賃貸の仲介手数料の上限とは?家賃1か月分の1.1倍の決まりと貸主の負担

賃貸の仲介手数料には、国土交通省の告示で上限が決められています。家賃の1.1倍・0.55倍の意味、貸主と借主の分け方、広告料の扱い、2024年に始まった長期の空き家の特例を、オーナーの立場から整理します。
結論
- 賃貸の仲介手数料の上限は、貸主と借主の両方から受け取る合計で「家賃1か月分の1.1倍」です(国土交通省の告示)。
- 住まい用の部屋では、片方から受け取れるのは原則「家賃1か月分の0.55倍」までです。依頼のときに承諾を得ていれば、この割り振りは変えられます。
- 1年を超えて空いている戸建てなど「長期の空家等」は、2024年7月から、貸主から受け取れる額を合計「1か月分の2.2倍」まで広げる特例があります。
「募集を頼んだら、仲介手数料とは別に広告料を求められた」「借主が手数料を払わないなら、こちらが払うのか」。部屋を貸すオーナーから、よく出る疑問です。
仲介手数料は、会社ごとに自由に決められるものではありません。宅地建物取引業法にもとづく国の告示で、受け取れる上限が決まっています。ただし、上限の中でだれがいくら払うかには、ある程度の幅があります。
この記事では、上限の数字の読み方、貸主と借主の分け方、広告料との違い、長期の空き家の特例を、計算の例とあわせて説明します。
賃貸の仲介手数料とは
意味を一言で
賃貸の仲介手数料とは、部屋を貸したい人と借りたい人の間に入って契約をまとめた不動産会社に払う報酬です。法律では「媒介の報酬」と呼びます。
上限は、宅地建物取引業法第46条にもとづく国土交通大臣の告示で決まっています。不動産会社は、この上限を超えて受け取ることはできません。
「仲介」と「代理」の違い
不動産会社のかかわり方には「媒介(仲介)」と「代理」があります。媒介は、両者の間に立って契約をまとめる形です。代理は、依頼した人の代わりに契約まで進める形です。
ふだんの部屋探しや入居者募集は、多くが媒介です。この記事も、媒介を中心に説明します。
仲介手数料の上限は「家賃1か月分の1.1倍」
合計で見る決まり
告示では、貸主と借主の双方から受け取る報酬の合計を、家賃1か月分の1.1倍以内としています。この上限は、消費税を含んだ額です。
国土交通省の通達(解釈・運用の考え方)では、合計がこの範囲内であれば、双方からどんな割合で受け取ってもよいとしています。片方だけから受け取ることもできます。
住まい用の部屋は片方0.55倍まで
住まい用の建物では、もう一段の決まりがあります。片方から受け取れるのは、原則として家賃1か月分の0.55倍までです。
例外は、媒介の依頼を受けるときに、その人から0.55倍を超えることの承諾を得ている場合です。この承諾は依頼のときに得る必要があり、依頼の後に得たものは認められないと、通達に書かれています。
住まい用にあたらない建物
通達では、「居住の用に供する建物」は、もっぱら住まいに使う建物を指すとしています。事務所や店舗を兼ねるものは含みません。
店舗や事務所の貸し借りで権利金のやり取りがある場合は、別の計算方法の特例もあります。この特例は、住まい用の建物には使えません。
| 区分 | 双方からの合計 | 片方から |
|---|---|---|
| 住まい用の建物 | 家賃1か月分の1.1倍以内 | 原則0.55倍以内(依頼時の承諾があれば合計の範囲で変えられる) |
| 店舗・事務所など | 家賃1か月分の1.1倍以内 | 割合の決まりはない |
| 長期の空家等の特例 | 家賃1か月分の2.2倍以内 | 借主からは通常の上限まで |
ポイント
- 上限は「双方の合計」で1か月分の1.1倍
- 住まい用は、片方から0.55倍までが原則
- 割り振りを変えるには、依頼のときの承諾が必要
- 上限の中で、だれがいくら払うかは話し合いで決まる
計算の例で確かめる
家賃8万円の住まい用の部屋
家賃8万円の部屋を例にします(数字は説明のための仮のものです)。
- 双方からの合計の上限:8万円×1.1=8万8,000円
- 承諾がない場合の片方の上限:8万円×0.55=4万4,000円
借主と貸主から4万4,000円ずつ受け取る形が、承諾のない場合の上限です。借主が依頼のときに承諾していれば、借主から8万8,000円を受け取り、貸主からは受け取らない形もとれます。
貸主が負担することはあるか
合計の上限は変わらないので、借主の負担を軽くすれば、その分を貸主が負担する形になり得ます。反対に、借主が多く負担すれば、貸主の負担は小さくなります。
どちらが払うかは、媒介契約のときの説明と合意で決まります。オーナーは、募集を頼むときに自分の負担がいくらかを確かめておきましょう。
広告料は仲介手数料と別か
告示が認めているもの
告示では、上限の報酬のほかには、原則として報酬を受け取れないとしています。例外は、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額です。
通達では、案内料や申込料、依頼していない広告の料金を受け取ることはできないと明記しています。
オーナーが確かめること
募集のときに「広告料」を求められたら、次の点を確かめます。
- 自分から頼んだ広告か、何に使うお金か
- 金額と、払う時期はいつか
- 仲介手数料とは別のものとして説明を受けたか
遠い場所での現地調査など、依頼者が特別に頼んだ実費は、事前に承諾していれば別に受け取れるとされています。逆に、頼んでいない費用を後から求められたら、内訳を確かめてから払いましょう。
長期の空き家の特例(2024年7月から)
どんな特例か
国土交通省は告示を見直し、2024年7月1日から「長期の空家等」の貸し借りの特例を始めました。空き家を扱う手間に見合う報酬を受け取れるようにして、空き家の活用を進めるねらいです。
この特例では、貸主と借主から受け取る合計を、家賃1か月分の2.2倍まで広げられます。ただし、借主から受け取る額は通常の上限の範囲内に限られます。上乗せできるのは、貸主から受け取る分だけです。
「長期の空家等」にあたるもの
通達では、依頼を受ける時点で次のどちらかにあたるものとしています。
- 長い間、住まいや事業などに使われていない(例:少なくとも1年を超えて住む人がいない戸建てや分譲マンションの空き室)
- これから先も使う見込みがない(例:相続などで使われなくなった直後の空き家で、所有者が使う予定のないもの)
入居者を募集している賃貸アパートの空き室は、事業に使われているとみなされ、あたりません。
特例を使うときの手順
- 物件が「長期の空家等」にあたるかを、不動産会社と確かめる
- 通常の上限を超える報酬額について、媒介契約の前に説明を受ける
- 上限の範囲内で金額に合意し、媒介契約を結ぶ
- 借主の負担が通常の上限内かを確かめる
通達では、上限を超えて受け取る場合は、媒介契約のときにあらかじめ説明し、合意する必要があるとしています。
場面の例
相続した実家を、売らずに貸したいと考えるケースです。何年も空いていて、修繕も必要です。手間がかかる物件ほど、不動産会社が引き受けにくいことがあります。
特例を使えば、貸主が少し多めに報酬を払う代わりに、募集を引き受けてもらいやすくなる場合があります。貸すか売るかの比べ方は「実家は売るか貸すか」で説明しています。
言葉の言い換え
告示や通達の言葉は、ふだんの言い方に直すと分かりやすくなります。
| 告示・通達の言葉 | ふだんの言い方 |
|---|---|
| 媒介 | 仲介。貸す人と借りる人の間に立って契約をまとめること |
| 借賃 | 家賃 |
| 依頼者の双方 | 貸主と借主の両方 |
| 居住の用に供する建物 | 住まいとして使う建物 |
| 依頼者の承諾 | 0.55倍を超えて払うことへの、依頼のときの同意 |
貸主と借主、それぞれの立場から
貸主(オーナー)の場合
オーナーは、入居者の募集を不動産会社に頼む立場です。媒介契約のときに、自分が払う報酬の額と、借主に求める額を確かめます。
募集の条件として借主の負担を軽くしたいときは、その分を自分が負担するかどうかを決めておきます。合計の上限は同じなので、どちらかが軽くなれば、もう一方の負担が大きくなる関係です。
借主の場合
借主の側から見ると、住まい用の部屋では、依頼のときに承諾していなければ、0.55倍を超えて求められることはありません。オーナーとして募集を頼むときも、借主にどう説明されるかを知っておくと、入居の前のもめごとを防げます。
場面の例:1階を店舗として貸す
自宅の1階を店舗として貸すケースです。店舗は住まい用にあたらないため、片方から0.55倍までという決まりはかかりません。合計1.1倍以内であれば、貸主と借主の割り振りは話し合いで決まります。
店舗を兼ねる住まいも、住まい用にはあたりません。用途がはっきりしないときは、募集を頼む会社に、どちらの扱いになるかを確かめましょう。
よくある失敗と防ぎ方
負担額を確かめずに募集を頼む
上限の中での割り振りは、媒介契約のときに決まります。後から「貸主にも請求が来た」とならないよう、依頼の前に負担額を書面で確かめます。
長期の空き家にあたると思い込む
特例は、長い間使われていない空き家などが対象です。入居者を募集中の賃貸アパートの空き室は、あたりません。自分の物件があたるかは、依頼の前に不動産会社と確かめましょう。
広告料と手数料を混同する
広告料は、自分が頼んだ広告の料金に限られます。名目だけで判断せず、何の費用かを聞きましょう。
募集を頼む前に聞く順番
- 物件が住まい用か、店舗などを兼ねるかを伝える
- 仲介手数料の合計と、貸主・借主それぞれの負担を聞く
- 借主の承諾をどう得るかを聞く
- 広告料など、手数料のほかにかかるお金があるかを聞く
- 説明された内容を、媒介契約の書面で確かめる
依頼前のチェックリスト
- 家賃1か月分の1.1倍を超えていないか
- 住まい用なら、借主と自分の負担がそれぞれいくらか
- 広告料を求められたら、自分が頼んだ広告か
- 長期の空き家の特例を使うなら、事前の説明と合意があるか
よくある質問
- 賃貸の仲介手数料の上限はいくら?
- 貸主と借主から受け取る合計で、家賃1か月分の1.1倍以内です。住まい用は、片方から原則0.55倍以内です。
- 借主から家賃1か月分の1.1倍を受け取るのは違反?
- 依頼を受けるときに借主の承諾を得ていれば、合計の上限内で認められます。承諾がなければ、片方から0.55倍までです。
- 貸主も仲介手数料を払う必要がある?
- 上限の中でどう分けるかは、媒介契約の説明と合意で決まります。借主の負担を軽くする分を、貸主が負担する場合もあります。
- 広告料は払わないといけない?
- 告示で認められているのは、依頼者が頼んだ広告の料金に相当する額です。頼んでいない広告の料金は受け取れないとされています。
- 空き家を貸すときの特例とは?
- 長期の空家等なら、貸主からの報酬を上乗せし、合計で家賃1か月分の2.2倍まで受け取れる特例です。2024年7月1日から始まりました。
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まとめ
- 賃貸の仲介手数料の上限は、双方の合計で家賃1か月分の1.1倍
- 住まい用は、片方から原則0.55倍まで。依頼時の承諾があれば割り振りを変えられる
- 上限の報酬のほかに受け取れるのは、依頼者が頼んだ広告の料金などに限られる
- 長期の空家等は、2024年7月から貸主分を上乗せし、合計2.2倍まで
- 特例で上限を超えるときは、媒介契約の前に説明と合意が必要
- 募集を頼む前に、自分の負担額を書面で確かめる




