住みながら売却する進め方|内覧の工夫と引き渡しまでの段取り、注意点

家に住みながら売ることはできます。住みながら売るよさと気をつけたい点、内覧で印象をよくする工夫、引き渡しの日の決め方、住まなくなってから売る場合の税の期限までを順に整理します。
結論
- 住みながらの売却はできます。多くの場合、売り出しから引き渡しの直前まで住み続けられます。
- 住みながら売るよさは、家賃や仮住まいの費用がかからず、暮らしぶりを買い手に伝えられることです。
- 気をつけたいのは内覧への対応と、引き渡しの日に合わせた引っ越しの段取りです。
- 先に引っ越して空き家で売るか迷うときは、内覧のしやすさ、費用、税の特例の期限で比べます。
「今の家に住んだまま、売り出しても大丈夫だろうか」。住み替えを考える方の多くが、まずこの点で迷います。
家の中を見られるのは落ち着かない。片付いていない部屋を見せたら、安く見られるのではないか。そんな不安もあるでしょう。
この記事では、住みながら売るときの進め方と、内覧で気をつけたい工夫を順に説明します。先に引っ越して売る場合との比べ方もまとめます。
住みながら売却するとは
意味と、よくある形
住みながらの売却とは、売り主がその家に住み続けたまま売り出し、買い手が決まって引き渡すときに引っ越す売り方です。買い手は、内覧の日に売り主が暮らす家の中を見て判断します。
住み替えのほか、広すぎる家から小さな家へ移る場合や、相続などで家族の住まいを見直す場合によく使われます。
空き家にしてから売る場合との違い
| 比べる点 | 住みながら売る | 先に引っ越して売る |
|---|---|---|
| 住まいの費用 | 今の家に住むので仮住まいが要らない | 新しい家の費用と今の家の費用が重なる |
| 内覧の調整 | 自分の予定と合わせる必要がある | 会社に鍵を預ければ調整しやすい |
| 家の見え方 | 家具があり暮らしを想像しやすい | 広く見えるが、生活感は伝わりにくい |
| 家の傷み | 毎日使うので換気や手入れができる | 人がいないと傷みに気づきにくい |
| 引き渡しの日 | 引っ越しの日程と合わせる必要がある | 決めやすい |
どちらがよいかは、家の状態や新しい住まいの決まり方で変わります。
住みながら売るよさと気をつけたい点
よさ
- 仮住まいや二重の住まいの費用がかからない
- 家具の置き方や日当たりなど、暮らしの様子を伝えられる
- 近所のお店や学校など、住んでいる人ならではの話ができる
- 家を使い続けるので、換気や通水の手入れが自然にできる
気をつけたい点
- 内覧のたびに片付けと在宅の調整がいる
- 家族、とくに子どもへの説明や協力が必要になる
- 引き渡しの日までに次の住まいを決める必要がある
- 生活の傷や汚れが、そのまま見られる
分かれ道:住みながらか、先に引っ越すか
内覧に毎週末対応できるか、次の住まいがいつ決まるかが大きな分かれ道です。仕事で平日も週末も家を空けにくい方は、内覧の時間を決めて会社に伝えておくと負担が減ります。
住みながら売却する手順
- 売りたい時期と、次の住まいの目安を家族で話し合う
- 複数の会社に査定を頼み、住みながら売ることを最初に伝える
- 媒介契約を結び、内覧の受け方と連絡の方法を決める
- 片付けと掃除をして、売り出しの写真を撮る
- 内覧に対応し、会社から反応の報告を受ける
- 買い手と条件を話し合い、引き渡しの日を決めて売買契約を結ぶ
- 引き渡しの日までに引っ越し、空にした家を引き渡す
媒介契約で決めておくこと
専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法で3か月までです。会社には、専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、売るための活動の状況を報告する義務があります。
住みながら売る場合は、内覧の連絡を何日前までにもらうか、立ち会うかどうかも決めておくと安心です。媒介契約の種類は「一般媒介と専任媒介のどっちがいい?」で比べています。
売り出しの写真は住む前の状態に近づけて撮る
買い手の多くは、まずインターネットの写真で内覧するかを決めます。写真を撮る日は、内覧の日と同じように片付け、物をできるだけ減らします。
カウンターの上の小物や、冷蔵庫に貼った紙は、写真に写ると部屋が狭く見えます。撮る前にいったん別の部屋へ移しておくと、広さが伝わりやすくなります。
場面の例:子どもの独立を機に住み替えるEさん
Eさん夫婦は、子どもが独立して広すぎる一戸建てを売り、駅に近いマンションへ移ることにしました。先に引っ越すと費用が重なるため、住みながら売ることにしました。
使わなくなった子ども部屋の荷物を先に整理し、内覧は土曜の午後と決めて会社に伝えました。内覧では、庭の日当たりや近所の公園の話が買い手に喜ばれました。引き渡しの日は、新しい住まいの入居日の1週間後に決め、余裕をもって引っ越せました。
家の状態を調べてもらうか
中古の家の媒介契約書には、建物状況調査(専門家が建物の傷みを調べる調査)をする人のあっせんについて書く決まりがあります。住みながらなら、調査の日の立ち会いもしやすい時期です。調べるかどうかを会社と相談しましょう。
内覧の工夫:住んでいる家を見せるときのコツ
内覧の前に整えること
- 玄関は靴を出しっぱなしにせず、家族の分も収納する
- 水まわり(台所・浴室・洗面・トイレ)は特にきれいにする
- 窓を開けて換気し、においを残さない
- すべての部屋の照明をつけ、カーテンを開けて明るくする
- 個人の写真や郵便物など、家族の情報が分かる物はしまう
当日の過ごし方
内覧の日は、約束の時間の少し前から窓を開け、照明をつけておきます。ペットがいる場合は、別の部屋や外に預けると、動物が苦手な買い手も落ち着いて見られます。
内覧の間は、会社の担当者に説明を任せ、売り主は少し離れているのが基本です。質問されたときは、日当たりや近所の様子など、住んでいる人だからこそ分かることを答えます。
家の傷や不具合を聞かれたら、知っていることは正直に伝えます。あとで食い違いが出ないよう、会社にも事前に伝えておきます。
「見られたくない部屋」がある場合
物置になった部屋や、家族の私物が多い部屋もあるでしょう。それでも、買い手は家全体を見て判断します。見せない部屋があると不安を与えるので、片付けて全室を見られるようにするのが原則です。
家族の協力を得る
住みながら売るときは、家族全員が内覧の当事者です。いつ内覧が入りそうか、どの部屋をだれが片付けるかを、あらかじめ決めておきます。
子どもがいる家庭では、なぜ家を売るのか、いつ引っ越すのかを年齢に合わせて伝えておくと安心です。内覧の日に家族で外出する予定を立てる方もいます。
内覧が続くときの負担を減らす工夫
- 内覧を受ける曜日と時間帯を決め、会社に伝えておく
- 見せる前の片付けを10分で済むよう、物を減らしておく
- 季節の物や使わない物は、売り出す前に処分や預け先を決める
- 内覧のあとの反応を会社に聞き、次の準備に生かす
内覧の前のチェックリスト
- 玄関の靴と傘を片付けたか
- 台所の流しとコンロ、浴室の排水口をきれいにしたか
- すべての部屋の照明をつけ、カーテンを開けたか
- 窓を開けて換気し、においが残っていないか
- 洗濯物や郵便物、家族の写真をしまったか
- 不具合のある場所と、直した記録を説明できるか
ポイント
- 内覧の前は、玄関・水まわり・明るさ・においの4つを整える
- 説明は担当者に任せ、売り主は住み心地の質問に答える
- 不具合は知っていることを正直に伝え、会社とも共有する
- 見せない部屋はつくらず、全室を見られるようにする
引き渡しと引っ越しの段取り
引き渡しの日の決め方
住みながら売る場合、いちばん大切なのは引き渡しの日です。売買契約を結んでから引き渡しまでの期間は、買い手と話し合って契約書に書きます。新しい住まいに移る日から逆算して、無理のない日にします。
住み替えで新しい家を買う場合
今の家を売ってから新しい家を探すのか、新しい家を先に決めるのかで、資金の流れが変わります。ローンの返済や頭金の時期が重なることもあるため、金融機関にも早めに相談します。
引き渡しの前に確かめること
- 家具や家電、照明など、置いていく物と持っていく物を契約で決めたとおりにする
- 鍵の本数をそろえる
- 電気・ガス・水道の止める日、または名義を変える日を決める
- 郵便物の転送を届け出る
売ったあとの責任
引き渡した家が契約の内容に合わない状態だった場合、売り主は買い手から修理や代金の減額などを求められることがあります。買い手は、合わないことを知った時から1年以内に売り主に知らせる必要があると、民法で定められています。
住みながらなら、雨漏りや設備の調子を自分が一番よく知っています。知っている不具合は書面に残して伝えましょう。
先に引っ越す場合に気をつけたい税の期限
マイホームを売ったときの特例
自分が住んでいる家を売ったときは、利益から最高3,000万円を引ける特例があります。先に引っ越して空き家で売る場合も、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象になります。
たとえば2026年5月に住まなくなったら、3年を経過する2029年5月の年、つまり2029年12月31日までに売る必要があります。特例を受けるには確定申告が要ります。
よくある失敗
- 先に引っ越したあと売れずに時間がたち、特例の期限を過ぎてしまう
- 引っ越したあとの家を貸してしまい、条件に合うか分からなくなる
- 空き家にした家の換気をせず、内覧のときにかびやにおいが出る
税金の基本は「不動産売却の税金」で説明しています。特例の細かな条件は、税務署や税理士に確かめましょう。
よくある質問
- 住みながら家を売ることはできる?
- できます。売り出しから引き渡しの直前まで住み続け、引き渡しの日までに引っ越すのが一般的です。
- 内覧のときは家にいたほうがいい?
- どちらでもかまいませんが、在宅なら説明は担当者に任せ、聞かれたことに答える形が基本です。住み心地や近所の様子を伝えられるのは、住んでいる人ならではの強みです。
- 住みながらだと安く売れてしまう?
- 住みながらだから安くなるという決まりはありません。片付けと掃除、明るさなどの準備で、家の印象は変わります。
- 売れたらすぐに出ていかないといけない?
- 引き渡しの日は、売買契約で買い手と話し合って決めます。新しい住まいの予定に合わせて、無理のない日を決めましょう。
- 住宅ローンが残っていても住みながら売れる?
- 売れます。引き渡しのときに売ったお金などで返済し、抵当権を消すのが一般的な流れです。
- 近所に知られずに住みながら売れる?
- 広告の出し方を会社と相談すれば、目立たない形で進めることもできます。ただし広告を絞ると買い手が見つかるまで時間がかかることがあるので、そのかね合いも確かめましょう。
売却の相談先を探す
売却全体の段取りは「不動産売却の流れ」、会社選びは「不動産売却の会社の選び方」をご覧ください。売るか貸すかで迷っている方は「実家は売るか貸すか」も参考になります。売買を扱う会社は売買の会社一覧から探せます。
まとめ
- 住みながらの売却はでき、引き渡しの直前まで住み続けられる
- 仮住まいの費用がかからず、暮らしの様子を伝えられるのがよさ
- 内覧の前は、玄関・水まわり・明るさ・においを整え、全室を見せる
- 引き渡しの日は、新しい住まいの予定から逆算して契約で決める
- 知っている不具合は書面で伝え、売ったあとの食い違いを防ぐ
- 先に引っ越すなら、マイホームの特例の期限に気をつける




