サブリース契約書のチェック方法|国交省の特定賃貸借標準契約書と照らす12の点

サブリースの契約書は、国土交通省の「特定賃貸借標準契約書」と見比べると、抜けや偏りに気づきやすくなります。この記事では、頭書と条文のどこを、どの順番で確かめればよいかを整理します。
結論
- サブリースの契約書は、国土交通省の「特定賃貸借標準契約書」と1項目ずつ見比べてチェックするのが近道です。
- まず頭書(かしらがき)で、期間・家賃・家賃改定日・免責期間・修繕の費用分担・転貸の条件が具体的に書かれているかを確かめます。
- 次に条文で、家賃の改定、契約の解除、契約が終わったときの入居者と敷金の引き継ぎ、特約の中身を確かめます。
「サブリースの契約書を渡されたけれど、分厚くてどこを見ればいいのか分からない」。こうした声は少なくありません。
契約書は会社ごとに書き方が違います。ただ、国土交通省は、サブリースの契約で最低限決めておくべきことをまとめたひな形を出しています。手元の契約書をこのひな形と並べると、何が足りないか、どこが自分に不利かが見えてきます。
この記事は、契約前の説明の受け方ではなく、手元の契約書そのものをどうチェックするかに絞って説明します。
サブリースの契約書チェックとは
サブリースの契約書チェックとは、オーナーとサブリース会社の間の契約(法律では「特定賃貸借契約」)の中身を、条文ごとに確かめる作業です。基準にするのが「特定賃貸借標準契約書」です。
特定賃貸借標準契約書とは
特定賃貸借標準契約書とは、国土交通省が公表している、サブリースの契約のひな形です。解説では、全国で使える雛形として、最低限定めなければならないと考えられる事項をまとめたものとしています。
このひな形は、居住のみを目的とした民間賃貸住宅の1棟全体を対象にした普通借家契約です。戸建てや一部の部屋だけの契約では、そのまま当てはまらない部分もあります。
契約書を受け取るのは法律上の決まり
賃貸住宅管理業法31条では、サブリース会社は契約を結んだら、遅滞なく書面を渡さなければならないとしています。書面には、家賃、維持保全の方法、契約期間、転貸の条件、更新や解除の定めなどを書きます。
標準契約書の解説では、標準契約書を渡すことで、この31条の書面を渡したことにできると考えられるとしています。
契約書の全体の形
標準契約書は、大きく次の3つの部分でできています。
| 部分 | 中身 | チェックの重さ |
|---|---|---|
| 頭書 | 物件、期間、家賃、免責期間、修繕の分担、転貸の条件などを表にした部分 | 数字と分担が書かれているかを確かめる |
| 条文 | 第1条から第24条までの決まり | 頭書の数字がどう使われるかを確かめる |
| 別表・特約 | 通知が必要な出来事、個別の約束 | ひな形にない約束がないかを確かめる |
チェックは、頭書から始めるのが効率的です。数字や分担が空欄のままなら、条文を読んでも中身が決まりません。
頭書でチェックする6つの点
頭書の欄のうち、とくに確かめたいのは次の6つです。
1. 契約期間と引渡日
契約の始まりと終わり、何年何か月の契約かを確かめます。新築や建築中の物件では、契約の始まりと引渡日が違うことがあるため、引渡日も別に書きます。
2. 家賃と家賃改定日
家賃の額、支払期限(当月分か翌月分か、毎月何日までか)、支払方法を確かめます。初回の家賃改定日と、2回目以降の改定の間隔も書く欄があります。
標準契約書の頭書には、借地借家法32条1項により、改定日以外でも会社から減額を求められることがある、という説明文が入っています。手元の契約書にこの説明があるかも見ておきましょう。
3. 支払い免責期間
免責期間とは、会社がオーナーに家賃を払わなくてよい期間のことです。頭書には「引渡日から何か月」と書く欄があります。入居者が退去したあとにも免責期間を置くなら、その対象と期間を別に書くとしています。
4. 維持保全の方法と費用の分担
点検・清掃・修繕を、だれが、どのくらいの頻度で行うかを書く欄です。費用をオーナーと会社のどちらが負担するかも、項目ごとに分けて書きます。空欄や「別途協議」ばかりなら、具体的に書いてもらいましょう。
5. 転貸の条件
会社が入居者と結ぶ契約の条件です。普通借家か定期借家か、家賃・共益費・敷金の幅、入居者の条件(たとえば「学生限定」)、民泊を認めるかどうかを書きます。
6. 入居者の敷金の分別管理
会社が入居者から預かる敷金を、会社のお金と分けてどう管理するかを書く欄です。記入例として、会社の口座とは別の口座を設ける方法が示されています。
ポイント
- 頭書の空欄は、条文より先に埋めてもらう
- 家賃は「額・支払日・改定日」の3つをそろえて見る
- 免責期間は、引渡し後と退去後の2種類があるかを見る
- 修繕は「だれが行うか」と「だれが払うか」を分けて見る
条文でチェックする6つの点
頭書の次は、条文です。標準契約書と番号を並べて、次の6つを確かめます。
7. 更新しないときの通知(第2条)
標準契約書2条では、更新を望まないときは、満了の1年前から6か月前までに相手に通知するとしています。ただし、オーナーからの通知には、借地借家法28条の正当の事由が必要です。
8. 家賃の改定(第5条)
5条3項では、家賃改定日に、税などの負担の増減、経済事情の変動、近くの似た建物の家賃との比較で不相当になったとき、協議で改定できるとしています。解説では、空室のときなどに違う家賃にするなら、その旨を契約書に定めるとしています。
9. 修繕の決まり(第11条)
11条2項では、オーナーが、使うために必要な修繕を行うとしています。頭書で会社が行うとした修繕や、会社や入居者の責任で必要になった修繕は別です。会社が緊急で工事をしたときは、書面で内容と費用を知らせる決まりもあります。
10. 報告と承諾(第13条・第16条)
13条では、会社は合意した頻度で、維持保全の状況をオーナーに報告するとしています。16条では、賃借権の譲渡や増改築には、事前にオーナーの書面などによる承諾が必要としています。
11. 契約の解除と終わったあと(第18条・第21条)
18条では、会社が家賃を3か月分以上払わず、催告しても払わないとき、オーナーは解除できるとしています。21条では、契約が終わると、オーナーが入居者との契約の貸主の立場を引き継ぐとしています。会社は、入居者の敷金や契約書をオーナーに引き渡します。
12. 特約(第24条)
特約は、ひな形にない個別の約束です。解説では、会社からの中途解約を認めるなら、一定の期間は解約できないとすることが望ましいとしています。オーナーからの中途解約の条項を置くなら、正当事由が少なくとも必要である旨を書くとしています。
チェックの進め方
手元の契約書を確かめる手順は、次のとおりです。
- 国土交通省のサイトから特定賃貸借標準契約書を手に入れる
- 手元の契約書の頭書と、標準契約書の頭書を並べ、空欄や「別途」の欄に印をつける
- 条文の番号の対応表を作る(会社の契約書では番号がずれていることが多い)
- 標準契約書にあって、手元の契約書にない条文を書き出す
- 手元の契約書にだけある条文と特約を書き出す
- 書き出した点を、会社に書面で質問する
- 答えを受け取ってから、署名するかどうかを決める
判断の分かれ道
ひな形と違うからといって、すぐに不利とは限りません。物件の形や地域の事情で、書き方が変わることもあります。
見るべきは、違いがオーナーの負担を増やす方向かどうかです。たとえば、修繕の費用分担がすべてオーナーになっている、減額の条件が広く書かれている、といった違いは、理由を聞く価値があります。
たとえば、相続した物件の契約書を見直した場合
たとえば、父から相続したアパートのサブリース契約書を見直したBさん。頭書の修繕の欄が「別途協議」とだけ書かれていました。
Bさんは標準契約書の頭書を並べ、屋根・外壁・給湯器などの項目ごとに分担を書いてほしいと会社に依頼しました。分担がはっきりしたことで、次の修繕の見積りを受けたとき、負担の範囲で迷わずに済みました。
会社に質問するときの書き方
質問は、口頭ではなくメールや書面で送ります。答えも書面でもらうと、あとで見返せます。質問の書き方の例は次のとおりです。
- 「頭書の修繕の欄が別途協議となっています。屋根・外壁・給湯器・エアコンについて、実施する人と費用を払う人を項目ごとに書いてください」
- 「退去後の免責期間はありますか。ある場合、対象と期間を書いてください」
- 「特約第○項の中途解約は、どのような場合に、何か月前の申し入れで行えますか」
1つの質問に1つの点だけを書くと、答えがぼやけません。
よくある失敗
- 頭書の空欄に気づかず署名し、修繕の負担で後からもめた
- 家賃改定日だけを見て、改定日以外の減額請求があり得ることを知らなかった
- 退去後の免責期間が別の欄にあり、見落とした
- 特約の中途解約の条項を読まず、思ったより早く解約された
- 契約が終わったあとの敷金の引き渡しを確かめていなかった
署名前のチェックリスト
- 頭書の期間・引渡日・家賃・支払日・改定日が埋まっている
- 免責期間の長さと、退去後の免責の有無を確かめた
- 修繕の項目ごとに、実施する人と払う人が書かれている
- 転貸の条件(契約の型・家賃の幅・入居者の条件・民泊の可否)を確かめた
- 入居者の敷金を分けて管理する方法が書かれている
- 更新しない通知の期限と、解除の条件を確かめた
- 契約が終わったあと、入居者と敷金がどう引き継がれるかを確かめた
- 特約の中身を1つずつ読み、分からない点を書面で質問した
契約書に出てくる言葉の言い換え
- 甲・乙:契約の当事者。標準契約書では、甲がオーナー(貸主)、乙がサブリース会社(借主)
- 転借人:サブリース会社から部屋を借りる入居者
- 維持保全:点検・清掃・修繕など、建物を良い状態に保つこと
- 善管注意義務:仕事として求められる程度の注意を払う義務(第14条)
- 合意管轄裁判所:もめたときに使う裁判所を、あらかじめ決めておくこと
よくある質問
- 標準契約書と同じでないと違法になる?
- 標準契約書はひな形で、解説も個々の契約で特約により補うことを想定しています。違いがあるときは、それが自分の負担を増やす方向かどうかを確かめてください。
- 契約書はいつ受け取れる?
- 賃貸住宅管理業法31条では、契約を結んだら遅滞なく書面を渡すとしています。契約前の説明の書面は、これとは別に受け取ります。
- 戸建てのサブリースでも使える?
- 標準契約書は1棟全体の賃貸住宅を対象にしたひな形です。戸建てでも、チェックの観点はそのまま使えます。
- 特約はどこまで認められる?
- 解説では、オーナーは消費者契約法の消費者に当たる場合があるとしています。分からない特約は、会社に意味を書面で聞き、必要なら専門家に見てもらいましょう。
- すでに結んだ契約書も見直せる?
- 見直せます。更新の時期に合わせて、空欄や分かりにくい条文を書き直してもらうよう、会社と話し合う方法があります。
関係する記事と相談先
契約前の説明は「サブリースの重要事項説明」、契約全体の注意点は「サブリースの注意点」で説明しています。家賃の減額は「サブリースの賃料減額」、修繕の分担は「サブリースの修繕負担」、入居者向けのひな形は「賃貸住宅標準契約書とは」をご覧ください。
契約書を見比べる相手がほしいときは、管理会社・不動産会社の一覧から複数の会社に意見を聞けます。一括相談なら、物件の状況をまとめて伝えられます。
まとめ
- サブリースの契約書は、国交省の特定賃貸借標準契約書と並べてチェックする
- まず頭書で、期間・家賃・改定日・免責期間・修繕の分担・転貸の条件を確かめる
- 条文では、更新しない通知、家賃の改定、解除、契約後の引き継ぎを確かめる
- 特約は1つずつ読み、分からない点は書面で質問する
- ひな形との違いは、自分の負担を増やす方向かどうかで判断する




