賃貸の解約予告期間とは? 契約書で確かめる点とオーナーから解約するときの決まり

賃貸の解約予告期間は、入居者が退去を申し出てから契約が終わるまでの期間で、まず契約書の定めで決まります。この記事では、契約書がない場合の民法の決まり、標準契約書の30日、オーナーから解約するときの6か月と正当事由を整理します。
結論
- 賃貸の解約予告期間とは、入居者が解約を申し入れてから、契約が終わるまでの期間のことです。長さは、まず賃貸借契約書の定めで決まります。
- 期間の定めがない契約で特に取り決めがなければ、民法617条により、建物は申し入れから3か月で終わります。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、借主は30日前の申し入れで解約できるとしています。
- オーナーから解約を申し入れる場合は、借地借家法により申し入れから6か月で終わり、しかも正当の事由が必要です。
「入居者から、来月末で出たいと連絡があった。家賃はいつまでもらえるのか」。「契約書に『2か月前』と書いてあるが、それは有効なのか」。退去の連絡を受けたオーナーが、まず迷うのが解約予告の扱いです。
解約予告の期間を正しく理解していないと、家賃をもらえる期間を誤ったり、次の募集を始める時期が遅れたりします。入居者との行き違いが、退去のときのトラブルにつながることもあります。
この記事では、解約予告期間の決まり方と、契約書で確かめる点、オーナーから解約するときの決まりを説明します。退去のときの立ち会いは「退去立ち会いの進め方」で扱っています。
賃貸の解約予告期間とは
解約予告期間とは、賃貸借の契約を途中で終わらせたい人が、相手に申し入れてから、実際に契約が終わるまでの期間です。入居者から申し入れる場合と、オーナーから申し入れる場合で、決まりが大きく違います。
決まり方の全体像
| 場面 | まず見るもの | 主な決まり |
|---|---|---|
| 入居者からの解約 | 賃貸借契約書の解約の条文 | 期間の定めのない契約は民法617条で3か月。契約書の定めがあればそれによる |
| オーナーからの解約 | 借地借家法 | 申し入れから6か月で終わる。正当の事由が必要 |
| 定期借家で入居者がやむを得ず解約 | 借地借家法38条7項 | 一定の住まいなら、申し入れから1か月で終わる |
「解約」と「解除」の違い
解約は、将来に向かって契約を終わらせることです。一方、家賃の長い滞納など相手の違反を理由に契約を終わらせるのが解除です。この記事で扱うのは解約です。滞納による解除は「家賃滞納への対応の流れ」をご覧ください。
入居者からの解約予告の決まり
入居者から解約を申し入れるときの期間は、契約書の書き方で変わります。
契約書に定めがある場合
多くの賃貸借契約書には、「借主は〇か月前までに申し入れて解約できる」といった条文があります。期間の定めがある契約でも、こうした解約の権利を残しておけば、その定めに従って途中で解約できます(民法618条)。まずはこの条文を確かめます。
契約書に定めがない場合
期間の定めがない賃貸借では、当事者はいつでも解約を申し入れることができ、建物は申し入れの日から3か月で終わります(民法617条1項2号)。なお、期間を1年未満とした建物の賃貸借は、期間の定めがないものとみなされます(借地借家法29条1項)。
標準契約書の30日
国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)の第11条では、借主は少なくとも30日前に申し入れれば解約できるとしています。また、30日分の家賃(解約後の家賃相当額を含む)を払えば、申し入れから30日以内のいつでも解約できるとしています。30日としたのは、家賃の日割りの分母を30日にしているのに合わせたためと解説されています。
解約予告の期間を何か月にするかは、契約書で決めます。古い契約書を使い回していると、ほかの物件と期間が違っていることがあります。物件ごとに確かめておきましょう。
申し入れはいつ効力を持つか
意思表示は、その通知が相手に届いたときから効力を生じます(民法97条1項)。解約の申し入れも、オーナーや管理会社に届いた日が起点になると考えます。届いた日が分かるよう、書面やメールで受け付けると安心です。
ポイント
- 入居者からの解約予告の期間は、まず契約書の条文で決まる
- 定めのない契約なら、民法617条で申し入れから3か月
- 標準契約書は30日前の申し入れ。30日分の家賃を払えば随時解約もできる
- 申し入れは、相手に届いた日が起点になる
解約予告と家賃の計算
解約予告の期間は、最後の家賃をいつまでもらうかに直結します。
標準契約書の例で考える
標準契約書の解説では、9月30日に退去したい場合、8月31日以前に申し入れることとしています。9月10日に申し入れた場合は、申し入れの日から30日分、つまり10月9日までの家賃(と家賃相当額)が必要になるとしています。
日割りか月割りか
1か月に満たない期間の家賃は、標準契約書では1か月を30日として日割りで計算します。契約書が月割りの定めになっていることもあるため、最後の月の家賃の扱いは、契約書の条文で確かめます。
敷金の精算との関係
最後の家賃に不足があれば、明け渡しのあとの敷金の精算で差し引くこともあります。敷金の返し方は「敷金の返還はいつ・いくら」で説明しています。
オーナーから解約するときの決まり
オーナーから契約を終わらせたいときは、入居者からの解約とは決まりが違います。
6か月と正当の事由
建物の賃貸人が解約を申し入れた場合、賃貸借は申し入れの日から6か月で終わります(借地借家法27条1項)。ただし、申し入れには正当の事由が必要です(同法28条)。正当の事由は、双方が建物を使う必要性、これまでの経過、建物の状態、立退料などの申し出を合わせて判断されます。
期間満了で更新しない場合
期間の定めがある契約で、満了のときに終わらせたい場合は、満了の1年前から6か月前までに更新しない旨を通知します(借地借家法26条1項)。この通知にも正当の事由が必要です。通知をしなければ、同じ条件で更新したものとみなされます。
入居者に不利な特約は無効
借地借家法の建物賃貸借の決まりに反する特約で、入居者に不利なものは無効です(同法30条)。たとえば「貸主は1か月前の予告でいつでも解約できる」といった特約は、この決まりとの関係で問題になります。
定期借家の中途解約
定期借家は、期間の満了で終わる契約です。それでも、一定の場合には入居者から途中で解約できます。
入居者がやむを得ず住めなくなった場合
住まいとして使う床面積200平方メートル未満の定期借家では、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情で、入居者が住み続けることが難しくなったときは、解約を申し入れることができます。契約は申し入れの日から1か月で終わります(借地借家法38条7項)。これに反する特約で入居者に不利なものは無効です(同条8項)。
定期借家の全体は「定期借家と普通借家の違い」をご覧ください。
新しく契約するときの予告期間の決め方
これから入居者と契約を結ぶときは、解約予告の期間をどうするかを、オーナーが決めることになります。
期間を決めるときの考え方
予告期間を長くすれば、次の入居者を探す時間がとれます。一方で、入居者にとっては引っ越しの予定を立てにくくなり、入居を決めるときの迷いにつながることもあります。
| 考える点 | 予告期間が短い | 予告期間が長い |
|---|---|---|
| 入居者の受け止め方 | 引っ越しの予定を立てやすい | 負担に感じることがある |
| オーナーの募集の準備 | 時間が少ない | 時間をとりやすい |
| 空室の期間 | 長くなりやすい | 短くしやすい |
法人契約・社宅の場合
会社が借りる社宅などの法人契約では、解約予告の期間を会社と個別に話し合って決めることもあります。転勤の時期に合わせた定めになっていることがあるので、契約書を必ず確かめます。法人契約の注意点は「法人契約の審査と書類」をご覧ください。
言葉の言い換え
- 解約の申し入れ:契約を終わらせたいと相手に伝えること
- 予告期間:申し入れから契約が終わるまでの期間
- 明け渡し:部屋を空けて鍵を返すこと
- 正当の事由:オーナーから契約を終わらせるのに必要な、相当な理由
解約予告を受けたオーナーの手順
入居者から解約の連絡を受けたら、次の順番で進めます。
- 申し入れが届いた日を記録し、書面やメールでも受け取る
- 契約書の解約の条文で、予告期間と最後の家賃の扱いを確かめる
- 契約が終わる日と、明け渡しの日を入居者と確かめる
- 退去の立ち会いの日を決める
- 次の募集の条件を見直し、募集を始める時期を決める
- 明け渡しのあと、原状回復と敷金の精算を進める
場面の例:急な退去の連絡を受けたHさん
Hさんの部屋の入居者から、9月10日に「月末で退去したい」と電話がありました。契約書を確かめると、標準契約書と同じく30日前の申し入れの定めでした。
Hさんは、管理会社を通じて書面でも申し入れを受け取り、10月9日までの家賃がかかることを入居者に伝えました。同時に募集の準備を始め、空室の期間を短くできました。
よくある失敗
- 電話だけで受け付け、申し入れの日があいまいになった
- 契約書を確かめず、ほかの物件と同じ予告期間だと思い込んだ
- オーナーの都合で「来月出てほしい」と伝え、入居者ともめた
- 退去が決まってから募集の準備を始め、空室が長引いた
契約書で確かめるチェックリスト
- 借主からの解約の予告期間は何か月(何日)か
- 予告期間に満たない場合の家賃の扱いはどうなっているか
- 最後の月の家賃は日割りか月割りか
- 申し入れの方法(書面かどうか)は決まっているか
- 定期借家か普通借家か
よくある質問
- 賃貸の解約予告は、何か月前が正しいのですか?
- 決まった1つの答えはなく、まず契約書の定めによります。契約書に定めがなく、期間の定めもない契約なら、民法では申し入れから3か月で終わります。
- 契約書に「2か月前」とあれば、入居者は2か月分の家賃を払いますか?
- 契約書の定めに従うのが基本です。ただし、内容によっては有効性が問題になることもあるため、迷うときは管理会社や専門家に確かめましょう。
- オーナーから解約を申し入れることはできますか?
- できますが、申し入れから6か月で終わり、正当の事由が必要です。入居者の事情なども合わせて判断されます。
- 定期借家でも、入居者は途中で解約できますか?
- 住まいとして使う床面積200平方メートル未満の物件で、転勤や療養などやむを得ない事情があれば、申し入れから1か月で終わります。
- 入居者が予告期間より早く退去したら、家賃はどうなりますか?
- 契約書の定めによります。標準契約書では、30日分の家賃を払えば申し入れから30日以内のいつでも解約できるとしており、早く出ても30日分の家賃はかかります。
- 解約の申し入れは電話でもよいですか?
- 契約書で方法が決まっていなければ電話でも伝わりますが、届いた日を残すため、書面やメールでも受け取るのが安心です。
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契約書のひな形は「賃貸住宅標準契約書とは」、次の募集の見直しは「募集条件の見直し」、空室を短くする工夫は「空室対策」で説明しています。管理会社との契約を終わらせたいときは「管理委託契約の解約手続き」をご覧ください。退去や募集を任せられる会社は会社一覧から探せます。複数の会社にまとめて相談することもできます。
まとめ
- 解約予告期間は、申し入れから契約が終わるまでの期間で、まず契約書の定めで決まる
- 契約書に定めがなく期間の定めもない契約は、民法617条で申し入れから3か月
- 標準契約書は30日前の申し入れで、30日分の家賃を払えば随時解約もできる
- オーナーからの解約は申し入れから6か月で、正当の事由が必要
- 申し入れの日を書面で残し、契約書の条文と最後の家賃の扱いを確かめる




