法人契約の審査と必要書類。個人契約との違いとオーナーが確かめる点

法人契約では、主に借り主である会社の状態を審査し、住む社員の情報もあわせて確かめます。必要書類の一覧、個人契約との違い、保証の考え方、契約書で確かめる点をまとめました。
結論
- 法人契約の審査は、家賃を払う「会社」の状態を中心に見て、実際に住む社員の情報もあわせて確かめます。
- 書類は、登記事項証明書や会社概要など会社の資料と、入居する社員の身分証などが中心です。
- 求める書類や基準に法律の決まりはなく、オーナーや管理会社が会社と相談して決めます。
「会社から社宅として借りたいと連絡があったけれど、何を確かめればいいの?」。法人からの申し込みを初めて受けるオーナーの方から、よく聞く声です。
個人の入居と比べると、審査する相手もそろえる書類も変わります。慣れていないと、何を求めてよいか、どこまで聞いてよいか迷ってしまいます。
この記事では、法人契約の審査の見方、必要書類、保証の考え方、契約書で確かめる点を、オーナーの立場から整理します。
法人契約とは
法人契約とは、会社が借り主(契約者)となり、社員などが住む賃貸借契約のことです。会社が社員のために借りる借り上げ社宅の多くは、この形です。
契約の当事者は、オーナーと会社です。住む社員は契約者ではありません。この違いが、審査の見方や書類、契約書の書き方に表れます。
借り上げ社宅と、会社が持つ社有社宅の違いは「借り上げ社宅と社有社宅」で説明しています。
法人契約と個人契約の審査の違い
比較表
| 比べる点 | 個人契約 | 法人契約 |
|---|---|---|
| 契約者 | 住む本人 | 会社 |
| 家賃を払う人 | 住む本人 | 会社 |
| 主に審査する相手 | 住む本人の勤め先や収入 | 会社の状態 |
| 住む人の確認 | 契約者本人 | 入居する社員 |
| 保証 | 連帯保証人や家賃保証会社 | 付けないことも、保証会社を使うこともある |
法人契約で見ること
家賃を払うのは会社です。そのため、主に会社の状態を見ます。
- 会社が実際に営業しているか(所在地、事業の内容)
- 会社の規模や、事業を続けてきた年数
- 社宅の取り扱いに慣れているか(社宅の規程や担当の部署があるか)
あわせて、実際に住む社員の氏名や連絡先も確かめます。住む人の生活の仕方は、会社の審査だけでは分からないためです。
どこまで審査するか、何を基準にするかは、オーナーや管理会社ごとに違います。法律で決まった基準があるわけではありません。
オーナーから見た法人契約のよい点
- 家賃は会社から支払われる
- 転勤で入居者が替わっても、同じ会社と契約を続けられることがある
- 会社の担当部署が窓口になり、連絡の相手がはっきりする
オーナーから見た気をつけたい点
- 転勤や異動など、会社の都合で解約が決まることがある
- 会社の書式の契約書を求められることがある
- 請求書の発行など、個人契約にはない手続きが要ることがある
よい点と気をつけたい点を知ったうえで、条件を話し合うと安心です。
法人契約の審査に必要な書類
会社によって出せる書類は違います。一般には、次のようなものを求めることが多いです。
会社についての書類
- 登記事項証明書(会社の登記の内容が分かるもの。法務局で取れる)
- 会社案内や会社概要
- 決算の資料(会社によっては出せない場合もある)
- 申込書(会社の担当者名、連絡先)
住む人についての書類
- 入居する社員の身分証の写し
- 社員証や、在籍を示す書類
上場している会社などでは、会社概要だけで足りるとされることもあります。必要な書類は、仲介の不動産会社や管理会社と相談して決めましょう。
ポイント
- 会社の実在と事業の中身を、登記事項証明書や会社概要で確かめる
- 住む社員の氏名と連絡先もあわせて確かめる
- 書類の範囲は、会社と相談して無理のない形に決める
個人情報の扱い
社員の身分証などは、個人情報です。審査に要る範囲で受け取り、保管のしかたも決めておきましょう。管理会社に任せている場合は、その会社の扱いも確かめておくと安心です。
書類を受け取ったら確かめたいこと
書類はそろえるだけでなく、中身を見比べることが大切です。次の点がそろっているかを確かめます。
- 申込書の会社名・所在地が、登記事項証明書の内容と合っているか
- 申込書の担当者が、その会社の社員として連絡がつくか
- 入居する社員の氏名が、申込書と身分証で合っているか
- 会社の事業の内容と、社宅を借りる理由に無理がないか
社宅管理会社を通した申し込みのとき
会社が社宅の手配を社宅管理会社に任せている場合、申し込みや書類は社宅管理会社から届きます。どの会社の社宅として借りるのか、契約者は誰になるのかを、最初に確かめましょう。
会社の書式で契約したいと言われたとき
法人契約では、会社が自社の契約書の書式を使いたいと求めることがあります。そのときは、自分の契約書と見比べて、違う点を一つずつ確かめます。特に、解約の予告期間、原状回復の範囲、更新のしかたは差が出やすい点です。分からないときは、管理会社や仲介の不動産会社に相談しましょう。
例:転勤の社員向けに部屋を貸すGさんの場合
たとえば、駅の近くに単身向けのマンションを1室持っているGさん。ある日、社宅管理会社から「取引先の会社の社員が転勤で住みたい」と申し込みが届きました。
Gさんは、まず契約者がどの会社になるのかを確かめます。次に、会社の登記事項証明書と、入居する社員の身分証の写しを受け取ります。申込書と書類の会社名や氏名が合っているかを見比べ、会社の書式の契約書があれば、自分の契約書との違いを管理会社と一緒に確かめます。
法人契約の審査から入居までの流れ
- 会社または社宅管理会社から申し込みを受ける
- 会社と入居する社員の書類を受け取る
- 会社の状態と、住む人の情報を確かめる
- 家賃、契約期間、解約の予告などの条件をすり合わせる
- 会社を契約者として契約を結ぶ
- 社員が入居する
社宅の手配を社宅管理会社が代わりに行う場合もあります。社宅管理会社の役割は「社宅管理会社(社宅代行)とは?」をご覧ください。
入居してからの連絡の分け方
法人契約では、話す相手が2つに分かれます。家賃や契約のことは会社の担当部署、日々の暮らしのことは住んでいる社員です。
たとえば、設備が壊れたという連絡は社員から届き、修理の費用の話は会社と行う、ということがあります。どちらの連絡を誰が受けるかを、入居の前に会社と決めておきましょう。管理会社に任せている場合は、管理会社が窓口になるのかも確かめます。
退去のときも同じです。立ち会いに来るのが社員か、会社の担当者か、社宅管理会社かを先に聞いておくと、精算の話がスムーズに進みます。精算の結果を誰に送るかも、あわせて決めておきましょう。
保証の考え方も違う
個人の連帯保証人には極度額が要る
個人が賃貸の連帯保証人になる場合、保証する金額の上限(極度額)を決めないと、その保証は効力を生じません。保証の契約は書面でする決まりもあります。どちらも民法の決まりです。
法人契約では保証の形を話し合う
法人契約では、会社自身が家賃を払うため、連帯保証人を付けないこともあります。会社によっては、家賃保証会社の利用を求められる場合もあります。どの形にするかは、契約の前に話し合って決めます。
保証の形を決めるときの分かれ道
- 会社の実在や事業の中身を書類で十分に確かめられたなら、保証を付けない形も考えられる
- 設立して間もない会社や、出せる書類が少ない会社なら、家賃保証会社の利用を相談する
- 会社の代表者などが個人で連帯保証人になるなら、極度額を決めて書面で契約する
- 社宅管理会社が間に入るなら、家賃の支払いの流れと責任の範囲を確かめる
どの形にしても、家賃が滞ったときに誰へ連絡し、誰が払うのかを契約書で分かるようにしておきます。
契約書で確かめたいこと
- 契約者と入居者:契約者は会社、入居者は社員と分けて書く
- 入居者が替わるとき:転勤で別の社員が住む場合の手続き
- 解約の予告期間:会社の書式では、個人契約と違う期間になっていることがある
- 退去の精算の相手:会社の担当部署か、社宅管理会社か
- 家賃の請求方法:請求書の発行が要るか、振込日はいつか
会社の書式で契約することもあります。その場合も、上の点がどう書かれているかを確かめましょう。
法人契約でよくある失敗と避け方
- 契約者を会社ではなく、住む社員の名前で書いてしまう
- 入居者が替わったときの手続きを決めず、知らない人が住んでいた
- 会社の書式の契約書を読み比べずに署名し、解約の予告が思っていたより短かった
- 退去の精算の相手が決まっておらず、請求先が分からなくなった
どれも、契約の前に「誰が契約者で、誰が住み、誰に請求するか」を書き分ければ防げます。
法人契約の前に確かめるチェックリスト
- 申込書の会社名・所在地が、登記事項証明書と合っているか
- 会社の担当部署と担当者に、連絡がつくか
- 入居する社員の氏名と連絡先を確かめたか
- 保証を付けるか、家賃保証会社を使うかを決めたか
- 解約の予告期間、原状回復の範囲、更新のしかたを確かめたか
- 入居者が替わるときの手続きと、精算の相手を契約書に書いたか
- 受け取った個人情報の保管のしかたを決めたか
法人契約に向いている物件
- 駅や会社の多い地域に近い
- 単身向けなら、家具や家電を付けやすい
- 家族向けなら、学校や生活の便利さを説明しやすい
転勤の多い時期には、法人からの問い合わせが増えます。その前に、法人契約に慣れた不動産会社に募集を頼んでおくと安心です。
法人の担当者は、複数の物件を短い期間で比べることが多いものです。間取り図、写真、設備の一覧、契約の条件をすぐ出せるよう、募集を頼む会社と準備しておくと話が早く進みます。空室を埋める工夫は「空室対策」もご覧ください。
よくある質問
- 法人契約の審査では何を見る?
- 主に、家賃を払う会社の状態を見ます。あわせて、実際に住む社員の氏名や連絡先も確かめます。
- 法人契約に必要な書類は?
- 登記事項証明書や会社概要など会社の資料と、入居する社員の身分証などが中心です。出せる書類は会社によって違います。
- 法人契約でも連帯保証人は必要?
- 決まりはありません。会社が家賃を払うため付けないこともあり、家賃保証会社を使うこともあります。
- 決算書を出してもらえないときは?
- 会社によっては出せない場合があります。会社概要や登記事項証明書など、ほかの資料で確かめる方法を相談しましょう。
- 入居する社員が替わったら契約し直す?
- 契約の内容によります。入居者が替わるときの手続きを、契約書に書いておくと安心です。
- 個人事業主から申し込まれたら法人契約になる?
- なりません。個人事業主は法人ではないため、契約者は事業主本人の個人契約です。審査では、事業の内容が分かる資料もあわせて確かめます。
法人契約に慣れた会社を探す
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まとめ
- 法人契約では、主に会社の状態を審査し、住む社員の情報もあわせて確かめる
- 書類は、登記事項証明書や会社概要など会社の資料と、社員の身分証などが中心
- 書類や基準に法律の決まりはない。会社と相談して決める
- 個人の連帯保証人には極度額と書面が必要。法人契約では保証の形を話し合う
- 契約者と入居者、入居者の交代、解約の予告、精算の相手を契約書に書いておく




