空き家は自治体に寄付できる?受け付けない市が多い理由と、手放すための5つの道

「タダでいいから市に引き取ってほしい」と考えても、空き家の寄付は断られることが多いのが実情です。自治体の公式の回答と、寄付以外に手放す方法、税金の扱いを順に整理します。
結論
- 空き家を自治体に寄付したいと申し出ても、受け付けていない自治体が多くあります。北九州市や福井市は、公式ページで引き取りを行っていないと答えています。
- 一方で、能美市のように、条件を満たす空き家と土地の寄付を受け、第三者へ流通させる仕組みを持つ自治体もあります。
- 寄付が難しいときは、空き家バンク、売却・買取、解体して相続土地国庫帰属制度を使う、などの道を比べて選びます。
- 国や自治体への寄付は、所得税の「みなし譲渡」の課税がなかったものとされる決まりがあります(租税特別措置法第40条)。
「誰も住まない実家を、もう手放したい」。「固定資産税と草刈りの手間だけが続いている」。そう感じて、市役所に寄付できないかと考える方は少なくありません。
ところが、自治体に相談すると、多くの場合は断られます。断られる理由を知らないままだと、次に何をすればよいか分からず、空き家をそのままにしてしまいがちです。
この記事では、自治体が空き家の寄付をどう扱っているかを公式ページの回答で確かめ、寄付以外に手放す方法と、税金や手続きの注意点を順に説明します。
空き家の寄付とは
寄付の意味と、売却との違い
空き家の寄付とは、建物や土地をお金を受け取らずに相手へ渡すことです。法律の上では「贈与」にあたり、受け取る側が承諾して初めて成り立ちます。
売却と違うのは、代金を受け取らないことと、相手に断る自由があることです。持ち主がどれだけ手放したくても、自治体が受け取ると決めない限り、寄付はできません。
言葉の言い換え
- 寄付(寄附):お金や物、不動産を無償で渡すこと。自治体の書類では「寄附」と書くことが多い
- 贈与:無償で財産を渡す約束。受け取る側の承諾が必要
- みなし譲渡:法人などへ無償で渡したとき、時価で売ったものとして所得税がかかる扱い
- 国庫帰属:土地の持ち主をやめ、国のものにしてもらうこと
自治体は空き家の寄付を受けるのか
公式ページで確かめた自治体の回答
自治体の考え方は、それぞれの公式ページで公表されています。いくつかの例を表にまとめます。
| 自治体 | 公式ページでの回答 | 案内している別の道 |
|---|---|---|
| 北九州市 | 現在、相談のケースを含めて寄付は受け付けていない | 空き家バンクへの登録、条件付きの解体費の補助 |
| 福井市 | 有償・無償に関わらず、空き家の引き取りは行っていない | 相続土地国庫帰属制度(法務局へ相談) |
| 能美市 | 条件を満たす建物・土地の寄附を受け、第三者へ流通させる | 寄附に必要な相続登記・測量・分筆の費用を助成 |
このように、受け付けない自治体もあれば、条件つきで受ける自治体もあります。お持ちの空き家がある市町村の公式ページか、担当の窓口で確かめるのが確実です。
受け付けない自治体が多い理由
自治体が空き家を受け取ると、その後の管理や修繕、解体の費用は自治体が負担することになります。公共の目的で使う予定がない建物を受け取ると、その費用を税金でまかなうことになります。
そのため、道路や公園の予定地など、使い道がはっきりした土地でない限り、寄付は受けないという考え方の自治体が多く見られます。断られたからといって、持ち主の説明が足りなかったわけではありません。
寄付を受ける自治体の条件の例
能美市の公式ページでは、寄附を受ける建物と土地の条件を示しています。たとえば次のような項目です。
- 建物は市内にあり、長屋や共同住宅の一部でないこと
- 建物の中にごみなどが放置されていないこと
- 抵当権などの権利や、賃借権が設定されていないこと
- 土地が165平方メートル以下の狭い土地や、形の悪い土地でないこと
- 建築基準法上の道路にきちんと接していること
- 電気・上下水道が使いやすく、土砂災害などのおそれのある区域を含まないこと
条件を満たさない場合でも相談はできると書かれています。ただ、条件を見ると、自治体が受けるのは「次の人に引き継ぎやすい物件」だと分かります。
ポイント
- 空き家の寄付は「贈与」なので、自治体が承諾しなければ成り立たない
- 北九州市・福井市は、公式ページで寄付や引き取りを行っていないと答えている
- 能美市のように、条件を満たす物件だけ寄附を受ける自治体もある
- まずは物件のある市町村の公式ページか窓口で、方針を確かめる
自治体に寄付するまでの流れ
寄付を受ける仕組みがある自治体でも、申し出ればすぐに受け取ってもらえるわけではありません。一般的には次の順で進みます。
- 物件のある市町村の担当窓口に、寄付を受けているかを問い合わせる
- 登記簿や図面、写真などをそろえ、物件の情報を伝える
- 自治体が現地を調べ、受け取れるかを判断する
- 受け取れる場合は、相続登記や測量など、必要な準備を進める
- 寄附の申込書を出し、自治体が承諾したら、所有権を移す登記をする
相続した空き家の名義が亡くなった方のままだと、寄付の前に相続登記が必要です。相続登記は、相続で所有権を取得したと知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法第76条の2)。詳しくは「相続登記の義務化」で解説しています。
寄付を受けるかどうかの判断や、必要な書類は自治体ごとに違います。ここで紹介した流れは一例です。
寄付以外に空き家を手放す5つの道
道1:空き家バンクに登録する
空き家バンクは、空き家を使いたい人に向けて、自治体が物件の情報を紹介する仕組みです。北九州市も、寄付の相談に対してこの登録を案内しています。売る・貸す相手を探す入口になります。登録の流れは「空き家バンクへの登録」をご覧ください。
道2:仲介で売る、または業者に買い取ってもらう
市場で買い手を探すのが仲介、不動産会社が直接買うのが買取です。古い家でも、土地の条件によっては買い手が見つかります。買取は早く手放せる一方で、値段は仲介より低くなりやすい傾向があります。違いは「不動産買取の流れと注意点」で比べています。
道3:隣の家の人や、使いたい人に譲る
隣の家の人にとっては、敷地を広げられる土地になることがあります。個人に無償で渡すと、受け取った人に贈与税がかかる場合があるため、事前に税務署や税理士に確かめておくと安心です。
道4:解体して、相続土地国庫帰属制度を使う
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に始まりました。法務省の案内では、審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認されると10年分の標準的な管理費をもとにした負担金を納めます。
ただし、建物がある土地は申請できません。空き家が建ったままでは使えないため、先に解体が必要です。解体の補助金は「空き家の解体と補助金」、制度の詳しい条件は「相続土地国庫帰属制度」で説明しています。
道5:相続放棄を考える(相続の前後で期限あり)
まだ相続の手続きを決めていない段階なら、相続放棄という選択もあります。相続放棄は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内に、家庭裁判所で手続きをします(民法第915条)。
相続放棄をすると、空き家だけでなく、預金など他の財産もすべて受け取れなくなります。また、放棄の時に空き家を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務が残ります(民法第940条)。
5つの道の比べ方
| 道 | 向いている場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 空き家バンク | 使いたい人を広く探したい | 相手が見つかるまで管理が続く |
| 仲介・買取 | 土地や建物にまだ需要がある | 買取は値段が低くなりやすい |
| 隣の人などに譲る | 隣の家の人が土地を使いたい | 受け取る人に贈与税がかかる場合がある |
| 国庫帰属制度 | 建物を壊しても手放したい土地 | 建物がある土地は申請できない、負担金がある |
| 相続放棄 | 相続の前で、他の財産も受け取らない | 3か月以内、全部の財産を放棄することになる |
空き家を寄付するときの税金
国や自治体への寄付と所得税
個人が法人に不動産を無償で渡すと、時価で売ったものとして所得税がかかる「みなし譲渡」になる場合があります。ただし、国や地方公共団体への贈与は、このみなし譲渡がなかったものとされます(租税特別措置法第40条)。
寄附金控除の対象になることも
国税庁の案内では、国や地方公共団体に対する寄附金は「特定寄附金」にあたり、寄附金控除の対象です。控除額は、特定寄附金の合計額か、総所得金額等の40%のどちらか低い金額から2,000円を引いた額です。
不動産を寄付したときの寄附金の額の考え方は、物件によって確かめる点があります。確定申告の前に、税務署や税理士に確認しておくと安心です。
寄付が決まるまでの固定資産税
寄付や売却が決まるまでの間は、持ち主が固定資産税を払い続けます。管理が行き届かない空き家は、住宅用地の特例が外れることもあります。詳しくは「管理不全空家と固定資産税」をご覧ください。
よくある失敗と、その避け方
失敗1:寄付を断られてから、何年も放置する
寄付を断られると、手放す道がないと思い込みやすくなります。その間に建物の傷みが進み、売れる道まで狭くなります。断られたら、その日のうちに次の道を1つ選んで動くのが大切です。
失敗2:家の中の片付けを後回しにする
寄付を受ける自治体でも、建物の中にごみが残っていないことを条件にしている例があります。売却や買取でも、家財が残っていると話が進みにくくなります。
失敗3:名義が亡くなった方のまま
寄付も売却も、名義が亡くなった方のままでは進められません。相続人が何人もいる場合は、話し合いにも時間がかかります。早めに相続登記を済ませておくと、どの道も選びやすくなります。
寄付を相談する前のチェックリスト
- 登記簿で、名義が誰になっているかを確かめた
- 相続人が自分のほかにいるかを確かめた
- 抵当権や賃貸の契約が残っていないかを確かめた
- 家の中の家財や、ごみの量を把握した
- 物件のある市町村が寄付を受けているかを、公式ページか窓口で確かめた
- 寄付が難しいときに選ぶ道を、2つ以上考えた
よくある質問
- 空き家を市役所に寄付することはできますか?
- 受け付けていない自治体が多くあります。北九州市や福井市は公式ページで引き取りを行っていないと答えていますが、能美市のように条件つきで寄附を受ける自治体もあるため、物件のある市町村に確かめてください。
- 空き家を自治体に寄付すると税金はかかりますか?
- 国や地方公共団体への贈与は、所得税のみなし譲渡がなかったものとされます。寄附金控除の対象にもなりますが、不動産の場合の計算は税務署に確かめると確実です。
- 建物が建ったままの土地を国に引き取ってもらえますか?
- 相続土地国庫帰属制度では、建物がある土地は申請できません。使うには、先に建物を解体する必要があります。
- 寄付を断られた空き家はどうすればよいですか?
- 空き家バンクへの登録、仲介での売却、業者の買取、隣の家の人への譲渡などを比べます。建物を壊してもよければ、国庫帰属制度も候補になります。
- 相続放棄をすれば空き家の管理をしなくてよいですか?
- 放棄の時に空き家を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで保存する義務が残ります。また、空き家以外の財産も受け取れなくなります。
次に読みたい記事と相談先
寄付が難しいとき、売るか貸すか直すかを比べるには「空き家の活用方法の比較」が役立ちます。売却を考える方は、売買を手がける会社の一覧から地域の会社を探せます。
自分の空き家にどの道が合うか分からないときは、一括相談の使い方をご覧のうえ、まとめて相談してみてください。
まとめ
- 空き家の寄付は贈与なので、自治体が承諾しなければ成り立たない
- 寄付や引き取りを受け付けていない自治体が多く、条件つきで受ける自治体もある
- 寄付が難しければ、空き家バンク・売却や買取・譲渡・国庫帰属制度・相続放棄を比べる
- 国庫帰属制度は建物がある土地では使えず、審査手数料は一筆14,000円
- 国や自治体への贈与は、所得税のみなし譲渡がなかったものとされる




