入居審査でオーナーが見るポイント5つ|差別にあたる扱いを避ける注意点

入居審査で、オーナーは申込者の何を見て、どう判断すればよいのでしょうか。個人の入居者の審査で確かめる5つの点と、障害や国籍などを理由とした差別にあたる扱いを避けるための注意点を整理します。
結論
- 入居審査でオーナーが見るのは、家賃を払い続けられるか、契約の約束を守って暮らせるか、の2点です。
- 具体的には、収入と勤め先、連帯保証人や保証会社、申込みの内容の正確さ、入居する人数と使い方、やりとりの誠実さを確かめます。
- 障害があることを理由に入居を断ることは、障害者差別解消法の不当な差別的取扱いにあたると考えられます。国籍だけを理由に断ることも、法務省は人権の問題としています。
- 申込者の個人情報は、審査の目的の範囲で扱い、病歴など特に配慮が要る情報は本人の同意なく取得してはいけません。
「どんな人に貸せば安心なのか分からない」。「断りたいけれど、理由の伝え方に迷う」。入居審査は、オーナーにとって悩みの多い場面です。
審査を甘くすると、滞納やトラブルの不安が残ります。一方で、根拠のない思い込みで断ると、差別にあたるおそれがあります。空室が長引く原因にもなります。
この記事では、個人の入居者の審査で見る点を5つに分けて説明します。あわせて、差別にあたる扱いを避けるための考え方と、断るときの注意点も整理します。法人契約の審査は「法人契約の審査と書類」をご覧ください。
入居審査とは
入居審査の定義
入居審査とは、賃貸の申込みを受けたあと、その人と契約を結ぶかどうかを貸主が判断する手続きです。多くの場合、管理会社や仲介の会社が書類を集め、保証会社の審査を経て、最後にオーナーが決めます。
審査で集める主な書類
| 書類 | 確かめること |
|---|---|
| 入居申込書 | 氏名、連絡先、勤め先、入居する人、入居の時期 |
| 本人確認書類 | 申込書の氏名や住所と合っているか |
| 収入が分かる書類 | 収入の額と、続く見込み |
| 連帯保証人の書類 | 保証人になる意思と、連絡先 |
| 保証会社の審査の結果 | 保証を引き受けるかどうか |
書類は、審査に必要なものに絞ります。必要以上に集めると、管理の手間と、漏えいの心配が増えます。
だれが何を判断するか
| 担い手 | 主な役割 |
|---|---|
| 仲介・管理の会社 | 申込書と書類の受付、本人への確認、オーナーへの報告 |
| 家賃債務保証会社 | 保証を引き受けるかどうかの審査 |
| オーナー | 会社の報告をもとに、契約するかどうかを決める |
保証会社の審査に通ることと、オーナーが契約を決めることは別です。保証会社が引き受けても、最後に判断するのはオーナーです。
入居審査でオーナーが見る5つのポイント
1. 家賃を払い続けられる収入があるか
収入の額と、その収入が続く見込みを見ます。勤め先、勤続の年数、雇用の形を確かめるのが一般的です。年金や仕送りなど、給与以外の収入も含めて考えます。
収入に対して家賃がいくらまでなら安心か、という公的な基準はありません。会社や物件によって考え方が違います。数字だけで決めず、預貯金や同居人の収入など、全体を見て判断しましょう。
2. 保証の手当てがあるか
連帯保証人を立てるか、家賃債務保証会社を使うかを確かめます。
個人が連帯保証人になる場合、民法では、保証する額の上限(極度額)を決めなければ、保証の契約は効力を生じません。契約書に極度額を書いているかを、必ず確かめてください。
保証会社を使う場合は、国土交通省の家賃債務保証業者の登録制度で、登録しているかを確かめると安心です。
3. 申込みの内容が正確か
氏名、住所、勤め先、入居する人などが、本人確認書類や収入の書類と合っているかを見ます。食い違いがあれば、まず本人に理由を聞きます。単なる書き間違いのこともあるからです。
4. 入居する人数と使い方が契約に合うか
申込みの人数が、部屋の広さや契約の条件に合っているかを見ます。住まい以外の使い方(事務所や宿泊施設など)を考えていないかも確かめます。ペットや楽器など、契約で決まりがある点も、ここで確認します。
5. やりとりが誠実か
連絡への返事や、書類の出し方などから、約束を守って暮らせるかを見ます。ただし、印象だけで決めつけるのは避けます。見るのは「契約の約束を守れるか」という点に限ります。
ポイント
- 審査で見るのは、払う力と、約束を守って暮らせるか
- 収入は額だけでなく、続く見込みと全体の支払い能力で見る
- 個人の連帯保証人には、極度額を書いた契約が必要
- 食い違いは、まず本人に理由を聞いてから判断する
差別にあたる扱いを避けるために
障害を理由に断らない
障害者差別解消法は、事業者が障害を理由として不当な差別的取扱いをすることを禁じています。内閣府によると、2024年4月1日からは、事業者による合理的配慮の提供も義務になりました。合理的配慮とは、障害のある人から申し出があったときに、負担が重すぎない範囲で、困りごとを取り除くための対応をすることです。
国土交通省の対応指針は、住宅の賃貸を事業として行う場合も、障害があることや、客観的に見て正当性のない安全上の心配を理由に入居を断ることは、不当な差別的取扱いと考えられるとしています。
国土交通省の対応指針が挙げる例
不動産業の例として、次のような扱いが、正当な理由のない差別にあたると想定されています。
- 物件の一覧や広告に「障害者不可」と書く
- 客観的に見て正当な理由がないのに、「火災を起こすおそれがある」などの心配を理由に断る
- 一人暮らしを望む障害者に対し、一方的に一人暮らしは無理だと決めつけて断る
- 障害を理由とした誓約書を求める
- 障害や車椅子の利用だけを理由に、敷金や保証金を通常より多く求める
一方で、適切な物件の紹介や案内の方法を考えるため、必要な範囲で、プライバシーに配慮しながら障害の状況を確かめることは、差別にあたらないとされています。
国籍を理由に断らない
法務省は、外国人であることを理由にアパートへの入居を拒否される事案が生じているとして、外国人の人権を尊重するよう呼びかけています。審査で見るべきは、国籍ではなく、払う力と約束を守れるかです。言葉の不安があれば、連絡の方法や、契約内容を分かりやすく伝える工夫で補えないかを考えます。
差別にあたるかどうかは、個別の事情で判断されます。判断に迷う場合は、管理会社や専門家、各地の相談窓口に確かめてください。本記事は2026年10月時点の制度と公表資料にもとづいています。
高齢の方の入居で考えること
不安の中身を分けて考える
高齢の単身の方の入居で、オーナーが心配するのは、多くの場合「もしものとき」です。亡くなったあとの契約の解除や、部屋に残った家財の扱いが分からない、という不安です。
使える仕組み
法務省と国土交通省は、2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しました。60歳以上の単身の方の入居時を想定し、亡くなったあとの契約の解除と、残った家財の処理を、あらかじめ受任者に頼んでおくひな形です。
また、改正された住宅セーフティネット法が、2025年10月1日に施行されました。居住支援法人などが大家と連携し、見守りなど入居中の支えを行う「居住サポート住宅」の制度などが設けられています。こうした仕組みを使えば、年齢だけで断らずに済む場面が増えます。
個人情報の扱い
審査で集める情報は目的の範囲で
個人情報保護法では、個人情報を扱う事業者は、利用の目的をできる限り特定し、その範囲で扱わなければなりません。申込書など本人から直接書面で集めるときは、あらかじめ利用目的を本人に明示します。
聞かないほうがよいこと
病歴、信条、犯罪の経歴などは、法律で「要配慮個人情報」とされ、本人の同意なく取得してはいけません。審査に関係のない家族構成の詳しい事情や、出身地なども、聞く必要はありません。
チェックリスト
- 申込書に、情報の利用目的を書いている
- 審査に要らない情報を書く欄を設けていない
- 審査の書類を、決まった場所で保管している
- 契約しなかった人の書類の扱いを決めている
場面の例
Fさんの物件に、車椅子を使う方から申込みがありました。Fさんは最初、「段差が多いから無理だろう」と考えました。けれども仲介の会社を通じて本人に聞くと、玄関の段差は携帯のスロープで上がれること、室内の手すりは自分の費用で付けたいことが分かりました。Fさんは手すりの取り付け方を話し合い、契約に進みました。
Gさんの物件には、日本に来て間もない外国籍の方から申込みがありました。収入の書類と保証会社の審査に問題はなく、心配は言葉だけでした。そこで、ごみ出しの決まりを絵で示した案内を用意し、連絡はメールで行うことにしました。
どちらも、属性で決めつけず、不安の中身を確かめたことが分かれ目でした。
審査の前にオーナーが決めておくこと
審査のたびに迷わないよう、募集を始める前に基準を決めておきます。基準は、払う力と契約の条件に関するものに限ります。
- 保証会社の利用を条件にするか、連帯保証人でもよいか
- 入居できる人数と、ペットや楽器などの決まり
- 入居の時期を、いつまで待てるか
- 審査の結果を、何日以内に返事するか
基準を仲介の会社と共有しておくと、申込みの段階で条件が伝わり、行き違いが減ります。返事が遅いと、申込者がほかの物件に決めてしまうこともあります。
断るときの注意点
理由は「契約の条件」に結びつける
審査の結果、契約を見送ることはあります。その場合も、理由は払う力や契約の条件に結びつけて考えます。障害や国籍など、本人の属性を理由にしてはいけません。
判断の流れ
- 必要な書類がそろっているかを確かめる
- 収入と保証の手当てを確かめる
- 食い違いや不明な点を、本人に確かめる
- 条件を変えれば契約できるか(保証会社の利用、入居日の調整など)を考える
- それでも難しい場合は、仲介の会社を通じて丁寧に伝える
よくある質問
- 入居審査はオーナーが自分で決めてよいのですか?
- はい。契約するかどうかは貸主であるオーナーが決めます。ただし、障害や国籍などの属性を理由に断ることは、差別にあたるおそれがあります。
- 保証会社の審査に通れば、オーナーの審査は不要ですか?
- 不要ではありません。保証会社の審査は保証を引き受けるかどうかの判断です。契約するかどうかは、オーナーが最後に決めます。
- 高齢の方の入居を年齢だけで断ってもよいですか?
- 年齢だけで決めつけず、不安の中身を分けて考えることをおすすめします。残置物のモデル契約条項や居住サポート住宅など、不安を減らす仕組みがあります。
- 審査で病歴を聞いてもよいですか?
- 病歴は要配慮個人情報にあたり、本人の同意なく取得してはいけません。審査に必要な範囲の情報だけを集めましょう。
- 連帯保証人の契約で気をつけることは?
- 個人の連帯保証人の場合、保証する額の上限(極度額)を契約書に書かないと、保証の契約は効力を生じません。
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入居者の募集と審査を任せる会社は、会社一覧から探せます。管理の任せ方は「賃貸管理の委託と自主管理の違い」、空室が気になる方は「空室対策」が参考になります。会社の比べ方に迷う場合は、一括相談をご利用ください。
まとめ
- 入居審査で見るのは、家賃を払う力と、約束を守って暮らせるか
- 収入、保証、申込みの正確さ、人数と使い方、やりとりの誠実さの5点を確かめる
- 個人の連帯保証人には、極度額を書いた契約が必要
- 障害や国籍を理由に断ることは、差別にあたるおそれがある
- 病歴などの要配慮個人情報は、本人の同意なく取得しない
- 高齢の方の入居には、残置物のモデル契約条項などの仕組みが使える




