくある質問
- 定期借家は1年未満の期間でも結べますか?
- 結べます。普通借家では1年未満は期間の定めがないとみなされますが、定期借家にはその決まりが使われません(借地借家法38条1項)。
- 定期借家の期間が終わったら、必ず退去してもらえますか?
- 期間1年以上の場合は、満了の1年前から6か月前までに終了の通知が必要です。通知を忘れると、通知した日から6か月がたつまで終了を主張できません。
- 定期借家で、借主は途中で解約できますか?
- 居住用で床面積200平方メートル未満なら、転勤や療養などやむを得ない事情のとき、申し入れから1か月で解約できます。それ以外の場合は契約の定めによります。
- 事前説明を仲介会社に任せてもよいですか?
- 仲介会社が貸主の代理として説明することはできます。ただし重要事項説明だけでは足りないため、別の書面での事前説明を行ってもらいましょう。
- 定期借家の再契約はできますか?
- 貸主と借主の双方が合意すれば、新しい契約として再契約できます。条件を見直す機会にもなります。
- 定期借家にすると家賃を下げる必要がありますか?
- 法律で決まった下げ幅はありません。募集への影響は地域や物件によって違うため、地元の管理会社に見通しを聞いて決めましょう。
契約の形を相談できる会社
定期借家と普通借家のどちらが合うかは、物件の今後の予定と、地域の募集状況で変わります。管理会社の一覧から地元の会社を探し、募集の見通しを聞いてみてください。社宅として法人に貸す方法なら、社宅の会社の一覧も参考になります。
今の管理会社に不満がある場合は、管理会社の変更も読んでみてください。売るか貸すかで迷っている方は、実家は売るか貸すかが役に立ちます。複数の会社にまとめて聞きたい場合は、一括相談の説明をご覧ください。
まとめ
- 普通借家は原則更新され、貸主が断るには正当な事由が要る
- 定期借家は期間満了で終わり、続けるなら合意で再契約する
- 定期借家は書面の契約と、契約前の別の書面での説明が必須
- 期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前に終了を通知する
- 将来使う予定がある物件は定期借家、長く貸すなら普通借家が目安




