宅配ボックス設置の考え方|賃貸オーナーが決める置き場所・種類・管理のルール

賃貸の建物に宅配ボックスを設置するかどうか、設置するならどう決めるかを説明します。種類の違い、置き場所と建物の決まり、数の考え方、使い方のルールとよくある失敗を順に整理します。
結論
- 宅配ボックスの設置は、「置ける場所があるか」「入居者の数と荷物の量に合うか」「だれが管理するか」の3つから決めるのが基本です。
- 共用の廊下に置くと、建物の決まりで求められる廊下の幅が足りなくなることがあります。置き場所は、工事の前に確かめます。
- 建築基準法の施行令では、宅配ボックスを設ける部分は、建物の床面積の合計の100分の1までを容積率の計算に入れないことになっています。
「留守のときに荷物が受け取れない」「再配達を頼むのが面倒」。入居者からこうした声を聞くと、宅配ボックスを置いたほうがよいか考えるオーナーは多いと思います。
宅配ボックスは、置けば使ってもらえる設備です。ただし、置き場所を誤ると通路が狭くなり、数が足りないと不満のもとになります。
この記事では、宅配ボックスを設置するときに決めることを順に説明します。設備投資全体の順番は「賃貸の設備投資の判断」で整理しているので、ここでは宅配ボックスに絞ります。
宅配ボックスとは
意味を一言で
宅配ボックスとは、受け取る人が留守のときなどに、配達された荷物を一時的に預かっておく箱のことです。建築基準法の施行令でも、配達された物品の一時保管のための荷受箱として定義されています。
主な種類
| 種類 | 特徴 | 向きやすい建物 |
|---|---|---|
| 共用の集合型 | 建物の入口などに複数の箱を並べて置く | 戸数のあるアパートやマンション |
| 戸別の据え置き型 | 部屋の玄関の前などに1戸ずつ置く | 戸建てや、戸数の少ない建物 |
| 郵便受け一体型 | 郵便受けと荷物の箱をまとめた形 | 入口のスペースが限られる建物 |
鍵のかけ方も、暗証番号、使い捨ての鍵、電気で開け閉めする形などがあります。電気を使う形は、電源の工事と停電のときの扱いを確かめます。
宅配ボックスの設置が向く物件
向きやすい物件
- 単身者や共働きの世帯が多い物件:日中に留守の部屋が多い
- オートロックがある物件:配達の人が部屋の前まで入れない
- 周りの似た物件の多くに宅配ボックスがある物件:ないと見劣りしやすい
先に考えたいこと
- 置ける場所が、通路や避難の邪魔にならないか
- 雨や直射日光が当たらないか
- 防犯カメラや照明で、いたずらを防げるか
防犯の考え方は、空き家向けの記事ですが「防犯対策」も参考になります。
置き場所と建物の決まり
廊下の幅に気を付ける
建築基準法の施行令では、共同住宅で、住戸の床面積の合計が100平方メートルを超える階の共用の廊下は、幅の決まりがあります(第119条)。両側に部屋がある廊下は1.6メートル以上、そのほかの廊下は1.2メートル以上です。
共用の廊下に宅配ボックスを置くと、この幅が足りなくなることがあります。置く前に、図面で廊下の幅を確かめましょう。
容積率の計算に入れない部分
容積率とは、敷地の面積に対する建物の延べ面積の割合のことです。建築基準法の施行令では、宅配ボックスを設ける部分の床面積は、建物の床面積の合計の100分の1までを、容積率の計算のもとになる延べ面積に入れないとしています(第2条第1項第4号・第3項)。
建物の中に宅配ボックスの置き場を新しく作るときに関わる決まりです。増築や改修をともなうときは、建築士や役所の窓口に確かめます。
置き場所によっては、消防の設備や避難の経路にも関わります。迷うときは、管理会社や施工する会社を通じて確かめてください。
区分マンションの1室を貸している場合
マンションの共用の部分は、1人の所有者だけでは変えられません。宅配ボックスを置くかどうかは、管理組合の決まりに従います。
数と種類の決め方
数の考え方
宅配ボックスの数に、決まった目安はありません。戸数、入居者の層、荷物の量で変わります。少なすぎると、使いたいときに埋まっていて不満が出ます。
考え方の一つは、今の入居者に、留守のときの受け取りで困っているかを聞くことです。管理会社に、再配達の苦情や問い合わせがあるかを聞いてもよいでしょう。
大きさを混ぜる
荷物の大きさはさまざまです。小さい箱だけだと、大きな荷物が入りません。大小の箱を混ぜて置くと、使い勝手がよくなります。
ポイント
- 置き場所は、廊下の幅と避難の経路から先に決める
- 数は戸数と入居者の層で考え、大小を混ぜる
- 電気を使う形は、電源と停電のときを確かめる
- 使い方のルールと、困ったときの窓口を決める
設置するときの流れ
- 入居者や管理会社に、受け取りで困っていることを聞く
- 置ける場所を図面と現地で確かめ、廊下の幅や避難の経路を見る
- 種類・数・大きさを決め、複数の会社から見積もりを取る
- 電源の工事や固定の方法を確かめる
- 使い方のルールと、故障や鍵のトラブルの窓口を決める
- 入居者に案内を配り、募集の図面にも載せる
- 入れた後、使われ方や苦情の変化を確かめる
使い方のルールと管理
決めておきたいルール
- 荷物を入れたままにできる期間
- 長く置かれた荷物の扱いと、連絡のしかた
- 暗証番号や鍵を人に教えないこと
- 生ものや危ない物を入れないこと
ルールは、入居者への案内の紙に書き、ボックスの近くにも貼っておくと伝わりやすくなります。
故障のときの対応
宅配ボックスを建物の設備として貸すなら、使うために必要な修繕は貸主の義務になります(民法第606条)。鍵が開かない、扉が壊れたといったときに、だれが受け付けて、だれが直すかを決めておきます。
設備の故障の分け方は「設備の故障と修繕」で説明しています。
費用の扱い
工事や本体の費用は、金額によって資産として扱い、何年かに分けて経費にすることがあります。国税庁の案内では、取得価額が10万円未満のものなどはその年に全額を必要経費にできますが、令和4年4月1日以降に取得して貸付けの用に使ったもの(主要な業務として行う貸付けに使うものを除く)は対象外です。扱いは税務署や税理士に確かめてください。
よくある失敗と防ぎ方
通路に置いて狭くなる
置けそうな場所に置いた結果、廊下が狭くなり、自転車や人がすれ違いにくくなる例があります。図面で幅を確かめてから決めます。
箱がいつも埋まっている
荷物を取り出さない入居者がいると、ほかの人が使えません。置いておける期間をルールで決め、守られないときの連絡の流れも用意します。
置いたことが伝わっていない
設備を入れても、募集の図面や写真に載っていなければ、探している人に伝わりません。募集の見せ方は「賃貸の写真の撮り方」も参考になります。
場面で考える:オートロックのある単身向けマンション
Bさんは、オートロックのある単身向けの建物を持っています。入居者から、荷物が受け取れないという声が続いていました。
Bさんは、入口の横の空きスペースに集合型の宅配ボックスを置くことにしました。廊下ではなく入口の横にしたのは、通路の幅を狭めないためです。大小の箱を混ぜ、置いておける期間を案内の紙に書いて配りました。
設置前のチェックリスト
- 受け取りで困っている声を確かめたか
- 置き場所の幅と避難の経路を確かめたか
- 数と大きさを入居者の層に合わせたか
- 故障と鍵のトラブルの窓口を決めたか
- 募集の図面と写真に載せたか
置き場所を決める手順
候補の場所を比べる
| 候補の場所 | よい点 | 気を付ける点 |
|---|---|---|
| 建物の入口の横 | 配達の人が入りやすい | 雨や日差しが当たらないか |
| 郵便受けの近く | 入居者が帰るついでに取り出せる | 郵便受けの前が混まないか |
| 共用の廊下 | 部屋に近い | 求められる廊下の幅が残るか |
| 敷地の空きスペース | 建物の中を狭めない | 防犯と夜の明るさ |
判断の分かれ道
置き場所が決まらないときは、次の順に考えます。
- 廊下や階段など、避難に使う場所を外す
- 雨や日差しが当たる場所を外す
- 夜も明るく、人目がある場所を選ぶ
- 電気を使う形なら、電源がとれる場所を選ぶ
- 残った場所で、置ける箱の数と大きさを決める
場所が限られて十分な数を置けないときは、郵便受け一体型など、場所をとらない形を考えます。
場面で考える:戸数の少ない古いアパート
Fさんは、戸数の少ない古いアパートを持っています。入口が狭く、集合型の箱を置く場所がありませんでした。
Fさんは、各部屋の玄関の前に置ける小さな箱にすることにしました。置く前に、廊下の幅が狭くならないかを図面で確かめ、壁に固定して倒れないようにしました。
言葉の言い換え
- 荷受箱:配達された荷物を受け取って一時的に預かる箱
- 延べ面積:建物の各階の床面積を合わせた面積
- 容積率:敷地の面積に対する延べ面積の割合
- 共用部分:廊下や入口など、入居者みんなで使う部分
よくある失敗をもう一歩:入れた後の見直し
使われ方を確かめる
宅配ボックスは、置いた後の使われ方を見て直していく設備です。入居者に、使いにくい点がないかを聞いてみましょう。箱が小さすぎる、暗証番号の変え方が分からない、といった声が出ることがあります。
苦情が出たときの順番
- どんな困りごとかを、日時と内容で記録する
- ルールの案内で解決できるかを考える
- ルールで解決しないなら、箱の数や大きさを見直す
- 故障なら、窓口に連絡して修理の日程を決める
- 対応の結果を、入居者に伝える
入居者からの連絡を記録しておくと、次に入れ替えるときの判断材料になります。
退去のときに確かめること
戸別の箱を部屋の前に置いている場合は、退去のときに箱の中に荷物や鍵が残っていないかを確かめます。暗証番号の形なら、次の入居者のために番号を戻しておきます。
入居者への案内で伝えること
- 宅配ボックスの場所と、使える箱の大きさ
- 荷物の取り出し方と、暗証番号や鍵の扱い
- 荷物を置いておける期間
- 開かないときや壊れたときの連絡先
案内は、入居のときに渡す書類に入れ、ボックスの近くにも同じ内容を貼っておくと伝わりやすくなります。
よくある質問
- 宅配ボックスの設置に許可はいる?
- 建物の中に置き場を作る工事や、共用の廊下に置く場合は、建物の決まりに関わります。必要な手続きは、施工する会社や役所の窓口に確かめてください。
- 宅配ボックスは何個あればよい?
- 決まった数はありません。戸数、入居者の層、荷物の量で考え、大小の箱を混ぜて置くと使いやすくなります。
- マンションの1室だけでも設置できる?
- 共用の部分に置く場合は、管理組合の決まりに従います。部屋の中や専用の部分に置けるかも、管理規約で確かめます。
- 壊れたらだれが直す?
- 建物の設備として貸しているなら、使うために必要な修繕は貸主の義務です。窓口を先に決めておきます。
- 宅配ボックスの費用は経費になる?
- 貸すための設備の費用は、必要経費として考えるのが基本です。金額によっては何年かに分けて経費にします。
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まとめ
- 宅配ボックスは、置き場所・数と種類・管理の窓口の3つから決める
- 共用の廊下に置くと、求められる廊下の幅が足りなくなることがある
- 宅配ボックスを設ける部分は、床面積の合計の100分の1まで容積率の計算に入れない
- 置いておける期間などのルールを決め、案内の紙で伝える
- 設備として貸すなら、故障のときの修繕と窓口を先に決める




