賃貸住宅標準契約書とは? 国交省ひな形の2つの型と使い方・特約の書き方

賃貸住宅標準契約書は、国土交通省が公開している賃貸借契約書のひな形です。この記事では、家賃債務保証業者型と連帯保証人型の違い、主な条文の中身、自分の物件に合わせる手順と特約の書き方を整理します。
結論
- 賃貸住宅標準契約書とは、国土交通省が公開している、住まいの賃貸借契約書のひな形です。使うことは法令で義務づけられていません。
- 最新は平成30年3月版で、「家賃債務保証業者型」と「連帯保証人型」の2つがあります。連帯保証人型には、民法改正に合わせて極度額の記入欄があります。
- 自分の物件に合わせるときは、別表の追加・削除や、第19条の特約で調整します。原状回復の特約は、借主が内容を理解して合意していることが前提です。
「契約書を自分で用意したいが、どこから手をつければよいか分からない」。「管理会社の契約書が古く、今の法律に合っているか不安」。個人のオーナーにとって、賃貸借契約書づくりは悩みの多い作業です。
契約書があいまいだと、家賃の改定や退去時の費用で揉める原因になります。かといって、一から作るのは大変です。
そこで役に立つのが、国が作った「賃貸住宅標準契約書」です。この記事では、ひな形の中身と、自分の物件に合わせて使うときの手順と注意点を説明します。
賃貸住宅標準契約書とは
賃貸住宅標準契約書とは、賃貸借契約をめぐる紛争を防ぎ、借主の居住の安定と貸主の経営の合理化を図るために作られたひな形です。平成5年1月29日の住宅宅地審議会の答申をもとに作られました。
国土交通省のページで、PDFとWordの形式で無料で手に入ります。対象は、社宅を除く民間の賃貸住宅です。
使う義務はない
標準契約書を使うことは、法令で義務づけられているものではありません。オーナーや管理会社が、独自の契約書を使ってもかまいません。
それでも、国が示した標準の形を知っておくと、自分の契約書に何が足りないかを確かめる物差しになります。
これまでの主な見直し
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 平成5年 | 住宅宅地審議会の答申をもとに作成 |
| 平成30年3月 | 民法改正や家賃債務保証業者の利用の増加をふまえ、2つの型に改定 |
| 令和4年 | 宅建業法の改正(令和4年5月18日施行)を受け、不動産会社と宅建士の押印欄を削除 |
| 令和6年12月 | 死後事務委任契約を前提にした特約の記載例を追加 |
2つの型の違い
平成30年3月版には、「家賃債務保証業者型」と「連帯保証人型」があります。違いは、家賃の支払いをだれが保証するかです。
| 比べる点 | 家賃債務保証業者型 | 連帯保証人型 |
|---|---|---|
| 保証する人 | 家賃債務保証業者(保証会社) | 個人の連帯保証人 |
| 第17条の中身 | 家賃債務保証業者の提供する保証 | 連帯保証人 |
| 頭書に書くこと | 保証会社の名称・登録番号など | 連帯保証人の情報と極度額 |
| 向いている場合 | 保証会社の利用を入居の条件にする | 親族などが保証人になる |
連帯保証人型と極度額
極度額とは、保証人が負担する上限の金額のことです。民法465条の2第2項により、個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません。
連帯保証人型では、頭書と記名押印欄に極度額を書きます。書き方は「〜円」「契約時の月額賃料の〜か月分」などが考えられるとされています。極度額は、あとで家賃が変わっても変わらず、契約時の額が使われます。
極度額を書かずに個人の連帯保証人を立てると、保証そのものが無効になるおそれがあります。古い契約書を使い回すときは、特に注意しましょう。
連帯保証人型のそのほかの決まり
連帯保証人型の第17条には、極度額のほかにも決まりがあります。借主または連帯保証人が亡くなったときに、保証する債務の元本が確定します。確定とは、その時点までの債務に保証の範囲が決まることです。
また、連帯保証人から求められたときは、貸主は家賃の支払いの状況や滞納の額などの情報を、遅れずに伝えなければなりません。保証人から問い合わせがあったときに慌てないよう、入金の記録を整えておきましょう。
どちらの型を選ぶかの分かれ道
- 入居の条件として保証会社の利用を求める:家賃債務保証業者型
- 保証会社を使わず、親族などに保証人になってもらう:連帯保証人型
迷うときは、管理会社や不動産会社に、今の募集の条件と合うかを確かめてから選びましょう。
標準契約書の構成と主な条文
標準契約書は、「頭書(かしらがき)」「本条」「別表」「記名押印欄」の4つでできています。頭書は、物件・期間・家賃・当事者などの条件を一覧で書き込む部分です。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第1条〜第3条 | 契約の締結、契約期間と更新、使用目的 |
| 第4条〜第6条 | 賃料、共益費、敷金 |
| 第7条〜第8条 | 反社会的勢力の排除、禁止・制限される行為 |
| 第9条 | 契約期間中の修繕 |
| 第10条〜第13条 | 契約の解除、借主からの解約、一部滅失による減額、契約の終了 |
| 第14条〜第16条 | 明渡し、明渡し時の原状回復、立入り |
| 第17条〜第19条 | 保証、協議、特約条項 |
賃料(第4条)
1か月に満たない期間の家賃は、1か月を30日として日割りで計算します。家賃は、税金の増減、経済事情の変動、近くの同じような建物との比較で不相当になったときに、話し合って改定できるとしています。
敷金(第6条)
敷金は、借主の債務の担保です。明け渡しのあと、滞納や原状回復の費用の未払いがあれば差し引いて返します。差し引くときは、内訳を示すことになっています。
借主からの解約(第11条)
借主は、少なくとも30日前に申し入れれば解約できます。30日分の家賃を払えば、申し入れから30日がたつまでの間、いつでも解約できるとも定めています。
禁止・制限される行為(第8条と別表)
別表第1は、してはいけない行為です。危険物の保管や、大音量での演奏などが並んでいます。別表第2は、貸主の書面の承諾があればできる行為で、犬・猫などの飼育がふくまれます。別表第3は、貸主に通知すればよい行為で、1か月以上の留守などです。
修繕(第9条と別表第4)
貸主は、借主が住むために必要な修繕を行います。電球やパッキンの取替えなど、費用の軽い修繕は、別表第4で借主が自分で行えるものとしています。
ポイント
- 頭書に条件を一覧で書き、記入漏れを防ぐつくりになっている
- 家賃の日割りは1か月30日、借主からの解約は30日前の申し入れ
- 禁止・承諾・通知の3段階で、借主の行為を整理している
- 原状回復の負担の考え方は、別表第5にまとめられている
自分の物件に合わせて使う手順
- 保証会社を使うか、連帯保証人を立てるかを決め、型を選ぶ
- 国土交通省のページから、Word形式の契約書をダウンロードする
- 頭書に、物件の設備・鍵の本数・期間・家賃・敷金などを書く
- 別表第1〜第4を、物件に合わせて変更・追加・削除する
- 別表第5の原状回復工事の目安の単価を、分かる範囲で書く
- 特約が必要なら、第19条の欄に書く
- 借主に内容を説明し、双方で記名押印する
別表を変えるときの決まり
別表を変えるときは、変える部分を二重線などで消して新しい文を書き、その上に貸主と借主が押印します。追加・削除のときも同じです。ただし、別表第1のうち、反社会的勢力に関わる行為(第六号〜第八号)は変えられません。
頭書の書き方のコツ
設備の欄には、有無だけでなく、性能や貸し出す数も書けます。たとえば鍵は、鍵の番号と貸し出す本数を書く欄があります。退去のときの確認がしやすくなります。
特約の書き方と注意点
第19条の特約は、標準の条文にない約束を足すための欄です。項目ごとに貸主と借主が押印し、最後に確かめのために記名押印します。特約の例として、次の4つが挙げられています。
- ペットの飼育を認める場合の内容
- 仕事場としての併用を認める場合の手続き
- 保険に加入する場合の内容
- 借主が亡くなったときの解除や残置物の処理を内容とする、死後事務委任契約に関する条項
原状回復の特約は3つの条件を満たす
通常の使い方による傷みや経年変化は、本来は貸主の負担です。これを借主の負担にする特約について、国土交通省の原状回復ガイドラインは、次の3つの条件を挙げています。
- 特約の必要性があり、暴利的でないなどの客観的・合理的な理由がある
- 借主が、通常の原状回復を超えた負担を負うことを理解している
- 借主が、その負担を負うと意思表示している
標準契約書の別表第5でも、特約は民法90条や消費者契約法8条・8条の2・9条・10条に反しない内容に限るとしています。原状回復の考え方は「原状回復ガイドライン」で説明しています。
ほかのひな形もある
国土交通省は、定期借家のための「定期賃貸住宅標準契約書」や、「サブリース住宅標準契約書」も公開しています。契約の種類に合ったひな形を選びましょう。定期借家の考え方は「定期借家と普通借家の違い」にまとめています。
場面の例:自主管理のDさん
Dさんは、自分で入居者を募集し、契約まで行う自主管理のオーナーです。これまでは、知人にもらった古い契約書を使っていました。
標準契約書と見比べたところ、連帯保証人の極度額の欄がないことに気づきました。そこで連帯保証人型に切り替え、ペット可にする部屋は特約で条件を書くことにしました。自主管理と委託の違いは「賃貸管理の自主管理と委託の違い」も参考になります。
よくある失敗
- 古い契約書を使い続け、極度額を書いていない
- 別表を変えたのに、押印をしていない
- 原状回復の特約を「借主の負担とする」の一文だけで済ませ、内容を説明していない
- 定期借家なのに、普通借家用のひな形を使っている
- 鍵の本数や設備の状態を書かず、退去のときに揉める
契約前のチェックリスト
- 型(保証会社か連帯保証人か)は物件に合っているか
- 連帯保証人型なら、極度額を書いたか
- 頭書の設備・鍵・家賃・敷金に記入漏れはないか
- 別表の変更に、双方の押印があるか
- 特約の内容を、借主に具体的に説明したか
よくある質問
- 賃貸住宅標準契約書は、使わないといけませんか?
- いいえ。使うことは法令で義務づけられていません。独自の契約書を使う場合も、内容を見比べる物差しとして役に立ちます。
- 賃貸住宅標準契約書はどこで手に入りますか?
- 国土交通省のホームページで、PDFとWordの形式で無料で公開されています。家賃債務保証業者型と連帯保証人型があります。
- 標準契約書の内容を書きかえてもよいですか?
- 別表は物件に合わせて変更・追加・削除でき、標準にない約束は第19条の特約に書けます。変えた部分には、貸主と借主が押印します。
- 電子契約でも使えますか?
- 国土交通省のページでは、電子契約の場合は押印欄を削除して電子署名とする方法もあると案内されています。
- 定期借家の契約にも使えますか?
- 定期借家には、別に「定期賃貸住宅標準契約書」があります。契約の種類に合ったひな形を使いましょう。
関係する記事と相談先
入居者を選ぶときの考え方は「入居審査のポイント」、管理のルールは「賃貸住宅管理業法」にまとめています。法人に貸す場合は「法人契約の審査と書類」も参考になります。契約や管理をまかせられる会社は会社一覧から探せます。管理の任せ方も含めて考えたいときは、複数の会社にまとめて相談することもできます。
まとめ
- 賃貸住宅標準契約書は、国土交通省が公開している賃貸借契約書のひな形で、使う義務はない
- 最新は平成30年3月版で、家賃債務保証業者型と連帯保証人型がある
- 連帯保証人型では極度額を書く。書かないと保証が無効になるおそれがある
- 物件に合わせるときは、別表の変更と第19条の特約で調整し、押印する
- 原状回復の特約は、必要性・借主の理解・意思表示の3つが前提




