不動産所得の青色申告とは?事業的規模と65万円控除、令和9年分からの変更

家賃の収入がある人は、届け出をすれば不動産所得を青色申告にできます。事業的規模の目安、控除の65万円・55万円・10万円の違い、令和9年分からの変更、申請の期限を、国税庁の説明をもとに整理します。
結論
- 不動産所得の青色申告とは、届け出をしたうえで帳簿をつけて申告し、控除などの特典を受ける方法です。
- 控除の大きさは、貸付けが「事業的規模」か、複式簿記か、e-Taxで出すかで決まります。事業的規模の目安は、アパートなどおおむね10室以上か、一戸建ておおむね5棟以上です(国税庁)。
- 令和9年分から控除のしくみが変わります。書面で出す場合の55万円控除はなくなり、上限は10万円になります。複式簿記とe-Taxで65万円、優良な電子帳簿などを加えると最高75万円です。
「家賃の収入があるけれど、白色申告のままでいいのか」「青色申告にすると、どれくらい得なのか」。賃貸を始めたオーナーが、最初の確定申告の前に迷う点です。
青色申告は、手間をかける代わりに税金で得をする制度です。ただ、不動産所得の場合は、貸している規模によって受けられる特典が大きく変わります。さらに、令和9年分からは控除のしくみが変わります。
この記事では、青色申告の意味、事業的規模の目安、控除額の違い、令和9年分からの変更、申請の期限を順に説明します。
不動産所得の青色申告とは
意味を一言で
青色申告とは、一定の帳簿をつけて、その記録にもとづいて正しく申告する人が受けられる制度です。不動産所得・事業所得・山林所得がある人が対象です。
特典を受けるには、前もって税務署に「青色申告承認申請書」を出し、承認を受ける必要があります。
白色申告との違い
青色申告は、白色申告より詳しい帳簿をつける代わりに、控除や損失の繰越しなどの特典を受けられる点が違います。
主な特典
- 青色申告特別控除(最高65万円。令和9年分から最高75万円)
- 赤字(純損失)を翌年以後3年間に繰り越せる
- 事業的規模なら、家族に払う給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
白色申告と比べる
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前の手続き | 青色申告承認申請書を出す | なし |
| 特別控除 | 最高65万円(令和9年分から最高75万円) | なし |
| 純損失の繰越し | 翌年以後3年間 | 青色申告の特典としてはない |
| 家族への給与 | 事業的規模なら青色事業専従者給与 | 事業的規模なら専従者控除 |
言葉の言い換え
- 複式簿記:1つの取引を、お金の出入りと、その理由の両方から記録するつけ方
- 貸借対照表:年末の時点で、持っている財産と借入れなどを並べた表
- 損益計算書:1年間の収入と経費をまとめ、もうけを出した表
- e-Tax:申告書をインターネットで税務署に送るしくみ
- 優良な電子帳簿:訂正や削除の履歴が残る、帳簿どうしがつながる、日付・金額・相手で探せる、の3つを満たす電子の帳簿
事業的規模かどうかで変わること
事業的規模の目安
国税庁は、社会通念で「事業」といえる規模かどうかで判断するとしています。建物の貸付けでは、次のどちらかに当てはまれば、原則として事業として行っているとされます。
- アパートなどで、貸せる独立した部屋がおおむね10室以上
- 一戸建てで、おおむね5棟以上
規模で変わる扱い
| 項目 | 事業的規模 | それ以外(業務的規模) |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 要件を満たせば最高65万円(令和8年分までは書面で55万円も可) | 最高10万円 |
| 家族に払う給与(青色事業専従者給与) | 経費にできる | 経費にできない |
| 賃貸用の建物の取壊しなどの損失 | 全額を経費にできる | その年の不動産所得が限度 |
| 回収できなくなった家賃 | その年の経費にできる | 収入に入れた年にさかのぼって計算し直す |
ポイント
- 規模の目安は「10室」か「5棟」
- 事業的規模でないと、控除は最高10万円
- 家族への給与を経費にできるのは事業的規模だけ
- 赤字の繰越しは、規模にかかわらず青色申告の特典
青色申告特別控除の金額(令和8年分まで)
55万円控除の要件
国税庁の説明による、令和8年分までの要件です。
- 不動産所得または事業所得を生む事業を営んでいる
- 正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添えて、控除額を書き、申告期限までに出す
65万円控除の要件
55万円の要件に加えて、次のどちらかを満たすと65万円になります。
- 仕訳帳と総勘定元帳を、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで保存している
- 確定申告書と貸借対照表などを、申告期限までにe-Taxで送っている
10万円控除
55万円・65万円の要件を満たさない青色申告の人は、10万円の控除です。業務的規模の不動産所得だけの人は、こちらになります。
控除は、不動産所得などの黒字の範囲までです。また、還付を受ける申告でも、申告期限までに出さないと55万円・65万円の控除は受けられません。
令和9年分からの変更
何が変わるか
国税庁は、令和9年分以後の所得税で青色申告特別控除のしくみが変わると案内しています。
| 区分 | 令和8年分まで | 令和9年分から |
|---|---|---|
| 複式簿記+書面で提出 | 55万円 | 上限10万円 |
| 複式簿記+e-Taxで提出 | 65万円 | 65万円 |
| 上の65万円の要件+優良な電子帳簿の保存など | 65万円 | 最高75万円 |
| 簡易な帳簿 | 10万円 | 10万円(下の制限あり) |
令和9年分からは、65万円の控除にe-Taxでの提出が欠かせなくなります。75万円の控除は、65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存か「デジタルシームレス保存」の要件を満たし、届出書を出した人が対象です。
10万円控除の制限
簡易な帳簿の人のうち、前々年分の不動産所得または事業所得の収入金額が1,000万円を超える人は、10万円の控除を受けられなくなります。
不動産所得では、対象外になるのは事業的規模の人だけです。業務的規模の人は、これまでと同じく最高10万円の控除を受けられます。なお、業務的規模の人は、複式簿記にしても控除は最高10万円のままです。
場面の例
アパート2棟で合わせて12室を貸している人が、複式簿記で記帳し、書面で申告しているとします。令和8年分までは55万円の控除ですが、令和9年分からは書面のままだと上限10万円です。e-Taxで出せば、65万円の控除を受けられます。
現金主義の特例を使っている人
前々年分の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下の青色申告の人は、届け出をして「現金主義」で所得を計算する特例を使えます。この特例を使っている人は、55万円・65万円・75万円の控除は受けられず、10万円の控除になります。
業務的規模でも青色申告にする意味はあるか
判断の分かれ道
部屋数が少ない業務的規模の人は、控除が最高10万円です。それでも、赤字を3年間繰り越せる点は、規模にかかわらず使える特典です。
大きな修繕で赤字になりそうな年がある人や、今後、部屋数を増やして事業的規模になる見込みがある人は、早めに青色申告にしておく意味があります。反対に、収入が少なく、記帳の手間が負担になる人は、手間と効果を比べて決めましょう。
令和9年分に向けたチェックリスト
- 自分の貸付けは、事業的規模か業務的規模か
- 帳簿は複式簿記か、簡易な帳簿か
- 申告は書面か、e-Taxか
- 前々年分の収入金額は1,000万円を超えるか
- 75万円を目指すなら、優良な電子帳簿の要件と届出書を確かめたか
青色申告を始める手順
申請の期限
- 青色申告を始めたい年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を税務署に出す
- その年の1月16日以後に新しく貸付けを始めた場合は、始めた日から2か月以内に出す
- 帳簿のつけ方を決める(複式簿記にするか、会計ソフトを使うか)
- 申告をe-Taxで出す準備をする
- 翌年の申告期限までに、決算書を添えて申告する
帳簿の保存
帳簿と書類は、原則として7年間保存します。請求書や見積書など一部の書類は5年です。
記帳の手助け
国税庁は、税務署の記帳説明会や、青色申告会・商工会などの記帳指導を案内しています。初めて複式簿記をつけるなら、こうした窓口を使うのも手です。
場面の例:一戸建てを3棟貸している
親から受け継いだ一戸建てを3棟貸している人を考えます。国税庁の目安(一戸建ておおむね5棟以上)には届かないので、原則として事業的規模にはあたりません。この場合、青色申告にしても控除は最高10万円です。
ただし、事業的規模かどうかは、目安だけでなく実際の規模で判断されます。迷うときは、税務署や税理士に確かめましょう。
よくある失敗と防ぎ方
75万円の届出書を出さない
令和9年分から最高75万円の控除を受けるには、65万円の要件に加えて、確定申告期限までに届出書を出す必要があります。国税庁は、届出書の名前を令和9年3月ごろに「65万」から「75万」に変える予定と案内しています。すでに優良な電子帳簿の保存で65万円の控除を受けている人は、改めて出す必要はありません。
申請を出し忘れる
青色申告は、申請書を出していなければ受けられません。始めたい年の3月15日を過ぎると、その年は白色申告になります。
控除額を黒字より大きく見込む
青色申告特別控除は、不動産所得などの黒字の範囲までです。赤字の年や、黒字が小さい年は、控除の上限まで使い切れないことがあります。
規模を確かめずに65万円を見込む
業務的規模の不動産所得だけなら、控除は最高10万円です。部屋数や棟数を数えてから、控除額を見込みましょう。
帳簿を年末にまとめてつける
複式簿記は、1年分をまとめてつけようとすると、領収書の整理だけで手間がかかります。家賃の入金や修繕の支払いを、月ごとに記録しておくと、決算と申告が楽になります。
令和9年分も書面で出す
令和9年分から、書面で出すと上限は10万円です。55万円の控除を受けていた人は、e-Taxの準備を早めに始めましょう。
よくある質問
- 不動産所得で青色申告はできる?
- できます。税務署に青色申告承認申請書を出して、承認を受ければ青色申告で申告できます。
- 部屋が少なくても65万円控除は受けられる?
- 事業的規模でない場合は、最高10万円の控除です。目安は、アパートなどおおむね10室以上か、一戸建ておおむね5棟以上です。
- 青色申告の申請はいつまで?
- 始めたい年の3月15日までです。その年の1月16日以後に貸付けを始めた場合は、始めた日から2か月以内です。
- 令和9年分から何が変わる?
- 書面で出す場合の55万円控除がなくなり、上限は10万円になります。複式簿記とe-Taxで65万円、優良な電子帳簿などを加えると最高75万円です。
- 赤字が出たらどうなる?
- 青色申告なら、純損失を翌年以後3年間に繰り越せます。
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まとめ
- 青色申告は、申請と帳簿で控除や繰越しの特典を受ける制度
- 事業的規模の目安は、おおむね10室以上か5棟以上
- 令和8年分までは、事業的規模で複式簿記なら55万円、e-Taxなどで65万円
- 業務的規模の不動産所得だけなら、控除は最高10万円
- 令和9年分からは、書面だと上限10万円、e-Taxで65万円、優良な電子帳簿などで最高75万円
- 申請は、始めたい年の3月15日までに出す




