マンスリーマンションの運営とは?定期借家の使い方と旅館業との線引き

空き室や空き家を、家具付きで月単位に貸すマンスリーマンション。運営を始める前に知りたい、定期借家での契約のしかたと、旅館業にあたるかどうかの線引きを順に説明します。
結論
- マンスリーマンションの運営とは、家具や家電をそろえた部屋を、月単位の賃貸借契約で貸すことです。
- 契約は定期借家にすると、1年未満の期間でも更新のない契約にできます。書面での事前の説明が必要です。
- 期間の短い利用は、旅館業法の許可が必要な「宿泊」にあたる場合があります。国は自治体に、目安の期間を1か月とすることが望ましいと伝えています。
「空いている部屋を、出張や仮住まいの人に月単位で貸せないか」。空室に悩むオーナーから、こうした相談が増えています。
ただ、月単位で貸すつもりでも、貸し方によっては旅館業の許可が必要になることがあります。契約のしかたを誤ると、出ていってほしい時期に出てもらえない心配もあります。
この記事では、マンスリーマンションの運営で押さえたい、契約の形と旅館業との線引きを整理します。始めるまでの手順と、よくある失敗も紹介します。
マンスリーマンションとは
定義
マンスリーマンションとは、家具や家電をそろえた部屋を、月単位で貸す賃貸住宅のことです。法律で決まった言葉ではなく、呼び方は会社によって違います。
入居者は、出張、転勤前の仮住まい、家の建て替え中の住まいなどに使います。普通の賃貸より短い期間で、すぐに暮らし始められるのが特徴です。
民泊やシェアハウスとの違い
| 項目 | マンスリーマンション | 民泊(住宅宿泊事業) | シェアハウス |
|---|---|---|---|
| 契約の形 | 賃貸借契約 | 宿泊の契約 | 賃貸借契約 |
| 主な根拠 | 借地借家法 | 住宅宿泊事業法 | 借地借家法 |
| 期間 | 月単位が中心 | 宿泊させる日数は1年間で180日まで | 月単位から長期まで |
| 必要な手続き | 賃貸として貸すだけなら届出は不要(旅館業にあたらない場合) | 届出 | 建物の用途により確認が必要 |
旅館業との線引き
旅館業とは
旅館業法では、旅館業を「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」としています。「宿泊」とは、寝具を使って施設を利用することです。旅館業を営むには、都道府県知事(保健所を設置する市や特別区は市長・区長)の許可が必要です。
アパートとの違いは2点
厚生労働省のQ&Aでは、旅館業とアパートなどの貸室業との違いを、次の2点で説明しています。
- 宿泊者のいる部屋を含め、施設の衛生上の管理の責任が営業する側にあると認められること
- 利用する人が、その部屋に生活の本拠(暮らしの拠点)を置かないこと
つまり、掃除やシーツの交換を貸す側が行い、利用者が暮らしの拠点にしていないなら、旅館業にあたる方向に近づきます。
目安の期間は1か月
2018年(平成30年)11月6日の観光庁と厚生労働省の通知では、厚生労働省が自治体に、目安の期間を1か月とすることが望ましいと伝えたとしています。目安より短い滞在は、原則として旅館業にあたる扱いです。自治体がすでに別の目安を決めている場合は、その考え方で判断してよいとされています。
なお、旅館業法の「下宿営業」は、1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業です。1か月以上なら必ず賃貸、とは言い切れません。
旅館業にあたるかどうかは、最終的に物件のある自治体(保健所)が判断します。始める前に、貸し方を具体的に伝えて相談してください。
ポイント
- マンスリーマンションは「賃貸借契約」で貸すのが前提
- 掃除などの管理の責任と、暮らしの拠点かどうかが線引きの軸
- 国は自治体に、目安の期間を1か月とすることが望ましいと伝えている
- 判断は物件のある自治体の保健所に確かめる
契約は定期借家を使う
普通借家で短く貸すと困ること
借地借家法第29条では、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがないものとみなされます。普通借家で「3か月」と決めても、3か月で終わるとは限りません。
定期借家なら期間どおりに終えられる
定期借家とは、更新がなく、期間が満ちると終わる賃貸借です(借地借家法第38条)。この場合は第29条が適用されないため、1年未満の期間でも決めたとおりに終えられます。
定期借家にするには、次の2つが必要です。
- 契約を書面(または電磁的記録)で結ぶ
- 契約の前に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を渡して説明する
この説明をしなかったときは、更新しないという定めは無効になります。マンスリーマンションでは、説明の書面を毎回用意する運用を決めておきましょう。
期間が1年以上のとき
期間が1年以上の定期借家では、満了の1年前から6か月前までに、終わることを入居者に通知する必要があります。通知しないと、終了を入居者に主張できません。月単位の短い契約では、この通知の期間にあたらないことが多くなります。
マンスリーマンション運営を始める流れ
- 貸し方を決める。最短の期間、清掃をするか、寝具をどうするかを書き出す
- 物件のある自治体の保健所に、旅館業にあたるかを相談する
- 分譲マンションなら管理規約、借りている部屋なら賃貸借契約で、転貸や短期の貸し出しが禁じられていないかを確かめる
- 定期借家の契約書と、事前説明の書面のひな形を用意する
- 家具・家電・寝具をそろえ、光熱費やネットの扱いを決める
- 募集の方法を決める。民泊の予約サイトと混ぜて載せない
- 入居の手続き、鍵の受け渡し、退去後の清掃の流れを決める
募集のときの注意
先ほどの2018年の通知では、マンスリーマンションを一時的な宿泊を主とする施設と混ぜて民泊の仲介サイトに載せることは適切ではないとしています。賃貸であることが分かる場所で募集しましょう。
募集の文には、最短の契約期間、定期借家であること、料金に含まれるもの(家具、光熱費、ネットなど)をはっきり書きます。入居の前に条件が伝わっていれば、契約のときの食い違いを減らせます。
仲介を頼むか、自分で貸すか
自分の物件を自分で貸すだけなら、宅地建物取引業の免許は必要ありません。宅地建物取引業法では、貸し借りの代理や媒介を業として行うことを宅地建物取引業としているためです。ほかの人の物件の入居者を仲介するなら免許が必要です。
そろえる物のチェックリスト
入居した日から暮らせることが、マンスリーマンションの価値です。次の物を一覧にして、入居ごとに点検します。
- 寝具(入居者が替わるたびに交換するか、持ち込みにするかを決める)
- 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、照明、カーテン
- 調理道具と食器、掃除道具
- ネット回線、鍵、ごみの出し方の案内
- 退去時の点検表と、壊れた物があったときの扱いを書いた書面
運営の手間と任せ方
自分で運営する場合
募集、契約、鍵の受け渡し、退去後の清掃と点検を自分で行います。入居者が月ごとに替わることもあり、普通の賃貸より手間は増えます。近くに住んでいて、時間がとれる方に向く形です。
会社に任せる場合
マンスリーマンションの運営を、不動産会社に任せる方法もあります。任せ方には、管理を頼む形と、会社が借り上げて又貸しする形があります。借り上げる形はサブリースにあたるため、賃料の見直しや解約の条件を契約の前に確かめましょう。
たとえば、空き室を貸し始めた場合
たとえば、駅に近いワンルームが半年空いていたEさん。家具をそろえ、月単位で貸すことにしました。
Eさんは先に保健所へ行き、最短の期間と清掃のしかたを伝えて相談しました。そのうえで、定期借家の契約書と事前説明の書面を作り、毎回渡す手順を決めました。分譲マンションだったため、管理規約で短期の貸し出しが禁じられていないかも確かめました。
言葉の言い換え
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 生活の本拠 | 暮らしの拠点。住民として生活している場所 |
| 定期借家 | 更新がなく、期間が満ちると終わる賃貸借 |
| 普通借家 | 更新がある、ふつうの賃貸借 |
| 転貸 | 借りた部屋を、さらにほかの人に貸すこと |
| 媒介 | 貸す人と借りる人の間に入り、契約をまとめること |
判断の分かれ道
清掃やリネン交換をどこまでするか
利用者が暮らしの拠点にし、部屋の掃除も利用者がする形なら、賃貸に近くなります。毎日の清掃やシーツ交換を貸す側がする形は、旅館業に近づきます。サービスを増やす前に、保健所に相談しましょう。
民泊と組み合わせる場合
住宅宿泊事業の届出をしている住宅を、180日以外の期間にマンスリーで貸す方法もあります。組み合わせ方は「民泊の180日以外の活用」で説明しています。
普通の賃貸に戻すことも考えておく
マンスリーで貸してみて、入居が続かないこともあります。そのときに普通の賃貸へ戻せるよう、家具を置いたままにするか、片づけるかを先に決めておきます。
定期借家で貸していれば、期間が終われば部屋が空きます。戻す時期を決めやすいのも、定期借家を使う利点です。
法人の利用を受けるか
出張や研修の住まいとして、会社がまとめて借りることもあります。法人と契約するときは、契約者と実際に住む人が違うことがあります。だれが住むのかを書面で確かめておきましょう。審査の流れは「法人契約の審査と書類」が参考になります。
よくある失敗
- 普通借家で短く貸し、期間が過ぎても出てもらえなかった
- 定期借家の事前説明の書面を渡し忘れ、更新しない定めが無効になった
- 毎日の清掃と寝具交換をつけ、旅館業にあたると指摘された
- 分譲マンションの管理規約で、短期の貸し出しが禁じられていた
- 民泊サイトに載せ、宿泊施設と同じ扱いの問い合わせが続いた
- 寝具や家電の点検表がなく、退去後に壊れた物の扱いでもめた
よくある質問
- マンスリーマンションの運営に許可は必要?
- 賃貸借として貸し、旅館業にあたらないなら、旅館業の許可はいりません。旅館業にあたるかは、物件のある自治体の保健所に確かめてください。
- 1か月未満で貸すことはできる?
- 目安より短い滞在は、原則として旅館業にあたる扱いです。旅館業の許可や住宅宿泊事業の届出が必要になります。
- マンスリーマンションは定期借家にするべき?
- 期間どおりに終えたいなら定期借家が向きます。普通借家で1年未満にすると、期間の定めがないものとみなされます。
- 自分の部屋を貸すのに宅建業の免許はいる?
- 自分の物件を自分で貸すだけなら、宅地建物取引業にはあたりません。ほかの人の物件を仲介するなら免許が必要です。
- 民泊サイトで募集してもいい?
- 国の通知では、一時的な宿泊を主とする施設と混ぜて民泊の仲介サイトに載せることは適切ではないとしています。別の場所で募集しましょう。
- 借りている部屋をマンスリーで貸せる?
- 貸主の承諾がないまま又貸しすることはできません。賃貸借契約で転貸が認められているかを、先に貸主や管理会社に確かめてください。
運営の相談先を探すには
当メディアの会社一覧では、公式ホームページの情報をもとに不動産会社をまとめています。宿泊に近い形を考えるなら民泊の会社一覧、法人の仮住まい向けなら社宅の会社一覧も参考になります。定期借家のくわしい違いは「定期借家と普通借家の違い」、宿泊の制度は「民泊・旅館業・特区民泊の違い」をご覧ください。
まとめ
- マンスリーマンションは、家具付きの部屋を月単位の賃貸借で貸す運営
- 旅館業との線引きは、管理の責任と、暮らしの拠点かどうか
- 国は自治体に、目安の期間を1か月とすることが望ましいと伝えている
- 契約は定期借家にし、事前説明の書面を必ず渡す
- 始める前に保健所と管理規約を確かめ、民泊サイトと混ぜて募集しない




