相続登記の費用はいくら?登録免許税の計算と、戸籍など書類の手数料の内訳

相続登記にかかる費用は、法務局に納める登録免許税と、戸籍や証明書を取り寄せる手数料が中心です。それぞれの決まり方と計算の例、免税になる場合、費用を抑える工夫を順に整理します。
結論
- 相続登記の費用は、主に「登録免許税」と「書類の取り寄せ手数料」の2つです。司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかります。
- 登録免許税は、不動産の価額(固定資産課税台帳の価格をもとにする)の1,000分の4です(登録免許税法 別表第一)。
- 価額が100万円以下の土地などは、2027年3月31日までの申請で登録免許税が免税になります(租税特別措置法第84条の2の2)。
- 戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円が国の定める標準額です。登記事項証明書は書面の請求で1通600円です。
「相続登記をしなければいけないのは分かったが、いくらかかるのか」。手続きを始める前に、まず費用の見通しを立てたい方は多いはずです。
相続登記の費用は、不動産の価額と、集める書類の数で大きく変わります。何にいくらかかるのかを分けて考えると、見通しが立てやすくなります。
この記事では、法律と政令で決まっている登録免許税と手数料を中心に、費用の内訳と計算の仕方を順に説明します。司法書士の報酬は事務所ごとに違うため、この記事では扱いません。
相続登記の費用とは
費用の全体像
相続登記の費用とは、亡くなった方から相続人へ不動産の名義を移すためにかかるお金のことです。大きく分けると、次の3つです。
| 費用 | 中身 | 決まり方 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 登記をするときに国に納める税 | 不動産の価額×1,000分の4 |
| 書類の手数料 | 戸籍、住民票、証明書などの取り寄せ | 書類の種類と通数で決まる |
| 専門家の報酬 | 司法書士に申請を頼む場合 | 事務所ごとに違う |
このほか、郵送で書類を取り寄せる場合の郵送料などがかかります。
いつまでに必要か
不動産登記法第76条の2により、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。義務の中身は「相続登記の義務化」で説明しています。
登録免許税の計算
税率と課税標準
登録免許税法の別表第一では、相続による所有権の移転の登記の税率を、不動産の価額の1,000分の4と定めています。課税標準とは、税額を計算するもとになる金額のことです。
不動産の価額は、登録免許税法の附則第7条により、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格をもとに求めることができます。課税明細書や評価証明書の「価格」の欄を見ます。
計算の手順
- 不動産ごとの固定資産課税台帳の価格を確かめる
- 同じ申請書で出す不動産の価格を合計する
- 合計額の1,000円未満を切り捨てる(国税通則法第118条)
- 1,000分の4を掛ける
- 100円未満を切り捨てる(国税通則法第119条)
- 計算した額が1,000円に満たないときは、1,000円とする(登録免許税法第19条)
計算の例
土地の価格が12,345,678円、建物の価格が3,210,000円の家を、同じ申請書で相続登記する場合です。
- 合計:15,555,678円
- 1,000円未満を切り捨て:15,555,000円
- 1,000分の4を掛ける:62,220円
- 100円未満を切り捨て:62,200円
この例の登録免許税は62,200円です。
遺言で相続人以外の人が不動産を受け取る場合などは、税率が違うことがあります。自分の場面の税率は、法務局の案内で確かめましょう。
登録免許税が免税になる場合
価額が100万円以下の土地
租税特別措置法第84条の2の2第2項により、2027年3月31日までの間に受ける相続による土地の所有権の移転の登記で、土地の価額が100万円以下のものは、登録免許税がかかりません。対象は土地で、建物は含まれません。
登記の前に相続人が亡くなった場合
同じ条の第1項により、相続で土地を取得した人が、その登記をしないまま亡くなった場合、2027年3月31日までにその人を名義人とするための登記には、登録免許税がかかりません。何代も名義が変わっていない土地で使われることがあります。数代分の相続の登記は「数次相続の登記」で説明しています。
免税を受けるときの注意
- 免税は自動では受けられない。申請書に免税の根拠となる条文を書く
- 期限は2027年3月31日まで。申請の時期を確かめる
- 建物は100万円以下でも、この免税の対象ではない
ポイント
- 登録免許税は、価額の1,000分の4
- 価額は固定資産課税台帳の価格をもとにする
- 合計の1,000円未満と、税額の100円未満は切り捨て
- 100万円以下の土地は、2027年3月31日までの申請で免税
登録免許税の納め方
登録免許税法第21条により、登録免許税は国に納め、その領収証書を申請書に貼って出すのが基本です。第22条により、税額が3万円以下の場合などは、収入印紙を申請書に貼って納めることもできます。
書類の取り寄せにかかる手数料
戸籍の手数料
戸籍の手数料は市区町村の条例で決まりますが、国は「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」で標準額を定めています。
| 書類 | 標準額 |
|---|---|
| 戸籍謄本・抄本、戸籍証明書 | 1通450円 |
| 除籍謄本・抄本、除籍証明書 | 1通750円 |
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍は、何通にもなることがあります。改製原戸籍(作り直す前の古い戸籍)の手数料も含め、実際の額は請求する市区町村の案内で確かめます。
登記所の証明書の手数料
登記手数料令では、法務局で取る証明書の手数料を次のように定めています。
| 書類 | 書面で請求 | オンラインで請求 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 1通600円 | 1通490円(送付は520円) |
| 所有不動産記録証明書 | 1通1,600円 | 1通1,470円(送付は1,500円) |
所有不動産記録証明書とは、ある人が名義人になっている不動産を一覧で証明する書類です。相続人は、亡くなった方の分を請求できます(不動産登記法第119条の2)。相続する不動産の漏れを防ぐのに役立ちます。
郵送で戸籍を取り寄せる手順
本籍地が遠い場合は、郵送で請求できます。
- 本籍地の市区町村のサイトで、郵送請求の申請書と送り先を確かめる
- 申請書に、必要な戸籍の種類と通数、使う目的を書く
- 本人確認書類の写しと、亡くなった方との関係が分かる戸籍を添える
- 手数料を、市区町村が案内する方法で用意する
- 切手を貼った返信用封筒を入れて送る
届いた戸籍に前の本籍地が書かれていれば、次の市区町村に同じように請求します。
市区町村で取るその他の書類
- 相続人の住民票、亡くなった方の住民票の除票
- 遺産分割協議書に押した実印の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書(課税明細書で価格が分からない場合など)
これらの手数料は、市区町村ごとに違います。取り寄せる前に、各市区町村の案内で確かめましょう。
費用を抑える工夫
法定相続情報一覧図を使う
法務局によると、法定相続情報証明制度では、相続関係を一覧にした図の写しを無料で交付してもらえます。相続登記のほか、預金の払戻しや相続税の申告などにも使えるため、戸籍の束を何度も取り直す手間と手数料を減らせます。
戸籍をまとめて請求する
戸籍法第120条の2により、コンピュータ化された戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できます(広域交付)。本籍地が何か所にも分かれている場合、窓口をまとめられることがあります。対象となる人や書類には条件があるため、窓口で確かめましょう。
不動産をまとめて申請する
同じ法務局の管轄にある不動産は、条件が合えば1つの申請書でまとめて出せます。登録免許税は合計額で計算するため、切り捨ての回数が減ります。
費用を見積もるチェックリスト
- 相続する不動産を、課税明細書と所有不動産記録証明書で洗い出した
- 不動産ごとの固定資産課税台帳の価格を書き出した
- 100万円以下の土地がないかを確かめた
- 必要な戸籍の通数と、本籍地の市区町村を書き出した
- 法定相続情報一覧図を使うかを決めた
- 自分で申請するか、司法書士に頼むかを決めた
費用をだれが負担するか
費用を惜しんで先送りしたときの負担
正当な理由なく相続登記の申請を怠ると、不動産登記法第164条により10万円以下の過料の対象になります。費用の見通しを早めに立て、期限の中で進めることが、結果として負担を抑えることにつながります。
相続人の間で決めておく
相続登記の費用をだれが負担するかは、法律で一律に決まっているわけではありません。不動産を受け取る人が払う、相続財産の預金から払う、相続人で分ける、などの決め方があります。
あとで「立て替えた分を返してほしい」ともめないよう、遺産分割の話し合いの中で決めておくと安心です。
決めておきたいこと
- 登録免許税をだれが払うか
- 戸籍などの取り寄せを、だれが受け持つか
- 立て替えた費用を、どう精算するか
- 司法書士に頼む場合、報酬をだれが払うか
- 領収書や納付の記録を、だれが保管するか
自分で申請するか、頼むか
費用と手間の比べ方
| 項目 | 自分で申請 | 司法書士に頼む |
|---|---|---|
| 登録免許税 | かかる | かかる |
| 書類の手数料 | かかる | かかる(取り寄せを頼むこともできる) |
| 報酬 | かからない | かかる(事務所ごとに違う) |
| 手間 | 書類集めと作成を自分でする | 任せられる部分が多い |
登録免許税と書類の手数料は、どちらでもかかります。差が出るのは報酬と手間です。自分で申請する手順は「相続登記を自分でする手順」にまとめています。
場面の例
Hさんは、父の自宅(土地と建物)と、郊外の小さな畑を相続しました。自宅は合計額をもとに登録免許税を計算し、畑は価額が100万円以下だったため、免税の条文を申請書に書きました。戸籍は法定相続情報一覧図にまとめ、預金の手続きにも使いました。
よくある失敗
- 課税標準に、固定資産税の「課税標準額」の欄を使ってしまう
- 100万円以下の土地の免税を、申請書に書き忘れる
- 戸籍を手続きごとに取り直し、手数料が重なる
- 名義人の不動産を把握しきれず、あとから別の土地が見つかる
よくある質問
- 相続登記の費用はいくらですか?
- 登録免許税(不動産の価額の1,000分の4)と、戸籍や証明書の手数料が中心です。司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかります。
- 登録免許税はどうやって計算しますか?
- 固定資産課税台帳の価格の合計から1,000円未満を切り捨て、1,000分の4を掛けて、100円未満を切り捨てます。
- 相続登記の登録免許税が無料になることはありますか?
- 価額が100万円以下の土地や、登記前に相続人が亡くなった場合の土地は、2027年3月31日までの申請で免税になります。申請書に根拠の条文を書く必要があります。
- 戸籍謄本の手数料はいくらですか?
- 国の定める標準額は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本が1通750円です。実際の額は市区町村の条例で決まります。
- 法定相続情報一覧図に費用はかかりますか?
- 一覧図の写しは無料で交付されます。ただし、作るもとになる戸籍などの取り寄せには手数料がかかります。
相続した不動産の手続きを進めるときに
登録免許税の仕組み全体は「不動産の登録免許税」、分け方の話し合いは「遺産分割協議と不動産」で説明しています。
名義を移したあと、売るか貸すか持ち続けるか迷うときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 相続登記の費用は、登録免許税と書類の手数料が中心。司法書士に頼むと報酬が加わる
- 登録免許税は、固定資産課税台帳の価格をもとにした価額の1,000分の4
- 100万円以下の土地などは、2027年3月31日までの申請で免税。条文の記載が必要
- 戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円が標準額。登記事項証明書は書面で600円
- 法定相続情報一覧図は無料。戸籍の取り直しを減らせる




