管理委託契約の解約手続き|予告期間の確かめ方と違約金、引き継ぎの順番

賃貸の管理委託契約は、契約書の定めに沿って解約できます。予告期間と違約金の条文の読み方、解約の申し出の書き方、契約が終わるときに受け取るお金と書類、解約後の管理の決め方を整理します。
結論
- 管理委託契約の解約は、まず契約書の「解約の申し入れ」「契約の解除」「契約終了時の処理」の3つの条文を読むことから始めます。
- 国の標準契約書では、相手に「少なくとも○か月前」に文書で申し入れれば解約でき、期間は契約ごとに決める形です。
- 予告期間を待たずに終える場合の支払いや違約金も、契約書の定めで決まります。
- 契約が終わるときは、管理会社が預かっているお金と書類を受け取り、入居者に管理の終了を知らせます。
「今の管理会社との契約をやめたい。でも、何から手をつければいいのか分からない」。管理委託契約の解約は、何度も経験することではありません。
解約の申し出の期限を過ぎてしまった。預けていたお金の精算でもめた。こうしたつまずきは、契約書を先に読んでおけば防げることがほとんどです。
この記事では、解約の前に読む条文、申し出の手順、契約が終わるときに受け取るもの、解約後の管理の決め方を順に説明します。
管理委託契約の解約とは
管理委託契約とは
管理委託契約とは、オーナーが賃貸住宅の管理の仕事を管理会社に任せる契約です。点検や修繕の手配、家賃の受け取り、入居者からの連絡への対応などを頼みます。賃貸住宅管理業法では「管理受託契約」と呼ばれます。
解約と解除の違い
契約を終わらせる方法は、大きく2つあります。
- 解約:決められた予告期間を守って申し入れ、契約を終える
- 解除:相手が約束を守らないときなどに、契約を一方的に終わらせる
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」も、この2つを分けて定めています。
民法の決まり
民法では、委任の契約は各当事者がいつでも解除できると定めています。ただし、相手に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がなければ損害を賠償しなければなりません。
実際の解約は、まず契約書の定めに沿って進めます。契約書と民法の関係で迷うときや、もめそうなときは、弁護士などの専門家に相談しましょう。
解約の前に改善を求める道もある
不満の中身によっては、解約しなくても解決することがあります。たとえば、報告が分かりにくいなら報告の形を、返事が遅いなら担当者の交代を頼めます。
改善を頼むときは、いつ、何を、いつまでに直してほしいかを書面で伝えます。約束の時期までに変わらなければ、解約を具体的に考える段階に進みます。このやりとりの記録は、解約の話し合いでも役に立ちます。
家賃を保証する「サブリース(一括借上げ)」は、管理委託とは別の賃貸借の契約で、解約のルールも違います。くわしくは「サブリースの解約」をご覧ください。
解約の前に読む契約書の3つの条文
国の標準契約書の形
国土交通省の標準管理受託契約書では、次のように定めています。手元の契約書でも、同じような条文を探します。
| 条文 | 標準契約書の中身 | 手元の契約書で確かめること |
|---|---|---|
| 解約の申し入れ(第21条) | 少なくとも○か月前に文書で申し入れれば終了できる。オーナーは○か月分の管理報酬相当額を払えば随時終了できる | 何か月前か。文書の形。予告期間を待たない場合の支払い |
| 契約の解除(第20条) | 本来の約束を守らないとき、相当の期間を定めて催告し、それでも守られなければ解除できる | 解除できる場合と手順 |
| 契約終了時の処理(第22条) | 管理会社は、書類と預かっているお金を引き渡し、家賃の滞納状況を報告する | 何を、いつまでに渡すか |
標準契約書の「○か月」は空欄で、当事者が決める形です。手元の契約書に書かれた期間が基準になります。
契約書が見つからないとき
相続した物件などで、契約書が手元にないこともあります。その場合は、管理会社に契約書の写しを求めます。登録した会社なら、契約を結んだときに、契約期間や更新・解除の定めを書いた書面を渡す決まりがあるので、その控えも確かめます。
違約金の定めを探す
「違約金」「解約金」「管理報酬相当額」などの言葉で書かれていることがあります。金額の決め方と、払う場面を確かめます。
期限の数え方を確かめる
「3か月前」とあっても、どの日を起点に数えるのかで終わる日が変わります。申し入れが相手に届いた日なのか、月末で区切るのか。読んで分からなければ、管理会社に書面で確かめます。
ポイント
- 解約の申し入れの期間(何か月前か)と、申し入れの形(文書か)
- 予告期間を待たずに終える場合の支払いと違約金
- 契約終了時に、お金・書類・滞納状況をどう引き渡すか
- 自動更新の定めがあるか、更新の日はいつか
管理委託契約を解約する手順
- 契約書を読み、予告期間・違約金・終了時の処理を書き出す
- 解約後の管理をどうするか(別の会社に頼むか、自分でするか)を決める
- 契約が終わる日を決め、予告期間から逆算して申し入れの日を決める
- 解約の申し入れを文書で出し、届いた日が分かる形で残す
- 預かっているお金・書類・鍵・滞納状況の引き継ぎの日程を決める
- 入居者に、管理の終了と新しい連絡先・振込先を知らせる
- 引き継いだものを一覧と照らし合わせ、漏れがないか確かめる
申し入れの書面に書くこと
- 契約の名前と、契約を結んだ日
- 対象の物件の名前と所在地
- 解約を申し入れる旨と、契約が終わる日
- 契約終了時に引き渡してほしいもの
- 申し入れた日と、オーナーの名前
理由を書く決まりはありません。感情的な言葉は避け、事務的に書くと引き継ぎへの協力も得やすくなります。
更新しないという終わらせ方
契約期間が決まっていて、自動で更新する定めがある契約もあります。この場合、更新しない旨をいつまでに伝えるかが決まっていることが多く、その期限が実際の締め切りになります。
更新の日が近いなら、予告期間を待たずに終える支払いをせず、期間の満了で終えられることもあります。更新の日と申し出の期限を、契約書で確かめて手帳に書いておきましょう。
申し入れの前のチェックリスト
- 契約書の原本か写しが手元にあるか
- 予告期間、更新の日、違約金の定めを書き出したか
- 契約が終わる日を決め、申し入れの日を逆算したか
- 次の管理会社か、自主管理の準備ができているか
- 引き継いでほしいものの一覧を作ったか
- 入居者へのお知らせを、だれがいつ出すか決めたか
解約を伝える前に次の手を決める
申し入れてから次の管理を考えると、入居者からの連絡を受ける先がない期間ができるおそれがあります。管理会社を替える場合の比べ方は「管理会社の変更」で説明しています。
契約が終わるときに受け取るもの
お金:預かり金と敷金
管理会社は、受け取った家賃や敷金などを、自分のお金や他のオーナーのお金と分けて管理する義務があります(賃貸住宅管理業法の分別管理)。契約が終わるときは、残っている額の一覧をもらい、いつ、どこへ移すかを書面で決めます。
書類と鍵
| 引き継ぐもの | 中身の例 |
|---|---|
| 入居者の契約書類 | 賃貸借契約書、更新の記録、入居時の書類 |
| 家賃の記録 | 入金の記録、滞納の状況 |
| 建物の記録 | 修繕や点検の記録、設備の保証書 |
| 鍵 | 各部屋・共用部の鍵、スペアキー |
| 進行中の案件 | 対応途中の修理や苦情、退去の予定 |
引き継ぎの日に立ち会う
引き継ぎは、できればオーナーも立ち会い、一覧と現物を一つずつ照らし合わせます。鍵は本数を数え、書類は原本か写しかを確かめます。受け取ったものは、日付を入れた受領の書面に残しておくと、あとで確かめ直せます。
入居者へのお知らせ
標準契約書では、契約が終わったとき、オーナーと管理会社が入居者に管理の終了を遅滞なく知らせると定めています。家賃の振込先が変わる場合は、切り替えの月をはっきり書きます。
解約後の管理をどうするか
選び方の分かれ道
- 別の管理会社に頼む:入居者対応や修繕の手配を続けて任せたい
- 自分で管理する:物件が近く、時間があり、入居者対応もできる
- 一部だけ頼む:家賃の管理は自分で、修繕の手配だけ頼むなど
自分で管理する場合の準備は「賃貸管理の委託と自主管理の違い」にまとめています。
場面の例:相続したアパートの契約を見直すCさん
Cさんは、父から小さなアパートを相続しました。管理委託契約は父の名前のままでした。契約書を読むと、解約は「3か月前までに文書で」とあり、自動で1年ずつ更新する定めもありました。
Cさんは、更新の日と予告期間を手帳に書き、次の会社の提案を2社から受けました。申し入れは更新日の4か月前に出し、預かり金の一覧も同時に求めました。その結果、管理の空白をつくらずに切り替えられました。
よくある失敗
- 自動更新の日を過ぎてから申し入れ、契約がもう一期続いてしまう
- 口頭で伝えただけで、申し入れた日が証明できない
- 預かり金の残高を確かめずに引き継ぎ、あとで食い違う
- 滞納している入居者の情報を引き継がず、督促が止まる
もめやすい場面と、落ち着いた進め方
解約の話し合いでは、次のような場面で意見が分かれやすくなります。
- 予告期間の数え方:申し入れた日か、届いた日か、月末で区切るのか
- 違約金の額:どの定めに当たるのか、管理報酬の何か月分なのか
- 預かり金の残高:会社の帳簿とオーナーの記録が合わない
- 進行中の工事:解約の日をまたぐ修繕の費用をだれが払うか
どの場面でも、まず契約書の条文と、それまでのやりとりの記録を並べて確かめます。話し合いは口頭で済ませず、決まったことを書面に残します。
それでも食い違いが埋まらないときは、弁護士などの専門家に相談します。管理会社が登録した会社なら、契約の前に受け取った説明の書面も見直しましょう。解除や更新の決まりは、その書面にも書かれているはずです。
よくある質問
- 管理委託契約は途中で解約できる?
- 多くの契約書に解約の申し入れの定めがあり、その期間と手順に沿って解約できます。期間を待たずに終える場合の支払いも、契約書の定めを確かめましょう。
- 解約の予告期間は何か月?
- 法律で一律に決まってはいません。国の標準契約書も「○か月前」と空欄にしており、手元の契約書に書かれた期間が基準になります。
- 違約金は必ずかかる?
- 違約金の有無と額は契約書の定めによります。予告期間を守って申し入れた場合と、待たずに終える場合とで扱いが違うことがあるので、条文を確かめます。
- 解約の申し入れは電話でもいい?
- 標準契約書では文書で申し入れる形です。届いた日が分かる方法で書面を出しておくと、あとで期限の食い違いを防げます。
- 管理会社が預かっている敷金はどうなる?
- 敷金を返す責任は貸主であるオーナーにあります。契約が終わるときに残高を確かめ、オーナーか次の管理会社へ確実に移してもらいます。
- 解約すると入居者との契約も終わる?
- 終わりません。入居者との賃貸借契約の当事者はオーナーなので、管理会社との契約が終わっても入居者の契約はそのまま続きます。
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まとめ
- 解約の前に「解約の申し入れ」「契約の解除」「契約終了時の処理」の条文を読む
- 予告期間は契約書の定めが基準。国の標準契約書は「○か月前に文書で」の形
- 予告期間を待たずに終える場合の支払いや違約金も、契約書で確かめる
- 申し入れは文書で出し、届いた日が分かる形で残す
- 終わるときは、預かり金・書類・鍵・滞納状況を一覧で引き継ぐ
- 解約後の管理(次の会社か自主管理か)を、申し入れの前に決めておく




