法定相続分とは?不動産の分け方4つと、割合どおりに分けられないときの考え方

法定相続分は、民法が決めている「遺産を分ける割合の目安」です。家や土地は割合どおりに切り分けにくいため、分け方の選び方が大切になります。割合の決まり方と、不動産の4つの分け方、登記の期限を整理します。
結論
- 法定相続分とは、民法第900条が定める、相続人ごとの遺産の取り分の割合です。配偶者と子が相続人なら、配偶者が2分の1、子が全員で2分の1です。
- 遺言や相続人全員の話し合い(遺産分割協議)があれば、法定相続分と違う割合で分けることもできます。
- 不動産は割合どおりに切り分けにくいため、そのまま分ける、1人が受け取り他の人にお金を払う、売ってお金を分ける、共有にする、の4つから選びます。
- 不動産の相続登記は、所有権を取得したと知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法第76条の2)。
「父が亡くなり、母と兄と私が相続人になった。実家は誰のものになるのか」。「法律で決まった割合があるなら、そのとおりに分けるしかないのか」。相続が始まると、まずこうした疑問が浮かびます。
預金なら割合どおりに分けられますが、家や土地はそうはいきません。割合の数字だけを見て話し合うと、思わぬ行き違いが起きることがあります。
この記事では、法定相続分の決まり方を表で確かめ、不動産を分ける4つの方法と、選び方、登記の期限までを順に説明します。
法定相続分とは
法定相続分の意味
法定相続分とは、遺言で取り分が決められていないときに、民法が目安として定めている相続人ごとの割合です。相続人どうしの話し合いがまとまれば、この割合と違う分け方をしても構いません。
一方で、話し合いがまとまらず家庭裁判所の手続きになったときや、遺産を共有にするときは、この割合が基準になります。民法では、相続財産に共有の決まりを当てはめるとき、法定相続分などで算定した相続分を各相続人の共有持分とすると定めています(民法第898条第2項)。
言葉の言い換え
- 法定相続分:民法が決めている、遺産を分ける割合の目安
- 指定相続分:遺言で亡くなった方が決めた割合
- 遺産分割協議:相続人全員で、誰が何を受け取るかを決める話し合い
- 代襲相続:相続人になるはずだった子が先に亡くなっている場合に、その子(孫)が代わりに相続すること
- 共有持分:1つの不動産を何人かで持つときの、それぞれの持ち分の割合
法定相続分の割合(早見表)
誰が相続人になるか
配偶者は常に相続人になります(民法第890条)。そのほかの人は、次の順番で、先の順位の人がいないときに相続人になります。
- 第1順位:子(子が先に亡くなっていれば、その子である孫)
- 第2順位:父母や祖父母などの直系尊属(親等の近い人が先)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子)
組み合わせごとの割合
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | 他の相続人の割合(全員で) |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 子が2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 3分の2 | 直系尊属が3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹が4分の1 |
| 配偶者だけ | 全部 | なし |
| 子だけ(配偶者がいない) | なし | 子が全部 |
同じ順位の人が何人かいるときは、その割合を人数で等しく分けます。たとえば配偶者と子2人なら、配偶者が2分の1、子はそれぞれ4分の1です。ただし、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の取り分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1になります(民法第900条第4号)。
割合が変わる場面
亡くなった方から生前に大きな贈与を受けた相続人がいる場合は、その分を考えて取り分を調整する「特別受益」の決まりがあります(民法第903条)。家業を手伝うなどして財産の維持に特に貢献した人には「寄与分」の決まりがあります。
ただし、相続が始まってから10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を主張できず、法定相続分などで分けることになります(民法第904条の3)。話し合いを長く放っておくと、この点で不利になる人が出てきます。
ポイント
- 配偶者は常に相続人。子、直系尊属、兄弟姉妹の順で一緒に相続人になる
- 配偶者と子なら2分の1ずつ。同じ順位の人は人数で等しく分ける
- 遺言や相続人全員の合意があれば、割合と違う分け方もできる
- 相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を原則として主張できなくなる
不動産の4つの分け方
家や土地は、割合どおりに切り分けるのが難しい財産です。分け方には、主に次の4つがあります。
4つの分け方の比較
| 分け方 | やり方 | 向いている場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産そのものを誰かが受け取る。土地を分筆して分けることも | 遺産に不動産以外の財産も十分ある | 取り分に差が出やすい |
| 代償分割 | 1人が不動産を受け取り、他の相続人にお金を払う | 住み続けたい人がいて、払うお金がある | 払う人に資金が必要 |
| 換価分割 | 不動産を売り、そのお金を分ける | 誰も住まない、使う予定がない | 売るまでの管理と、売却の税金 |
| 共有 | 何人かの共有名義にする | 今は決めきれない | 売る・貸すのに全員の同意などが要る場面がある |
共有にするときの注意
共有は、話し合いがまとまらないときに選ばれやすい分け方です。しかし、将来その不動産を売ったり大きく直したりするときに、共有者の意見がそろわないと進められないことがあります。
さらに、共有者の誰かが亡くなると、その持ち分がまた相続され、持ち主がどんどん増えていきます。共有をやめる方法は「共有名義の解消」で説明しています。
分け方の選び方
- 誰かがその家に住み続けたいかを、最初に確かめる
- 住み続けたい人がいれば、現物分割か代償分割を考える
- 誰も住まないなら、売るか、貸して収入を分けるかを比べる
- 不動産の評価額を、同じ基準でそろえてから取り分を計算する
- 決めた内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印する
法定相続分と相続登記
登記の期限
相続で不動産の所有権を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません(不動産登記法第76条の2)。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法第164条)。
話し合いがまとまらないときの選択
3年以内に遺産分割がまとまらない場合は、法務局に「自分が相続人である」と申し出る相続人申告登記という方法があります(同法第76条の3)。また、法定相続分どおりの共有で相続登記を先にしておき、後で遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に改めて登記する方法もあります(同法第76条の2第2項)。
詳しい流れは「相続登記の義務化」をご覧ください。
登記をしないと起きること
法定相続分を超えて不動産を受け取った場合、その超えた部分は、登記をしなければ第三者に主張できません(民法第899条の2)。たとえば、話し合いで自分が単独で受け取ると決めても、登記をする前に他の相続人が自分の持ち分を第三者に売ってしまうと、争いになるおそれがあります。
遺産分割の進め方や登記の申請は、事情によって必要な書類や手順が変わります。司法書士や弁護士、法務局に確かめると確実です。
遺言があるときと遺留分
遺言は法定相続分より優先される
亡くなった方は、遺言で相続人の取り分を決められます(民法第902条)。遺言があれば、原則としてその内容が法定相続分より優先されます。
遺留分という最低限の取り分
ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分という最低限の取り分があります。遺留分の割合は、直系尊属だけが相続人のときは3分の1、それ以外のときは2分の1で、これを法定相続分に応じて分けます(民法第1042条)。
たとえば「実家はすべて長男に」という遺言があっても、他の子は遺留分にあたるお金を請求できる場合があります。
場面の例で考える
例:母と兄と私の3人で、実家と預金を分ける
父が亡くなり、相続人が母と兄と私の3人の場合、法定相続分は母が2分の1、兄と私がそれぞれ4分の1です。遺産の大半が実家で、母がそのまま住み続けたいとします。
この場合、実家を母が受け取ると、母の取り分は実家だけで2分の1を超えることがあります。そのときは、母が実家を受け取り、預金は兄と私が多めに受け取る、という形で調整する方法があります。それでも差が残るなら、代償分割でお金を払う、母が住み続ける権利だけを受け取る、といった方法を比べます。
例:誰も住まない実家を、兄弟2人で相続する
親が2人とも亡くなり、子2人だけが相続人なら、法定相続分は2分の1ずつです。どちらも住む予定がなければ、換価分割で売ってお金を分けると、割合どおりに分けやすくなります。売るまでの固定資産税や管理の費用を、誰がどう負担するかも決めておきます。
話し合いの前のチェックリスト
- 戸籍で、相続人が誰かを全員確かめた
- 遺言があるかを確かめた
- 不動産の登記簿と、固定資産税の評価額を確かめた
- 住み続けたい人がいるかを、全員で共有した
- 不動産の評価の基準をそろえた
- 登記の期限(取得を知った日から3年以内)を確かめた
よくある行き違いと、その避け方
行き違い1:評価額の基準がそろっていない
不動産の値段は、固定資産税の評価額、相続税の評価額、実際に売れる値段で違います。どの基準で取り分を計算するかを先に決めておくと、話し合いがこじれにくくなります。
行き違い2:住んでいる人の事情を後回しにする
亡くなった方と一緒に住んでいた家族がいる場合、売ることが前提の話し合いは受け入れにくいものです。配偶者が住み続ける方法として、配偶者居住権という制度もあります。
行き違い3:とりあえず共有にする
共有は一時しのぎになりやすく、次の相続で持ち主が増えると、まとめ直すのが難しくなります。共有を選ぶなら、将来売るか、誰が持ち分を引き取るかまで話しておくと安心です。
よくある質問
- 法定相続分どおりに不動産を分けなければいけませんか?
- いいえ。遺言や相続人全員の話し合いがあれば、法定相続分と違う割合で分けられます。話し合いがまとまらず家庭裁判所の手続きになったときは、法定相続分などが基準になります。
- 配偶者と子2人の場合、法定相続分はどうなりますか?
- 配偶者が2分の1、子はそれぞれ4分の1です。子の2分の1を2人で等しく分けます。
- 実家を1人が相続すると、他の兄弟の取り分はどうなりますか?
- 代償分割にして、実家を受け取る人が他の相続人にお金を払う方法があります。他の財産で調整する方法もあります。
- 法定相続分で相続登記をしておくことはできますか?
- できます。後で遺産分割がまとまり、法定相続分を超えて受け取る人が決まったら、遺産分割の日から3年以内に改めて登記を申請します。
- 相続の話し合いを何年も放っておくとどうなりますか?
- 相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を原則として主張できなくなります。登記の義務の期限も過ぎてしまうおそれがあります。
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まとめ
- 法定相続分は民法が決めた割合の目安で、配偶者と子なら2分の1ずつ
- 遺言や相続人全員の合意があれば、割合と違う分け方もできる
- 不動産は、現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つから選ぶ
- 共有は先送りになりやすく、次の相続で持ち主が増える
- 相続登記は取得を知った日から3年以内。まとまらなければ相続人申告登記も使える




