入居者のクレーム対応はだれがする?オーナーと管理会社の役割分担と受け方

入居者からのクレームは、だれが受け、だれが判断し、だれが費用を出すかが決まっていないと、対応が遅れて不満が大きくなります。オーナーと管理会社の役割分担の考え方と、法律の決まり、受けてから終えるまでの流れを整理します。
結論
- 入居者のクレーム対応は、管理を任せている場合は管理会社が窓口になり、修繕の費用や契約に関わる判断はオーナーがするのが基本の分け方です。
- 民法では、貸す側には住むのに必要な修繕をする義務があり、借りる側には修繕が必要なことを遅れずに知らせる義務があります。
- 賃貸住宅管理業者は、入居者からの苦情の発生状況と対応状況を、オーナーへの定期報告に書くことが省令で決められています。
- 役割分担は、管理委託契約に「どこまで管理会社が判断してよいか」を書いておくと、対応が速くなります。
「入居者から直接電話がかかってきたが、管理会社に任せているはず」。「管理会社から修繕の見積もりが届くたびに、判断を求められる」。賃貸経営では、クレームの扱いをめぐって、こうした戸惑いがよく起こります。
クレームへの対応が遅れると、入居者の不満は大きくなり、退去につながることもあります。反対に、早く誠実に応えると、長く住んでもらうきっかけにもなります。
この記事では、クレームの種類ごとの窓口と、法律で決まっている役割、オーナーと管理会社の分け方、受けてから終えるまでの流れを順に整理します。
入居者のクレームとは
クレームの意味
ここでいう入居者のクレームとは、入居者から寄せられる苦情や改善の求めのことです。設備の故障のように直せば終わるものから、近隣の音のように相手がいるものまで、中身はさまざまです。
クレームの種類と主な窓口
| 種類 | 例 | 主な窓口 | オーナーの判断が要る場面 |
|---|---|---|---|
| 設備の故障 | 給湯器・エアコン・水漏れ | 管理会社 | 交換や高い修繕の費用 |
| 建物・共用部 | 廊下の電灯、ごみ置き場、雨漏り | 管理会社 | 大きな修繕、工事の時期 |
| 近隣・ほかの入居者 | 音、におい、駐輪、ペット | 管理会社 | 注意の書面、契約の扱い |
| 契約・お金 | 家賃、更新、敷金の精算 | 管理会社 | 金額の変更や特別な扱い |
| 管理会社への不満 | 対応が遅い、連絡がない | オーナー | 改善の求め、会社の変更 |
自主管理の場合は、これらすべての窓口をオーナー自身が受け持つことになります。自主管理と委託の違いは賃貸管理の自主管理と委託の違いで詳しく比べています。
法律で決まっている役割
貸す側の修繕の義務
民法では、貸す側は、借りている人が使ったり住んだりするのに必要な修繕をする義務を負うとされています。ただし、借りている人の責任で修繕が必要になったときは、この限りではありません。
借りる側の知らせる義務
民法では、修繕が必要になったとき、借りている人は遅れずに貸す側に知らせなければならないとされています。ただし、貸す側がすでに知っているときは除きます。
借りる側が自分で直せる場合
民法では、借りている人が修繕が必要だと知らせた(または貸す側が知った)のに、貸す側が相当の期間内に直さないとき、または急ぎの事情があるときは、借りている人が自分で修繕できるとされています。クレームを放っておくと、入居者が自分で業者を手配し、その費用を求められることもありえます。
修繕の範囲や費用の分け方は、契約書の特約で決めていることがあります。特約の内容は契約によって違うため、まず契約書を確かめましょう。設備の使い方による傷みと、年数による傷みの扱いは原状回復ガイドラインも参考になります。
管理会社が受け持つこと
賃貸住宅管理業法の「管理業務」
賃貸住宅管理業法では、管理業務とは、オーナーから任されて行う、建物の点検・清掃・修繕などの維持保全と、それにあわせて行う家賃や敷金などのお金の管理を指します。管理戸数が200戸以上の会社は、国土交通大臣の登録を受けることが義務です。
国土交通省のよくある質問では、入居者からの苦情対応だけを行い、維持や修繕(業者への発注を含む)を行っていない場合は、維持保全の業務には当たらないとされています。苦情を受けることと、直す手配をすることは、別の仕事として考えると整理しやすくなります。
オーナーへの定期報告
賃貸住宅管理業法と同法の施行規則では、登録を受けた管理会社は、契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、管理業務報告書をオーナーに渡して説明しなければなりません。報告書には、次の三つを書くことが決められています。
- 報告の対象となる期間
- 管理業務の実施状況
- 入居者からの苦情の発生状況と対応状況
報告書が届いたら、苦情の件数だけでなく、同じ苦情がくり返されていないか、対応にかかった日数はどうかも見ておきます。法律の全体像は賃貸住宅管理業法で整理しています。
オーナーと管理会社の役割分担の決め方
管理会社に任せやすいこと
- 入居者からの連絡を受ける窓口
- 現地の確認と、原因の聞き取り
- 一定の金額までの小さな修繕の手配
- 入居者への経過の連絡
- 対応の記録と、オーナーへの報告
オーナーが判断したほうがよいこと
- 設備の交換や、大きな修繕の実施と費用
- 家賃の減額や、費用の負担についての特別な扱い
- ほかの入居者への書面での注意や、契約の解除の検討
- 管理会社の対応そのものへの不満
管理委託契約で決めておくこと
役割分担は、口約束ではなく管理委託契約に書いておきます。特に次の点を確かめておくと、対応の遅れが減ります。
- 管理会社がオーナーに確かめずに手配してよい修繕の金額の上限
- 夜間・休日の連絡の受け方と、急ぎの対応の範囲
- オーナーへの連絡の方法と、返事の期限の目安
- 対応の記録の残し方と、報告の頻度
- 再委託する業者がいる場合の扱い
管理会社の対応が悪いとき
国土交通省の相談事例集では、管理会社と管理の契約を結んでいるのはオーナーなので、管理会社に改善を求められるのは契約の当事者であるオーナーだとされています。入居者から直接クレームが来るようになったら、契約の内容に照らして、管理会社に改善を求めます。改善されない場合の進め方は管理会社の変更で紹介しています。
ポイント
- 窓口は管理会社、費用と契約に関わる判断はオーナーが基本です
- 貸す側には修繕の義務、借りる側には知らせる義務があります
- 登録した管理会社は、苦情の発生と対応の状況を定期報告に書きます
- 管理会社が判断してよい範囲を、管理委託契約に書いておきます
クレームを受けてから終えるまでの流れ
- 受ける:いつ、どこで、何が起きているかを聞き取り、記録する
- 急ぎかどうかを分ける:水漏れ・ガス・電気・鍵など、安全や被害の広がりに関わるものを先にする
- 現地を確かめる:写真を撮り、原因の見当をつける
- 判断する:管理会社に任せた範囲か、オーナーの判断が要るかを分ける
- 入居者に見通しを伝える:いつ、だれが、何をするかを伝える
- 対応する:業者の手配、注意の書面の配布など
- 終わったことを確かめる:入居者に結果を聞き、記録を閉じる
見通しを先に伝える
すぐに直せない場合でも、「確認しました。何日ごろに業者が伺います」と見通しを先に伝えるだけで、入居者の不安は小さくなります。連絡がない時間が長いほど、不満は大きくなりがちです。
急ぎかどうかの分け方
次のようなクレームは、時間を置かずに対応します。夜間や休日でも動けるよう、連絡先と手配の方法を前もって決めておきます。
- 水漏れ:下の階や隣の部屋に被害が広がるおそれがある
- ガスのにおい、電気がつかない:安全や生活に直接かかわる
- 鍵が壊れて閉まらない:防犯にかかわる
- 給湯器やトイレの故障:生活に欠かせない設備が使えない
一方、壁紙のはがれや網戸の破れのような急がないものは、日程を相談して進めます。急ぎかどうかの線引きを管理会社と共有しておくと、夜中の判断で迷いません。
場面の例
Dさんは、管理会社に任せているアパートの入居者から、休日に直接「お湯が出ない」と電話を受けました。Dさんは自分で業者を探そうとしましたが、管理会社とのやり取りを思い出し、まず管理会社の休日窓口に引き継ぎました。
管理会社は、契約で決めていた上限額の範囲で業者を手配し、入居者にも見通しを伝えました。交換が必要と分かった段階で、Dさんに費用の判断を求める連絡が届きました。窓口と判断の分担が決まっていたため、二重の手配を防げました。
自主管理のときの受け方
自主管理では、オーナーが窓口も手配もすべて受け持ちます。困らないよう、連絡を受ける電話やメールを一つに決め、頼める修理の業者を設備ごとに書き出しておきます。旅行や入院で対応できない期間の代わりの連絡先も決めておくと安心です。
クレーム対応でよくある失敗
オーナーと管理会社の両方が別々に答える
入居者がオーナーにも管理会社にも連絡し、それぞれが違う返事をしてしまう例です。窓口を一つに決め、オーナーに直接連絡が来たときも管理会社に引き継ぐと決めておきます。
「すぐ直します」と約束してしまう
原因や費用が分からないうちに約束すると、守れなかったときに不満が大きくなります。約束するのは「次にいつ連絡するか」までにします。
記録を残さない
いつ、だれが、何を伝えたかが残っていないと、同じクレームがくり返されたときに経過が分かりません。小さなクレームほど、簡単な記録を残しておきます。
入居者の情報をほかの入居者に話す
近隣の苦情で、苦情を言った人の名前や部屋を相手に伝えてしまう例です。入居者どうしの関係が悪くなり、問題が大きくなるおそれがあります。
クレーム対応のチェックリスト
- 窓口が一つに決まっていて、入居者に伝わっている
- 夜間・休日の急ぎの連絡先が決まっている
- 管理会社が判断してよい修繕の上限額が契約に書いてある
- 対応の記録を残す方法が決まっている
- 定期報告で、苦情の発生と対応の状況を確かめている
よくある質問
- 入居者のクレームはオーナーが直接受けるべきですか?
- 管理を任せている場合は、管理会社を窓口にするのが基本です。オーナーに直接連絡が来たときも、管理会社に引き継ぐと決めておくと、返事が食い違いません。
- 設備が壊れたときの修理費はだれが払いますか?
- 民法では、貸す側に住むのに必要な修繕の義務があります。ただし、借りている人の責任で壊れた場合は別で、特約で分け方を決めていることもあるため契約書を確かめます。
- 管理会社はクレームの内容をオーナーに報告する義務がありますか?
- 登録を受けた管理会社は、1年を超えない期間ごとの管理業務報告書に、入居者からの苦情の発生状況と対応状況を書いて説明することが省令で決められています。
- 修理を頼んだのに直さないと、入居者が自分で直すことはありますか?
- 民法では、知らせたのに相当の期間内に直されないときや、急ぎの事情があるときは、借りている人が自分で修繕できるとされています。早めの対応が大切です。
- 自主管理でクレーム対応が負担になったらどうすればいいですか?
- 管理会社への委託を考える方法があります。委託するときは、任せる範囲と費用、報告の方法を契約で確かめましょう。
クレーム対応と管理の相談先
クレーム対応の負担が大きいときや、今の管理会社の対応に不安があるときは、会社一覧から地域の管理の会社を探して比べてみてください。家賃の滞納への対応は家賃滞納の対応の流れ、入居前の確認は入居審査のポイント、空室を減らす工夫は空室対策で紹介しています。複数の会社にまとめて聞きたい方は、一括相談をご利用いただけます。
まとめ
- クレーム対応は、窓口を管理会社、費用と契約に関わる判断をオーナーにするのが基本です
- 民法では、貸す側に修繕の義務、借りる側に知らせる義務があります
- 直さないままにすると、入居者が自分で修繕できる場合があります
- 登録した管理会社は、苦情の発生と対応の状況を定期報告に書きます
- 管理会社が判断してよい範囲と、夜間・休日の対応を契約に書いておきます
- すぐ直せなくても、次の連絡の見通しを先に伝えましょう




