サブリース付き物件の売却で注意する7つの点|契約は買主に引き継がれる

サブリース中の物件も売却できますが、借上げの契約は原則として買主に引き継がれます。この記事では、売るときに起きることと、売る前に確かめる7つの点、売却までの流れを整理します。
結論
- サブリース中の物件も売却できます。ただし、サブリース会社との借上げの契約(マスターリース契約)は、原則として買主に引き継がれます。
- 民法では、借り手が対抗要件を備えている不動産が譲渡されると、貸主の立場は買主に移ると定めています。建物の賃貸借は、引渡しがあれば登記がなくても対抗できます。
- 売る前に、契約の残り期間・賃料・解約の条件・違約金を確かめ、買主に契約書を渡せるよう準備することが大切です。
「サブリースの物件を売りたい。でも、契約があるから売れないのでは」。そんな相談がよくあります。相続や住み替え、ローンの見直しなど、売りたい理由は人それぞれです。
結論から言うと、サブリース中でも売却そのものはできます。問題は「契約がどうなるか」と「いくらで、だれに売れるか」です。ここを知らずに進めると、買主との話がまとまらなかったり、思わぬ費用がかかったりします。
この記事では、サブリース付き物件を売るときに法律上どうなるかを先に説明します。そのうえで、売る前に確かめる7つの点と、売却までの流れを順に整理します。
サブリース付き物件の売却とは
サブリース付き物件の売却とは、サブリース会社に建物を貸したまま、その建物の持ち主を買主に替えることです。入居者もサブリース会社も、そのまま住み続け、借り続けるのが基本の形です。
オーナーとサブリース会社の契約は、賃貸住宅管理業法では「特定賃貸借契約」と呼びます。一般にはマスターリース契約とも呼ばれます。入居者との契約(転貸借)は、サブリース会社が結んでいます。
売っても契約は終わらない
民法には、借り手が対抗要件を備えている不動産が譲渡されたとき、その不動産の貸主の立場は買主に移るという決まりがあります。借地借家法では、建物の賃貸借は登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後の買主などに効力が及ぶとしています。
サブリース会社は建物の引渡しを受けているのが普通です。そのため、売却してもマスターリース契約はそのまま買主に引き継がれるのが原則です。買主は、新しい貸主としてサブリース会社から賃料を受け取ることになります。
買主が引き継ぐもの
民法では、貸主の立場が買主に移ったとき、敷金を返す義務も買主が引き継ぐとしています。サブリース会社から敷金を預かっている場合は、売買のときに精算の方法を決めておく必要があります。
また、買主が貸主であることをサブリース会社に主張するには、所有権の移転の登記が必要です。登記が済むまでの賃料をどちらが受け取るかも、売買契約で決めておきましょう。
売り方は2つ:契約付きで売るか、契約を終わらせてから売るか
サブリース付き物件の売り方は、大きく2つに分かれます。どちらを選ぶかで、買主の層も、準備にかかる時間も変わります。
| 項目 | 契約付きのまま売る | 契約を終わらせてから売る |
|---|---|---|
| 主な買主 | 賃貸収入を目的とする投資家など | 自分で使う人、自分で貸したい人 |
| 買主が見る点 | サブリースの賃料と契約の条件 | 建物の状態と立地 |
| オーナーの手間 | 契約書をそろえて渡す | サブリース会社との話し合いが必要 |
| 時間 | 比べると短く進めやすい | 解約の合意や手続きの分だけ長くなりやすい |
| 注意点 | 賃料が低いと価格に響きやすい | オーナーからの解約に正当の事由が要る場合がある |
契約付きのまま売る場合
買主は、サブリース会社から入る賃料をもとに、物件の価値を考えます。賃料の額だけでなく、次の見直しの時期や、借地借家法による減額の請求がありうることも見られます。
契約を終わらせてから売る場合
普通借家としてマスターリース契約を結んでいると、オーナーから更新を断ったり解約を申し入れたりするには、借地借家法の「正当の事由」が必要です。売りたいという理由だけで、正当の事由が認められるとは限りません。
現実には、サブリース会社との話し合いで合意して終わらせる道を探すことになります。解約の流れは「サブリースの解約」で詳しく説明しています。
マスターリース契約が終わっても、入居者の住まいはすぐにはなくなりません。国土交通省のガイドラインでは、契約が終わった場合にオーナーがサブリース会社の転貸人(入居者に貸す側)の立場を引き継ぐ定めを設けることとしています。
売る前に確かめる7つの点
売却を考え始めたら、まず手元の契約書と重要事項説明書を読み直しましょう。賃貸住宅管理業法の施行規則は、契約前に説明する事項として、賃料とその変更、違約金、契約期間、更新と解除などを挙げています。売却のときに見るのも、ほぼ同じ項目です。
- 契約期間と、残りの期間はどれだけか
- 受け取っている賃料の額と、次の見直しの時期
- オーナーからの解約・更新拒絶の定めと、その条件
- 違約金や損害賠償額の予定の定めがあるか
- 売却するときにサブリース会社へ知らせる定めがあるか
- 敷金の預かりの有無と、その額
- 修繕費をどちらが負担するかの定めと、これまでの修繕の記録
ポイント
- サブリース中でも売却はできる
- 契約は原則として買主に引き継がれる
- 敷金を返す義務も買主に移るので、売買で精算を決める
- 契約を終わらせてから売るなら、正当の事由か合意が要る
よくある失敗
いちばん多いのは、契約書の中身を確かめないまま売り出してしまうことです。買主から「賃料の見直しはいつか」「違約金はあるか」と聞かれて答えられず、話が止まってしまいます。
次に多いのが、「売れば契約は終わる」と思い込んでいるケースです。買主が自分で使うつもりだった場合、引渡しの直前になって契約が残ると分かり、売買そのものが崩れることがあります。
三つめは、サブリース会社に知らせるのが遅れることです。契約で売却時の通知を定めている場合、知らせ方を誤ると、もめごとの種になります。売り出す前に、契約書のどこに何が書いてあるかを確かめておきましょう。
敷金と修繕の精算で迷いやすい点
敷金を預かっている場合、買主がその返す義務を引き継ぎます。そのため、売買代金の中で敷金の額を差し引くなど、精算の方法を決めるのが一般的です。預かった額が分かる書類を用意しておきましょう。
修繕は、売買の前に約束した工事が終わっているか、費用をだれが払うかを整理します。サブリース会社が業者を指定している場合は、その定めが買主にも引き継がれることを伝えておくと、あとのもめごとを防げます。
サブリース付き物件の売却の流れ
契約付きのまま売る場合の、一般的な流れです。
- 契約書・重要事項説明書・賃料の入金記録・修繕の記録をそろえる
- 不動産会社に査定を頼み、契約付きのまま売るか、契約を終わらせてから売るかを相談する
- 売却する予定を、契約の定めに沿ってサブリース会社に伝える
- 買主を探し、契約の中身を買主に説明する
- 売買契約を結び、敷金・賃料・固定資産税などの精算の方法を決める
- 代金の受け取りと引渡し、所有権の移転の登記をする
- サブリース会社に、貸主が替わったことと新しい振込先を知らせる
サブリース会社に求めたいこと
国土交通省のガイドラインでは、売却などで貸主の立場が新しい貸主に移り、同じ内容で契約が引き継がれる場合、サブリース会社は遅れずに、契約の内容が分かる書類を新しい貸主に渡すことが望ましいとしています。買主が安心できるよう、事前にサブリース会社と段取りを話しておきましょう。
査定と会社選びのポイント
サブリース付きの物件は、会社によって得意・不得意があります。収益物件の売買に慣れているか、契約書を読んだうえで査定してくれるかを見ましょう。会社の選び方は「売却を頼む会社の選び方」、媒介契約の種類は「一般媒介と専任媒介」で説明しています。
たとえば、相続したアパートを売る場合
たとえば、親からサブリース中のアパートを相続したDさん。遠方に住んでいて、管理の予定もないため、売却を考えました。
Dさんはまず、契約書で残りの期間と賃料の見直しの時期を確かめました。次に、契約付きのまま売る場合と、話し合いで契約を終わらせてから売る場合の両方で、査定を頼みました。最後に、手元に残る額と、かかる時間を並べて比べることにしました。
買主が見るポイントと、売り方を選ぶ分かれ道
投資家の買主が確かめること
契約付きのまま売る場合、買主は「この物件から、これから先いくら入るか」を知りたがります。次の資料を、すぐに出せるようにしておきましょう。
- マスターリース契約書と、契約前に受けた重要事項説明書
- これまでの賃料の入金の記録と、賃料が変わった経過
- 修繕の記録と、これから予定している修繕
- 固定資産税の通知書など、毎年かかる費用が分かる書類
資料がそろっていると、買主は判断しやすくなります。逆に、資料が足りないと、そのぶん不安を価格で見込まれやすくなります。
どちらの売り方が向くかの分かれ道
- 契約の残り期間が長く、賃料の条件が安定している:契約付きのまま売る道を先に考える
- 契約の残り期間が短く、更新の時期が近い:更新の前にサブリース会社と話し合う時間をとる
- 立地がよく、自分で使いたい買主が多い地域:契約を終わらせてから売る場合の査定も取る
- 建物が古く、大きな修繕が近い:修繕費の分担の定めを先に確かめ、買主に正直に伝える
どの道でも、「売れるか」より「手元にいくら残るか」で比べることが大切です。仲介の手数料や税金、違約金の有無まで含めて計算しましょう。
言葉の言い換え
- オーナーチェンジ:入居者やサブリース会社がいるまま、持ち主だけが替わる売り方
- 賃貸人たる地位の移転:貸主の立場が、売主から買主に移ること
- 正当の事由:貸主から契約を終わらせるときに、法律上必要とされる理由
よくある質問
- サブリース中の物件は、サブリース会社の承諾がないと売れませんか?
- 民法では、貸主の立場は借り手の承諾がなくても、売主と買主の合意で買主に移せるとしています。ただし、契約で売却時の通知などを定めていることがあるので、契約書を確かめましょう。
- 売却すると、サブリースの契約は終わりますか?
- 原則として終わらず、買主に引き継がれます。終わらせたい場合は、契約の定めに沿った解約か、サブリース会社との合意が必要です。
- 売却を理由に、オーナーから解約できますか?
- 普通借家の契約では、オーナーからの解約や更新拒絶に借地借家法の正当の事由が必要です。売りたいという理由だけで認められるとは限りません。
- 入居者には何か手続きが必要ですか?
- 入居者と契約しているのはサブリース会社なので、入居者との契約は基本的にそのまま続きます。案内の方法は、サブリース会社と相談して決めましょう。
- 売却の税金はどう考えればよいですか?
- 売った利益には所得税・住民税がかかることがあります。基本は「不動産売却の税金」をご覧ください。
関係する記事と相談先
売却の全体の流れは「不動産売却の流れ」、サブリースの契約で気をつける点は「サブリースの注意点」にまとめています。相続した物件なら「相続した実家の売却」も参考になります。売却に強い会社は売買の会社一覧から探せます。複数の会社にまとめて相談することもできます。
まとめ
- サブリース中の物件も売却できる
- マスターリース契約は、原則として買主に引き継がれる
- 敷金を返す義務も買主に移るため、売買のときに精算を決める
- 契約を終わらせてから売るなら、正当の事由か合意が必要
- 売る前に、期間・賃料・解約・違約金・修繕の定めを確かめる
- 契約付きと契約なしの両方で査定し、手元に残る額で比べる




