遺産分割協議で不動産をどう分ける?4つの分け方と協議書の書き方、登記の期限

相続した家や土地は、預金のように簡単には分けられません。遺産分割協議の進め方、不動産の4つの分け方、協議書に不動産をどう書くか、協議の後の登記の期限を、法務省と裁判所の案内をもとに整理します。
結論
- 遺産分割協議とは、相続人全員で、だれがどの遺産を受け継ぐかを話し合って決めることです。不動産は、現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つの分け方から選びます。
- 遺産分割協議書には、不動産を登記事項証明書のとおりに書き写します。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。
- 協議で不動産を受け継いだら、遺産分割の日から3年以内にその結果に基づく登記が必要です。
- 相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を考えた分け方を原則として主張できなくなります。
「実家をだれが受け継ぐか、兄弟で話がまとまらない」。「とりあえず全員の名義にしておけばいい、と言われたけれど本当に大丈夫か」。相続した不動産をめぐる悩みは尽きません。
不動産は、預金のように1円単位で分けられません。値段の考え方も人によって違います。そのため、遺産分割協議では不動産がいちばんの争点になりがちです。
この記事では、協議の進め方、不動産の分け方、協議書の書き方、協議の後の手続きを順に説明します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議の意味
遺産分割協議とは、亡くなった人の遺産を、相続人全員の話し合いでだれがどれを受け継ぐか決めることです。民法では、共同相続人は、遺言で禁じられている場合などを除き、いつでも協議で遺産の全部または一部を分けられます。
協議の前の遺産は全員の共有
民法では、相続人が複数いるとき、遺産は分けるまで相続人全員の共有になります。共有のままでは、家を売るにも貸すにも、全員の同意が必要になる場面が出てきます。
協議の結果は相続の時にさかのぼる
民法では、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じます。協議で実家を受け継いだ人は、亡くなった時から持ち主だったことになります。
遺産分割協議の進め方
協議の流れ
- 遺言書があるかを確かめる
- 戸籍で相続人をすべて確かめる
- 遺産を調べ、不動産・預金・借金などの一覧を作る
- 不動産の値段の目安を調べる
- 相続人全員で話し合い、分け方を決める
- 遺産分割協議書を作り、全員が署名し実印を押す
- 協議書をもとに、相続登記や預金の手続きをする
相続人は全員参加する
協議は、相続人全員でしないと成立しません。連絡の取れない相続人がいる、認知症で判断が難しい人がいる、未成年の相続人がいる、といった場合は、家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
全員が同じ場所に集まる必要はありません。書面を順に回して署名してもらう方法もあります。
不動産の値段をどう決めるか
不動産の値段の考え方には、売れそうな値段、固定資産税評価額、相続税の評価額などがあります。どの値段で考えるかで、分け方の公平さが変わります。
相続人の間で考え方が違うときは、不動産会社の査定を取って共通の目安にする方法があります。査定の種類は不動産査定の種類で説明しています。
不動産の4つの分け方
分け方の比較
| 分け方 | 内容 | 向いている場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産そのものを、だれか1人が受け継ぐ | 不動産が複数ある、ほかの遺産で釣り合う | 値段の差で不公平が出やすい |
| 代償分割 | 1人が受け継ぎ、ほかの相続人にお金を払う | 実家に住み続けたい人がいる | 受け継ぐ人にお金の用意が要る |
| 換価分割 | 売ってお金に換え、そのお金を分ける | だれも住まない、公平に分けたい | 売る時期や値段で意見が割れる |
| 共有 | 相続人の持分で共有する | すぐに決められない | 売る・貸すに全員の同意が要る |
共有は先送りになりやすい
共有にすると、その場は丸く収まったように見えます。ただ、共有者のだれかが亡くなると、持分がさらに分かれ、話し合う人が増えていきます。
法務省も、遺産分割をしないまま放っておくと、権利関係が複雑になると案内しています。共有をどう解消するかは共有名義の不動産の解消で説明しています。
換価分割を選ぶとき
だれも住まない実家を売ってお金で分ける場合は、売る段取りも協議で決めておきます。だれが窓口になるか、最低いくらなら売るか、売るまでの管理費をどう分けるかです。売る流れは相続した実家の売却をご覧ください。
ポイント
- 共有は先送りになりやすく、次の相続でさらに複雑になる
- 代償分割は、受け継ぐ人がお金を用意できるかを先に確かめる
- 換価分割は、窓口・最低価格・売るまでの管理費を決めておく
- 値段の目安を全員でそろえると、話し合いが進みやすい
協議でもめやすい場面
- 実家に住み続けたい人と、売ってお金で分けたい人がいる
- 親の介護をしてきた人が、その分を多くほしいと考えている
- 生前に家の購入資金などをもらった相続人がいる
- 不動産の値段の考え方が、相続人ごとに違う
- 相続人の1人が遠くに住んでいて、話し合いに加われない
こうした場面では、先に事実を書き出して共有すると、感情的な対立を減らせます。遺産の一覧、不動産の値段の目安、これまでのお金のやり取りを、だれでも見られる形にしておきます。
代償分割のお金の決め方
代償分割では、不動産を受け継ぐ人が、ほかの相続人に払うお金の額を決めます。もとにする不動産の値段を何にするかで、額が大きく変わります。
払う人の手元にお金が足りないときは、分けて払う、期限を延ばすといった方法も話し合えます。どの方法にしても、額と支払いの期限、払えなかったときの扱いを協議書に書いておくことが大切です。
協議の前のチェックリスト
- 遺言書の有無を確かめた
- 戸籍で相続人をすべて確かめた
- 不動産・預金・借金を一覧にした
- 不動産の登記事項証明書を取り寄せた
- 不動産の値段の目安を、全員が同じ資料で見られるようにした
換価分割の場面の例
Hさんは、父が残した空き家を兄弟3人で受け継ぎました。だれも住む予定がなかったため、売ってお金を分ける換価分割にしました。協議書には、長男が売る窓口になること、売るまでの固定資産税と管理費を3人で等しく負担することを書きました。
協議書に書く不動産の記載
登記事項証明書のとおりに書く
遺産分割協議書に不動産を書くときは、登記事項証明書(登記簿)のとおりに書き写します。住所の表示(住居表示)と、登記の所在・地番は違うことがあるため注意します。
| 種類 | 書く項目 |
|---|---|
| 土地 | 所在、地番、地目、地積 |
| 建物 | 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 |
| マンション | 一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示 |
書き方のこつ
- 一字一句、登記事項証明書と同じに書く(「丁目」「番」「番地」の違いも写す)
- 未登記の建物があれば、固定資産税の課税明細などをもとに分かるように書く
- 私道の持分など、見落としやすい土地も書く
- 後から見つかった遺産をどう分けるかも書いておく
協議書に添えるもの
協議書には、相続人全員が署名し、実印を押します。相続登記では、印鑑証明書を一緒に出します。協議書が複数枚になるときは、つなぎ目に全員の割印を押します。
協議書の形式や登記の書類は、法務局の案内や登記手続のハンドブックで確かめてください。不安があれば、司法書士などの専門家に相談できます。
場面の例
Eさんの家族は、母が亡くなった後、兄が実家に住み続けることで話がまとまりました。兄が実家を受け継ぎ、妹のEさんに代わりのお金を払う代償分割にしました。協議書には、実家の土地と建物を登記事項証明書のとおりに書き、代わりのお金の額と支払いの期限も書きました。
協議の後の手続きと期限
相続登記の期限
法務省によると、相続登記は2024年4月1日から義務になりました。協議で不動産を受け継いだ人は、遺産分割の日から3年以内に、その結果に基づく登記をする必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。くわしくは相続登記の義務化をご覧ください。
協議がまとまらないときの相続人申告登記
協議に時間がかかるときは、「相続人申告登記」で義務を果たせます。自分が相続人であることを法務局に申し出る手続きで、相続人1人でもできます。ただし、協議がまとまった後は、その結果に基づく登記が別に必要です。
相続税の申告期限
国税庁によると、相続税の申告が必要な場合、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告します。協議がまとまっていなくても期限は延びません。自宅の土地の評価を下げる特例は小規模宅地等の特例で説明しています。
10年を過ぎた後の遺産分割
法務省によると、2023年4月1日から遺産分割の新しいルールが始まりました。相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として、生前の贈与(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)を考えずに、法定相続分で分けることになります。
2023年4月1日より前の相続にも当てはまります。ただし、その時点で相続開始から5年を超えていた場合は、2028年3月31日までの猶予があります。
話し合いがまとまらないとき
協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てられます。裁判所の案内では、申立先は相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所です。費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分です。調停が成立しなければ、審判の手続きに移ります。
よくある質問
- 遺産分割協議に期限はありますか?
- 協議そのものに期限はありません。ただ、相続開始から10年を過ぎると特別受益や寄与分を原則として主張できなくなり、相続税の申告や相続登記にも期限があります。
- 遺産分割協議書に不動産はどう書けばいいですか?
- 登記事項証明書のとおりに書き写します。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。
- 相続人の1人が協議に応じない場合はどうなりますか?
- 協議は全員でないと成立しません。家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる方法があります。
- 不動産を共有のままにしておいても大丈夫ですか?
- すぐに困らなくても、売る・貸すに全員の同意が要り、次の相続で持分がさらに分かれます。早めに分け方を決めるのが安全です。
- 協議の後、相続登記はいつまでにしますか?
- 遺産分割の日から3年以内に、その結果に基づく登記をする必要があります。
- 遺産分割協議書は自分たちで作れますか?
- 相続人が自分たちで作ることもできます。不動産の書き方や登記の書類に不安があれば、法務局の案内を確かめるか、司法書士などの専門家に相談します。
相続した不動産の相談先
分けた後に売るか、貸すかを考えるなら、実家は売るか貸すかが参考になります。売却の会社は売買の会社や会社一覧から探せます。不動産の値段の目安をそろえたい、売る・貸すをまとめて比べたい方は、一括相談をご利用ください。協議書や登記の細かな書き方は、司法書士などの専門家に確かめるのが確実です。
まとめ
- 遺産分割協議は、相続人全員でだれがどの遺産を受け継ぐかを決める話し合いです
- 不動産は、現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つから分け方を選びます
- 協議書には、不動産を登記事項証明書のとおりに書き写します
- 協議で受け継いだ不動産は、遺産分割の日から3年以内に登記します
- 相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を原則として主張できなくなります
- まとまらなければ、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てられます




