賃貸のポータル掲載で知っておきたいこと|おとり広告の禁止とオーナーの役割

賃貸の部屋を不動産ポータルサイトに掲載してもらうときに、オーナーが知っておきたい決まりを整理した記事です。宅地建物取引業法の誇大広告の禁止、おとり広告に当たる例、オーナーが仲介会社に伝えることを順に説明します。
結論
- 賃貸の部屋をポータルサイトに載せるのは、ふつうは仲介会社や管理会社です。宅地建物取引業法第32条で、事実と著しく違う表示や、実際より著しくよいと誤解させる表示が禁じられています。
- 国土交通省は、決まった部屋を広告から速やかに消さずに載せ続けることも「おとり広告」に当たると示しています。
- オーナーの役割は、正しい情報を渡し、申し込みや契約が決まったらすぐ仲介会社に伝えることです。
空室を埋めるために、ポータルサイトにたくさん載せてほしい。そう考えるオーナーは多いと思います。
ただ、載せ方を間違えると、仲介会社が行政の処分を受けることがあります。決まった部屋が載ったままだと、問い合わせた人の信頼も失います。
この記事では、賃貸のポータル掲載に絞って、広告の決まりとオーナーの役割を説明します。募集の条件そのものの見直しは「募集条件の見直し」で整理しています。
賃貸のポータル掲載とは
意味を一言で
賃貸のポータル掲載とは、空いている部屋の情報を、部屋探しの人が見る不動産情報サイトに載せて、入居者を募ることです。載せるのは、仲介会社や管理会社がほとんどです。
誰が広告を出すのか
宅地建物取引業法では、建物の貸し借りの代理や仲介を仕事として行うことを、宅地建物取引業としています(第2条第2号)。オーナーが自分の部屋を自分で貸すことは、ここに入りません。
そのため、ポータルの広告の決まりは、主に仲介会社や管理会社に向けたものです。ただ、もとになる部屋の情報はオーナーから出ます。正しい情報を渡すことが、オーナーの大事な役割です。
言葉の言い換え
- ポータルサイト:たくさんの会社の物件情報をまとめて見られるサイト
- 宅建業者:宅地建物取引業の免許を持つ会社
- 誇大広告:実際より大げさに、よく見せる広告
- おとり広告:取引できない部屋や、取引する気のない部屋で客を集める広告
- 取引態様:広告を出す会社が、貸主か、代理か、仲介かの別
広告の決まり:誇大広告とおとり広告
誇大広告の禁止(第32条)
宅地建物取引業法第32条では、宅建業者が広告をするとき、所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通・家賃などについて、次の表示を禁じています。
- 著しく事実と違う表示
- 実際より著しくよい、または有利だと人に誤解させる表示
国土交通省の「解釈・運用の考え方」では、広告の媒体はチラシ・新聞・雑誌・テレビ・インターネットなど、種類を問わないとしています。ポータルサイトの広告も対象です。
おとり広告とは
国土交通省の考え方では、客を集めるために取引する気のない条件のよい物件を広告し、実際は別の物件をすすめる「おとり広告」にも、第32条が当てはまるとしています。実際にない物件を載せる「虚偽広告」も同じです。
おとり広告の3つの型
国土交通省の令和5年の通知では、不動産の表示に関する公正競争規約第21条を引き、次の3つの表示を禁止としています。
| 型 | 内容 | 賃貸での例 |
|---|---|---|
| 物件がない | 実際には取引できない物件 | 実在しない部屋を載せる |
| 取引の対象にならない | 物件はあるが取引できない | 決まった部屋を載せたままにする |
| 取引する気がない | 物件はあるが貸す気がない | 客を呼ぶためだけに載せる |
同じ通知では、景品表示法第5条第3号にもとづく告示でも、おとり広告が禁じられていると示しています。
通知に挙がっている具体例
- 相場より安い家賃などで客を呼び、「ほかで決まった」などと言って別の部屋をすすめる
- 決まった部屋を広告から速やかに消さずに載せ続ける
- 載せた当初から決まっている部屋を載せ続ける
- ほかの部屋の情報をもとに、家賃や広さ、間取りを書き換えて載せる(虚偽広告)
ポイント
- 誇大広告は、事実と著しく違う表示や、著しくよく見せる表示
- 決まった部屋を載せ続けるのも、おとり広告に当たる
- ポータルサイトなどインターネットの広告も対象
どこからが「著しく」違う表示か
国土交通省の「解釈・運用の考え方」では、著しく事実と違う表示とは、広告と事実の違いを知っていれば当然に誘われないものをいうとしています。違いの大きさだけで判断するものではないとされています。
例として、築10年を過ぎた建物を築1年と表示する場合が、虚偽広告に挙げられています。また、直線では駅まで1kmでも、実際の道のりが4kmある物件を「駅まで1kmの好立地」と表示すると、誇大広告に当たるとされています。
賃貸で気をつけたい表示の例
| 項目 | 気をつけたい表示 | そろえる資料 |
|---|---|---|
| 家賃・初期費用 | 実際の契約と違う額 | 募集の条件書 |
| 広さ・間取り | 図面と違う広さや部屋数 | 図面、登記の内容 |
| 築年 | 実際より新しい築年 | 登記の内容、建築の記録 |
| 駅からの距離 | 直線の距離で近く見せる | 実際の道のり |
| 設備 | 壊れている、もうない設備 | 設備の一覧 |
| 契約の形 | 定期借家を普通借家に見せる | 契約書のひな形 |
説明の言葉を選ぶときの考え方
広告の説明は、仲介会社がオーナーの情報をもとに書きます。オーナーが渡す説明も、次の考え方でそろえておくと安心です。
- 「近い」「広い」など比べる言葉は、実際の距離や広さと一緒に伝える
- 「新しい」は、何をいつ新しくしたかを具体的に伝える(例:○年に給湯器を交換)
- 周りの店や学校は、今あるものだけを伝える
- 弱みになる点(坂道、日当たり)も、聞かれたら答えられるようにしておく
弱みを先に伝えておくと、内見のあとの断りや、入居後の行き違いも減らせます。
違反したときにどうなるか
仲介会社への処分
第32条に違反した宅建業者には、国土交通大臣や都道府県知事が指示をしたり、1年以内の業務停止を命じたりできます(第65条)。罰則として、6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方も定められています(第81条)。
オーナーへの影響
処分を受けるのは広告を出した会社です。ただ、決まった部屋が載ったままだと、問い合わせた人に「もう決まりました」と伝えることになります。部屋の評判や、仲介会社との関係にも響きます。
オーナーが「この家賃で載せて」と頼んだ条件が、実際の契約の条件と違えば、事実と違う表示につながります。載せる条件と契約の条件は、必ずそろえます。
オーナーが仲介会社に伝えること
掲載の前に渡す情報
- 家賃・共益費・敷金・礼金など、お金の条件
- 広さ・間取り・築年・設備など、部屋の情報
- ペットや二人入居など、入居の条件
- 定期借家か普通借家かなど、契約の形
- 入居できる日
定期借家なのに普通借家と思わせる表示は、国土交通省の考え方で第32条違反になりうるとされています。契約の形は「定期借家と普通借家の違い」で確かめられます。
掲載のあとに伝えること
- 申し込みが入ったとき
- 契約が決まったとき
- 家賃や条件を変えたとき
- 設備が壊れて、載せている説明と違ってきたとき
取引態様の明示
宅建業者は広告をするとき、自分が貸主か、代理か、仲介かの別をはっきり示すよう定められています(第34条)。複数の会社に頼むときは、どの会社が、どの立場で載せているかを把握しておきます。
場面の例:複数の会社に募集を頼んだ
Dさんは、空室を早く埋めたくて、3社に募集を頼みました。1社で契約が決まったあと、ほかの2社に知らせ忘れ、しばらく部屋が載ったままでした。
問い合わせた人から苦情が入り、Dさんは知らせる手順を決めました。申し込みが入った日に、すべての会社にメールで伝えるようにしています。
場面の例:家賃を下げたのに広告が古いまま
Eさんは、募集の家賃を下げることにしました。管理会社には伝えましたが、ポータルの広告は前の家賃のままでした。
Eさんは、条件を変えたら、広告に反映された画面を確かめるようにしました。条件を変えた日と反映の日を、メモで残しています。
場面の例:写真と今の部屋が違う
Fさんの部屋は、前の入居者の退去のあと、壁紙が傷んでいました。広告の写真は、きれいだったころのものです。
Fさんは、写真を撮り直すまで、傷みの状況を仲介会社に伝え、内見の前に説明してもらうことにしました。写真の撮り直しは「賃貸の写真の撮り方」を参考にしました。
場面の例:築年を書き間違えていた
Nさんは、募集の資料を自分で作って管理会社に渡していました。あるとき、築年を1年新しく書いていたことに気づきました。
国土交通省の考え方では、築年は広告の表示項目の1つです。Nさんはすぐに管理会社に伝えて広告を直してもらい、それからは登記の内容を見ながら資料を作るようにしています。
募集を頼む会社に聞くこと
- どのポータルサイトに、どの立場(代理か仲介か)で載せるか
- 申し込みが入ったとき、どのくらいで広告を止めるか
- 条件を変えたとき、どのように広告に反映するか
- 写真は誰が撮り、いつ撮り直すか
答えがはっきりしている会社ほど、掲載の管理を任せやすくなります。
掲載のチェックリスト
- 載せている家賃・条件が、契約の条件と同じか
- 広さ・間取り・築年が、図面や登記と合っているか
- 写真が、今の部屋の状態と合っているか
- 定期借家なら、その旨が載っているか
- 申し込みや契約のとき、すべての会社に知らせる手順があるか
- 条件を変えたとき、広告に反映されたか確かめたか
申し込みから掲載終了までの流れ
- 仲介会社から申し込みの連絡を受ける
- 同じ日に、ほかに募集を頼んでいる会社にも伝える
- 各社に、広告を止めるか「申込あり」に変えるよう頼む
- 数日後、ポータルの画面で、部屋が消えたか変わったかを確かめる
- 契約が決まらなかったときは、募集の再開を各社に伝える
よくある質問
- オーナーが自分でポータルに載せられますか?
- ポータルサイトの多くは、宅建業者が載せる仕組みです。自分で貸す場合も、事実と違う情報を載せないことが大切です。
- 決まった部屋が載ったままだとどうなりますか?
- 国土交通省は、決まった部屋を速やかに消さずに載せ続けることを、おとり広告に当たると示しています。決まったらすぐ仲介会社に伝えます。
- 広告の写真は昔のものでもよいですか?
- 今の部屋と著しく違う写真は、誤解を招くおそれがあります。傷みや設備の変化があれば、写真を撮り直すか、説明を足します。
- おとり広告で処分されるのは誰ですか?
- 宅地建物取引業法で処分の対象になるのは、広告を出した宅建業者です。ただ、部屋の評判にも響くため、オーナーも情報をそろえます。
- 複数の会社に募集を頼んでもよいですか?
- 頼めます。ただし、申し込みや契約が決まったときに、すべての会社に知らせる手順を決めておきます。
- 定期借家の部屋は、広告で何に気をつければよいですか?
- 定期借家であることと、契約の期間をはっきり載せてもらいます。普通借家と思わせる表示は、国土交通省の考え方で第32条違反になりうるとされています。
仲介会社に払うお金の決まりは「賃貸の仲介手数料の上限」で、管理会社の選び方は「管理会社の選び方」で扱っています。募集を相談する会社は掲載している会社の一覧から探せます。空室の対策をまとめて相談したい場合は、一括相談の案内をご覧ください。
まとめ
- ポータルの広告は、宅地建物取引業法第32条の誇大広告の禁止の対象
- 決まった部屋を載せ続けるのも、おとり広告に当たる
- おとり広告は、公正競争規約第21条や景品表示法の告示でも禁じられている
- オーナーは正しい情報を渡し、申し込みや契約をすぐ伝える
- 条件を変えたら、広告に反映されたかを確かめる




