相続税の計算方法を4つの段階で解説|課税価格から納める税額まで計算例つき

相続税は、遺産をいったん法定相続分で分けたものとして税の総額を出し、実際にもらった割合で分け直すという、少し変わった計算をします。国税庁の手順に沿って、4つの段階と計算例で説明します。
結論
- 相続税の計算方法は、①各人の課税価格を出す、②相続税の総額を出す、③総額を各人に割り振る、④加算や控除をして納める税額を出す、の4つの段階です。
- 相続税の総額は、課税価格の合計から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引き、残りを法定相続分で分けたものとして税率を掛けて出します。
- 実際の遺産の分け方は、③の段階で初めて使います。だれがどれだけ受け取っても、相続税の総額は変わりません。
- 配偶者は、受け取った遺産が1億6千万円か法定相続分相当額の多いほうまでなら、税額の軽減で相続税がかかりません(申告が必要です)。
相続税がかかりそうだと聞いても、どう計算するのか分からない。遺産の額に税率を掛けるだけだと思っていたら、仕組みがまったく違っていた。初めて相続税に向き合う方の多くが、ここでつまずきます。
相続税は、遺産全体から税の総額を出し、それを相続人で分け合う形をとります。仕組みを知ると、自分の家でどのくらいかかりそうかの見当がつきます。
この記事では、国税庁の説明に沿って、相続税の計算方法を4つの段階で説明します。申告の手続きや期限は「相続税の申告の流れ」にまとめていますので、ここでは計算に絞ります。
相続税の計算方法とは:全体の4つの段階
ひとことで言うと
相続税の計算方法とは、遺産の合計から「家全体の税の総額」を決め、それを各人がもらった割合で分ける計算のことです。国税庁は、次の4つの段階で説明しています。
| 段階 | やること | 使う数字 |
|---|---|---|
| ① 各人の課税価格 | 各人がもらった財産から債務などを引く | 財産の評価額、債務、葬式費用 |
| ② 相続税の総額 | 基礎控除を引き、法定相続分で分けて税率を掛ける | 法定相続人の数、法定相続分、税率 |
| ③ 各人の税額 | 総額を、実際にもらった割合で割り振る | 各人の課税価格 |
| ④ 納める税額 | 2割加算や税額控除を反映する | 配偶者の税額軽減など |
実際の分け方を使うのは③から
②までは、実際にだれがいくらもらったかに関係なく、法定相続分で分けたものとして計算します。そのため、遺産の分け方を変えても、相続税の総額は変わりません。この点が、相続税の計算のいちばんの特徴です。
第1段階:各人の課税価格を出す
課税価格の出し方
国税庁の説明では、各人の課税価格は次のように求めます。
- 相続や遺贈でもらった財産の価格に、みなし相続財産(死亡保険金など)を足す
- 非課税財産を引く
- 相続時精算課税で贈与を受けた財産を足す
- 債務と葬式費用を引く(赤字なら0とする)
- 相続開始前の一定期間の暦年課税の贈与財産を足す(千円未満は切り捨て)
不動産は「評価額」で入れる
財産のうち土地は路線価方式か倍率方式で、建物は固定資産税評価額をもとに評価します。土地の評価は「相続税の土地評価と路線価」で説明しています。
亡くなった方の自宅の土地などは、小規模宅地等の特例で評価を減らせる場合があります。特定居住用宅地等なら、330平方メートルまで80%減らせます。詳しくは「小規模宅地等の特例」をご覧ください。
生前贈与を足す期間
相続開始前の暦年課税の贈与を足す期間は、亡くなった日によって変わります。
| 亡くなった日 | 足す期間 |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から亡くなった日まで |
| 令和13年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
国税庁によると、亡くなった日が令和9年1月2日以後の場合、延びた期間に受けた贈与(相続開始前3年以内のもの以外)は、合計から100万円までを足さずに済みます。生前贈与の考え方は「生前贈与と不動産」も参考にしてください。
第2段階:相続税の総額を出す
基礎控除を引く
各人の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を引きます。残りを「課税遺産総額」と呼びます。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。法定相続人の数は、相続を放棄した人がいても放棄がなかったものとして数えます。養子は、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までを数に入れます。
法定相続分で分けて税率を掛ける
課税遺産総額を、法定相続分どおりに分けたものとして、それぞれに次の税率を掛けます。国税庁の速算表は次のとおりです。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出てきた税額を合計したものが「相続税の総額」です。法定相続分は、配偶者と子なら2分の1ずつ、配偶者と親なら3分の2と3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら4分の3と4分の1です(民法第900条)。割合の考え方は「法定相続分と不動産」で詳しく説明しています。
ポイント
- 総額は、法定相続分で分けたと仮定して出す
- 実際の分け方を変えても、総額は変わらない
- 速算表は「取得金額×税率-控除額」で使う
第3段階と第4段階:各人の税額と納める税額
総額を割り振る
相続税の総額に、各人の課税価格が合計に占める割合を掛けて、各人の税額を出します。ここで初めて、実際の分け方が反映されます。
2割加算
亡くなった方の配偶者、父母、子以外の人が財産を受け取った場合は、その人の税額に2割を足します。たとえば兄弟姉妹や、遺言で財産を受け取った親族以外の人が当たります。養子は子として扱われ、対象になりません。ただし、孫を養子にした場合は、代襲相続人でなければ対象になります。
税額控除を引く
国税庁の説明では、次の順に税額控除を引きます。暦年課税分の贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除です。最後に、相続時精算課税分の贈与税額を引いた額が、納める税額になります。
配偶者の税額軽減
配偶者が実際に受け取った遺産が、1億6千万円か配偶者の法定相続分相当額の多いほうまでなら、相続税はかかりません。この軽減は、申告書に明細を書いて提出して受けます。申告期限までに分けられていない財産は、原則として対象になりません。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0円になっても、申告書を出さなければ特例は使えません。「0円だから申告不要」と決めつけないよう注意してください。
計算例:遺産1億円、相続人が配偶者と子2人の場合
前提
課税価格の合計が1億円、相続人は配偶者と子2人の3人とします。実際の分け方は、配偶者が5,000万円、子がそれぞれ2,500万円です。
計算の流れ
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税遺産総額:1億円-4,800万円=5,200万円
- 法定相続分で分ける:配偶者2,600万円、子はそれぞれ1,300万円
- 税率を掛ける:配偶者 2,600万円×15%-50万円=340万円、子 1,300万円×15%-50万円=145万円(2人で290万円)
- 相続税の総額:340万円+290万円=630万円
- 実際の割合で割り振る:配偶者は630万円×50%=315万円、子はそれぞれ630万円×25%=157万5千円
- 配偶者は税額軽減で0円。子はそれぞれ157万5千円を納める
この例では、家全体で納める相続税は315万円です。配偶者の取り分を増やすと全体の税額は下がりますが、配偶者が亡くなったときの次の相続で税がかかることもあります。分け方は、次の相続まで見通して考えます。
計算例2:相続人が子2人だけの場合
前提と計算
配偶者がすでに亡くなっていて、相続人は子2人とします。課税価格の合計は8,000万円で、2人で4,000万円ずつ分けます。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
- 課税遺産総額:8,000万円-4,200万円=3,800万円
- 法定相続分で分ける:子それぞれ1,900万円
- 税率を掛ける:1,900万円×15%-50万円=235万円(2人で470万円)
- 実際の割合で割り振る:それぞれ470万円×50%=235万円
配偶者の税額軽減がないため、例1より遺産が少なくても、家全体の税額は大きくなります。相続人の組み合わせで結果が大きく変わることが分かります。
計算の前に集めるもの
- 戸籍(法定相続人がだれで何人かを確かめる)
- 土地と建物の評価に使う資料(固定資産税の課税明細書、登記簿など)
- 預金の残高、株や投資信託の明細
- 死亡保険金の支払い明細
- 借入金の残高と、葬式費用の領収書
- 生前に受けた贈与の記録
計算でよくある失敗
失敗1:遺産の額にそのまま税率を掛ける
速算表は、法定相続分で分けた後の金額に使います。遺産の総額に直接掛けると、税額が大きく出すぎます。
失敗2:相続放棄した人を数から外す
基礎控除や総額の計算では、放棄がなかったものとして数えます。放棄した人を外すと、基礎控除が小さくなり、計算がずれます。
失敗3:2割加算を忘れる
兄弟姉妹や、孫(代襲相続人でない場合)が財産を受け取るときは、その人の税額に2割を足します。遺言で孫に不動産を渡す場合などは、加算後の税額で考えます。
失敗4:不動産を時価や買った値段で入れる
相続税では、国税庁の決まった方法で評価します。思い込みの金額で計算すると、申告が要るかどうかの判断まで誤ります。
よく出てくる言葉の言い換え
- 課税価格:各人が相続税の計算に入れる財産の額
- 課税遺産総額:基礎控除を引いたあとの、税がかかる遺産の合計
- 相続税の総額:家全体でかかる相続税の合計
- 法定相続分:民法が決めた、相続人ごとの取り分の割合
- 税額控除:計算した税額から直接引けるもの
よくある質問
- 相続税は遺産の総額に税率を掛ければ計算できますか?
- できません。基礎控除を引いた残りを法定相続分で分けたものとして税率を掛け、その合計を実際の取り分で割り振ります。
- 遺産の分け方で相続税の総額は変わりますか?
- 総額は変わりません。ただし、配偶者の税額軽減や2割加算が関わるため、実際に納める合計額は分け方で変わります。
- 孫が遺産を受け取ると相続税は高くなりますか?
- 孫は、代襲相続人の場合を除き、2割加算の対象です。孫を養子にしていても、代襲相続人でなければ対象になります。
- 相続税の計算に不動産はいくらで入れますか?
- 土地は路線価方式か倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに評価します。自宅の土地などは小規模宅地等の特例で減らせる場合があります。
- 税額が0円なら申告しなくてよいですか?
- 特例を使う前の合計が基礎控除額以下なら申告は不要です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で0円になる場合は、申告書を出す必要があります。
次に読みたい記事と相談先
相続した不動産をどう分けるかは「遺産分割協議と不動産」、売るか貸すかの比べ方は「実家は売るか貸すか」で整理しています。計算や申告の細かい判断は、税務署や税理士に確かめると確実です。
相続した不動産の活かし方を相談したいときは、会社の一覧から探すか、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 相続税の計算方法は、課税価格→総額→割り振り→加算と控除、の4段階
- 総額は、基礎控除を引いた残りを法定相続分で分けたものとして速算表で出す
- 実際の分け方は、総額を割り振る第3段階で使う
- 配偶者・父母・子以外は2割加算、配偶者は1億6千万円か法定相続分までは軽減
- 特例で0円になっても、申告書を出さないと特例は使えない




