退去防止のためにオーナーができること|退去理由の分け方と減らす工夫

退去を防ぐには、まず入居者がなぜ出ていくのかを知ることが出発点です。退去理由の分け方、理由ごとの手の打ち方、退去の連絡が来たときの対応、やってはいけないことを順に説明します。
結論
- 退去防止の第一歩は、退去理由を「住まいへの不満」と「生活の変化」に分けることです。オーナーが減らせるのは、主に住まいへの不満による退去です。
- 住まいへの不満は、設備の故障、騒音などの住環境、管理の対応、家賃と中身の釣り合いの4つに分けると、手を打つ場所が見えてきます。
- 退去の連絡が来てから引き止めるより、前の退去者の理由を集めて、今いる入居者の不満を先に減らすほうが確実です。
「また退去の連絡が来た」。管理会社からの知らせを受けるたびに、何が悪かったのか分からず、もやもやするオーナーは多いと思います。
退去の理由が分からないままでは、手の打ちようがありません。家賃を下げるべきか、設備を替えるべきか、管理会社を見直すべきか。判断がつかず、結局は何もしないまま次の退去を迎えてしまいます。
この記事では、退去理由の分け方から、理由ごとの手の打ち方、退去の連絡が来たときの対応、やってはいけないことまでを順に説明します。
退去防止とは
一言でいうと
退去防止とは、入居者が住まいへの不満を理由に出ていくことを、原因を突き止めて減らす取り組みです。退去を無理に止めることではなく、退去したくなる理由を取り除くことです。
入居者には、契約に沿って退去する権利があります。ですから、退去防止の中心は「引き止め」ではなく「原因を減らすこと」です。
長期入居の対策との違い
退去防止と、長く住んでもらう工夫は、似ていますが入り口が違います。退去防止は「なぜ出ていったか」という過去の理由から考えます。長く住んでもらう工夫は「どうすれば住み続けたくなるか」から考えます。
両方を合わせて行うと効果的です。ただ、どちらも出発点は同じで、今の入居者が何に困っているかを知ることです。この記事では、まず退去理由を集めるところから始めます。
退去理由の分け方
2つの大きな分類
退去の理由は、大きく次の2つに分けられます。
| 分類 | 主な例 | オーナーが減らせるか |
|---|---|---|
| 生活の変化 | 転勤・転職、結婚・出産、家を買う、実家に戻る | ほとんど減らせない |
| 住まいへの不満 | 設備の故障、騒音、管理の対応、家賃への不満 | 減らせることが多い |
生活の変化による退去は、どの物件でも起こります。ここに力を入れても成果は出にくいため、住まいへの不満による退去に的をしぼります。
住まいへの不満の4つの種類
住まいへの不満は、さらに4つに分けると、手を打つ場所が見えてきます。
- 設備:故障が多い、古くて使いにくい、収納が足りない
- 住環境:上下左右の部屋の音、ゴミ置き場の汚れ、近くの住人とのもめごと
- 管理の対応:連絡しても返事が遅い、修理に来ない、説明が分かりにくい
- 家賃と中身の釣り合い:周りの似た部屋と比べて、家賃に見合わないと感じる
ひとつの退去に、いくつかの理由が重なっていることもあります。「引っ越しのきっかけは転勤だが、ほかの部屋に移らなかったのは不満があったから」という場合もあります。
退去理由を集める方法
退去のときに聞く
退去理由をいちばん聞きやすいのは、退去の連絡を受けたときと、退去の立ち会いのときです。責める聞き方ではなく、「今後の参考にしたいので」と前置きをして聞きます。
聞く項目を決めておくと、毎回同じ形で記録できます。たとえば次のような項目です。
- 引っ越す主なきっかけ(生活の変化か、住まいの不満か)
- 住んでいて困ったこと
- よかったこと
- 何が変わっていれば住み続けたか
住んでいる間の連絡を記録する
退去理由の手がかりは、住んでいる間の連絡にもあります。故障の連絡、音への苦情、問い合わせの中身を記録しておくと、同じ不満が続いている場所が分かります。
管理会社に任せている場合は、入居者からの連絡の件数と中身を、月ごとの報告に入れてもらうよう相談します。
ポイント
- 退去理由は「生活の変化」と「住まいへの不満」に分ける
- 住まいへの不満は、設備・住環境・管理の対応・家賃の4つに分ける
- 退去のときに、決まった項目で理由を聞いて記録する
- 住んでいる間の連絡にも、退去の手がかりがある
退去理由ごとの手の打ち方
設備への不満
故障が続く設備は、修理を重ねるより、交換したほうが結果として負担が軽いこともあります。どちらがよいかは、設備の古さと修理の回数で判断します。
古くて使いにくい設備は、入れ替わりの時期に合わせて替えると、工事の手間が少なくなります。収納の不足は、棚を付けるなどの小さな工事で補える場合があります。
住環境への不満
音のもめごとは、入居者どうしで解決しようとすると、こじれやすいものです。管理会社が間に入り、全体への注意の文書を配るなど、特定の人を名指ししない方法から始めます。
ゴミ置き場や共用部分の汚れは、清掃の回数を見直すことで減らせます。住環境の不満は、ひとりの退去にとどまらず、ほかの入居者にも広がりやすい点に気を付けます。
管理の対応への不満
返事が遅い、修理に来ないといった不満は、管理の仕組みで直せます。連絡を受けてから返事をするまでの決まり、業者を手配するまでの決まりを、管理会社と決めておきます。
同じ不満が続く場合は、管理会社との契約を見直すこともあります。くわしくは「管理会社の変更」をご覧ください。
家賃と中身の釣り合いへの不満
家賃への不満がある場合も、すぐに家賃を下げるとは限りません。設備や手入れで中身を良くすることで、釣り合いがとれる場合もあります。
家賃を見直すかどうかは、周りの似た部屋の募集の状況と、退去されたときの費用を比べて判断します。
退去の連絡が来たときの対応
連絡を受けたら確かめること
退去の連絡が来たら、まず契約で決めた退去の予告の期間と、退去の日を確かめます。そのうえで、退去の理由を聞きます。
住まいへの不満が理由なら、その不満を直せば住み続けてもらえるかを聞いてみる方法もあります。ただし、入居者の決めたことを尊重し、しつこく引き止めないことが大切です。
連絡を受けてからの順番
退去の連絡を受けたら、次の順に進めると漏れが少なくなります。
- 契約で決めた予告の期間と、退去の日を確かめる
- 退去の理由を、決まった項目で聞いて記録する
- 不満が理由なら、直せば住み続けられるかを一度だけ聞く
- 退去が決まったら、立ち会いの日を決める
- 聞いた理由をもとに、次の募集までに直すことを決める
次の募集の準備を始める
退去が決まったら、次の募集の準備を早めに始めます。聞いた退去理由は、次の募集でそのまま生かせます。たとえば「収納が足りない」という理由なら、次の入居者のために棚を付けてから募集します。
退去のときの費用の分け方は「原状回復のガイドライン」で確かめてください。
退去防止でやってはいけないこと
退去を無理に止める
退去を思いとどまらせるために、強い言い方をしたり、何度も連絡したりするのは避けます。入居者との信頼を壊し、もめごとのもとになります。
契約に出にくい条件を入れる
退去を防ぐために、入居者に不利な違約金などの条件を契約に入れることもおすすめしません。条件の中身によっては法律上の効力が問題になり、募集のときにも敬遠されます。
契約の条件で迷ったときは、管理会社や専門家に相談してください。契約の種類によって、退去や解約のきまりも違います。種類の違いは「定期借家と普通借家の違い」で整理しています。
理由を聞かずに家賃だけ下げる
理由が分からないまま家賃を下げると、収入が減るのに、本当の不満は残ったままになることがあります。先に理由を集めてから、手を打つ場所を決めます。
場面の例
たとえば、ファミリー向けのマンションで、上の階の音を理由にした退去が続いたとします。家賃を下げても、音の不満は消えません。
この場合は、まず管理会社に、音についての連絡の記録を集めてもらいます。そのうえで、全体への注意の文書を配る、床に敷くマットの案内をするなど、原因に近いところから手を打ちます。
効き目は物件や入居者によって違います。大切なのは、理由を集め、理由に合った手を打ち、その結果をまた記録するという順番を続けることです。
退去理由の記録表と退去防止チェックリスト
記録表の例
退去理由は、1件ごとに同じ形で残すと、あとで見比べやすくなります。たとえば次のような表にまとめます。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 部屋と住んだ期間 | どの部屋に、いつからいつまで住んだか |
| 主なきっかけ | 転勤、結婚、住まいの不満など |
| 不満の種類 | 設備・住環境・管理の対応・家賃のどれか |
| 具体的な声 | 「収納が足りない」「返事が遅い」など、聞いたままの言葉 |
| 打った手 | 次の募集までに直したこと |
数件たまると、同じ種類の不満が続いているかが見えてきます。1件だけの声で大きな工事を決めず、続いている不満から手を付けます。
言葉の言い換え
管理会社とのやりとりでは、同じことを違う言葉で呼ぶことがあります。たとえば「解約予告」は、入居者が退去することを前もって知らせることです。「退去立ち会い」は、退去の日に部屋の状態をいっしょに確かめることです。言葉の意味をそろえておくと、話が食い違いにくくなります。
チェックリスト
自分の物件で、次のことができているかを確かめてみてください。
- 退去のときに理由を聞き、記録している
- 退去理由を「生活の変化」と「住まいへの不満」に分けている
- 住んでいる間の故障や苦情の連絡を、月ごとに見ている
- 同じ不満が続いている場所が分かっている
- 連絡を受けてから返事をするまでの決まりがある
- 退去されたときにかかる費用を見積もったことがある
できていない項目から一つずつ手を付けてください。理由の記録だけなら、今日からでも始められます。
よくある質問
- 退去を防ぐために、オーナーが最初にすることは何ですか?
- 退去理由を集めて、「生活の変化」と「住まいへの不満」に分けることです。オーナーが減らせるのは、主に住まいへの不満による退去です。
- 退去の連絡が来た後に、引き止めてもよいですか?
- 理由を聞き、不満を直せば住み続けてもらえるかを確かめることはできます。ただし入居者の決めたことを尊重し、しつこく引き止めないでください。
- 違約金を高くすれば退去を防げますか?
- おすすめしません。入居者に不利な条件は法律上の効力が問題になることがあり、募集のときにも敬遠されます。
- 退去理由は管理会社に聞いてもらえますか?
- 退去の受け付けや立ち会いは管理会社が行うことが多いため、聞く項目を決めて頼む方法があります。どこまで頼めるかは契約によって違います。
- 家賃を下げれば退去は減りますか?
- 家賃への不満が理由なら効くことがあります。設備や管理の対応が理由なら、家賃を下げても退去は減りにくいため、先に理由を確かめます。
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まとめ
- 退去防止は、退去したくなる理由を取り除く取り組み
- 退去理由は「生活の変化」と「住まいへの不満」に分ける
- 住まいへの不満は、設備・住環境・管理の対応・家賃の4つに分けて手を打つ
- 退去のときに決まった項目で理由を聞き、次の募集に生かす
- 無理な引き止めや、入居者に不利な条件は避ける




