相続したマンションの評価は?区分所有補正率の計算と2024年からの見直しを整理

分譲マンションの相続税評価は、2024年1月1日以後の相続から計算の決まりが変わりました。従来の評価の基本、区分所有補正率の求め方、補正がかかる部屋とかからない部屋を国税庁の案内をもとに整理します。
結論
- 相続したマンションの一室は、建物部分(区分所有権)と土地部分(敷地利用権)を合わせて評価します。
- 2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与では、居住用の分譲マンションに「区分所有補正率」を掛ける決まりが加わりました(国税庁 No.4667)。
- 補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分の狭さの4つから「評価乖離率」を出して決めます。
- 評価水準が0.6未満なら評価が上がり、0.6以上1以下なら補正なし、1を超えると評価が下がります。
「親のマンションは、相続税ではいくらと見られるのだろう」。都市部では、実家が分譲マンションという方も多くいます。
マンションの相続税評価は、売り出し価格とは別のルールで決まります。そのルールが2024年に見直され、部屋によっては以前より評価が高くなりました。
この記事では、国税庁のタックスアンサーと通達をもとに、マンションの評価の基本と区分所有補正率の計算、対象になる部屋とならない部屋を、例を使って順に説明します。
相続のマンション評価とは
評価の基本
相続のマンション評価とは、相続した分譲マンションの一室を、相続税の計算でいくらとみなすかを決めることです。国税庁の No.4667 では、価額は「区分所有権の価額」と「敷地利用権の価額」の合計としています。
2つの部分の求め方
| 部分 | 意味 | 求め方 |
|---|---|---|
| 区分所有権 | 部屋(建物部分)の権利 | 家屋の固定資産税評価額×1.0×区分所有補正率 |
| 敷地利用権 | 敷地(土地部分)を使う権利 | 敷地全体の価額×敷地権の割合×区分所有補正率 |
敷地全体の価額は、路線価方式か倍率方式で求めます。土地の評価の基本は「相続税の土地評価と路線価」で説明しています。
言葉の言い換え
- 区分所有権:マンションの一室を自分のものとして持つ権利
- 敷地利用権:マンションの敷地を、ほかの持ち主と分け合って使う権利
- 敷地権の割合:敷地全体のうち、その部屋の持ち分の割合。登記事項証明書に書かれている
- 区分所有補正率:評価額と市場での価格の差を調整するための率
- 評価乖離率:4つの要素から求める、評価と市場の価格の開きを表す数値
- 評価水準:1を評価乖離率で割った値。補正をするかどうかの判断に使う
- 総階数指数:地階を除く総階数を33で割った値。1を超えるときは1とする
2024年からの見直しの中身
対象になる時期と財産
国税庁によると、新しい評価は2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した「居住用の区分所有財産」に適用されます。いわゆる分譲マンションの一室です。根拠は、法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年課評2-74)です。
対象にならないもの
No.4667 では、次のものには適用されないとしています。
- 主に住まいとして使えないもの(事業用のテナントなど)
- 区分建物の登記がされていないもの(一棟まるごと持つ賃貸マンションなど)
- 地階を除く総階数が2以下のもの
- 部屋が3室以下で、すべてを持ち主やその親族が住まいとして使っているもの(二世帯住宅など)
- 販売用に持っている、たな卸商品などにあたるもの
対象かどうかの確かめ方
- 登記事項証明書で、区分建物として登記されているかを見る
- 建物の総階数(地階を除く)が3以上かを見る
- 部屋の用途が住まいかどうかを見る
- 相続などで取得した日が2024年1月1日以後かを見る
2023年12月31日までに相続した部屋は、新しい評価の対象ではありません。取得した日を必ず確かめましょう。
区分所有補正率の計算
評価乖離率を出す
評価乖離率は、次の式で求めます。
評価乖離率=A+B+C+D+3.220
| 記号 | 中身 | 計算 |
|---|---|---|
| A | 築年数(1年未満の端数は1年) | 築年数×△0.033 |
| B | 総階数指数(地階を除く総階数÷33、1が上限) | 総階数指数×0.239 |
| C | 部屋のある階(地階は0階) | 所在階×0.018 |
| D | 敷地持分狭小度(敷地利用権の面積÷専有部分の床面積) | 敷地持分狭小度×△1.195 |
△はマイナスの意味です。築年数が古いほど、敷地の持ち分が広いほど、評価乖離率は小さくなります。高い建物の上の階ほど、大きくなります。
評価水準と補正率
評価水準は「1÷評価乖離率」です。この値によって、区分所有補正率が次のように決まります。
| 評価水準 | 区分所有補正率 | 評価への影響 |
|---|---|---|
| 0.6未満 | 評価乖離率×0.6 | 評価が上がる |
| 0.6以上1以下 | 補正しない | 従来どおり |
| 1を超える | 評価乖離率 | 評価が下がる |
評価乖離率が0以下の場合は、価額を0とする決まりもあります(敷地利用権には例外あり)。
ポイント
- マンションの評価は、建物部分と土地部分の合計
- 2024年1月1日以後の相続などから、区分所有補正率を掛ける
- 補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分の4つで決まる
- 評価水準が0.6未満なら評価が上がり、1を超えると下がる
計算の例
国税庁の例
No.4667 では、築27年、11階建ての3階、専有部分60㎡、敷地利用権の面積21㎡の例が示されています。
- A=27×△0.033=△0.891
- B=0.079、C=3×0.018=0.054、D=△0.419
- 評価乖離率=△0.891+0.079+0.054+△0.419+3.220=2.043
- 評価水準は約0.489で0.6未満のため、区分所有補正率=2.043×0.6=1.2258
- 区分所有権:400万円×1.2258=4,903,200円
- 敷地利用権:1,050万円×1.2258=12,870,900円
従来の評価なら合計1,450万円のところ、補正後は17,774,100円になります。
補正がかからない例
同じ式で、築45年、5階建ての2階、専有部分70㎡、敷地利用権の面積28㎡の部屋を試算します。評価乖離率は約1.33、評価水準は約0.75です。0.6以上1以下なので、補正はかからず、従来どおりの評価になります。
築年数が古く、低い建物で、敷地の持ち分が広い部屋ほど、補正がかかりにくくなります。
正確に計算するには
国税庁は「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」の様式を公開しています。端数の処理には細かい決まりがあるため、申告では明細書の手順どおりに計算しましょう。
自分で試算するときの注意
試算で補正がかかりそうだと分かったら、相続税の見通しを早めに立て直しましょう。評価が上がると、基礎控除額を超えるかどうかの判断が変わることがあります。
計算に必要な書類
- 固定資産税の課税明細書(家屋の固定資産税評価額)
- 登記事項証明書(敷地権の割合、床面積、建物の構造と階数)
- 新築年月日が分かる資料
- 敷地の路線価図または評価倍率表と、敷地全体の面積
従来の評価との比べ方
補正前と補正後を並べる
自分の部屋の評価がどれくらい変わるかは、補正前と補正後を並べて見ると分かりやすくなります。
| 項目 | 補正前 | 補正後 |
|---|---|---|
| 区分所有権 | 家屋の固定資産税評価額×1.0 | 補正前の額×区分所有補正率 |
| 敷地利用権 | 敷地全体の価額×敷地権の割合 | 補正前の額×区分所有補正率 |
| 合計 | 2つの合計 | 2つの合計 |
国税庁の例では、補正前の合計1,450万円が、補正後は17,774,100円になりました。補正率が1を超える部屋では、評価が上がる分を見込んで相続税の見通しを立てる必要があります。
評価が上がりやすい部屋、上がりにくい部屋
評価乖離率の式から、次のような傾向が読み取れます。
- 築年数が浅いほど、評価乖離率は大きくなる
- 建物の総階数が多いほど(33階まで)、評価乖離率は大きくなる
- 部屋のある階が高いほど、評価乖離率は大きくなる
- 部屋の広さに比べて敷地の持ち分が小さいほど、評価乖離率は大きくなる
評価乖離率が大きいほど評価水準は小さくなり、0.6を下回ると補正で評価が上がります。
申告までの段取り
- 相続した部屋の登記事項証明書と課税明細書をそろえる
- 新しい評価の対象かどうか(取得日、総階数、用途)を確かめる
- 敷地全体の価額を、路線価方式か倍率方式で求める
- 計算明細書で区分所有補正率を出し、補正後の価額を求める
- ほかの財産と合わせ、基礎控除額を超えるかを確かめる
- 超える場合や判断に迷う場合は、税理士や税務署に相談する
貸しているマンションや特例との関係
人に貸している部屋
No.4667 では、貸家や貸家建付地として評価する場合も、区分所有補正率を掛けた価額をもとに計算するとしています。賃貸中の部屋も、まず補正後の価額を出し、そこから貸している分の評価減を考えます。
小規模宅地等の特例
自宅として使っていた部屋の敷地には、小規模宅地等の特例が使える場合があります。この場合も、補正後の敷地利用権の価額をもとに計算します。特例の条件は「小規模宅地等の特例」をご覧ください。
相続税がかかるかの目安
相続税は、遺産の合計が基礎控除額を超えるとかかります。国税庁 No.4152 によると、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
場面の例
Gさんの母は、築12年のタワーマンションの高い階に住んでいました。補正前の評価で試算すると、預金と合わせても基礎控除額を下回っていました。新しい評価で計算し直すと補正率が1を大きく超え、基礎控除額に近づいたため、税理士に申告の要否を相談しました。
よくある失敗
- 2023年までの評価の考え方のまま計算する
- 総階数を数えるときに、地階を含めてしまう
- 敷地権の割合を、登記事項証明書で確かめずに推測する
- 貸している部屋で、補正をせずに貸家の評価減だけを計算する
よくある質問
- 相続したマンションはどう評価しますか?
- 建物部分(区分所有権)と土地部分(敷地利用権)を評価して合計します。2024年1月1日以後の相続などでは、それぞれに区分所有補正率を掛けます。
- 区分所有補正率はすべてのマンションにかかりますか?
- かかりません。総階数が2以下の建物や、区分建物の登記がないもの、事業用の部屋などは対象外です。評価水準が0.6以上1以下の部屋も補正しません。
- 古いマンションも評価が上がりますか?
- 築年数が古いほど評価乖離率は小さくなるため、補正がかからない、または評価が下がる場合もあります。計算明細書で確かめましょう。
- 計算はどこでできますか?
- 国税庁が公開している「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」を使って計算できます。
- 生前に贈与したマンションにも区分所有補正率を使いますか?
- 使います。2024年1月1日以後に贈与で取得した居住用の分譲マンションも、新しい評価の対象です。
- 2023年に相続したマンションにも新しい評価を使いますか?
- 使いません。新しい評価は2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得したものが対象です。
マンションを相続したあとに
申告の進め方は「相続税の申告の流れ」、売るときの確認点は「マンション売却の注意点」で説明しています。生前に贈与する場合も同じ評価の決まりが使われます。考え方は「不動産の贈与税」をご覧ください。
相続したマンションを持ち続けるか、売るか貸すか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- マンションの評価は、区分所有権と敷地利用権の価額の合計
- 2024年1月1日以後の相続などから、居住用の分譲マンションに区分所有補正率を掛ける
- 補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度から出す評価乖離率で決まる
- 評価水準0.6未満は評価が上がり、0.6以上1以下は補正なし、1超は評価が下がる
- 総階数2以下や事業用など、対象外の部屋もある




