民泊の始め方を5ステップで解説。空き家で始める前の確認と3つの制度

空き家や使っていない家を民泊にするまでの流れを、5つのステップで整理しました。制度の選び方、その家でできるかの確認、運営を任せる方法まで、始める前に知っておきたいことが分かります。
結論
- 民泊の始め方は「制度を選ぶ」「その家でできるか確かめる」「消防署に相談する」「届出などの手続きをする」「運営の体制を整える」の5ステップです。
- もっとも始めやすいのは住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出で、人を泊められるのは1年に180日までです。
- 日数の上限なく営業したいなら旅館業法の許可(簡易宿所など)、国家戦略特区の地域なら特区民泊という方法もあります。
- 家主が住んでいない家で民泊新法を使うときは、国に登録した住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
親から受け継いだ家が空いたままになっている。固定資産税だけを払い続けている。そんなとき、選択肢の1つになるのが民泊です。
ただ、民泊は「部屋を貸せばすぐ始められる」ものではありません。使う制度によって、営業できる日数も、手続きの相手も変わります。
この記事では、民泊の始め方を5つのステップに分けて説明します。自分の家ならどこでつまずきそうか、想像しながら読んでみてください。
民泊とは? 始め方は3つの制度から選ぶ
民泊とは、住宅などを使って、宿泊料を受け取って人を泊めることです。国内で民泊を行うには、次の3つの制度のどれかを使います。
3つの制度の違い
| 項目 | 民泊新法 | 旅館業法(簡易宿所) | 特区民泊 |
|---|---|---|---|
| 手続き | 届出 | 許可 | 認定 |
| 営業日数 | 1年に180日まで | 制限なし | 最低の滞在日数あり |
| 住居専用地域 | 営業できる(条例で制限あり) | 営業できない | 営業できる(自治体が制限する場合あり) |
| 家主不在時の管理業者への委託 | 決まりあり | 決まりなし | 決まりなし |
表は、観光庁の民泊制度ポータルサイトの比較をもとにしています。3つの違いをもっと詳しく知りたい方は「民泊・旅館業・特区民泊の違い」をご覧ください。
迷ったら民泊新法から考える
民泊新法は、2018年6月に施行された法律です。建物の用途を変えずに、住宅のまま営業できるのが大きな特徴です。
一方で、宿泊に使えるのは1年に180日までです。この上限が自分の物件に合うかどうかが、最初の分かれ道になります。
民泊の始め方を場面で考える
たとえば、相続した一戸建てが空いているAさんの場合
Aさんは、親から受け継いだ一戸建てを持っています。自分は離れた町に住んでいて、家には誰も住んでいません。
この場合、宿泊者がいる間は家主が不在になります。民泊新法で始めるなら、住宅宿泊管理業者への委託が前提です。まずは、入居者を募集している家など、民泊新法の「住宅」に当たるかを確かめることから始めます。
たとえば、自宅の空いた一部屋を使いたいBさんの場合
Bさんは、自分が住む家の空いた一部屋を宿泊に使いたいと考えています。宿泊者がいる間も、Bさんは家にいます。
居室の数が5以下で、家主が不在にならないなら、自分で運営することもできます。その場合は、標識の掲示や宿泊者名簿などの決まりを、Bさん自身が守ることになります。
民泊の始め方 5つのステップ
まず全体の流れを見ておきます。民泊新法で始める場合の順番です。
- 制度を選ぶ(民泊新法・簡易宿所・特区民泊)
- その家で民泊ができるか確かめる(住宅の条件・条例・管理規約)
- 管轄の消防署に相談する
- 都道府県知事等に届け出る
- 運営の体制を整えて、予約の受付を始める
ここからは、ステップごとに確かめることを見ていきます。
ステップ1:民泊の始め方を決める「制度選び」
制度は、物件の場所と、どのくらい宿泊に使いたいかで選びます。
- 住宅地の家を使いたい、まず小さく始めたい:民泊新法
- 1年を通して宿泊に使いたい、改修もできる:簡易宿所
- 特区の地域にあり、数日以上の滞在が中心:特区民泊
民泊新法で180日を超えて泊めると、旅館業法の許可がない限り違反になります。年間を通した稼働を考えているなら、最初から簡易宿所も比べておきましょう。
ステップ2:その家で民泊ができるか確かめる
住宅の条件
民泊新法の「住宅」には、設備と使われ方の2つの条件があります。
- 設備:台所、浴室、便所、洗面設備がそろっていること
- 使われ方:人が生活の拠点にしている家、入居者を募集している家、所有者などが随時住んでいる家のどれかであること
空き家の場合は、入居者を募集している家か、所有者などが随時住んでいる家に当たるかを確かめます。どれに当たるかを示す書類も届出に添付します。
条例と管理規約
自治体によっては、民泊ができる地域や期間を条例で決めています。まず、物件のある自治体の窓口で確かめましょう。
マンションの場合は、管理規約で民泊が禁止されていないかも確認します。規約に定めがないときは、管理組合に禁止する意思がないことを示す書類が必要です。
借りている家で民泊をする場合は、貸主が民泊のための転貸を承諾していることが必要です。承諾を示す書類も届出に添付します。
ステップ3・4:消防署への相談と届出
消防署には届出の前に相談する
観光庁は、届出の前に管轄の消防署に相談するよう案内しています。消防法令に合わないまま始めると、業務停止命令などの対象になる場合があります。
届出は国のシステムで行う
届出先は、住宅のある場所を管轄する都道府県知事等です。保健所を置く市や東京23区などでは、市や区が窓口になることがあります。
届出は、原則として国の「民泊制度運営システム」で行います。書類がそろって受け付けられると、届出番号が通知されます。
必要な書類や順番は「民泊の届出の流れ」で詳しく説明しています。
ステップ5:運営の体制を整える
民泊は、始めてからの作業が多い事業です。予約の受付、宿泊者とのやりとり、清掃、鍵の受け渡し、近所からの苦情への対応などがあります。
自分で運営できるのはどんなとき?
民泊新法では、次のどちらかに当たると、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
- 届出住宅の居室の数が5を超えるとき
- 宿泊者がいる間、家主が不在になるとき
買い物などの一時的な外出は、原則1時間まで(店が遠いなどの事情があれば2時間程度まで)は不在に当たりません。空き家で始める場合は、ほとんどが委託の対象になると考えておきましょう。
委託する相手は国の登録業者
住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録を受けた事業者です。登録は5年ごとに更新が必要です。
任せる会社の比べ方は「民泊の運営代行会社の選び方」で紹介しています。
ポイント
- 始め方の最初は「制度選び」。180日の上限が物件に合うかで考える
- 住宅の条件、条例、管理規約、賃貸なら貸主の承諾を先に確かめる
- 消防署への相談は届出の前に済ませる
- 空き家で始めるなら、住宅宿泊管理業者への委託が前提になる
民泊を始めた後に続くこと
届け出て終わりではありません。民泊新法では、営業中ずっと続く決まりがあります。
標識・名簿・報告
- 標識:届出住宅ごとに、決められた標識を外から見やすい場所に掲げる
- 宿泊者名簿:氏名、住所、職業、宿泊日などを記録し、3年間保存する
- 定期報告:毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日までに、前の2か月分の宿泊日数などを報告する
宿泊者と近所への配慮
宿泊者1人あたり3.3㎡以上の床面積を確保し、定期的に清掃と換気をします。騒音やごみ、火の扱いについては、宿泊者に説明しておく必要があります。
近所からの苦情には、深夜や早朝も含めて、常に対応できる体制が求められます。委託している場合は、管理業者がこれを担います。
空き家を民泊にするときに考えたいこと
収入は立地と運営で大きく変わる
観光客の多い地域や駅に近い物件では、民泊にすることで通常の賃貸より収入が増えることがあります。運営の御社の実例では、民泊に転用して家賃が2倍以上になった物件があります(個別の物件条件によるもので、同様の結果を保証するものではありません)。
一方で、清掃費や運営の手数料もかかります。どのくらい残るかは、会社や物件によって違います。
180日以外の期間も一緒に考える
民泊新法では、1年の半分近くは宿泊に使えません。残りの期間を1か月以上の賃貸で埋める方法もあります。詳しくは「民泊の180日ルール」で説明しています。
民泊に向くかどうかは、建物の状態、地域の需要、条例によって変わります。売る・貸すなど他の方法とも並べて比べると、判断しやすくなります。
民泊を始めるときによくある失敗
書類をそろえた後で条例や規約に気づく
届出の準備を進めてから、条例で営業できる期間が短いと分かることがあります。マンションでは、管理規約で禁じられていたと後から気づくこともあります。自治体の窓口と管理組合への確認は、最初に済ませましょう。
内装を先にそろえてしまう
家具や内装を先にそろえ、消防署に相談したら設備の追加が必要だった、ということがあります。お金をかける前に消防署に相談しておくと、やり直しを防げます。
宿泊に使えない期間を考えていない
180日の上限の後をどうするか決めずに始めると、その間は家が空いたままになります。賃貸と組み合わせるか、別の制度にするかを、始める前に考えておきます。
始める前のチェックリスト
- 使う制度(民泊新法・簡易宿所・特区民泊)を決めたか
- 台所、浴室、便所、洗面設備がそろっているか
- 条例で、営業できる地域や期間に制限がないか
- マンションなら、管理規約で民泊が禁じられていないか
- 借りている家なら、貸主の承諾を書面でもらえるか
- 届出の前に、管轄の消防署に相談したか
- 家主が不在になるなら、委託する管理業者の候補があるか
- 宿泊に使わない期間の使い方を決めたか
よくある質問
- 民泊は許可がなくても始められますか?
- 民泊新法なら、許可ではなく届出で始められます。ただし、旅館業法の簡易宿所は許可、特区民泊は認定が必要です。
- 民泊は1年に何日まで営業できますか?
- 民泊新法では1年に180日までです。条例でさらに期間を制限している自治体もあります。
- マンションの一室でも民泊を始められますか?
- 始められる場合があります。ただし、管理規約で民泊を禁止していないことの確認が必要です。
- 空き家の民泊は自分で運営できますか?
- 宿泊者がいる間に家主が不在になるなら、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。家主が同じ建物や隣に住み、居室が5以下などの場合は例外があります。
- 民泊を始める前に、まずどこに相談すればよいですか?
- 条例は自治体の窓口、消防の設備は管轄の消防署に相談します。運営まで含めて考えるなら、民泊を扱う会社にも話を聞いておくと進めやすくなります。
- 民泊にするか、普通に貸すか迷っています。どう考えればよいですか?
- 立地、建物の状態、運営にかけられる手間で向き不向きが変わります。売る・貸すも含めて並べると判断しやすく、「実家は売るか貸すか」も参考になります。
民泊を扱う会社を探す
当メディアでは、民泊の運営・管理を扱う会社を民泊の不動産会社一覧にまとめています。民泊にするか、売るか、普通に貸すかで迷っている方は、一括相談でまとめて相談することもできます。
まとめ
- 民泊の始め方は、制度選び、可否の確認、消防署への相談、届出、運営体制の5ステップ
- 民泊新法は届出で始められるが、1年に180日まで
- 住宅の条件、条例、管理規約、賃貸なら貸主の承諾を先に確かめる
- 空き家で始めるなら、国に登録した住宅宿泊管理業者への委託が必要
- 始めた後も、標識、宿泊者名簿の3年保存、2か月ごとの報告が続く




