空き家のシロアリ被害とは?見つけ方・予防の基本と、売るときに告げるべきこと

人が住まない家は湿気がこもり、シロアリの被害に気づくのも遅れがちです。被害のサインの見つけ方、空き家でできる予防、売却のときに買主へ伝える範囲と法律上の責任を順に整理します。
結論
- 空き家は換気がされず、雨漏りや水漏れも見つかりにくいため、シロアリが好む湿った状態になりやすい家です。
- 被害のサインは、春から夏に飛ぶ羽アリ、土で作られた通り道(蟻道)、床の沈み、柱をたたいたときの空洞音です。
- 予防の基本は、床下の換気、雨漏りと水漏れの早期修理、家の周りに木材や段ボールを置かないことです。
- 売るときは、知っている被害や駆除の記録を買主に伝えます。知りながら告げなかった不具合は、責任を負わない特約があっても免れません(民法第572条)。
「久しぶりに実家に行ったら、廊下の床がふかふかしていた」。「窓辺に羽の生えた虫がたくさん落ちていた」。空き家を持つ方から、こうした話を聞くことがあります。
人が住まない家では、異変に気づくまでに時間がかかります。気づいたときには、土台や柱の中まで被害が進んでいることもあります。
この記事では、空き家でシロアリの被害を見つける方法と予防の基本、そして売るときに何を伝えればよいかを、公的な情報をもとに順に説明します。
空き家のシロアリ被害とは
シロアリの意味
シロアリとは、家の木材や家具を食べて傷める虫です。東京都保健医療局は、感染症を運ぶ衛生害虫ではなく、木材に被害を与える経済害虫だと説明しています。
主な3つの種類
東京都の案内では、次の3種類が挙げられています。
| 種類 | 特徴 | 羽アリが飛ぶ主な時期 |
|---|---|---|
| ヤマトシロアリ | 日本全国に広く分布。都内の被害の多くはこの種類 | 4〜5月の、雨上がりで晴れて風のある日の昼間 |
| イエシロアリ | 大きな集団で木材を傷める。寒さに比較的弱い | 6〜7月ごろの夕方。夜に飛ぶこともある |
| アメリカカンザイシロアリ | 乾いた木材の中に巣を作る外来種 | 5〜9月の日中 |
地域によって多い種類は違います。住んでいる自治体の案内もあわせて確かめましょう。
空き家が被害を受けやすい理由
東京都は、予防として床下の換気をよくし、雨漏りや水漏れを放置しないなど、湿気を減らすことが大切だとしています。空き家ではこの逆のことが起きがちです。
- 窓や雨戸を閉めたままで、空気が入れ替わらない
- 雨漏りや水道管の漏れがあっても、だれも気づかない
- 庭や床下に、古い木材や段ボールが置かれたままになる
- 異変に気づく人がいないため、被害が長く続く
シロアリ被害の見つけ方
訪問のたびに見るサイン
東京都の案内をもとに、空き家で見ておきたいサインをまとめます。
- 窓辺や照明の周りに、羽アリや落ちた羽がたくさんある
- 基礎のコンクリートや柱に、土でできた筋のような通り道(蟻道)がある
- 床が沈む、きしむ
- 柱や敷居をたたくと、中が空洞のような音がする
- 軒先や窓の近くに、砂粒のような小さな粒が落ちている(アメリカカンザイシロアリのふん)
点検しやすい場所
被害は、水回りと地面に近い木材から始まることが多くあります。浴室や台所の床、玄関の上がり框(かまち)、勝手口の周り、床下の点検口から見える土台などを順に見ます。
建築基準法施行令第49条第2項は、柱・筋かい・土台のうち地面から1メートル以内の部分に防腐の措置をし、必要に応じてシロアリなどの害を防ぐ措置をするよう定めています。法律でも、地面に近い部分が狙われやすいと考えられているわけです。
羽アリを見つけたときの手順
- 羽アリや羽を、袋や容器に数匹とっておく
- 見つけた日と場所、数を写真で残す
- 床下点検口や水回りの周りに、蟻道や木材の傷みがないかを見る
- 市販の殺虫剤で羽アリだけを退治して終わりにしない
- 自治体の案内を確かめ、専門の会社に調査を頼む
東京都も、シロアリの駆除は専門の業者に頼むことを勧めています。目に見える羽アリを退治しても、巣は残っていることがあるためです。
羽のある虫がすべてシロアリとは限りません。とっておいた虫を見せて、専門の会社に見分けてもらいましょう。
空き家でできるシロアリ予防
予防の基本
東京都の案内にある予防の考え方を、空き家に当てはめると次のようになります。
ポイント
- 床下や部屋の通気をよくし、湿気をためない
- 雨漏りや水漏れを見つけたら、早めに直す
- 家の周りや床下に、木材や段ボールなどを置かない
- 中古の家具や木製品を持ち込むときは、ふんや穴がないか見る
訪問のときのチェックリスト
- 窓と押し入れを開けて、空気を入れ替えた
- 天井や壁に、雨のしみが増えていないかを見た
- 水道の元栓を閉めているか、漏れがないかを見た
- 床下の換気口が、植木や物でふさがれていないかを見た
- 庭や物置に、古い木材や段ボールがたまっていないかを見た
- 羽アリや羽が落ちていないかを、窓辺と照明の周りで見た
空き家の点検全体の頻度や項目は「空き家の管理方法」にまとめています。
言葉の言い換え
- 蟻道(ぎどう):シロアリが土や木くずで作る、トンネルのような通り道
- 羽アリ:巣から飛び立って新しい巣を作りに行く、羽のあるシロアリ
- 防蟻(ぼうぎ)処理:シロアリが寄りつかないよう、床下や木材に薬剤を使う処理
- 土台:基礎の上に置かれ、柱を支える横向きの木材
予防の処理をするか迷ったら
床下に薬剤をまく処理や、木材に塗る処理は、専門の会社が行います。効果の続く期間や料金は、会社や工法、家の広さによって違います。見積もりでは、処理する範囲、保証の有無と期間、再処理の条件を書面で確かめましょう。
調査を頼むときの確認点
- 床下に入って調べるのか、見える範囲だけを見るのか
- 調査の結果を、写真つきの報告書でもらえるか
- 被害の範囲と、駆除が必要な場所を分けて説明してくれるか
- 駆除と補修を、別々に見積もってくれるか
- 空き家で立ち会えない日に、鍵の受け渡しをどうするか
報告書は、あとで売るときに買主へ伝える内容の根拠になります。必ず書面で受け取り、工事の記録と一緒に保管しましょう。
場面の例
Eさんは、母が施設に入ってから空き家になった木造の実家を、月に1回見回っていました。5月の訪問で浴室の窓辺に羽が散らばっているのを見つけ、写真を撮って専門の会社に調査を頼みました。浴室の土台の一部に被害があったため、駆除と土台の補修をしたうえで、記録を保管しました。
売るときにシロアリ被害をどう伝えるか
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、引き渡した家が、種類や品質の面で契約の内容に合わないときに、売主が負う責任のことです。民法第562条により、買主は修理などを求めることができます。
シロアリの被害を契約で約束した状態と違う形で引き渡すと、この責任を問われることがあります。詳しくは「契約不適合責任と売主の注意点」をご覧ください。
知っていることは伝える
民法第572条は、責任を負わない特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。「古い家なので現状のまま」と書いても、知っている被害を隠してよいことにはなりません。
伝える内容の整理
| 伝えること | 例 |
|---|---|
| 被害の有無と場所 | 浴室の土台に被害があった |
| 見つけた時期 | 2026年5月に羽アリを見つけた |
| した対応 | 駆除と土台の一部補修をした |
| 記録 | 調査報告書、工事の内容が分かる書類、保証書 |
| 分からないこと | 床下の奥までは確かめていない |
買主が知ってから1年の通知
民法第566条により、品質の不適合について、買主は不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、原則として責任を問えなくなります。ただし、売主が引き渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限はありません。
建物状況調査を使う
建物状況調査とは、国土交通省令で定める者が、建物の構造上主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分の状況を調べることです。宅地建物取引業法では、仲介の契約書に調査のあっせんに関することを記し、重要事項の説明でも調査の有無と結果の概要を説明する決まりになっています。
調査で床下の状況が分かれば、伝える内容の根拠になります。流れは「売却前のインスペクション」で説明しています。
被害が見つかった空き家の売り方
3つの進め方
| 進め方 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 駆除・補修してから売る | 被害が一部で、建物を生かせる | 工事の記録を残し、買主に渡す |
| 現状のまま売る | 直す費用や手間をかけたくない | 被害の内容と範囲を書面で伝える |
| 建物を解体して土地で売る | 被害が広く、建物の価値が見込めない | 解体の費用、固定資産税の変化を確かめる |
古い家が建ったまま土地として売る方法は「古家付き土地の売却」、解体の進め方は「空き家の解体と補助金」を参考にしてください。
記録の残し方
被害が見つかってから売るまでに、何年もかかることがあります。そのときに慌てないよう、次のものを1つのファイルにまとめておきます。
- 羽アリや被害の場所を撮った写真(撮った日が分かるもの)
- 調査の報告書と、駆除・補修の見積書
- 工事の内容が分かる書類と、保証書
- 保証の期間と、再処理を頼む連絡先
相続で家を受け継ぐときも、このファイルを次の持ち主に渡せば、家の履歴が途切れません。
よくある失敗
- 羽アリだけを殺虫剤で退治し、巣が残ったまま売りに出す
- 駆除の見積書や保証書をなくし、何をしたか説明できない
- 「古い家だから分かるはず」と考え、知っている被害を書面に書かない
- 被害が分かってから何年も放置し、補修の範囲が広がる
よくある質問
- 空き家はシロアリの被害を受けやすいですか?
- 換気がされず、雨漏りや水漏れにも気づきにくいため、湿気がこもりやすい状態です。東京都は湿気を減らすことを予防の基本としているので、見回りのたびに通気と水回りを確かめましょう。
- 羽アリはいつごろ飛びますか?
- 東京都の案内では、ヤマトシロアリは主に4〜5月、イエシロアリは主に6〜7月ごろ、アメリカカンザイシロアリは主に5〜9月です。
- シロアリの駆除は自分でできますか?
- 東京都は専門の業者に頼むことを勧めています。羽アリを退治しても巣が残ることがあるため、まず調査を頼みましょう。
- 過去に駆除したことも、売るときに伝えるべきですか?
- 伝えておくのが安全です。知りながら告げなかった事実は、責任を負わない特約があっても責任を免れません。駆除の記録と保証書もあわせて渡しましょう。
- シロアリの駆除にはいくらかかりますか?
- 被害の広さや工法、家の大きさによって違います。調査の報告書をもとに、駆除と補修を分けて見積もってもらいましょう。
- シロアリの被害がある空き家でも売れますか?
- 売ることはできます。直してから売る、現状のまま内容を伝えて売る、解体して土地として売るなどの進め方を比べて選びます。
売るか直すかを考えるときに
空き家を売る全体の流れは「空き家の売却の流れ」、業者にそのまま買い取ってもらう方法は「空き家の買取業者」で説明しています。地域の会社は売買を手がける会社の一覧から探せます。
被害のある家をどう手放すか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 空き家は換気されず、水漏れにも気づきにくいため、シロアリが好む湿った状態になりやすい
- 羽アリ、蟻道、床の沈み、空洞音が被害のサイン。羽アリだけ退治して終わりにしない
- 予防は通気、雨漏りと水漏れの早期修理、木材や段ボールを置かないこと
- 売るときは被害と対応の記録を伝える。知りながら告げなかった事実は特約があっても責任を免れない
- 直して売る、現状で売る、解体して売るの3つを比べて選ぶ




