インターネット無料の賃貸にするか迷ったら|オーナーが見る費用・向く物件・契約の注意

賃貸の部屋をインターネット無料にするかどうかを、オーナーの側から判断するための記事です。仕組みの種類、向く物件と向かない物件、費用の考え方、契約と故障対応の注意点を順に説明します。
結論
- インターネット無料の賃貸にするかどうかは、「毎月の回線の費用を戸数で割った額」と「空室が縮む見込み」を比べて決めるのが基本です。
- 向きやすいのは、単身者や学生が多く、入居者の入れ替わりがある物件です。戸数が少ない物件や、通信の速さを重く見る入居者が多い物件では慎重に考えます。
- 決める前に、回線の契約の期間と解約の条件、故障のときにだれが受け付けるかを確かめておきます。
募集を出しても、問い合わせが伸びない。仲介会社から「ネット無料にすると検索で拾われやすいですよ」と言われた。そう聞くと、入れたほうがよい気がしてきます。
ただ、インターネット無料は、オーナーが毎月の費用を払い続ける設備です。一度入れると、契約の期間のあいだはやめにくい面もあります。
この記事では、インターネット無料にするかどうかを決めるための考え方に絞って説明します。設備投資全体の順番は「賃貸の設備投資の判断」で整理しています。
インターネット無料の賃貸とは
意味を一言で
インターネット無料の賃貸とは、建物にまとめて回線を引き、入居者が自分で回線を契約しなくても、追加の料金なしでインターネットを使える部屋のことです。回線の費用は、オーナーが払うか、家賃や共益費の中に含めます。
「無料」といっても、入居者から見て別の料金がかからないという意味です。費用そのものがなくなるわけではありません。
似た言葉との違い
| 表示 | 入居者がすること | 費用を払う人 |
|---|---|---|
| インターネット無料 | 機器をつなぐだけで使える | オーナー(家賃などに含める) |
| インターネット対応 | 建物の回線を使って、自分で申し込む | 入居者 |
| 表示なし | 自分で回線を選び、工事から申し込む | 入居者 |
募集の図面で「対応」と「無料」を取り違えると、入居の後に苦情になります。どちらに当たるかを、募集を任せる会社と確かめましょう。
インターネット無料が向く物件・向かない物件
向きやすい物件
- 単身者や学生が多い物件:入居してすぐ使えることが喜ばれやすい
- 入れ替わりが多い物件:入居者ごとの申し込みや工事の手間が省ける
- 周りの似た物件の多くがネット無料:ないと検索の条件で外されやすい
- 戸数がある程度ある物件:1戸あたりの回線の費用が小さくなる
学生向けの考え方は「学生向け賃貸」でも説明しています。
慎重に考えたい物件
- 戸数が少ない物件:1戸あたりの負担が重くなりやすい
- 在宅で働く人や、通信の速さを重く見る人が多い物件:共用の回線では満足されにくいことがある
- 長く住む家族向けの物件:入居者が自分で回線を選びたい場合がある
- 建物が古く、配線の工事に手間がかかる物件:工事の前に建物の状態を見る
判断の分かれ道
迷ったときは、次の2つを聞くと方向が見えます。一つは、内見で「ネットは使えますか」と聞かれる回数です。もう一つは、周りの家賃の近い物件のうち、ネット無料がどれくらいあるかです。
どちらも、募集を任せている会社が知っていることが多い情報です。家賃の比べ方は「家賃相場の調べ方」で説明しています。
費用を回収できるかの考え方
見るべき材料
- 毎月の回線の費用(建物全体)を、戸数で割った1戸あたりの額
- 最初の配線や機器の工事の費用
- 空室の期間が短くなる見込み
- 家賃や共益費を見直す余地があるか
- 回線の契約の期間と、途中でやめたときの費用
回線の料金や工事の費用は、会社や建物によって違います。複数の会社から見積もりを取り、同じ条件で比べます。
仮の数字で考える
次の数字は、考え方を示すための仮の例です。1戸あたりの回線の費用が月2,000円、家賃が月6万円の部屋だとします。年にすると1戸あたり2万4,000円の負担です。
もし空室の期間が1年で半月短くなれば、3万円の家賃が入ります。この場合は、負担を上回る計算です。反対に、空室の期間が変わらなければ、負担だけが残ります。
空室がどれだけ短くなるかは、物件や地域によって違います。見込みは控えめに置き、入れた後に問い合わせの数で確かめましょう。
ポイント
- 1戸あたりの毎月の費用を先に出す
- 空室の期間が縮む見込みと比べる
- 契約の期間と解約の条件を確かめる
- 故障のときの窓口を決めておく
導入するときの流れ
- 募集を任せる会社に、周りの物件の状況と問い合わせの傾向を聞く
- 建物の配線や、機器を置く場所を確かめる
- 複数の会社から、月の費用・工事の費用・契約の期間の見積もりを取る
- 故障や問い合わせを、だれが受け付けるかを決める
- 家賃や共益費に含めるか、オーナーの負担にするかを決める
- 募集の図面と契約書に、設備としてどう書くかをそろえる
- 入れた後、問い合わせや内見の数が変わったかを確かめる
区分マンションの1室を貸している場合は、建物全体の回線を自分だけでは決められません。管理組合の決まりを確かめます。
契約と故障の対応で気を付けること
設備として貸すなら直す責任がある
民法では、貸主は、貸している物を使うために必要な修繕をする義務を負うと定めています(第606条)。インターネットを部屋の設備として貸すなら、つながらないときの対応も考えておく必要があります。
入居者のせいで壊れた場合は、この限りではありません。どこまでを設備とするかを、契約書で分かるようにしておきます。
窓口を決めておく
つながらないときに、入居者がオーナーに連絡するのか、回線の会社に直接連絡するのかを決めておきます。窓口があいまいだと、夜や休日の連絡がオーナーや管理会社に集まります。入居者からの連絡の受け方は「入居者のクレーム対応」も参考になります。
回線の契約を読む
- 契約の期間は何年か
- 途中でやめると、いくらかかるか
- 機器が壊れたとき、交換の費用はだれが持つか
- 建物を売ったとき、契約を引き継げるか
将来、売ることも考えている物件では、最後の点が大事です。
税金での扱い
国税庁の案内では、不動産所得の必要経費の例として、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が挙げられています。貸すために払う回線の費用も、必要経費として考えるのが基本です。
工事で取り付けた機器は、金額によって資産として扱い、何年かに分けて経費にすることがあります。国税庁の案内では、取得価額が10万円未満のものなどは、その年に全額を必要経費にできます。
ただし、令和4年4月1日以降に取得して貸付けの用に使ったもの(主要な業務として行う貸付けに使うものを除く)は、この少額の扱いの対象外です。賃貸の機器に当てはまるかは、税務署や税理士に確かめてください。
申告の全体は「不動産所得の確定申告」、分けて経費にする考え方は「賃貸の減価償却」で説明しています。
よくある失敗と防ぎ方
戸数が少ないのに入れる
戸数が少ない物件では、1戸あたりの費用が重くなります。空室が1室あるだけで、負担の割合が大きく変わります。
速さの苦情が続く
建物の回線を全員で分けて使う形では、時間帯によって遅く感じられることがあります。導入の前に、どんな形の回線かを会社に聞いておきます。
図面の表示が違う
「無料」と「対応」を取り違えた表示は、入居の後の苦情のもとです。図面の写真や文の見直しは「賃貸の写真の撮り方」も参考になります。
場面で考える:築年数のたった単身向けアパート
Aさんは、単身向け8戸のアパートを持っています。周りの似た物件にネット無料が増え、内見で聞かれることも多くなりました。
Aさんは3社から見積もりを取り、1戸あたりの費用と契約の期間を比べました。故障の窓口は回線の会社にすると決め、入居者への案内の紙も用意しました。入れた後は、問い合わせの数を管理会社に毎月聞いています。
導入前のチェックリスト
- 周りの物件のネット無料の状況を聞いたか
- 1戸あたりの毎月の費用を出したか
- 契約の期間と解約の費用を確かめたか
- 故障の窓口を決めたか
- 図面と契約書の表示をそろえたか
入れるか見送るかを決める手順
判断の分かれ道
迷ったときは、次の順に考えると答えが出やすくなります。
- 空室の理由が、ネットの有無にあるかを確かめる
- 理由がほかにあるなら、先にそちらを直す
- ネットが理由の一つなら、1戸あたりの費用を出す
- 費用と、空室が縮む見込みを比べる
- 見込みが立たないなら、まず「インターネット対応」にとどめる方法も考える
「インターネット対応」は、建物に回線を引いておき、申し込みは入居者がする形です。オーナーの毎月の負担は小さくなりますが、入居者の手間は残ります。どちらがよいかは、入居者の層で変わります。
家賃に含めるか、負担するか
回線の費用を家賃や共益費に含めると、オーナーの手取りは変わりにくくなります。そのかわり、募集の家賃が周りより高く見えることがあります。
オーナーが負担して家賃を変えない場合は、手取りが減るかわりに、家賃の比べやすさは保てます。どちらにするかは、周りの物件の家賃の並びを見て決めます。
場面で考える:家族向けの戸建てを貸す
Eさんは、家族向けの戸建てを1軒貸しています。仲介会社からネット無料をすすめられましたが、1軒だけでは1戸あたりの費用がそのまま負担になります。
Eさんは、入居者が自分で回線を選べるよう、回線を引き込みやすい状態にしておくことを優先しました。募集の文には、回線の工事ができることを書き添えました。
言葉の言い換え
- 一括契約:建物全体で1つの回線を契約し、各部屋に分けて使う形
- 個別契約:入居者が自分で回線の会社と契約する形
- 共益費:共用の部分の電気代や清掃などにあてるため、家賃とは別に受け取るお金
- 解約金:契約の期間の途中でやめるときにかかる費用
入居者への案内で伝えること
- 部屋のどこに機器があり、どうつなぐか
- つながらないときの連絡先と、受け付けの時間
- 機器を動かしたり、取り外したりしないこと
- 退去のときに、機器を部屋に残すこと
案内の紙は、入居のときに鍵と一緒に渡すと伝わりやすくなります。
よくある質問
- インターネット無料にすると空室は埋まる?
- 物件や地域によって違います。周りの似た物件の状況と、内見で聞かれる回数を見て判断しましょう。
- 回線の費用は家賃に含めてよい?
- 家賃や共益費に含める方法と、オーナーが負担する方法があります。募集の図面と契約書で、入居者に分かるように書きます。
- つながらないとき、オーナーが直す必要がある?
- 部屋の設備として貸しているなら、使うために必要な修繕は貸主の義務です。窓口と対応の流れを先に決めておきます。
- 回線の費用は経費になる?
- 貸すために払う費用は、不動産所得の必要経費として考えるのが基本です。扱いに迷うときは税務署や税理士に確かめてください。
- 途中でやめることはできる?
- 回線の契約によります。契約の期間と、途中でやめたときの費用を、入れる前に確かめておきましょう。
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募集や管理の相談先は会社一覧から探せます。まとめて比べたいときは一括相談の説明をご覧ください。
まとめ
- インターネット無料は、オーナーが回線の費用を払い、入居者は追加の料金なしで使える仕組み
- 1戸あたりの毎月の費用と、空室が縮む見込みを比べて決める
- 単身者や学生の多い物件に向きやすく、戸数の少ない物件では慎重に考える
- 設備として貸すなら、つながらないときの対応と窓口を先に決める
- 回線の契約の期間と解約の条件、図面と契約書の表示を確かめる




