不動産売却の値下げはいつ判断する?下げる前の確認点と進め方・幅の決め方

売り出した物件に問い合わせが来ないと、値下げをするかどうかで迷います。値下げを考える前に確かめること、判断に使う材料、下げ幅の決め方と不動産会社との進め方を順に整理します。
結論
- 不動産売却の値下げは、「時期が来たから」ではなく、問い合わせ・内覧・申し込みの数と、近くの競合物件の価格を見て判断します。
- 下げる前に、写真や説明文、内覧の準備、広告の出し方など、価格以外の原因がないかを先に確かめます。
- 専任媒介なら、不動産会社は2週間に1回以上(専属専任媒介は1週間に1回以上)、販売の状況を報告する決まりです(宅地建物取引業法第34条の2第9項)。この報告が判断の材料になります。
- 下げ幅は、競合物件との位置と、手元に残る金額から逆算して決めます。小刻みに何度も下げると、かえって売れ残りの印象を与えることがあります。
「売り出して2か月、内覧が1件もない」。「不動産会社から値下げを勧められたが、本当に下げるべきか分からない」。家や土地を売っている方の多くが、どこかでこの悩みにぶつかります。
値下げは、一度すると元に戻しにくい判断です。下げすぎれば手元に残るお金が減り、下げ方が悪いと売れ残りの印象も残ります。
この記事では、値下げをするかどうかの判断の材料と、下げ幅の決め方、不動産会社との進め方を説明します。売れない原因そのものの見直しは「不動産が売れない理由」で詳しく扱っています。
不動産売却の値下げとは
値下げの意味
不動産売却の値下げとは、売り出している価格(売り出し価格)を下げて、買主が見つかりやすくすることです。売り出し価格は売主が決めるもので、媒介契約書にも記載されます(宅地建物取引業法第34条の2第1項第2号)。
値下げと価格交渉の違い
| 種類 | いつ起きるか | 誰の判断か |
|---|---|---|
| 売り出し価格の値下げ | 買主が見つかる前 | 売主が会社と相談して決める |
| 購入申し込み後の価格交渉 | 買主が申し込んだ後 | 買主の希望に、売主が応じるか決める |
申し込みの後の交渉は、相手と条件がはっきりしています。売り出し価格の値下げは、まだ見えない買主に向けた判断なので、材料を集めて慎重に決めます。
値下げの前に確かめること
価格以外の原因
問い合わせが少ない原因が、価格ではないこともあります。値下げの前に、次を確かめます。
- 広告の写真が暗い、少ない、部屋の広さが伝わらない
- 説明文に、駅からの道のりや日当たりなどの良さが書かれていない
- 内覧のときに、部屋が片付いていない、においがこもっている
- 鍵の受け渡しに時間がかかり、内覧の申し込みを断っている
- 広告がどこに、どれだけ出ているかを売主が知らない
内覧の準備は「内覧の準備」にまとめています。
査定の根拠を見直す
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、不動産会社が売り出す価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。最初の査定で、どの取引事例と比べたのかを、改めて会社に聞き直しましょう。査定の種類は「査定の種類」で説明しています。
値下げを判断する材料
反響の3つの数字
値下げの判断は、次の3つの数字の動きで考えます。
| 数字 | 少ないときに考えられること |
|---|---|
| 問い合わせの数 | 価格や広告の見え方が、探している人の条件に合っていない |
| 内覧の数 | 問い合わせの後、写真や説明と比べて決め手が足りない |
| 申し込みの数 | 内覧した人が、部屋の状態や競合物件と比べて迷っている |
問い合わせはあるのに内覧につながらない、内覧はあるのに申し込みがない、という場合は、価格以外の原因が強いこともあります。
販売状況の報告を使う
専任媒介契約では、不動産会社は2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を報告しなければなりません(宅地建物取引業法第34条の2第9項)。また、購入の申し込みがあったときは、媒介の種類を問わず、遅滞なく報告する決まりです(同条第8項)。
報告では、問い合わせの数や内覧の感想、競合物件の動きを聞きましょう。一般媒介でも、会社に同じ内容を頼むことはできます。媒介の種類の違いは「一般媒介と専任媒介」をご覧ください。
競合物件の価格
同じ地域で、広さや築年数が近い物件がいくらで売り出されているかを、不動産会社に一覧にしてもらいます。自分の物件だけが高い位置にあれば、問い合わせが他へ流れている可能性があります。
ポイント
- 値下げは「期間」ではなく「反響の数字」で判断する
- 先に写真・説明文・内覧の準備など価格以外を直す
- 会社の定期報告で、問い合わせ・内覧・申し込みの数を聞く
- 近くの競合物件と並べ、自分の位置を確かめる
下げ幅の決め方
手元に残る金額から考える
値下げの前に、売れたときに手元に残る金額を計算します。売却の費用は「売却にかかる費用」、税金は「売却の税金」を参考にしてください。住宅ローンが残っている場合は、引き渡しまでに返しきれるかも確かめます。
下げ幅を決める手順
- 近くの競合物件の価格を、広さと築年数が近い順に並べる
- 自分の物件が、その中でどの位置にあるかを確かめる
- 売れた場合に手元に残る金額の下限を決める
- 競合物件と比べて選ばれやすい位置まで下げた価格を、会社と試算する
- その価格が下限を下回らないかを確かめる
- 下げた後の反響を、いつまで、どの数字で見るかを決める
下げ幅に決まった目安はなく、物件や地域、時期によって違います。不動産会社には、なぜその幅なのかの根拠を聞きましょう。
小刻みな値下げの注意
少しずつ何度も下げると、探している人に「まだ下がるかもしれない」と思われ、申し込みを待たれることがあります。下げるなら、一度で反響が変わる位置を目指すのが考え方の一つです。
値下げの進め方
媒介契約と価格の変更
売り出し価格を変えると、媒介契約書に書いた価額も変わります。変更は書面で残しておきましょう。専任媒介や専属専任媒介では、物件の情報が指定流通機構(レインズ)に登録されています。登録は、専任媒介で契約から7日以内、専属専任媒介で5日以内(休業日を除く)と決められています(宅地建物取引業法施行規則第15条の10)。価格を変えたら、登録内容も直してもらいます。
有効期間の区切りで見直す
専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができず、更新も依頼者の申し出によります(宅地建物取引業法第34条の2第3項・第4項)。3か月の区切りで、価格と販売の方法、会社そのものを見直す機会にできます。会社の変え方は「売却の会社の選び方」で説明しています。
値下げ以外の選択肢
| 方法 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 売り出し価格を下げる | 競合より明らかに高い | 下限を先に決める |
| 条件を変える | 引き渡し時期や設備が合わない | 変えた条件を広告に出す |
| 会社を変える・増やす | 報告や広告に不満がある | 契約の期間と解除の決まりを確かめる |
| 買取に切り替える | 早く確実に現金化したい | 仲介より価格が低くなることが多い |
買取の流れは「不動産買取の流れ」をご覧ください。
会社に値下げを相談するときの聞き方
値下げを勧められたときも、自分から相談するときも、次のことを聞いておくと判断しやすくなります。
- いまの価格で、問い合わせと内覧がそれぞれ何件あったか
- 内覧した人が、どこを気に入り、どこで迷ったか
- 比べている競合物件は、どれで、いくらで売り出されているか
- 下げた後、どの広告に、いつから新しい価格が出るか
- 下げても反響が変わらないとき、次に何をするか
答えを口頭で聞くだけでなく、報告の書面やメールでもらっておくと、後で見直すときに役立ちます。
相続した家や空き家を売るときの値下げ
持ち続ける間の負担も比べる
相続した家や、住まなくなった家は、売れるまでの間も固定資産税や管理の手間がかかります。値下げをためらって売却が長引くと、その間の負担が積み重なります。値下げの幅と、持ち続ける期間の負担を並べて比べましょう。固定資産税のしくみは「固定資産税のしくみ」で説明しています。
税の特例の期限も確かめる
国税庁によると、相続した空き家を令和9年12月31日までに売り、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)まで控除できる特例があります。このように、売る時期によって使えるかどうかが変わる特例があります。値下げを先延ばしにして期限を過ぎると、税金が増えることもあります。詳しくは「空き家の3,000万円特別控除」をご覧ください。
共有の家は値下げの合意が要る
兄弟などで共有している家は、売り出し価格を変えるにも、共有者どうしで話し合う必要があります。だれがいくらまでなら下げてよいかを、売り出す前に決めておくと、反響が少ないときにすぐ動けます。
場面で考える値下げ
場面の例
Bさんは、親から相続した3LDKのマンションを売り出しました。1か月で問い合わせは数件ありましたが、内覧は1件だけでした。会社に競合物件の一覧を出してもらうと、価格は中ほどでした。そこで値下げの前に、空室の部屋を掃除して写真を撮り直しました。内覧が増えたため、値下げは見送りました。
よくある失敗
- 会社に勧められるまま、根拠を聞かずに下げる
- 下げた後の反響を見る前に、すぐ次の値下げをする
- 手元に残る金額を計算せず、ローンを返しきれない価格にする
- 申し込みがあってからの交渉の余地を考えずに下げきる
判断の分かれ道
| 反響の状況 | まず考えること |
|---|---|
| 問い合わせがほとんどない | 価格が競合より高くないか、広告に出ているか |
| 問い合わせはあるが内覧がない | 写真と説明文、内覧の日程の組みやすさ |
| 内覧はあるが申し込みがない | 部屋の状態、内覧の感想、競合との比べ方 |
| 申し込みはあるが値引きを求められる | 下限と比べて応じるか、条件で調整するか |
言葉の言い換え
- 売り出し価格:広告に出す価格。売れる価格とは限らない
- 反響:問い合わせや内覧の申し込みのこと
- 指定流通機構(レインズ):不動産会社どうしが物件の情報を共有する仕組み
- 媒介契約:売却の仲介を不動産会社に頼む契約
よくある質問
- 売り出してどのくらいで値下げを考えるべきですか?
- 決まった期間はありません。問い合わせ・内覧・申し込みの数と、競合物件の価格を見て判断します。専任媒介なら3か月の有効期間の区切りも見直しの機会です。
- 値下げの幅はどのくらいが目安ですか?
- 決まった目安はなく、物件や地域によって違います。競合物件との位置と、手元に残る金額の下限から考えます。
- 不動産会社に値下げを勧められたら従うべきですか?
- 根拠を聞いてから決めましょう。宅地建物取引業法では、会社が価額に意見を述べるときは根拠を明らかにする決まりです。
- 値下げをしたら、元の価格に戻せますか?
- 戻すことはできますが、一度下がった価格を見た人には割高に見えることがあります。下げる前に下限を決めておきましょう。
- 値下げをしないで売る方法はありますか?
- 写真や説明文の見直し、内覧の準備、引き渡し条件の変更、会社の見直しなどがあります。早く現金化したい場合は買取も選択肢です。
値下げに迷ったら
いまの会社の報告や価格の根拠に納得できないときは、ほかの会社の意見も聞いてみましょう。地域の会社は売買を手がける会社の一覧から探せます。複数の会社にまとめて聞く方法は一括相談の使い方で説明しています。まとめて相談もご利用ください。
まとめ
- 値下げは期間ではなく、問い合わせ・内覧・申し込みの数と競合物件の価格で判断する
- 先に写真・説明文・内覧の準備など、価格以外の原因を直す
- 専任媒介の定期報告(2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上)を判断の材料にする
- 下げ幅は手元に残る金額の下限から逆算し、根拠を会社に聞く
- 価格を変えたら媒介契約とレインズの登録も直してもらう




