不動産売却のタイミングはいつ? 所有期間5年・住み替え・相続の期限で決める

不動産を売るタイミングは、相場の読みよりも、税金の区切りと自分の予定で決めるほうが確かです。この記事では、所有期間5年の数え方、住まなくなってからの期限、相続した家の期限など、売る時期を決める物差しを整理します。
結論
- 不動産売却のタイミングは、相場の先読みではなく「税金の区切り」と「自分の予定」で決めるのが確かです。
- 税率は、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。5年以下なら所得税30%・住民税9%、5年超なら15%・5%です。
- マイホームの3,000万円の特別控除は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の1つです。
- 相続した家は、相続税の取得費加算や空き家の特例にも期限があります。期限から逆算して、売り出す月を決めましょう。
「今が売り時なのか、もう少し待つべきなのか」。不動産を手放そうと考えた人の多くが、ここで迷います。値上がりを待つうちに建物が古くなり、結局は迷っているあいだの固定資産税や管理の手間だけがかさむ、ということも起こります。
将来の価格は、だれにも正確には分かりません。一方で、税金の区切りや特例の期限は、法令で日付が決まっています。ここを知っておくと、「いつまでに売れば有利か」「いつより後に売ると損をするか」を、自分で判断できるようになります。
この記事では、売る時期を決めるための物差しを、税金・住み替え・相続・物件の状態の順に整理します。売却全体の手順は「不動産売却の流れ」で説明しています。
不動産売却のタイミングとは何で決まるか
不動産売却のタイミングとは、売り出す時期と、売買契約・引き渡しをする時期のことです。とくに税金では、引き渡しなどの日がどの年に入るかで、扱いが変わることがあります。
自分で決められることと、決められないこと
売る時期を考えるときは、次の2つを分けて考えると迷いが減ります。
| 分け方 | 例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 自分では動かせない | 相場、金利、買い手の数 | 予想に頼りすぎない |
| 日付が決まっている | 所有期間5年、特例の期限、固定資産税の1月1日 | カレンダーに書いて逆算する |
| 自分の予定で決まる | 住み替え先、ローンの残り、相続人の話し合い | 家族と先に決めておく |
相場の上下は、待っても当たるとは限りません。まず「日付が決まっている」ものを書き出し、その範囲で自分の予定に合う時期を選ぶのが、後悔の少ない決め方です。
「売るなら早いほうがよい」場面もある
空き家のまま置いておくと、建物の傷みが進み、管理の手間もかかります。また、後で説明するとおり、特例の多くは期限を過ぎると使えません。待つことが、いつも得になるわけではありません。
所有期間5年の区切りと税率
不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税と住民税がかかります。税率は、所有期間によって2つに分かれます。
長期と短期の違い
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
どちらも、所得税額に2.1%の復興特別所得税が加わります。短期と長期では税率がほぼ2倍違うため、利益が出そうな物件では、売る年を1年ずらすだけで税金が大きく変わることがあります。
1月1日時点で数える点に注意
所有期間は、売った日ではなく、売った年の1月1日の時点で数えます。たとえば2021年10月に買った物件なら、次のようになります。
- 2026年中に売る:2026年1月1日の時点で4年余り。5年以下なので短期
- 2027年中に売る:2027年1月1日の時点で5年余り。5年を超えるので長期
「買ってから5年たったから長期だ」と思って売ると、短期の税率になってしまうことがあります。計算の全体は「不動産売却の税金」にまとめています。
相続や贈与で受け継いだ場合
相続や贈与で受け継いだ不動産の所有期間は、原則として、亡くなった方や贈った方が手に入れた日から数えます。親が長く持っていた家なら、相続してすぐに売っても長期になることがあります。
利益が出ない売却(買った値段より安く売る場合など)では、所得税・住民税はかかりません。5年を待つ意味があるのは、利益が出そうなときです。
住み替えで売るときのタイミング
自分が住んでいる家(マイホーム)を売るときは、使える特例が増えます。その代わり、特例には期限があります。
3,000万円の特別控除の期限
マイホームを売ったときは、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。すでに住んでいない家でも使えますが、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。
たとえば2024年3月に引っ越した場合、3年を経過するのは2027年3月です。その年の12月31日、つまり2027年12月31日までに売れば、この条件を満たします。くわしい要件は「居住用財産の3,000万円特別控除」で説明しています。
10年超なら軽減税率も
売った年の1月1日の時点で、家と土地の所有期間がともに10年を超えていれば、軽減税率の特例も検討できます。課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の所得税が10%になります(住民税は4%)。3,000万円の特別控除と重ねて使えます。
売り先行か買い先行か
住み替えでは、今の家を先に売るか、新しい家を先に買うかでも時期が変わります。資金の流れによって向き不向きがあるので、「住み替えは売り先行と買い先行どっち」もあわせて読んでおくと安心です。
ポイント
- 税率は、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えるかで決まる
- マイホームの3,000万円控除は、住まなくなってから3年目の年末までに売る
- 所有期間10年超のマイホームは、軽減税率も検討できる
- 期限は「年の12月31日まで」の形が多い。年をまたぐ前に動く
相続した不動産を売るタイミング
相続した家や土地には、相続ならではの期限があります。どれも「知らずに過ぎていた」が起こりやすいものです。
相続税の取得費加算の期限
相続税を払った人が、相続した不動産を一定の期間内に売ると、払った相続税のうち一定の額を取得費に足せます。取得費が増えるほど、譲渡所得は小さくなります。
期限は、相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続税がかかっていない人は対象になりません。
空き家の3,000万円特別控除の期限
亡くなった方が1人で住んでいた家などを相続して売る場合は、空き家の特例を使えることがあります。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。特例の対象になる売却の期間は、令和9年(2027年)12月31日までとされています。
要件は細かく、建物の年代や売り方の条件もあります。くわしくは「空き家の3,000万円特別控除」を確かめてください。
相続の手順と並べて考える
相続した家を売るには、名義を相続人に変える登記が先に必要です。遺産の分け方が決まらないと登記も進みません。期限から逆算して、話し合いを早めに始めましょう。全体の流れは「相続した実家の売却の流れ」にまとめています。
1年の中で見る時期の選び方
税金のほかにも、1年の中で気をつけたい区切りがあります。
固定資産税は1月1日の持ち主にかかる
固定資産税の賦課期日は、毎年1月1日です。その日に持ち主として登録されている人に、その年度の税がかかります。年の途中で売った場合の負担をどう分けるかは、売主と買主が売買契約で決めます。
年末に引き渡すか、年明けにするか
譲渡所得は、売った年の所得として、翌年に確定申告をします。年末近くの売却では、引き渡しが12月か1月かで、申告の年や所有期間の数え方が変わることがあります。どの日を基準にするかは、税務署や税理士に事前に確かめておくと安心です。
賃貸中の物件は契約の区切りも見る
入居者がいる物件は、そのまま売る(オーナーチェンジ)か、空室にしてから売るかで時期が変わります。入居者に退去をお願いする場合は、借地借家法の決まりがあるため、思うように進まないこともあります。売り方の違いは「オーナーチェンジで売却するときの注意点」を参考にしてください。
売る時期を決める手順
ここまでの物差しを使って、売る時期を決める手順をまとめます。
- 登記事項証明書や売買契約書で、取得した日を確かめる
- 売りたい年の1月1日の時点で、所有期間が5年・10年を超えるかを数える
- マイホームなら住まなくなった日、相続なら相続開始の日と申告期限を書き出す
- 特例の期限から逆算し、遅くとも売買契約を結びたい月を決める
- 売り出しから契約まで余裕をとり、売り出しの開始月を決める
- 住み替え先、ローンの残り、相続人の予定と照らし合わせる
- 不動産会社に査定を頼み、その時期で売れそうな価格を確かめる
場面の例:住み替えを考えるEさん
Eさんは、2016年に買ったマンションに住んでいます。2025年に家族の事情で実家へ移り、マンションは空いたままです。
住まなくなったのが2025年なので、3,000万円の特別控除の期限は2028年12月31日です。売る年の1月1日に所有期間が10年を超えるのは、2027年以降です。Eさんは、軽減税率も使える2027年中の売却を目標に、2026年の秋から査定を始めることにしました。
よくある失敗
- 売った日で所有期間を数え、短期の税率になってしまった
- 値上がりを待つうちに、住まなくなってから3年目の年末を過ぎた
- 相続人の話し合いが長引き、取得費加算の期限を過ぎた
- 期限ぎりぎりに売り出し、値下げを急ぐことになった
売る前のチェックリスト
- 取得した日と、売る年の1月1日時点の所有期間を数えたか
- 使えそうな特例と、その期限を書き出したか
- 期限の半年以上前に、査定や売り出しの準備を始めているか
- 住み替え先やローンの残りの予定と、時期が合っているか
- 判断に迷う点を、税務署や税理士に確かめたか
よくある質問
- 不動産を売るのに一番よいタイミングはいつですか?
- だれにでも当てはまる「一番よい時期」はありません。所有期間5年や特例の期限など、日付の決まった区切りを確かめ、その範囲で自分の予定に合う時期を選ぶのが確かです。
- 所有期間5年はいつの時点で数えますか?
- 売った年の1月1日の時点で数えます。売った日の時点ではありません。
- 住まなくなった家は、いつまでに売れば3,000万円控除が使えますか?
- 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の1つです。そのほかの要件も満たす必要があります。
- 相続した家はすぐに売るほうがよいですか?
- 一概には言えませんが、取得費加算や空き家の特例には期限があります。使えそうな特例の期限を先に確かめ、遅れないように準備しましょう。
- 損をして売る場合も、5年を待つべきですか?
- 利益が出ない売却では譲渡所得の税金はかからないため、5年を待つ意味は小さくなります。ただし、マイホームの損失には別の特例もあるので、売る前に確かめましょう。
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売り方の選び方は「一般媒介と専任媒介はどっち」、査定の種類は「不動産査定の種類」で説明しています。ローンが残っている家なら「住宅ローン残債がある家の売却」も役立ちます。売却を任せられる会社は売買の会社一覧から探せます。時期の相談も含めて複数の会社の意見を聞きたいときは、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 売るタイミングは、相場の予想より「日付の決まった区切り」と自分の予定で決める
- 税率は、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えるかで変わる
- マイホームの3,000万円控除は、住まなくなってから3年目の年末までに売る
- 相続した家は、取得費加算や空き家の特例の期限から逆算する
- 期限の半年以上前から査定と準備を始め、値下げを急がない




