空き家を賃貸に出すリフォームの優先順位|安全・水回り・見た目の順で考える

空き家を貸す前のリフォームは、直し過ぎれば元が取れず、直さなければ借り手が付きません。安全、住むための設備、見た目の順に、直す場所の優先順位と判断のしかたを整理します。
結論
- 空き家を賃貸に出すリフォームは、「安全にかかわる所」「暮らしに欠かせない設備」「見た目と使い勝手」の順に優先順位を付けて進めます。
- 雨漏り・傾き・腐った床・電気やガスの不具合・耐震性は、借りる人の安全にかかわるので最初に確かめます。
- 住宅用火災警報器は、すべての住宅で寝室と階段などに付けることが義務です。貸す前に付いているかと、古くなっていないかを確かめます。
- 費用は家と地域で大きく変わります。複数の会社から見積もりを取り、家賃の見込みと比べて、どこまで直すかを決めます。
「親の家を貸したいけれど、古いままでは借り手が付かない気がする」。一方で「全部直すと、いくらかかるか分からない」。空き家を貸そうとする方の多くが、この間で迷います。
貸す前のリフォームは、住むための直しとは考え方が違います。自分の好みではなく、借りる人が安全に暮らせるか、選んでもらえるかで考えます。
この記事では、直す場所の優先順位と、どこまで直すかの決め方をまとめます。工事費の目安は、家や地域で大きく違うため書きません。
空き家の賃貸リフォームとは
賃貸リフォームの意味
空き家の賃貸リフォームとは、人が住んでいない家を貸せる状態にするための修理や改修のことです。壊れた所を直す修繕と、設備や間取りを新しくする改修の両方を含みます。
住むための直しとの違い
自分で住むなら、好きな所にお金をかけられます。貸すときは、かけたお金を家賃で取り戻せるかが大切です。直す範囲は、家賃の見込み、貸す期間、借りる人の層から逆算します。
貸した後も直す義務がある
民法では、貸主は、借りる人が使うのに必要な修繕をする義務を負います。借りる人のせいで壊れた場合は別です。貸す前に直しておかないと、入居の後にすぐ修繕を頼まれることになります。
リフォームの優先順位は3段階
優先順位の一覧
| 順位 | 直す場所の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 安全 | 雨漏り、傾き、床や柱の腐り、電気・ガス、耐震性、火災警報器 | 借りる人のけがや事故につながる |
| 2 暮らしの設備 | 水回り(台所・浴室・トイレ)、給湯器、窓や鍵 | 壊れていると住めない、入居の後の修繕依頼が多い |
| 3 見た目と使い勝手 | 壁紙、床材、照明、収納、外まわり | 選ばれやすさにかかわる |
上の順位ほど、後回しにできません。下の順位は、家賃や借りる人の層を見て、どこまでやるかを決めます。
順位1 安全にかかわる所
まず、雨漏り・建物の傾き・床や柱の腐り・シロアリの跡を確かめます。長く空き家だった家は、住んでいる家より傷みに気づきにくいものです。日ごろの点検の方法は空き家の管理方法で紹介しています。
電気の配線やガスの設備は、長く使っていないと不具合が出ることがあります。使い始める前に、電気工事やガスの事業者に点検を頼むと安心です。
耐震性の確かめ方
国土交通省の案内では、1981年5月以前に建てられた建物は今の耐震基準を満たしておらず、それ以降の建物より地震に弱いとされています。この時期に建てられた家を貸すなら、耐震診断を検討します。
耐震診断や耐震改修には、国と地方公共団体の補助などの支援があります。制度は地域で違うため、まず家がある地方公共団体の窓口に相談します。
住宅用火災警報器
消防庁の案内では、住宅用火災警報器は、基本として寝室と、寝室がある階の階段の上部に付ける必要があります。市町村の条例で、台所などにも必要な地域があります。
10年を目安に交換するよう呼びかけられています。空き家に古い警報器が残っていれば、貸す前に本体ごと替えるか確かめます。
ポイント
- 雨漏り・傾き・腐りは、見た目の工事より先に直す
- 1981年5月以前に建てた家は、耐震診断を検討する
- 火災警報器が付いているか、古くなっていないかを確かめる
- 電気・ガスは使い始める前に専門の事業者に点検を頼む
順位2 暮らしの設備を直す
水回り
台所・浴室・トイレ・洗面は、借りる人がまず見る場所です。長く使っていない水回りは、配管の詰まりや水漏れが起きやすくなります。通水して、においや漏れがないかを確かめます。
全部を新しくしなくても、蛇口や便座の交換、配管の清掃で住める状態にできることがあります。どこまで替えるかは、見積もりを比べて決めます。
給湯器・窓・鍵
給湯器は、壊れると入居の後すぐに困ります。年数がたっていれば、貸す前に点検し、交換するかを決めます。
窓のガラスや鍵の不具合は、防犯にかかわります。鍵は、前の持ち主や家族が合鍵を持っていることがあるため、貸す前に交換を考えます。
入居の後の修繕の決まり
民法では、貸主が修繕の必要を知りながら相当の期間内に直さないとき、借りる人が自分で直せる場合があります。その費用は、貸主に請求されます。設備の不具合を残したまま貸すと、思わぬ出費になることがあります。
入居の後の修繕をだれが負担するかは、契約書で取り決めることができます。決め方は、管理会社や専門家と相談してください。
順位3 見た目と使い勝手
どこまでやるかの決め方
壁紙や床材、照明の交換は、選ばれやすさにかかわります。ただし、やり過ぎると家賃で取り戻せません。次の順で考えます。
- 地域で似た家の家賃と、借りる人の層を会社に聞く
- 借りる人が気にする点(明るさ、清潔さ、収納など)を絞る
- 直す場所ごとに見積もりを取る
- 家賃の見込みと貸す期間から、かけられる金額を決める
- 優先順位の高い所から、予算の範囲で工事を決める
直さずに貸す方法もある
国土交通省は、借りる人の希望に合わせた改修ができる「DIY型賃貸借」について、契約書式例とガイドブックを公開しています。貸主は大きく直さずに貸し、借りる人が費用を負担して好みに合わせて手を入れる使い方が想定されています。
この方法では、どこまで手を入れてよいか、退去のときに元に戻すかを、契約で細かく決めておくことが大切です。退去のときの負担の考え方は原状回復のガイドラインで説明しています。
場面の例
Cさんは、母の住んでいた家を貸すことにしました。会社に家を見てもらうと、浴室の配管と給湯器に不具合がありました。壁紙は張り替えず、水回りと給湯器、鍵の交換だけを先に行いました。
Dさんの家は1970年代に建てられた木造でした。見た目の工事より先に、自治体の窓口で耐震診断の補助を相談しました。診断の結果を見てから、貸すか、売るかを決めることにしました。
補助を使うときの順番
耐震改修などで補助を使うなら、工事の順番に気をつけます。多くの制度は、工事を始める前の申請を求めています。
- 家がある地方公共団体の窓口で、使える制度があるかを聞く
- 対象になる家や工事の条件、申請の時期を確かめる
- 必要なら耐震診断を受ける
- 見積もりを取り、申請の書類をそろえる
- 決まったことを確かめてから、工事の契約と着工に進む
順番を逆にすると、補助を受けられないことがあります。工事の会社にも、補助を使う予定であることを最初に伝えておきます。
借りる人の目で見直す
内覧で見られやすい所
貸す前に、借りる人の目で家を歩いてみると、直す場所の順番が見えてきます。
| 見られる所 | 借りる人が気にすること | 貸す前にできること |
|---|---|---|
| 玄関・外まわり | 第一印象、防犯 | 草木の手入れ、照明、鍵の交換 |
| 水回り | 清潔さ、におい、使えるか | 通水と清掃、蛇口や便座の交換 |
| 窓・明るさ | 日当たり、結露、すきま風 | ガラスや網戸の補修、照明の交換 |
| 収納 | 荷物が入るか | 棚の補修、においの対策 |
| 床・壁 | 汚れ、傷、きしみ | 部分の補修、張り替えは予算を見て |
見積もりの比べ方
見積もりは、同じ条件で複数の会社に頼みます。工事の範囲、使う材料、工事の後の保証の有無をそろえないと、金額だけでは比べられません。
- 直す場所ごとに金額が分かれているか
- 「一式」とだけ書かれた項目の中身を説明してもらえるか
- 工事の後に不具合が出たときの対応が書かれているか
- 補助金を使う場合、申請の手続きを手伝ってもらえるか
言葉の言い換え
リフォームの相談では、似た言葉が出てきます。修繕は、壊れた所を元の状態に直すことです。改修は、設備や間取りを新しくして使いやすくすることです。原状回復は、借りる人が退去するときに、借りた時の状態に戻すことを指します。
リフォームの前に決めておくこと
貸し方を決める
普通の賃貸のほか、期間を区切って貸す定期借家や、シェアハウス・民泊といった貸し方もあります。貸し方で、必要な設備や直す範囲が変わります。
期間を区切る貸し方は定期借家と普通借家の違いを、ほかの使い道は空き家の活用方法や戸建てをシェアハウスにをご覧ください。
管理をだれがするか
貸した後の家賃の受け取りや修繕の手配を、自分でするか、管理会社に任せるかも決めます。違いは賃貸管理と自主管理の違いで説明しています。
よくある失敗
- 見た目の工事にお金をかけ、雨漏りや配管が残っていた
- 自分の好みで設備を選び、借りる人の層と合わなかった
- 見積もりを1社だけで決め、直す範囲が広くなり過ぎた
- 補助金を調べる前に工事を始め、申請できなかった
貸す前のチェックリスト
- 雨漏り・傾き・腐りがないか確かめた
- 建てた年を確かめ、必要なら耐震診断を相談した
- 火災警報器の場所と年数を確かめた
- 電気・ガス・水道を点検した
- 鍵を交換するか決めた
- 複数の見積もりを取り、家賃の見込みと比べた
よくある質問
- 空き家を賃貸に出すとき、リフォームは必要ですか?
- 安全にかかわる所と、暮らしに欠かせない設備は直しておく必要があります。見た目の工事は、家賃の見込みを見てから決めます。
- 空き家の賃貸リフォームはどこから直せばいいですか?
- 雨漏り・傾き・電気やガス・耐震性などの安全にかかわる所からです。次に水回りや給湯器、最後に見た目です。
- リフォームに補助金は使えますか?
- 耐震診断や耐震改修には、国と地方公共団体の支援があります。制度は地域で違うため、工事の前に地方公共団体の窓口で確かめます。
- 直さずにそのまま貸すことはできますか?
- 借りる人が手を入れる前提のDIY型賃貸借という方法があります。手を入れてよい範囲と退去のときの扱いを、契約で決めておきます。
- 入居の後に設備が壊れたら、だれが直しますか?
- 民法では、借りる人のせいでない限り、使うのに必要な修繕は貸主の義務です。
- リフォームの費用はどれくらいかかりますか?
- 家の傷み具合、広さ、地域、直す範囲で大きく変わるため、一律の目安はありません。直す場所ごとに複数の会社から見積もりを取り、家賃の見込みと比べて決めます。
空き家を貸す相談先
貸し方や直す範囲を一緒に考えてくれる会社は、会社一覧から探せます。シェアハウスとして貸すならシェアハウスの会社、法人の社宅として貸すなら社宅の会社も候補です。借り手が付くかの見通しは空室対策も参考にしてください。直してから貸すか、売るかで迷う方は、一括相談でまとめて相談できます。
まとめ
- 空き家の賃貸リフォームは、安全、暮らしの設備、見た目の順に優先順位を付けます
- 1981年5月以前に建てた家は、耐震診断を検討し、補助を地方公共団体に相談します
- 住宅用火災警報器は寝室と階段などに必要で、10年を目安に交換します
- 貸主には使うのに必要な修繕の義務があるため、設備の不具合は貸す前に直します
- 費用は家と地域で違います。複数の見積もりと家賃の見込みを比べて決めます




