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賃貸の設備故障の修繕負担は誰?民法606条・607条の2と特約の考え方

オーナー収益革命 編集部

賃貸の設備故障の修繕負担は誰?民法606条・607条の2と特約の考え方

エアコンや給湯器が壊れたとき、修繕の費用を負担するのは貸主か入居者か。民法の修繕の決まりと、入居者が自分で直せる場面、契約の特約で気をつけたい点を、オーナーの立場から整理します。

結論

  • 賃貸の設備が故障したとき、修繕の負担は原則として貸主(オーナー)です。民法606条で、貸主は使うために必要な修繕をする義務を負うとされています。
  • ただし、入居者の責任で壊れたときは、貸主の修繕義務はありません。その場合の費用は入居者の負担になります。
  • 民法607条の2では、入居者が知らせたのに貸主が相当の期間内に直さないときや、急ぎの事情があるときは、入居者が自分で修繕できるとされています。
  • 電球の交換など小さな修繕の分担は、契約の特約で決めておくのが一般的です。決めた内容は契約書に分かりやすく書いておきます。

「エアコンが動かないと連絡が来たけれど、これはこちらで直すもの?」。賃貸を持つと、こうした連絡は避けて通れません。

対応が遅れると、入居者の不満が大きくなり、退去につながることもあります。かといって、何でも貸主が負担するのが正しいとも限りません。

この記事では、設備が故障したときの修繕の分担を、民法の決まり、入居者が自分で直せる場面、契約の特約の順に整理し、連絡を受けてからの対応の手順をまとめます。

賃貸の設備故障の修繕負担とは

民法606条の修繕義務

民法606条では、貸主は、貸している物を使い、収益するために必要な修繕をする義務を負うとされています。入居者が普通に暮らすために必要な設備が壊れたら、貸主が直すのが原則です。

同じ条文には、入居者の責めに帰すべき事由(入居者の不注意や故意)で修繕が必要になったときは、この限りではないとも書かれています。

入居者にも知らせる義務がある

民法615条では、借りている物が修繕を必要とするとき、入居者は遅滞なく貸主に知らせなければならないとされています。ただし、貸主がすでに知っているときは、この限りではありません。

故障の連絡は、入居者の義務でもあります。連絡を受け取りやすい窓口を決めておくことが、オーナーにできる最初の備えです。

原因別の負担の考え方

故障の原因修繕の負担例
年数による劣化や自然な故障原則として貸主古くなった給湯器が動かなくなった
入居者の不注意や故意入居者物をぶつけて設備を壊した
契約で入居者が直すと決めた小さな修繕契約の定めによる電球や蛇口のパッキンの交換
前の入居者が残した設備契約の定めによる設備ではなく残置物として扱うと決めたもの

入居者が自分で修繕できる場面(民法607条の2)

607条の2の2つの場面

民法607条の2では、修繕が必要な場合に、次のどちらかに当たれば、入居者が自分で修繕できるとされています。

  • 入居者が修繕の必要を知らせた、または貸主が知っていたのに、貸主が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
  • 急迫の事情があるとき

たとえば、水漏れが続いて下の階に被害が広がりそうなときは、急迫の事情に当たる場面と考えられます。

かかった費用は貸主に請求される

民法608条では、入居者が貸主の負担に属する必要費を出したときは、貸主に対してすぐに返すよう請求できるとされています。

つまり、連絡を放っておくと、入居者が手配した業者の費用を、あとから貸主が払うことになりかねません。業者を選べない分、費用の見通しも立てにくくなります。

「連絡はもらったが、忙しくて後回しにした」は、いちばん避けたい流れです。すぐに直せないときも、いつ誰が見に行くかだけは早めに伝えましょう。

使えない間の家賃の減額

民法611条では、借りている物の一部が使えなくなり、それが入居者の責任でないときは、使えない部分の割合に応じて家賃は減額されるとされています。

設備の故障が長引けば、修繕費だけでなく家賃の減額という形でも負担が生じることがあります。早く直すことが、結果としてオーナーの負担を小さくします。

ポイント

  • 原則は貸主が直す(民法606条)
  • 入居者の責任で壊れたときは入居者の負担
  • 放っておくと入居者が自分で直し、費用を請求できる(民法607条の2・608条)
  • 使えない期間が続くと家賃が減額されることがある(民法611条)

特約で修繕の分担を決めるときの注意点

国土交通省の標準契約書の考え方

国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)では、貸主は入居者が使うために必要な修繕を行い、入居者の責めによるものは入居者が負担し、その他は貸主が負担するとしています。

同じ契約書の別表第4には、入居者が自分で行える小さな修繕として、ヒューズの取替え、蛇口のパッキンやコマの取替え、風呂場等のゴム栓や鎖の取替え、電球や蛍光灯の取替えなどが挙げられています。入居者が自分で行う場合は費用を入居者が負担し、貸主への通知や承諾は要らないとされています。

特約を書くときの注意点

修繕の分担は、契約の特約で決めておくことができます。ただし、入居者が個人の場合、消費者契約法10条により、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされています。

  • どの設備の、どんな修繕を入居者が負担するのかを具体的に書く
  • 「すべての修繕は借主負担」のような広すぎる書き方は避ける
  • 契約の前に、特約の内容を口頭でも説明しておく
  • 前の入居者が残した物を「設備」に含めるかを明記する

退去時の原状回復の負担は、契約期間中の修繕とは別の決まりです。民法621条と国の指針の考え方は原状回復ガイドラインで整理しています。

故障の連絡を受けたときの対応の手順

連絡から修繕までの流れ

  1. 入居者から、いつから、どの設備が、どんな状態かを聞き取る
  2. 写真や動画を送ってもらい、緊急かどうかを判断する
  3. 修理か交換かを業者に見てもらい、見積もりを取る
  4. 原因を確かめ、貸主負担か入居者負担かを判断する
  5. 修繕の日程を入居者と調整し、作業の内容を記録に残す

緊急度の分け方

水漏れ、ガス、電気、鍵の故障などは、建物や暮らしの安全に関わるため、すぐに動く必要があります。照明の一部や収納の扉などは、日程を調整して対応できることが多い設備です。

緊急度設備の例対応の目安
高い水漏れ、給湯器、ガス、電気、玄関の鍵すぐに業者を手配する
中くらいエアコン、換気扇、トイレの不調早めに日程を決めて見てもらう
低い収納の扉、網戸、照明の一部入居者と日程を相談する

管理会社に任せている場合

管理会社に任せている場合、どの金額までなら管理会社の判断で直してよいかを、管理委託契約で決めておくと対応が早くなります。夜間や休日の連絡先も確かめておきましょう。

管理を任せるか自分で行うかは賃貸管理と自主管理の違い、管理会社を見直すときは管理会社の変更、管理業者の義務は賃貸住宅管理業法で整理しています。

場面で考える設備故障の修繕負担

場面1:築年数のたった給湯器が冬に止まった

設置から年数がたった給湯器が、寒い時期に急に動かなくなった場面です。入居者に落ち度がなく、年数による故障と考えられるため、原則として貸主が直します。

お湯が使えないと暮らしに大きく響くので、緊急度は高い故障です。すぐに業者を手配し、修理か交換かを判断します。修理を待つ間の入浴などについて、入居者の困りごとを聞いておくと、その後の関係が保ちやすくなります。

場面2:入居者が物をぶつけて換気扇を壊した

入居者自身が、掃除の最中に換気扇のカバーを落として壊したと連絡してきた場面です。入居者の不注意による故障なので、民法606条のただし書きにより、貸主の修繕義務はありません。

ただし、修理の手配を入居者だけに任せると、建物に合わない部品が付くこともあります。業者の手配は貸主側で行い、費用を入居者に負担してもらう形にするなど、進め方を話し合いましょう。

場面3:原因がはっきりしない水漏れ

天井から水が落ちてきたが、配管の劣化か、上の階の入居者の使い方かが分からない場面です。まず被害を止めることを優先し、原因の調査はそのあとに行います。

原因が分かるまで負担を決めつけないことが大切です。業者の調査の結果を記録に残し、それをもとに負担を話し合います。保険を使える場合もあるので、加入している保険の内容も確かめましょう。

判断の分かれ道

  • 年数による故障:原則として貸主が直す
  • 入居者の不注意:入居者の負担。手配の進め方を話し合う
  • 原因が分からない:まず被害を止め、調査の結果で負担を決める
  • 契約で決めた小さな修繕:契約書の定めに従う

修繕の話で出てくる言葉の言い換え

  • 修繕義務:貸している物を、使える状態に直す貸主の務め
  • 責めに帰すべき事由:その人の不注意や故意が原因であること
  • 急迫の事情:すぐに直さないと被害が広がるような、差し迫った状態
  • 必要費:物を使える状態に保つために必要な費用。入居者が払えば、すぐに貸主へ請求できる
  • 有益費:物の価値を高めるために入居者が出した費用。民法608条では、契約が終わるときに貸主が返すとされている
  • 残置物:前の入居者などが残していった物。設備として貸すかどうかを契約で決める

修繕でよくある失敗と備え

よくある失敗

  • 連絡を後回しにして、入居者が自分で業者を呼んでしまう
  • 原因を確かめずに入居者負担と伝え、もめごとになる
  • 特約に「修繕はすべて借主」と書き、説明もしていない
  • 設備の取扱説明書や保証書がどこにあるか分からない

日ごろの備え

  • 設備の一覧(種類、型番、設置した年)を作っておく
  • 古い設備の交換時期を、空室のタイミングに合わせて考える
  • 入居時に設備の状態を写真で残し、入居者と共有する

設備の更新は空室対策にもつながります。考え方は空室対策でも紹介しています。

よくある質問

賃貸のエアコンが壊れたら、修理代は誰が払いますか?
設備として貸しているエアコンなら、原則として貸主の負担です。入居者の責任で壊れた場合は入居者の負担になります。
入居者が勝手に修理した費用も払う必要がありますか?
貸主が知らせを受けても相当の期間内に直さなかった場合や、急ぎの事情があった場合は、入居者が修繕でき、必要費を請求できると民法で定められています。連絡にはすぐ応じることが大切です。
電球の交換もオーナーがするのですか?
国土交通省の標準契約書では、電球の取替えなどは入居者が自分で行える小さな修繕として挙げられています。実際の分担は、契約書の定めで確かめます。
修繕中の家賃は下げる必要がありますか?
入居者の責任でなく設備の一部が使えなくなったときは、民法611条により、使えない部分の割合に応じて家賃は減額されるとされています。どの程度かは状況によるため、入居者と話し合って決めます。
前の入居者が残したエアコンも直す必要がありますか?
契約で設備として貸しているのか、残置物として扱うのかで変わります。入居時の契約書に、どちらかを明記しておきましょう。

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まとめ

  • 賃貸の設備故障の修繕は、民法606条により原則として貸主の負担
  • 入居者の責任で壊れたときは、入居者の負担になる
  • 貸主が直さないときや急ぎの事情があるときは、入居者が自分で修繕できる(民法607条の2)
  • 使えない期間が続くと、家賃が減額されることがある(民法611条)
  • 小さな修繕の分担は特約で具体的に決め、契約前に説明しておく

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