買付証明書とは? 売主が受け取ったときの意味と、比べ方・返事のしかた

買付証明書は、買いたい人が「この条件で買いたい」と書面で伝えるものです。この記事では、法的な位置づけ、売主が見るべき項目、複数届いたときの比べ方、売渡承諾書や売買契約との違いを整理します。
結論
- 買付証明書とは、物件を買いたい人が、希望の価格や条件を書いて売主に示す書面です。「買付申込書」と呼ばれることもあります。
- 名前や書式は法令で決まっておらず、受け取っただけで売買契約が結ばれるものではありません。約束を固めるのは、そのあとの売買契約書です。
- 売主は、価格だけでなく、ローンの有無、手付金、引き渡しの時期、条件の付き方を見比べて返事をします。
不動産を売り出してしばらくすると、不動産会社から「買付が入りました」と連絡が来ることがあります。うれしい知らせですが、同時に「これで売れたのか」「値下げを求められているが、どう答えればよいのか」と戸惑う方も多いでしょう。
買付証明書は、売却の途中で売主が初めて受け取る、買い手からの具体的な書面です。ここでの受け止め方と返事のしかたで、その後の交渉の進み方が変わります。
この記事では、買付証明書の意味と、売主として確かめる項目、比べ方、返事をするときの注意点を説明します。売却全体の流れは「不動産売却の流れ」をご覧ください。
買付証明書とは
買付証明書とは、買いたい人が「この物件を、この価格と条件で買いたい」という意思を書面にしたものです。不動産会社を通じて売主に届けられます。
法令で決まった書類ではない
買付証明書は、法令で名前や書式が決まっている書類ではありません。不動産会社ごとに書式があり、書く項目も少しずつ違います。
民法では、契約は申込みに相手が承諾したときに成立するとされています(民法522条)。ただ、不動産の売買では、重要事項の説明を受け、売買契約書を交わして契約を結ぶ流れになります。買付証明書は、その前の段階で「交渉を始める合図」として使われる書面だと考えると分かりやすいでしょう。
買付証明書の扱いは、書かれた内容や、その後のやりとりによって変わることがあります。「まだ契約ではないから何をしてもよい」とも、「もう決まったから断れない」とも決めつけず、不動産会社と確かめながら進めましょう。
呼び方の違い
| 呼び方 | 出す人 | 中身 |
|---|---|---|
| 買付証明書・買付申込書 | 買いたい人 | 希望の価格と条件で買いたいという意思 |
| 売渡承諾書 | 売主 | その条件で売ってもよいという意思 |
| 売買契約書 | 売主と買主 | 代金・引き渡し・解除などの約束を固めたもの |
買付証明書と売渡承諾書がそろっても、売買契約書を交わすまでは、細かい条件を詰める段階です。
買主が買付証明書を出す理由
買主にとって買付証明書は、「本気で買うつもりがある」ことを売主に伝える手段です。口頭の「検討しています」より、価格や条件を書いた書面のほうが、売主も判断しやすくなります。
また、ほかの買い手より先に意思を示し、交渉の順番を確保したいという理由もあります。売主の側から見れば、買付証明書は、買い手の本気度と条件を比べるための材料です。
言葉の言い換え
| よく聞く言葉 | 意味 |
|---|---|
| 買付が入る | 買付証明書が届くこと |
| 指値(さしね) | 売り出し価格より低い希望価格を示すこと |
| 満額 | 売り出し価格どおりの希望価格のこと |
| ローン特約 | 借入れができないとき、契約を白紙に戻せる取り決め |
| 番手(ばんて) | 買付が届いた順番のこと |
不動産会社には報告の義務がある
売却を不動産会社に頼むと、媒介契約を結びます。宅地建物取引業法では、媒介契約を結んだ不動産会社は、売買の申込みがあったときは、遅れずに依頼者に報告しなければならないとされています(同法34条の2第8項)。
報告がないときは確かめる
買付が入ったのに知らされない、ということは本来あってはなりません。内覧の数に比べて申込みの報告が少ないと感じたら、遠慮せずに確かめましょう。
専任媒介の定期報告
専任媒介契約では、仕事の状況を2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、依頼者に報告することも決まっています。買付の有無も、その報告の中で確かめられます。媒介契約の違いは「一般媒介と専任媒介はどっち」で説明しています。
買付が入ったときに不動産会社に聞くこと
- どのような人か(個人か会社か、住むためか貸すためか)
- 借入れの事前審査は済んでいるか
- 希望価格の理由は何か(ほかの物件との比較など)
- ほかに検討している人はいるか
- いつまでに返事が必要か
聞いた内容はメモに残し、ほかの買付と比べるときの材料にします。
買付証明書で売主が見る項目
買付証明書には、価格のほかにも大切な情報が書かれています。次の項目を1つずつ確かめましょう。
主な項目と見方
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 購入希望価格 | 売り出し価格との差と、その理由 |
| 手付金の額 | 契約の重みの目安になる |
| 支払いの方法 | 現金か、住宅ローンなどの借入れか |
| ローン特約 | 借入れができないときに契約を白紙にできる条件の有無 |
| 引き渡しの希望時期 | 自分の住み替えや退去の予定と合うか |
| そのほかの条件 | 測量、建物の解体、設備の扱いなど |
| 有効期限 | いつまでに返事が必要か |
価格だけで決めない
最も高い価格を書いた人が、最も確実な買い手とは限りません。たとえば借入れの見通しが立っていないと、ローン特約で契約が白紙に戻ることがあります。引き渡しの時期が合わなければ、仮住まいの費用がかかることもあります。
手付金の意味
手付金は、契約のときに買主が売主に渡すお金です。民法では、相手が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を返して、契約を解除できるとされています(民法557条)。手付金の額は、その後の契約の重みにも関わるため、買付の段階で確かめておきます。
ポイント
- 買付証明書は、売買契約の前の「交渉を始める合図」
- 不動産会社は、申込みを遅れずに売主へ報告する決まりがある
- 価格・手付金・ローン特約・引き渡し時期・有効期限をそろえて見る
- 一番高い価格の人が、一番確実な買い手とは限らない
買付証明書を受け取ったあとの流れ
買付証明書を受け取ってから、売買契約を結ぶまでの流れは、おおむね次のとおりです。
- 不動産会社から買付証明書の内容の説明を受ける
- 価格や条件で、受けられる点と受けられない点を整理する
- 受ける・断る・条件を変えて返す(条件の交渉)のどれかを決めて返事をする
- 条件がまとまれば、必要に応じて売渡承諾書を出す
- 不動産会社が売買契約書と重要事項説明書の案を作る
- 買主への重要事項の説明のあと、売買契約を結び、手付金を受け取る
返事の3つのパターン
| 返事 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| そのまま受ける | 価格も条件も希望に合う | 契約日までの段取りを早めに決める |
| 条件を変えて返す | 価格や時期に少し開きがある | 譲れる線を先に決めておく |
| 断る | 条件が大きく合わない | 理由を短く伝え、次の申込みに備える |
条件の交渉のコツ
値下げを求められたときは、すぐに答えず、売り出してからの反応や、査定の根拠を不動産会社と見直します。価格は下げても、引き渡しの時期や設備の扱いでこちらの希望を通す、という組み合わせ方もあります。
売渡承諾書を出すときの注意
条件がまとまると、売主が売渡承諾書を出すことがあります。これも法令で決まった書類ではありませんが、売主の意思を書面にしたものなので、軽く扱わないようにします。
書く前に決めておくこと
- 売る価格と、手付金の額
- 引き渡しの時期と、それまでに売主がすること(片付け・測量など)
- 設備や庭木など、残すものと撤去するもの
- 売買契約を結ぶ予定の日
出したあとに気をつけること
売渡承諾書を出したあとで、より高い価格の買付が届くこともあります。そこで乗り換えると、最初の買い手との信頼が損なわれ、トラブルの原因になります。出す前に条件を十分に比べ、出したら売買契約まで誠実に進めるのが基本です。
売渡承諾書に有効期限を書いておくと、買い手の準備が遅れたときに、いつまで待つかの区切りになります。書き方は不動産会社と相談しましょう。
複数の買付が届いたときの比べ方
人気のある物件では、近い時期に複数の買付証明書が届くことがあります。
比べる順番
- 有効期限と、届いた順番を確かめる
- 価格を並べる
- 支払いの方法とローン特約の有無を比べる
- 引き渡しの時期と、そのほかの条件を比べる
- 総合して、契約まで進められそうな相手を選ぶ
届いた順に決めるか、条件で決めるかは、法令で決まっていません。どの考え方で選ぶかを不動産会社と先に話し合い、買い手に不公平な扱いをしないようにします。
場面の例:2通の買付が届いたFさん
Fさんは、相続した実家を売り出しました。1週間後、2通の買付証明書が届きました。1通は売り出し価格どおりで住宅ローンを使う人、もう1通は少し低い価格で現金で買う人です。
Fさんは、空き家の管理を早く終えたいと考えていました。不動産会社と相談し、引き渡しまでの期間が短く、ローン特約のない現金の買い手と条件を詰めることにしました。
よくある失敗
- 買付証明書を受け取っただけで「売れた」と考え、ほかの申込みを断ってしまった
- 価格だけを見て選び、ローンの審査が通らずに白紙に戻った
- 有効期限を過ぎてから返事をし、相手の気持ちが離れた
- 口頭で値下げに応じ、あとで条件の行き違いが起きた
返事をする前のチェックリスト
- 買付証明書の全部の項目を、不動産会社と読み合わせたか
- 譲れない条件と、譲ってよい条件を分けたか
- 支払いの方法とローン特約の有無を確かめたか
- 返事の内容を、書面やメールで残したか
- 売買契約までの日程と、必要書類を確かめたか
よくある質問
- 買付証明書を受け取ったら、もう断れませんか?
- 買付証明書を受け取っただけで、売買契約が結ばれるわけではありません。条件が合わなければ断ることもできますが、やりとりの経緯もあるため、不動産会社と確かめて返事をしましょう。
- 買付証明書の価格から、さらに交渉できますか?
- できます。価格だけでなく、引き渡しの時期や設備の扱いなど、条件を組み合わせて交渉することもあります。
- 買付証明書に有効期限はありますか?
- 書式によっては有効期限の欄があります。期限が書かれていれば、その日までに返事をしましょう。
- 売渡承諾書は必ず出すものですか?
- 法令で決まった書類ではありません。条件をまとめた確認として出すことがあります。出すかどうかは、不動産会社と相談して決めます。
- 買付証明書が届いたのに、不動産会社から連絡がない場合は?
- 媒介契約を結んだ不動産会社は、申込みがあれば遅れずに報告する決まりがあります。気になるときは、すぐに確かめましょう。
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売却にかかる書類は「不動産売却の必要書類」、売ったあとの責任は「契約不適合責任で売主が負う責任」、契約書の印紙は「売買契約書の印紙税」で説明しています。売却を任せる会社は「不動産売却の会社の選び方」を参考に、売買の会社一覧から探せます。複数の会社の意見を聞きたいときは、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 買付証明書は、買いたい人が価格と条件を書いて示す書面で、法令で決まった書類ではない
- 受け取っただけでは売買契約は結ばれない。約束を固めるのは売買契約書
- 不動産会社には、申込みを遅れずに売主へ報告する決まりがある
- 価格だけでなく、手付金・ローン特約・引き渡し時期・有効期限を比べる
- 返事の内容は書面で残し、売買契約までの段取りを早めに決める




