サブリースから管理委託への切り替え手順|入居者・敷金・契約の引き継ぎ

サブリースをやめて管理委託に切り替えるときは、終わらせ方より「終わったあと」の引き継ぎが要になります。この記事では、入居者との契約や敷金がどう移るか、新しい管理受託契約を結ぶまでの手順を順番に整理します。
結論
- サブリースから管理委託への切り替えは、①今のサブリース契約を終わらせる、②入居者との契約と敷金をオーナーが引き継ぐ、③管理会社と管理受託契約を結ぶ、の3段階で進みます。
- 国土交通省の特定賃貸借標準契約書21条では、契約が終わるとオーナーが転貸人の地位を当然に引き継ぐと定めています。入居者は退去せず、オーナーが直接の貸主になります。
- 管理受託契約は、契約前に書面での説明(賃貸住宅管理業法13条)を受けてから結びます。
「サブリースの家賃が下がってきた。管理だけを任せる形に変えたほうが手元に残るのではないか」。こう考えて切り替えを検討するオーナーは少なくありません。
ただ、切り替えは書類を1枚差し替えるだけでは終わりません。入居者との契約、預かっている敷金、毎月の家賃の流れ、修繕の窓口が、まとめて動きます。順番を間違えると、家賃が宙に浮いたり、敷金の返し先が分からなくなったりします。
この記事では、サブリースを終わらせる方法そのものではなく、終わったあとに何を引き継ぎ、どの順番で管理委託へ移すかを中心に説明します。
サブリースと管理委託の違いを先に確かめる
2つの形の定義
サブリースとは、サブリース会社がオーナーから建物を借り上げ、入居者に又貸し(転貸)する形です。管理委託とは、オーナー自身が入居者の貸主のまま、管理会社に家賃の集金や建物の維持などを任せる形です。
賃貸住宅管理業法では、サブリースの契約を「特定賃貸借契約」、管理委託の契約を「管理受託契約」と呼びます。どちらも同じ法律の中にありますが、オーナーの立場はまったく違います。
| 項目 | サブリース | 管理委託 |
|---|---|---|
| 入居者の貸主 | サブリース会社 | オーナー |
| オーナーに入るお金 | サブリース会社が払う家賃 | 入居者が払う家賃から管理の報酬を引いた額 |
| 空室のとき | 契約で決めた家賃が入る(免責期間などを除く) | その部屋の家賃は入らない |
| 入居者の敷金を預かる人 | サブリース会社 | オーナー(実務は管理会社が預かることもある) |
| 契約前の説明 | 法30条の説明 | 法13条の説明 |
仕組みの全体は「サブリースの仕組み」、管理の形の違いは「賃貸管理と自主管理の違い」でも整理しています。
切り替えで変わること・変わらないこと
- 変わる:入居者の貸主、家賃の受け取り先、敷金の返還義務を負う人、空室のときの収入
- 変わらない:入居者が住み続けること、入居者との契約の中身(貸主が入れ替わるだけ)
- 新しく要る:管理会社との管理受託契約、入居者への貸主変更のお知らせ
切り替えの第一歩:今のサブリース契約を終わらせる
終わらせ方は3つある
サブリース契約を終える道は、大きく3つあります。期間満了で更新しない、合意して解約する、契約書の中途解約の定めを使う、です。
| 終わらせ方 | オーナー側の要件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 期間満了で更新しない | 満了の1年前から6か月前までに通知(借地借家法26条)。普通借家なら正当の事由が必要(同28条) | 定期借家なら期間の満了で終わる |
| 合意で解約 | サブリース会社の同意 | 合意の解除は入居者に対抗できない(民法613条3項) |
| 中途解約の定め | 契約書の定めによる | 違約金などの条件を読む |
それぞれの進め方は「サブリースの解約」と「サブリースの契約更新」にまとめています。この記事では、どの方法で終えるにしても共通する「引き継ぎ」に進みます。
入居者の立場は守られる
民法613条3項では、オーナーとサブリース会社が合意で契約を解除しても、それを入居者(転借人)に対抗できないとしています。ただし、解除の時点でサブリース会社の債務不履行による解除権があった場合は別です。
借地借家法34条では、期間満了や解約の申入れで契約が終わるとき、オーナーは入居者にその旨を通知しなければ、終わったことを入居者に対抗できません。通知した日から6か月たつと、入居者との転貸借は終わるとされています。
34条は「入居者に出ていってもらう」ための決まりでもあります。管理委託に切り替えて入居者に住み続けてもらうなら、次に説明する「地位の引き継ぎ」の定めを確かめることが先です。
入居者との契約はオーナーが引き継ぐ
標準契約書21条の「地位の承継」
国土交通省の特定賃貸借標準契約書21条1項では、契約が終わった場合、オーナーは転貸借契約における転貸人の地位を当然に承継すると定めています。建物の全部が滅失して終わった場合は除かれます。
同じ契約書の解説では、期間満了、解約申入れ、債務不履行による解除、合意解除など、終わる理由を問わず引き継ぐとしています。入居者が知らないところで退去を迫られないようにするためです。
引き継ぐと何が起きるか
- 入居者の貸主がオーナーになる。家賃も、本来はオーナーに払われる
- 入居者が預けた敷金を返す義務も、オーナーが引き継ぐ
- 入居者との契約の更新を、正当な事由なく断ることはできない
国土交通省の解釈・運用の考え方では、契約前の説明で、敷金の返還債務を引き継ぐことや、正当な事由なく入居者の更新を拒めないことを、オーナーが分かるようにするよう求めています。
自分の契約書に引き継ぎの定めがあるかを、まず確かめましょう。定めが見当たらない、内容がはっきりしないときは、引き継ぎの範囲をサブリース会社と書面で取り決めてから進めます。
サブリース会社から受け取るもの
標準契約書21条3項では、オーナーが地位を引き継ぐとき、サブリース会社は入居者から預かった敷金、賃貸借契約書、そのほか引き継ぎに必要な書類を、オーナーに引き渡すとしています。20条2項では、返すときに建物の維持保全に必要な情報を渡すとしています。
- 部屋ごとの賃貸借契約書と、入居者・保証人の連絡先
- 入居者から預かっている敷金の額と、その現金
- 家賃の入金状況と、滞納がある部屋の一覧
- 修繕の履歴、設備の点検記録、鍵の本数と保管場所
- 進行中の苦情や修理の依頼の記録
サブリースから管理委託への切り替え手順
7つのステップ
- 今の契約書と重要事項説明書を出し、終わらせ方と引き継ぎの定めを読む
- 管理を任せる会社の候補を選び、管理の範囲と報酬の見積りをもらう
- サブリース会社に終了の通知か合意解約の申入れをし、終わる日を決める
- 管理会社から管理受託契約の説明(法13条)を書面で受け、契約を結ぶ
- サブリース会社から、敷金・契約書・入金状況・修繕記録を受け取る
- 入居者に、貸主の変更と家賃の新しい振込先を書面で知らせる
- 最初の月の入金を部屋ごとに照らし合わせ、ずれがないかを確かめる
終わる日を境にした家賃の扱い
終わる日を月の途中にすると、その月の家賃をどちらが受け取るかで迷います。標準契約書5条2項には、1か月に満たない期間の家賃は1か月を30日として日割りにする定めがあります。
入居者からの家賃をいつからオーナー(または管理会社)の口座で受けるかも、終わる日に合わせて決めておきます。振込先の案内が遅れると、入居者が旧口座に払い続けることがあります。
ポイント
- 終わらせ方より、終わったあとの引き継ぎが要になる
- 契約が終わると、オーナーが入居者の貸主の地位を引き継ぐ
- 敷金・契約書・入金状況・修繕記録をまとめて受け取る
- 入居者への貸主変更のお知らせは書面で早めに出す
管理受託契約を結ぶときに確かめること
契約前の説明と契約時の書面
賃貸住宅管理業法13条では、管理会社は管理受託契約を結ぶまでに、決められた事項を書面で渡して説明しなければなりません。14条では、結んだあと遅滞なく、管理の対象、実施の方法、契約期間、報酬、更新や解除の定めなどを書いた書面を渡すとしています。
同じ法律の3条では、管理する戸数が200戸以上の会社は国土交通大臣の登録が必要です(施行規則3条)。登録は5年ごとの更新です。任せる会社が登録を受けているかを確かめましょう。
管理受託契約で読む項目
| 項目 | 読むポイント |
|---|---|
| 管理の範囲 | 集金・督促・入居者対応・点検・修繕の手配のどこまでか |
| 報酬 | 計算のしかたと、修繕の手配などの別料金の有無 |
| 定期報告 | 法20条で、1年を超えない期間ごとに報告がある(施行規則40条) |
| 解約 | 国土交通省の標準管理受託契約書21条は、文書で「少なくとも○か月前」に申入れる形 |
| お金の管理 | 家賃や敷金を、会社自身のお金と分けて管理するか |
同じ会社に管理だけを任せる場合
サブリース会社に、そのまま管理だけを任せる形もあります。この場合も、サブリース契約とは別に管理受託契約を結び、13条の説明を受けます。引き継ぐ敷金や書類の受け渡しは、同じ会社の中でも記録に残しておきます。
切り替えでよくある失敗と防ぎ方
失敗1:入居者へのお知らせが遅れる
貸主が変わったことを入居者が知らないと、家賃が旧口座に入り続けます。終わる日の前に、貸主の名前、管理会社の連絡先、新しい振込先を書いた書面を届けます。
失敗2:敷金の引き継ぎがあいまい
入居者が退去するとき、敷金を返すのはオーナーです。サブリース会社から敷金を受け取らないまま切り替えると、オーナーが自分のお金で返すことになりかねません。部屋ごとの金額を一覧にし、受け取りを確かめます。
失敗3:空室の収入の変化を見込んでいない
管理委託では、空室の部屋の家賃は入りません。サブリースのときより収入が増えるか減るかは、入居の状況しだいです。切り替えの前に、満室の月と空室が出た月の両方で手取りを試算しておきます。サブリースを選んだときの得失は「サブリースのメリット」でも整理しています。
切り替え前のチェックリスト
- 契約書に、契約が終わったときの地位の引き継ぎの定めがある
- 終わる日と、その月の家賃の分け方を書面で決めた
- 敷金の額を部屋ごとに一覧にした
- 管理会社の登録と、管理受託契約の説明書を確かめた
- 入居者へのお知らせの文面と、届ける日を決めた
よくある質問
- サブリースをやめると、入居者は退去しなければなりませんか?
- 標準契約書と同じ定めがあれば、オーナーが貸主の地位を引き継ぐので、入居者は住み続けられます。自分の契約書の定めを確かめましょう。
- 入居者の敷金はどうなりますか?
- オーナーが返還の義務を引き継ぎます。サブリース会社から、預かっている敷金を受け取っておきます。
- 管理委託に切り替えると、収入は増えますか?
- 入居の状況と管理の報酬しだいです。空室の部屋の家賃は入らないので、空室が出た月も含めて試算します。
- 同じ会社に管理だけを任せることはできますか?
- できます。その場合も、管理受託契約を新しく結び、契約前の書面での説明を受けます。
- 入居者には何を知らせればよいですか?
- 貸主が変わったこと、管理会社の連絡先、家賃の新しい振込先と切り替わる月を、書面で知らせます。
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まとめ
- 切り替えは「終わらせる・引き継ぐ・管理受託契約を結ぶ」の3段階
- 契約が終わると、オーナーが入居者の貸主の地位と敷金の返還義務を引き継ぐ
- 敷金・契約書・入金状況・修繕記録をまとめて受け取る
- 管理受託契約は、法13条の書面での説明を受けてから結ぶ
- 空室が出た月の手取りまで試算してから切り替えを決める




