賃貸管理の委託と自主管理の違い|任せる業務の範囲と向いている人の判断軸

賃貸物件の管理は、管理会社に任せる方法と、オーナーが自分で行う自主管理に分かれます。管理の仕事の中身、法律の決まり、それぞれの向き不向きと、一部だけ任せる選び方を整理します。
結論
- 賃貸管理の委託とは、入居者対応・建物の点検や修繕・家賃の管理などを管理会社に任せることです。自主管理とは、これらをオーナー自身が行うことです。
- 委託すると手間は減りますが、管理の費用がかかります。自主管理は費用を抑えられる一方、夜間の連絡や滞納への対応まで自分で担います。
- 管理を200戸以上受託する会社は、国土交通大臣の登録が必要です。登録した会社には、契約前の書面での説明や定期報告が義務づけられています。
- 全部任せるか全部自分でやるかの二択ではなく、募集だけ、清掃だけといった一部委託も選べます。
「管理会社に払っている費用がもったいない。自分で管理できないだろうか」。反対に、「自分で管理してきたけれど、もう手が回らない」。オーナーの悩みは、この両方向にあります。
管理を任せるか、自分で行うかは、費用だけでは決められません。物件までの距離、使える時間、入居者とのやりとりへの向き不向きで、答えが変わります。
この記事では、賃貸管理の仕事の中身を分けて、委託と自主管理の違いを比べます。自分に合う形を選ぶための判断軸も紹介します。
賃貸管理の委託と自主管理とは
賃貸管理とは
賃貸管理とは、物件を貸している間に必要になる仕事の全体です。大きく分けると、建物の手入れ、お金の管理、入居者とのやりとりの3つがあります。
委託と自主管理の定義
委託とは、管理の仕事を、契約を結んで管理会社に任せることです。オーナーは管理の報酬を払い、会社から報告を受けます。
自主管理とは、管理会社を使わず、オーナーが自分で管理の仕事を行うことです。家族や、清掃などの業者に個別に頼む場合も含めて、オーナーが全体を取り仕切る形です。
法律ではどう決まっているか
賃貸住宅管理業法では、賃貸住宅管理業を、オーナーから委託を受けて「維持保全」を行う事業と定めています。維持保全とは、住宅の部屋などを点検・清掃して保ち、必要な修繕を行うことです。家賃や敷金の管理は、維持保全とあわせて行う場合に管理業務に含まれます。
自分の物件を自分で管理するのは、委託を受けた事業ではないため、この法律の登録は要りません。また、自分の物件を自分で貸すことは、宅地建物取引業の定義に入っていません。ただし、自主管理でも、貸主としての責任は変わりません。
言葉の言い換え
| 言葉 | やさしい言い換え |
|---|---|
| 管理受託 | 管理会社が、オーナーから管理の仕事を引き受けること |
| 維持保全 | 点検や清掃で建物を保ち、必要な修繕をすること |
| 分別管理 | 預かった家賃などを、会社のお金と分けて管理すること |
| 定期報告 | 管理の状況を、決まった時期にオーナーへ知らせること |
| 一部委託 | 管理の仕事の一部だけを任せること |
管理の仕事の中身:何を任せ、何を自分でやるか
管理の仕事の一覧
| 分類 | 主な仕事 | 自主管理で気をつけること |
|---|---|---|
| 入居者の募集 | 広告、内見、申込みの受付、入居審査 | 仲介を頼む会社との連絡が要る |
| 契約 | 契約書の作成、更新、解約の受付 | 契約書のひな形と特約を整える |
| お金の管理 | 家賃の入金確認、督促、敷金の精算 | 毎月の確認を欠かさない |
| 建物の手入れ | 定期の点検、清掃、修繕の手配 | 業者を自分で探して頼む |
| 入居者対応 | 設備の故障、騒音などの苦情、緊急の連絡 | 夜間や休日の連絡にも応じる |
| 退去 | 立ち会い、原状回復の範囲の判断 | 判断の根拠を説明できるようにする |
貸主に法律が求める修繕
民法では、貸主は、貸した物を使うために必要な修繕をする義務を負うとしています。借主の責任で壊れた場合は別です。
また、借主が修繕の必要を伝えたのに、貸主が相当の期間内に修繕しないときや、急ぐ事情があるときは、借主が自分で修繕できます。自主管理では、連絡を受けてから修繕の手配までを、オーナーが自分で素早く行う必要があります。
退去と原状回復
退去のときに、どこまでを借主に負担してもらうかは、トラブルになりやすい点です。考え方は「原状回復のガイドライン」でくわしく説明しています。
委託と自主管理の違いを比べる
比較表
| 比べる点 | 委託(管理会社に任せる) | 自主管理 |
|---|---|---|
| 費用 | 管理の報酬がかかる | 報酬はかからないが、業者への支払いは自分で行う |
| 手間 | 少ない。報告を受けて判断する | 多い。日々の連絡と手配を自分で行う |
| 夜間・休日の対応 | 会社の体制に任せられる | 自分で受ける |
| 滞納への対応 | 会社が督促する(範囲は契約次第) | 自分で督促し、手続きを進める |
| 物件の状況の把握 | 報告書が頼り | 自分の目で見られる |
| 入居者との距離 | 会社を通す | 直接やりとりする |
ポイント
- 委託は、お金で手間と時間を買う方法
- 自主管理は、手間をかける代わりに費用を抑え、物件を直接見られる方法
- どちらでも、貸主としての修繕の責任は変わらない
- 決め手は、物件までの距離と、使える時間と、対応への向き不向き
管理費の目安について
管理の報酬は、会社や物件、任せる範囲によって違います。公的な統計で一律の相場を示すことはできません。複数の会社から、同じ範囲の業務で見積もりを取って比べましょう。
委託するときに確かめること
登録と契約前の説明
管理を200戸以上受託する会社は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。登録は5年ごとの更新です。200戸未満の会社でも、任意で登録を受けることができます。
登録した会社は、管理の契約を結ぶ前に、管理業務の内容や実施の方法を書面で説明しなければなりません。預かった家賃などは会社のお金と分けて管理し、業務の状況をオーナーに定期的に報告する決まりもあります。くわしくは「賃貸住宅管理業法とは」をご覧ください。
契約書で確かめる5つの点
- 任せる業務の範囲(募集、点検、清掃、修繕の手配、家賃の管理、入居者対応)
- 報酬の金額と、別にかかる費用の有無
- 修繕を会社の判断で進められる金額の上限
- 報告の時期と、報告書の中身
- 解約の申し出の期限と、違約金の有無
国土交通省は、管理の契約のひな形として「賃貸住宅標準管理受託契約書」を公開しています。手元の契約書と見比べると、抜けている項目に気づきやすくなります。
管理会社を変える場合は、今の契約の解約の決まりを先に確かめます。手順は「管理会社の変更」で説明しています。
見積もりを比べるときのチェックリスト
- 同じ業務の範囲で見積もりを取っているか
- 報酬のほかに、更新や退去のときの費用がかかるか
- 夜間・休日の連絡を、だれがどの方法で受けるか
- 修繕の見積もりを、オーナーに確かめてから進めるか
- 報告書の見本を見せてもらえるか
- 登録の有無と、業務管理者の配置を確かめたか
見積もりの金額だけで比べると、任せる範囲の違いを見落としがちです。範囲をそろえたうえで、報告の分かりやすさや、提案の中身まで比べましょう。
自主管理に向いている人・委託に向いている人
自主管理に向いている人
- 物件の近くに住んでいて、すぐに見に行ける
- 戸数が少なく、連絡を受けても対応できる時間がある
- 入居者とのやりとりや、業者の手配が苦にならない
- 契約や原状回復の決まりを、自分で調べる意欲がある
委託に向いている人
- 物件が遠方にある、または相続などで急に持つことになった
- 仕事が忙しく、平日の昼間や夜間の連絡に応じられない
- 戸数が多く、入れ替わりが頻繁にある
- 滞納や苦情への対応に不安がある
判断の分かれ道:一部だけ任せる
全部を任せるか、全部を自分でやるかで迷うときは、一部委託を考えます。たとえば、入居者の募集だけを仲介の会社に頼み、入居後の対応は自分で行う方法です。共用部の清掃だけを業者に頼む方法もあります。
場面の例
親から古いアパートを相続したCさんは、物件から遠く離れて暮らしています。最初は自主管理を考えましたが、夜中の水漏れの連絡に応じられないと気づきました。そこで、入居者対応と修繕の手配を管理会社に任せ、毎年の報告書で状況を確かめる形にしました。
一方、自宅のとなりに数戸の貸家を持つDさんは、清掃と点検を自分で行っています。募集だけは仲介の会社に頼み、入居審査の判断は自分で行っています。
自主管理を始めるときの準備
自主管理を選ぶ場合は、始める前に次の準備をしておくと、いざというときに慌てません。
- 入居者からの連絡先(電話、メール)を決め、入居者に知らせる
- 水漏れ、鍵の紛失、設備の故障など、急ぎの連絡に応じる業者を決めておく
- 契約書のひな形と、更新・解約の書式を整える
- 家賃の入金を確かめる日と、遅れたときの連絡の手順を決める
- 修繕の記録と、入居者とのやりとりの記録を残す場所を決める
委託から自主管理に切り替えるとき
委託をやめて自主管理にする場合は、今の契約の解約の期限を確かめます。そのうえで、鍵、契約書類、預かり金、対応途中の苦情などを、漏れなく引き継ぎましょう。入居者には、新しい連絡先と家賃の振込先を、切り替えの月とあわせて書面で知らせます。
自主管理でよくある失敗
書面を残さない
口約束で修繕や退去の条件を決めると、後で食い違いが起きます。入居者とのやりとりは、日付と内容を記録に残しましょう。
滞納への対応が遅れる
知り合いの入居者だと、督促をためらいがちです。対応が遅れるほど、回収は難しくなります。手順は「家賃滞納への対応の流れ」をご覧ください。
業者の連絡先を用意していない
設備の故障は、夜間や休日にも起こります。給湯器や水まわりの業者を決めていないと、探すだけで時間がかかり、入居者の不満が大きくなります。自主管理を始める前に、急ぎの連絡先を一覧にしておきましょう。
契約の形を確かめない
普通借家と定期借家では、更新や終了のルールが違います。違いは「定期借家と普通借家の違い」で説明しています。
よくある質問
- 自主管理に資格は必要ですか?
- 自分の物件を自分で管理し、自分で貸すだけなら、賃貸住宅管理業の登録も宅地建物取引業の免許も要りません。ただし、他人の物件の管理を仕事として受けると話が変わります。
- 委託すると、オーナーは何もしなくてよいですか?
- いいえ。修繕するかどうかや、家賃の見直しなどの判断はオーナーが行います。報告書を読み、必要な判断を返すことが大切です。
- 管理会社は登録しているか調べられますか?
- 国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で調べられます。200戸未満の会社は登録が義務ではないため、登録がない場合もあります。
- 自主管理から委託に切り替えられますか?
- 切り替えられます。入居者との契約書類、鍵、修繕の記録などを整理してから引き継ぐと、移行がスムーズです。
- 自主管理でも入居者の募集は自分でできますか?
- 自分の物件を自分で貸すことはできます。ただし、広告や内見の対応には手間がかかります。募集だけを仲介の会社に頼む方法もあります。
- 一部だけ任せることはできますか?
- できます。募集だけ、清掃だけ、家賃の管理だけなど、契約で任せる範囲を決められます。範囲は契約書に書いてもらいましょう。
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まとめ
- 委託は管理会社に任せる方法、自主管理はオーナーが自分で行う方法
- 管理の仕事は、建物の手入れ・お金の管理・入居者とのやりとりに分かれる
- 貸主の修繕の責任は、委託でも自主管理でも変わらない
- 200戸以上を受託する会社は国土交通大臣の登録が必要で、契約前の書面説明と定期報告の義務がある
- 決め手は、物件までの距離・使える時間・対応への向き不向き
- 迷ったら、募集だけ・清掃だけなどの一部委託も選べる




