一括借上げは戸建てでもできる?仕組みと契約前に確かめる6つの注意点

戸建て1軒でも、会社に一括で借り上げてもらう形(サブリース)で貸すことはできます。この記事では、戸建ての一括借上げの仕組みと法律の決まり、ほかの貸し方との違い、契約前に確かめる6つの点を整理します。
結論
- 戸建ても一括借上げ(サブリース)で貸すことができます。会社が家を借り上げ、入居者に又貸しして、オーナーには契約で決めた家賃を払う仕組みです。
- 賃貸住宅管理業法の「賃貸住宅」は、人が住む家屋または家屋の部分のことで、戸建ても含まれます。借上げの契約には、重要事項の書面での説明などの決まりがあります。
- 戸建ては1軒なので、空室になると収入がゼロになりやすい一方、修繕の負担も1軒に集まります。家賃の見直し、修繕の分担、解約の条件を契約前に確かめましょう。
「相続した実家を貸したい。でも、入居者探しや管理を自分でするのは不安」。そんなときに選択肢に挙がるのが、会社が家ごと借り上げる一括借上げです。
アパートやマンションの話だと思われがちですが、戸建て1軒でも借り上げの契約はできます。転勤で家を空ける間や、住まなくなった実家を貸すときに検討する方もいます。
ただ、戸建てには戸建てならではの注意点があります。この記事では、戸建ての一括借上げの仕組みと法律の決まり、ほかの貸し方との違い、契約前に確かめる6つの点を順に整理します。
戸建ての一括借上げとは
戸建ての一括借上げとは、オーナーが家を会社に貸し、その会社が入居者に又貸しする仕組みです。オーナーは入居者と直接やり取りせず、会社から契約で決めた家賃を受け取ります。
この形は「サブリース」とも呼ばれます。オーナーと会社の契約を「マスターリース契約」、会社と入居者の契約を「転貸借契約」と言います。
法律では「特定賃貸借契約」
賃貸住宅管理業法では、借り手が又貸しの事業を営む目的で結ぶ賃貸住宅の賃貸借を「特定賃貸借契約」と呼びます。この法律の「賃貸住宅」は、人が住むための家屋または家屋の部分を貸すものと定められており、戸建ても含まれます。
借り上げる会社は「特定転貸事業者」と呼ばれ、広告や勧誘、契約の書面について決まりを守る義務があります。
戸建てとアパートで違うところ
同じ一括借上げでも、戸建てとアパートでは、収入と費用の動き方が違います。
| 項目 | 戸建て(1軒) | アパート(複数の部屋) |
|---|---|---|
| 入居者の数 | ふつうは1世帯 | 部屋の数だけ |
| 空室の影響 | 1世帯が出ると、その家はまるごと空室 | 一部の部屋が空いても、ほかの部屋がある |
| 修繕の対象 | 屋根・外壁・水回りなど家全体 | 共用部分と各部屋 |
| 会社の見方 | その家1軒の貸しやすさで判断 | 建物全体の収支で判断 |
戸建てで借上げを考える理由
戸建てを自分で貸すと、入居者が出た月から家賃が入らなくなります。借り上げの契約で、空室の間も会社から家賃が払われる定めになっていれば、収入の波を小さくできます。これが借上げの利点です。
ただし、会社がオーナーに払う家賃は、入居者が払う家賃と同じとは限りません。差がある場合、その差は、会社が空室の危険や管理の手間を引き受ける対価だと考えましょう。
法律で決まっている借上げの決まり
契約の前に書面で説明する
賃貸住宅管理業法では、借り上げる会社は、契約を結ぶまでに、契約の内容を書面で渡して説明しなければなりません。施行規則で14の説明事項が決められており、家賃とその変更、維持保全の実施方法と費用の分担、契約期間、更新と解除などが含まれます。
誇大広告と不当な勧誘の禁止
法律は、家賃や維持保全の実施方法、解除などについて、事実と大きく違う広告や、実際より著しく有利だと誤解させる広告を禁じています。勧誘のときに、判断に影響する重要な事実を故意に告げないことも禁じられています。
家賃は見直されることがある
借地借家法では、建物の家賃が、税金の増減や経済事情の変動、近くの同じような建物の家賃と比べて不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向けて増減を請求できると定めています。
借り上げの会社もこの請求ができるため、「ずっと同じ家賃」とは限りません。国のガイドラインは、「家賃保証」と表示する広告には、すぐ近くに、この規定で減額されることがある旨を表示するよう求めています。
ポイント
- 戸建ても、賃貸住宅管理業法の「賃貸住宅」に当たる
- 借上げの会社には、契約前の書面での説明の義務がある
- 家賃は、借地借家法により見直しを求められることがある
- 「家賃保証」の表示には、減額の可能性を添えるのが国の考え方
契約前に確かめる6つの点
戸建ての一括借上げで、契約前に確かめたいのは次の6つです。
- 家賃と見直し:最初の家賃、見直しの時期、減額を求められたときの扱い
- 免責期間:契約の最初や入居者の入れ替えのときに、家賃が払われない期間があるか
- 修繕の分担:屋根、外壁、給湯器、水回りなどを、だれが負担するか
- 契約期間と解約:オーナーから解約するときの条件と、会社から解約できる場合
- 転貸の条件:どんな人に又貸しするか(家族向け、法人の社宅など)
- 契約が終わったときの扱い:入居者がいるまま契約が終わると、どうなるか
オーナーからの解約には正当な理由が要る
借地借家法では、貸主から更新を断ったり解約を申し入れたりするには、正当な理由が必要と定めています。借り上げの契約でも、オーナーは貸主なので、この決まりが当てはまります。「いつでも自分で住めるように戻せる」とは限らない点に注意しましょう。
契約が終わっても入居者はすぐに出ない
借地借家法では、又貸しされている建物で、元の賃貸借が期間の満了や解約の申入れで終わるとき、貸主は入居者にその旨を通知しなければ、終わったことを入居者に主張できません。通知をした場合、又貸しの契約は通知の日から6か月で終わります。
契約の終わり方によって扱いが変わる場合があります。将来その家に住む予定や売る予定があるなら、契約前に、終了のときの扱いを書面で確かめてください。
ほかの貸し方との比べ方
戸建てを貸す方法は、一括借上げだけではありません。
| 貸し方 | オーナーの手間 | 収入の安定 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 一括借上げ | 少ない | 契約で決めた家賃が出る(免責期間などに注意) | 管理を任せたい、収入の波を減らしたい |
| 管理委託 | 中くらい | 空室になると収入が止まる | 家賃を自分で決めたい |
| 自分で貸す(自主管理) | 多い | 空室になると収入が止まる | 近くに住み、手をかけられる |
| 法人に社宅として貸す | 少なめ | 法人との契約による | 転勤者向けの需要がある地域 |
期間を決めて貸したいなら、更新のない「定期借家」で貸す方法もあります。違いは「定期借家と普通借家の違い」で説明しています。
判断の分かれ道
- 将来住む・売る予定がある:解約の条件と終了時の扱いを最優先で確かめる。定期借家も比べる
- 建物が古い:修繕の負担がオーナーに集まりやすい。分担を確かめ、売却も比べる
- 遠方で管理できない:借上げか管理委託かを、手取りと手間で比べる
会社に聞いておきたい質問
- 家賃の見直しは、いつ、どんな方法で話し合うのか
- 入居者が出たあと、次の入居者が決まるまでの家賃はどうなるのか
- 修繕が必要になったとき、見積もりはだれが出し、だれが決めるのか
- 会社の都合で契約を終わらせることがあるのは、どんな場合か
- 点検や修繕の報告は、どの頻度で、どんな形で受け取れるのか
答えは口頭で済ませず、重要事項説明書や契約書のどこに書いてあるかを示してもらいましょう。書いていないことは、書面に加えてもらうよう頼むのが安心です。
戸建てを借上げに出す前の準備
家の状態と書類をそろえる
会社は、家の場所や広さ、傷み具合を見て、借り上げるかどうかと家賃を判断します。次のものを先にそろえておくと、話が進めやすくなります。
- 登記事項証明書(持ち主と広さが分かる書類)
- 建てたときの図面や、確認済証・検査済証
- これまでの修繕の記録(屋根・外壁・給湯器などをいつ直したか)
- 家具や荷物を残すか、片付けるかの方針
持ち主の名義を確かめる
相続した家を貸す場合は、登記の名義が亡くなった方のままになっていないかを確かめましょう。相続登記は申請が義務になっています。詳しくは「相続登記の義務化」で説明しています。共有の家なら、ほかの共有者とも話し合っておく必要があります。
保険と費用の見直し
貸す家になると、住んでいたときと保険の考え方が変わることがあります。火災保険の契約内容を、保険会社に確かめましょう。空き家の保険の考え方は「空き家の火災保険」が参考になります。
よくある失敗とチェックリスト
よくある失敗
- 家賃が下がることはないと思い込んでいた
- 屋根や外壁の修繕がオーナー負担だと、あとで知った
- 自分で住むために解約しようとして、すぐには戻せなかった
- 入居者の条件を確かめず、思っていた使い方と違った
- 固定資産税や火災保険など、オーナーに残る費用を見込んでいなかった
たとえば、転勤で家を空ける場合
たとえば、5年ほど転勤で家を空けるHさん。借上げの提案を受けましたが、戻ったら自宅に住みたいと考えています。
Hさんは、契約期間と、オーナーから解約するときの条件を書面で確かめました。そのうえで、期間を区切って貸せる定期借家とも比べることにしました。戻る予定がある場合は、終わり方から考えるのが近道です。
契約前のチェックリスト
- 重要事項説明書を、契約前に書面で受け取った
- 家賃の見直しの時期と、減額の可能性を確かめた
- 免責期間の有無と長さを確かめた
- 修繕の分担を、部位や設備ごとに確かめた
- 解約の条件と、契約が終わったときの扱いを確かめた
- 固定資産税・火災保険など、オーナーに残る費用を見込んだ
言葉の言い換え
- 一括借上げ:会社が建物をまるごと借り上げ、入居者に又貸しする仕組み。サブリースとも言う
- 特定転貸事業者:借り上げた賃貸住宅を又貸しする事業を営む会社
- 免責期間:契約で決めた、会社が家賃を払わない期間
- 転貸:借りた物を、さらに別の人に貸すこと
- 正当な理由(正当事由):貸主が更新を断ったり解約したりするのに必要な事情
よくある質問
- 戸建て1軒でも一括借上げはできますか?
- できます。法律の「賃貸住宅」には戸建ても含まれます。ただし、借り上げるかどうかは会社が家の条件を見て判断します。
- 借上げの家賃はずっと同じですか?
- 同じとは限りません。借地借家法により、事情が変われば家賃の減額を求められることがあります。
- 戸建ての修繕はだれが払いますか?
- 契約の分担の定めによります。屋根や外壁、給湯器など、部位ごとに確かめてください。
- あとで自分で住みたくなったら、解約できますか?
- オーナーからの解約には正当な理由が必要で、すぐに戻せるとは限りません。住む予定があるなら、契約前に終了の条件を確かめましょう。
- 空き家のままより、借上げのほうがよいですか?
- 家の状態や、将来の予定によります。売る・貸す・活かすを比べてから決めるのがおすすめです。
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サブリース全体の注意点は「サブリースの注意点」、家賃保証との違いは「家賃保証とサブリースの違い」で説明しています。実家を売るか貸すかで迷う場合は「実家は売るか貸すか」、社宅として貸す場合は「借り上げ社宅と社有社宅」も参考になります。社宅の会社は社宅管理の会社一覧から探せるほか、まとめて相談することもできます。
まとめ
- 戸建ても一括借上げ(サブリース)で貸すことができる
- 借上げの会社には、契約前の書面での説明などの義務がある
- 家賃は見直されることがあり、オーナーからの解約には正当な理由が要る
- 戸建ては空室と修繕の影響が1軒に集まるので、分担を確かめる
- 将来住む・売る予定があるなら、終わり方から契約を選ぶ




